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公共交通体系との関連に着目した地方都市圏での都市構造の変化に関する研究

氏名 太田 敦史
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第342号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 公共交通体系との関連に着目した地方都市圏での都市構造の変化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 中出 文平
 副査 教授 松本 昌二
 副査 助教授 佐野 可寸志
 副査 弘前大学教育学部教授 北原 啓司
 副査 長岡工業高等専門学校助教授 宮腰 和弘

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論文目次
1章 序論
 1.1 地方都市の市街地拡大と公共交通体系の変化に対する問題意識 p.1
 1.2 本研究の目的 p.3
 1.3 本研究の対象 p.4
 1.4 既往研究の整理 p.7
 1.5 研究の構成 p.9

2章 市街地拡大実態と人口分布の変化から見た地方都市圏での都市構造の変化
 2.1 地方都市圏の市街地拡大実態 p.11
 2.1.1 市街地拡大の全国的傾向
 2.1.2 市街地拡大の都市圏別傾向
 2.1.3 46都市圏での市街地拡大状況と6都市圏が占める位置
 2.2 市街地の空間的拡がりの変化 p.17
 2.3 人口分布・都市活動分布変化 p.34
 2.3.1 地域メッシュ統計データ
 2.3.2 指標について
 2.3.3 各都市圏での土地利用属性別人口・昼間人口増減に見る都市構造の変化
 2.4 まとめ p.69

3章 地方都市圏での公共交通体系を巡る動き
 3.1 地方都市圏での新駅設置・路線廃止の実態 p.71
 3.1.1 新駅設置状況
 3.1.2 路線廃止実態
 3.2 新駅設置の傾向と設置による効果 p.74
 3.2.1 新駅の属性
 3.2.2 都市圏別新駅設置状況と都市内での位置づけ
 3.3 路線廃止による公共交通体系の縮小 p.78
 3.4 バス路線網を考慮した公共交通体系 p.79
 3.5 まとめ p.87

4章 都市構造と公共交通体系の空間的関係の変化
 4.1 都市構造と公共交通体系の関係を検証するための手法の整理 p.88
 4.1.1 公共交通体系と市街地の空間的関係の考え方
 4.1.2 公共交通サービス圏域の考え方
 4.2 公共交通施策によるサービス圏域の変化 p.90
 4.2.1 新駅設置によるサービス圏域の拡大
 4.2.2 路線廃止によるサービス圏域の縮小
 4.2.3 各都市の上位計画に見る都市構造形成に対する公共交通体系の位置づけ
 4.3 まとめ p.102

5章 公共交通の整備が市街地の変化に与える影響
 5.1 市街地拡大の経緯と公共交通体系の関係 p.103
 5.1.1 都市構造の変化による公共交通体系との空間的関係の変化
 5.1.2 公共交通体系の変化による都市構造との空間的関係の変化
 5.2 全国の新駅における新潟都市圏4新駅の位置づけ p.107
 5.3 新駅設置地区での市街地形成の特性 p.108
 5.3.1 新潟都市圏4新駅周辺地区の概要
 5.3.2 建物棟数に着目した各地区の市街化動向
 5.3.3 建物用途に着目した各地区の市街地特性
 5.3.4 TOD的観点から検証した各地区の市街地構造
 5.4 新駅設置と市街地形成の背景 p.134
 5.4.1 新駅設置の経緯と上位計画に着目した市街化の背景
 5.4.2 市街地形成を巡る各主体の意向と行動
 5.5 地区立地条件の相違による居住者行動への影響 p.136
 5.5.1 調査対象地区の概要と調査内容
 5.5.2 居住者の属性
 5.5.3 沿線/非沿線地域での住宅取得行動
 5.5.4 地区特性と交通行動
 5.5.5 居住者行動から見た公共交通沿線での市街化の意義
 5.6 まとめ p.148

6章 公共交通体系を指向した都市構造形成に向けた問題点と計画論
 6.1 本研究での知見のまとめ p.150
 6.2 地方都市圏での都市構造と公共交通の関係の変化から見た問題点 p.152
 6.3 公共交通体系を指向した市街地形成へ向けて p.153

地方都市圏では、中心市街地の空洞化や郊外部でのスプロール的な土地利用の進行など、様々な問題が顕在化している。これらの背景としてこれまで一貫して続いてきた市街地拡大がある。このような趨勢に対し、「持続可能な都市」のあり方の一つとして「コンパクト・シティ」を目指した動きも脚光を浴びている。実際の都市構造を考える上で、既存の公共交通体系、とりわけ鉄道網の沿線を指向した市街地展開が一つの方策となりうるであろう。
 本研究では、これまでの都市構造と公共交通体系の空間的な拡がりの変化を把握した上で、双方の空間的な関係の変化を検証した。また、新駅周辺地区に焦点を当て、公共交通沿線市街地の変容を検証した。これらより、これまでの市街地拡大の問題点と、沿線を指向した都市構造へ向けた課題を考察した。
第1章では、地方都市圏の現状に対する問題意識を整理するとともに、本研究の目的を明らかにした。
第2章では、地方都市圏での市街地拡大を主とした都市構造の変化の状況を明らかにした。まず、全国46地方都市圏を対象にDID・市街化区域を指標として、1970年以降の市街地拡大状況を量的に明らかにした。また、南東北~北陸の6都市圏を対象に市街地拡大状況を空間的に追跡し、その特徴や傾向を明らかにするとともに常住人口・昼間人口分布の変化を、地域メッシュ統計を用いて空間的に示した。その結果、いずれの都市圏も人口密度の低下を伴った市街地拡大が進んだことが明らかとなった。また、当初DIDと市街化区域面積には大きな開きがあったが、殆どの都市圏でその開きが縮小している。加えて、6都市圏を対象にDID拡大状況を空間的に見ると、市街化区域の拡がりを反映しつつ各方向へ拡大している。このことから、DIDの拡がりは市街化区域の設定に大きく左右され、その内部を充填してきたことが明らかとなった。人口分布も市街地拡大を反映した変化を示し、市街地外縁部での増加と既成市街地での大幅な密度低下が見られる。したがって、地方都市圏の都市構造は市街地拡大に伴い既成市街地の中心性を低下させながら、拡散化の傾向にあることが明らかとなった。
 第3章では、鉄道網を中心とした公共交通体系の変化を把握している。公共交通拡充施策として新駅設置に、公共交通縮小施策として路線廃止に着目した。新駅設置は全国地方都市圏で数多く行われ、設置数の多寡はあるものの多くの都市圏で事例がみられるが、路線の廃止も同様に数多く行われている。したがって、地方都市圏では新駅設置による鉄道サービス圏域の拡大が予想される一方、新線建設を大きく上回るペースで進行した路線廃止による縮小も大きいと考えられる。このことから、地方都市圏では公共交通サービス圏域が移動しながら、総体としては縮小してきたことが推察される。また、6都市圏を例として鉄道網とバス路線網によって構成される都市圏内の公共交通体系を見ると、バス路線網は母都市を中心とした密度の高い路線網があるものの、利便性の高い区間は限られており、そのサービス圏域は限定的である。
 第4章では、2,3章で明らかになった都市構造と公共交通体系の変化を基に、双方の空間的な関係を検証した。6都市圏を対象として、鉄道サービス圏域による市街地のカバー状況、または人口のカバー状況の変化に着目し、その変化に対する新駅設置や路線廃止、市街地拡大の影響を検証した。この結果、鉄道によってカバーされない範囲への市街地拡大が大きく、新駅設置によるサービス圏域の拡大があるものの、都市構造は公共交通体系とは結びつきを弱める形態に変化してきた状況が明らかとなった。また、人口のカバー状況を見ると、サービス圏域外での人口増加も大きく、昼間人口についてはそれが顕著であった。また、廃止路線沿線でも廃止後の人口増加が見られ、2章で確認した都市構造の拡散化は沿線、非沿線を問わず進行してきたことが明らかとなった。
 第5章では、新駅周辺地区の市街地変容と居住者の行動を検証した。まず、新潟都市圏を例に新駅設置による公共交通サービス圏域の拡大と市街地の拡がりを整理した上で、4新駅周辺地区での市街地の物的な変化をTODの概念に基づいて検証し、市街地形成の背景を市街化に関与する各主体の行動から明らかにした。また、駅周辺市街地・幹線道路沿道市街地それぞれの居住者の行動から、公共交通沿線での市街化と居住者行動の関連を探る。4新駅周辺地区では住居系を主とした建物の立地が都市圏の平均を上回るペースで進み、鉄道サービス圏域への人口集積を促進している状況が明らかとなった。しかし、市街地の構造は必ずしもTODの概念を具現化した、駅を中心とした形態にはなっていない。この背景として、新駅設置の過程で地区の土地利用を並行して検討していないこと、また、上位計画での位置づけが無いままに設置されたことなどが挙げられる。また、居住者の行動からは、住宅取得に際して価格や面積の観点から取得先を選択する傾向が強い中、公共交通の利便性を求める層も存在し、加えて、駅周辺居住者は目的地が沿線であれば公共交通利用を選択している実態が明らかとなった。
第6章では、ここまでの知見と明らかになった問題点を整理し、公共交通体系を指向した都市構造の実現に向けた考察を行った

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