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通電加熱を利用したZnO結晶の新規作製手法に関する研究

氏名 湊 賢一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第339号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 通電加熱を利用したZnO結晶の新規作製手法に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 高田 雅介
 副査 教授 打木 久雄
 副査 助教授 安井 寛治
 副査 助教授 石黒 孝
 副査 講師 木村 宗弘

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目次

第1章 緒言 p.1

 1-1 研究の背景 p.1
 1-1-1 はじめに p.1
 1-1-2 ZnOの基本物性 p.2
 1-1-3 最近のZnO研究状況 p.4
 1-2 結晶成長 p.8
 1-2-1 結晶成長の代表例 p.8
 1-2-2 通電加熱法によるZnOの結晶成長 p.8
 1-3 テルミット反応 p.11
 1-4 本論文の目的と構成 p.13
 参考文献 p.14

第2章 通電加熱とテルミット反応を利用したZnO結晶群の成長制御 p.16

 2-1 実験方法 p.16
 2-1-1 試料の作製 p.16
 2-1-2 通電方法 p.18
 2-1-3 通電時の試料表面温度の測定 p.20
 2-1-4 結晶群成長のその場(in-situ)観察 p.22
 2-1-5 結晶群表面の結晶形態 p.22
 2-1-6 結晶集合体のX線回折パターン p.22
 2-1-7 結晶群の成長条件 p.22
 2-1-8 結晶群の元素分析 p.23
 2-2 結果と考察 p.25
 2-2-1 通電時の試料表面温度 p.25
 2-2-2 結晶群成長のその場(in-situ)観察 p.28
 2-2-3 結晶集合体のX線回折パターン p.30
 2-2-4 ZnO結晶群の成長速度 p.31
 2-2-5 結晶群の成長に与える通電時の電流値 p.33
 2-2-6 結晶群の成長に与える雰囲気の酸素分圧 p.35
 2-2-7 ZnO結晶群の元素分析 p.40
 2-2-8 結晶群の成長メカニズム p.44
 2-3 まとめ p.45
 参考文献 p.46

第3章 ZnO結晶集合体の成長条件と発光特性の相関 p.47

 3-1 実験方法 p.47
 3-1-1 室温でのフォトルミネッセンス(PL)測定 p.47
 3-1-2 結晶集合体のPLの温度依存性 p.47
 3-2 結果と考察 p.49
 3-2-1 PLにおける通電時の電流値の影響 p.49
 3-2-2 PLにおける雰囲気の酸素分圧の影響 p.56
 3-2-3 ZnO結晶集合体のPL温度依存性 p.59
 3-2-4 ZnO結晶集合体における紫外発光増大・緑色発光抑制への指針 p.62
 3-3 まとめ p.66
 参考文献 p.67

第4章 通電加熱法によりAu表面に成長するZnOの結晶形態と発光特性 p.68

 4-1 実験方法 p.68
 4-1-1 通電方法 p.68
 4-1-2 結晶のその場(in-situ)観察 p.69
 4-1-3 Au表面に成長するZnOの結晶形態の評価 p.69
 4-1-4 結晶形態と発光特性に与える雰囲気の酸素分圧 p.69
 4-1-5 結晶形態と発光特性に与える原料セラミックスの密度の影響 p.69
 4-2 結果と考察 p.72
 4-2-1 ZnO結晶とその場(in-situ)観察 p.72
 4-2-2 結晶形態と発光特性に与える雰囲気の酸素分圧の影響 p.74
 4-2-3 Au表面に成長した結晶の元素分析 p.82
 4-2-4 結晶状態と発光特性に与える原料セラミックスの密度の影響 p.86
 4-2-5 結晶成長機構の考察 p.92
 4-3 まとめ p.97
 参考文献 p.98

第5章 総括 p.99

謝辞 p.102

業績一覧 p.103

 酸化亜鉛(ZnO)はウルツ鉱型の結晶構造を有する半導体であり3.37 eVの直接遷移型のバンドギャップを持つ化合物である。これまでに、粒界に添加物を加えたZnOセラミックスはバリスタ素子として、また、ZnO粉末は緑色の蛍光体として利用されている。近年では、その広いバンドギャップを利用して透明導電膜や紫外レーザー材料として注目され、紫外発光の高効率化を目指した様々な結晶作製法が研究されている。そのようにZnOの結晶形態を高度に制御することができれば、従来の機能物性の高度化の実現、さらには新規機能物性が発現する可能性がある。本研究グループは、ZnOセラミックスを通電加熱した場合に、その表面にZnO結晶が成長する現象を見出し、通電加熱法と命名した。筆者は、通電加熱法を利用したZnO結晶の新規作製法の研究を進め、種々の条件を制御することにより多種多様なZnO結晶を作製することに成功した。本論文では通電加熱法を利用したZnO結晶の新規作製法の確立を目的とした。
第1章「緒言」では、ZnOを取り扱った近年の研究動向について説明した。次に、本研究で扱う通電加熱法について説明した。最後に本論文の目的と構成を述べた。
第2章「通電加熱とテルミット反応を利用したZnO結晶集合体の成長制御」では、Alの酸化反応であるテルミット反応と通電加熱を併用することによって成長するZnO結晶集合体の形態と成長条件に関して調査した。ZnOセラミックス線材にAl粉末を堆積させ、空気中で通電加熱すると、Alが線材からのジュール熱によって加熱される。Alが融点付近まで加熱されると、テルミット反応が発生する。そのとき、反応部分から極めて大きな成長速度を有するZnO結晶集合体が成長することがわかった。結晶集合体表面には根本から中央部分で樹枝状や板状の結晶が優先的に成長し、先端ではウィスカが数多く成長する傾向が得られた。結晶集合体の成長条件について、通電時の電流値と雰囲気の酸素分圧を成長パラメーターとして調査した。電流値は空気中において70 ~ 100 A/cm2の範囲で結晶集合体が成長した。雰囲気の酸素分圧は電流値70 A/cm2において9 ~ 30 kPaの範囲で成長した。また、酸素分圧の変化によって結晶集合体の長さが変化し、20 kPaで最大となった。これは、雰囲気の酸素分圧の違いによって、Alが酸化される速度が異なるためではないかと考えられる。
 第3章「ZnO結晶集合体の成長条件と発光特性の相関」では、第2章で得られた成長条件に関する知見をもとに作製したZnO結晶集合体の発光特性を評価した。フォトルミネッセンス測定の結果、空気中で電流値70 A/cm2で成長した結晶集合体の根本部分ではZnO固有の欠陥に起因する緑色発光が支配的であった。結晶集合体の中央部分から先端部分に移るにつれて、ZnOのバンド端に起因する紫外発光が支配的となる傾向が得られた。通電時の電流値を低くするほど、結晶集合体表面において紫外発光が支配的な部分が増加することがわかった。また、結晶集合体の長さが長いほど、紫外発光が支配的な部分が増加する傾向が得られた。低温でのフォトルミネッセンス測定から、バンド端に起因する紫外発光は励起子が関与した発光であることがわかった。従って、優れた結晶性を有する結晶を得るためには、低温での結晶作製が有効であることが示唆された。そこで、成長雰囲気に熱伝導率の高いガスを導入し、結晶集合体の作製を試みた。その結果、どの部分においても紫外発光が支配的な結晶集合体の作製に成功した。

 第4章「通電加熱法によりAu表面に成長するZnO結晶の結晶形態と発光特性」では、Auを担持したZnOセラミックス線材を通電加熱することにより、Au表面に成長したZnO結晶の形態と発光特性の評価を行った。成長雰囲気の酸素分圧、原料セラミックスの密度を成長パラメーターとして、結晶成長を試みた。空気中においてAu表面に成長した樹枝状結晶は、VLS(Vapor-Liquid-Solid)成長を示唆する先端が球のZnOウィスカによって形成されていた。このウィスカのサイズは先端部分の球の直径が1 μm、幹の部分が0.5 μm、長さが平均で7 μmであった。Ar雰囲気中では、Au表面に六角錐状の結晶が多数成長した。また、六角錐の先端部分から直径が0.1 μm、長さが数十~数百 μmのウィスカが底面に垂直に成長していた。それぞれの結晶についてカソードルミネッセンス測定を行った結果、空気中で得られた結晶からは、強い緑色発光と弱い紫外発光が観測された。Ar中において成長した結晶からは、紫外発光のみが観測された。この発光の違いは、結晶の形態の違いに起因しているのではないかと考えられる。原料セラミックスの密度が低いほど、空気中において得られる結晶の直径が減少することがわかった。高密度線材を使用した場合には、成長する結晶は緑色発光が支配的であったのに対し、低密度線材を用いることによって、紫外発光が支配的になることわかった。この発光の違いは、結晶の直径が異なることによって、結晶内に含まれる欠陥量が変化したことが原因ではないかと考えられる。
 第5章「総括」では、以上の各章で得た結果を総括し、本論文の結論とした。

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