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モノビニルアセチレンを基盤とする新規機能性高分子材料開発に関する研究

氏名 砂田 潔
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第337号
学位授与の日付 平成17年3月25日
学位論文題目 モノビニルアセチレンを基盤とする新規機能性高分子材料開発に関する研究
論文審査委員
 主査 助教授 竹中 克彦
 副査 教授 塩見 友雄
 副査 教授 西口 郁三
 副査 教授 五十野 善信
 副査 助教授 河原 成元
 副査 助教授 前川 博史

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目次

第1章 総合序論

 1-1 MVAの利用の研究の重要性 p.1
 1-2 MVAの利用に関する研究 p.5
 1-2-1 MVAの合成に関する研究
 1-2-2 MVA誘導体に関する研究
 1-3 ゾル-ゲル法によるシリカ複合化に関する研究 p.6
 1-4 エンイン類の重合に関する研究 p.8
 1-4-1 MVAの重合に関する研究
 1-4-2 MVA誘導体の重合に関する研究
 1-4-3 保護基を用いたMVAの重合に関する研究
 1-4-4 TMSVAの重合に関する研究
 1-5 有機ケイ素ポリマーのSiC系繊維への応用 p.12
 1-6 本研究の目的と概要 p.16
 1-7 参考文献 p.17

第2章 トリエトキシル基を有する変性SBRを用いたゾル-ゲル法による複合化SBRの合成とその評価

 2-1 緒言 p.20
 2-2 実験 p.21
 2-2-1 試薬
 2-2-2 アルコキシシリル化ブタジエンの合成
 2-2-3 Si-SBRラテックスの作製
 2-2-4 シリカ複合化SBRの作製
 2-2-5 シリカ含有率の測定
 2-2-6 走査型電子顕微鏡(SEM)観察
 2-2-7 ロール配合
 2-2-8 加硫
 2-2-9 物性評価
 2-3 結果及び考察 p.27
 2-3-1 塩化2-(1,3-ブタジエニル)マグネシウム濃度の測定
 2-3-2 Si-SBRラテックスの作製
 2-3-3 シリカ複合化SBRの作製
 2-3-4 加硫
 2-3-5 シリカ複合化SBRの機械的物性
 2-4 まとめ p.36
 2-5 参考文献 p.37

第3章 トリエトキシシリル基を有する変性CRを用いたゾル-ゲル法によるシリカ複合化CRの合成とその評価

 3-1 緒言 p.39
 3-2 実験 p.39
 3-2-1 試薬
 3-2-2 共重合反応性比の計算
 3-2-3 Si-CRラテックスの作製
 3-2-4 シリカ複合化CRの作製
 3-2-5 シリカ含有率測定
 3-2-6 走査型電子顕微鏡(SEM)観察
 3-2-7 ロール配合
 3-2-8 加硫
 3-2-9 加硫ゴムの物性評価
 3-3 結果及び考察 p.46
 3-3-1 共重合反応性比
 3-3-2 Si-CRラテックスの作製
 3-3-3 シリカ含有率の測定
 3-3-4 シリカの観察
 3-3-5 加硫
 3-3-6 機械的特性に対するシリカ含有率の効果
 3-3-7 機械的特性に対するゾル-ゲル法の効果
 3-3-8 機械的特性に対するSi-CRの添加効果
 3-3-9 動的特性
 3-3-10 カーボンブラックの配合効果
 3-4 まとめ p.57
 3-5 参考文献 p.58

第4章 変性CRとゾル-ゲル法を利用したCR溶剤型接着剤の調製及びその接着性能評価

 4-1 緒言 p.59
 4-2 実験 p.59
 4-2-1 試薬
 4-2-2 未変性CRラテックスの特性化
 4-2-3 シリカ複合CRの作製
 4-2-4 シリカ含有率の測定
 4-2-5 走査型電子顕微鏡(SEM)観察
 4-2-6 CR溶剤型接着剤の調製
 4-2-7 接着性能評価
 4-3 結果及び考察 p.66
 4-3-1 未変性CRの特性化
 4-3-2 シリカ含有率の測定
 4-3-3 シリカの観察
 4-3-4 接着性能
 4-4 まとめ p.75
 4-5 参考文献 p.75

第5章 4-トリメチルシリル-1-ブテン-3-インの重合及びそのポリマーの構造解析

 5-1 緒言 p.76
 5-2 実験 p.77
 5-2-1 試薬
 5-2-2 TMSVAの合成
 5-2-3 TMSVAのラジカル重合
 5-2-4 TMSVAのアニオン重合
 5-2-5 トリメチルシリル基の脱保護
 5-2-6 特性化
 5-3 結果及び考察 p.82
 5-3-1 TMSVAの合成
 5-3-2 TMSVAのラジカル重合
 5-3-3 TMSVAのアニオン重合
 5-3-4 ラジカル重合で合成したPTMSVAのミクロ構造
 5-3-5 THF中でのアニオン重合で合成したPTMSVAのミクロ構造
 5-3-6 ヘプタン中でのアニオン重合で合成したPTMSVAのミクロ構造
 5-3-7 脱保護反応を利用したミクロ構造解析
 5-4 まとめ p.100
 5-5 参考文献 p.100

第6章 ポリ(4-ジメチルシリル-1-ブテン-3-イン)を用いたSiC系繊維の合成

 6-1 緒言 p.101
 6-2 実験 p.102
 6-2-1 試薬
 6-2-2 DMSVAの合成
 6-2-3 前駆体ポリマーの調製
 6-2-4 前駆体ポリマーの分析
 6-2-5 前駆体ポリマーの分解生成ガスの分析
 6-2-6 SiC系繊維の調製
 6-2-7 SiC系繊維の分析
 6-3 結果及び考察 p.107
 6-3-1 前駆体ポリマーの分析
 6-3-2 前駆体ポリマーの分解生成ガスの分析
 6-3-3 前駆体ポリマーの溶融紡糸
 6-3-4 加熱酸化処理による前駆体繊維の不融化
 6-3-5 UV照射処理による前駆体繊維の不融化
 6-3-6 不融化繊維の焼成
 6-3-7 SiC系繊維の特性化
 6-4 まとめ p.122
 6-5 参考文献 p.123

第7章 総括 p.124

謝辞 p.127
発表履歴 p.128

 現在、モノビニルアセチレン(MVA)はアセチレン法クロロプレンの製造プロセスにおいてアセチレンの二量化によって生産されている。ところが、自動車部品などの一部の用途ではクロロプレンゴム(CR)から他素材への転換が検討され始めており、CRの世界需要は緩やかな減少傾向にある。このような時代背景から、アセチレン法で操業するCRメーカーではMVAの新たな用途を探索する必要性が出てきている。また、MVAは分子内に二重結合と三重結合を有する構造を有するので、その誘導体から分子内に多くの不飽和結合を有するポリマーが合成できる。従って、MVAを原料に用いれば、新規な機能性ポリマーが開発できる可能性がある。以上のような理由から、本研究ではMVAを出発原料として、いくつかの高分子材料の合成と応用を検討した。
 まず、MVA誘導体である4-メチレン-5-ヘキセニルトリエトキシシランの共重合体を高分子シランカップリング剤として利用して、シリカ複合化SBRの特性を向上させることを検討した。まず部分的にエトキシシリル基を導入したSBRラテックス(Si-SBR)を合成した後、これを汎用SBRラテックス及びテトラエトキシシランとブレンドし、ラテックス中におけるゾル-ゲル反応によってシリカ複合化SBRを作製した。この複合材料中には、最小で約50nmのシリカ粒子がゴムマトリックス中に均一分散していることがわかった。シリカ粒子径はTEOS添加量が増加するに従って小さくなった。機械的特性を評価した結果、Si-SBRをブレンドすることによって、引張応力,引張強さ,切断時伸びなどの向上することが明らかになった。
 続いて、SBRについて有効性が明らかとなったエトキシシリル基含有ポリマーを利用するシリカ複合化技術をCRに応用することを検討した。トリエトキシシリル基を有する変性CR(Si-CR)と非変性CRラテックスの存在下、テトラエトキシシラン(TEOS)のゾル-ゲル反応を進行させて、シリカ複合化CRを合成した。シリカ複合化CR中のシリカ粒子径は0.1~0.6μm であり、それはシリカ含有率が増加するに従って大きくなることがわかった。ゾル-ゲル法で作製した加硫物は、従来の混錬法で作製したものよりも、引張応力、弾性率及び硬さが高く、引張強さと切断時伸びが低かった。さらに、Si-CRを添加することによって、引張応力、弾性率、引裂強さ及び硬さの向上が認められた。更にこのシリカ複合化CRを溶剤型接着剤へ応用することも検討した。シリカ複合化CRを酸化防止剤、金属酸化物、粘着付与樹脂と共にトルエンに溶解することによって、溶剤型接着剤を調製することができた。この接着剤の初期接着力、耐熱接着力及び接着剤層の軟化点は、従来の混練法でシリカを配合した接着剤よりも優れていた。さらに、それらの接着性能は、シリカ含有率とSi-CR含有率が増加するに従って向上することがわかった。ゾル-ゲル法とSi-CRを併用することで、加硫物及び溶剤型接着剤のどちらにおいても補強性に優れる新規なシリカ複合化CRが製造できることが証明された。
 上記の研究はSBR及びCRという既存素材の改良が目的であるが、新規なポリマー材料の開発を目的とする研究も行った。MVA誘導体である4-トリメチルシリル-1-ブテン-3-イン(TMSVA)を合成し、種々の条件でラジカル重合及びアニオン重合を行った場合の重合挙動と得られるポリマーのミクロ構造について検討した。TMSVAのラジカル重合または極性溶媒のTHF中のアニオン重合では、ビニル重合のみが進行することを示した。一方、非極性溶媒のヘプタン中のアニオン重合では、1,2-構造以外の構造が含まれていることがわかり、異種構造の詳細をトリメチルシリル基の脱保護反応を利用して検証した。PTMSVAの脱保護反応によってポリ(1-ブテン-3-イン)(PMVA)を合成し、それのNMR解析とSEC解析を行った。その結果、ヘプタン中のアニオン重合では、1,4-構造と、主鎖にケイ素が導入された構造が生成することが明らかになった。
 最後に、PTMSVAとポリ(4-ジメチルシリル-1-ブテン-3-イン)(PDMSVA)のセラミックス前駆体としての可能性を検証した。PTMSVAは不融化出来ずSiC繊維を合成することが出来なかった。一方PDMSVAでは、直径約30~150μmのSiC系繊維を合成することに成功した。PDMSVAはSiC系繊維の前駆体として利用できる可能性があることを示した。

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