Time-Dependent and Non-Steady-State Deformation Analysis for Constraint Structure among Clusters in Amorphous Carbon and Related Films(アモルファス炭素系膜におけるクラスター間束縛構造の時間依存型比定常変形解析)
氏名 田中 大祐
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第205号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文の題目 Time-Dependent and Non-Steady-State Deformation Analysis for Constraint Structure among Clusters in Amorphous Carbon and Related Films(アモルファス炭素系膜におけるクラスター間束縛構造の時間依存型非定常変形解析)
論文審査委員
主査 教授 植松 敬三
副査 助教授 斎藤 秀俊
副査 教授 八井 浄
副査 教授 五十野 善信
副査 教授 小松 高行
副査 助教授 伊藤 治彦
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Table of contents p.ii
List of publications p.iv
List of meetings p.v
List of figures p.viii
Acknowledgements p.xiii
Chapter 1. General Introduction p.1
1-1 Overview p.1
1-2 Literature survey p.3
1-2-1 a-C films p.3
1-2-2 a-C:H films p.5
1-2-3 a-C:N films p.6
1-2-4 a-C:N:H films p.7
1-2-5 a-C:(the other elements)films p.8
1-3 Statement of problem p.9
1-3-1 Structural analysis of amorphous carbon and related films p.9
1-3-2 Objectives of this study p.11
1-3-3 Outline of the thesis p.12
References p.14
Chapter 2. Indentation creep of nitrogen-containing carbon films p.15
2-1 Introduction p.16
2-2 Experimental procedure p.16
2-3 Results and Discussion p.18
2-4 Summary p.23
References p.24
Chapter 3. Time-dependent deformation behavior of amorphous nitrogen-containing carbon films p.25
3-1 Introduction p.26
3-2 Experimental procedure p.27
3-2-1 Sample preparation and characterization p.27
3-2-2 Indentation experiments p.28
3-3 Results p.29
3-4 Analysis p.35
3-5 Discussion p.38
3-6 Summary p.40
References p.41
Chapter 4. Nano-indentation for structural analysis of hydrogen- and nitrogen-containing carbon films p.42
4-1 Introduction p.43
4-2 Experimental procedure p.45
4-2-1 Sample preparation p.45
4-2-2 Characterizations p.45
4-2-3 Nanoindentation tests p.46
4-3 Results p.47
4-3-1 Spectroscopic analysis p.47
4-3-1-1 DLC:H p.47
4-3-1-2 DLC:N:H p.51
4-3-2 Mechanical properties p.57
4-4 Discussion p.63
4-4-1 Fundamental structure of DLC:H and DLC:N:H films p.63
4-4-2 Structural changes for thermal annealing p.64
4-4-2-1 DLC:H p.64
4-4-2-2 DLC:N:H p.64
4-5 Conclusions p.65
References p.67
Chapter 5. Synthesis of amorphous carbon nitride films using dissociative excitation reaction p.69
5-1 Introduction p.70
5-2 Experimental procedure p.72
5-3 Results and discussion p.74
5-3-1 Mechanical properties p.74
5-3-2 XPS analysis p.78
5-3-3 FTIR analysis p.81
5-3-4 Raman Scattering analysis p.82
5-4 Summary p.84
References p.85
Chapter 6. Hardness and structure of a-CNx films synthesized by chemical vapor deposition p.86
6-1 Introduction p.87
6-2 Experimental procedure p.89
6-2-1 Sample preparation p.89
6-2-2 Characterization p.90
6-2-3 Nanoindentation tests p.90
6-3 Results p.91
6-3-1 Mechanical properties p.91
6-3-2 Spectroscopic analysis p.96
6-4 Discussion p.99
6-5 Summary p.101
References p.102
Chapter 7. General Conclusions p.104
アモルファス炭素系膜の機械特性は主にクラスター間構造に支配される。このことは、機械特性を支配するこのような構造を改質することにより、アモルファス炭素系膜のさらなる機械特性の向上が可能であることを示している。特に炭素以外の元素をドープしたアモルファス炭素膜は機械的に硬くも軟らかくもなる。これは炭素以外の元素がクラスター間構造に強く寄与していることを示唆している。本研究ではこのクラスター間構造を直接評価できるように新しくナノインデンテーション手法を用いた押込みクリープ解析法を提案する。
本法によってアモルファス炭素系膜の時間依存型非定常変形過程を調査した。さらに時間依存型非定常変形過程の解析から算出された流動性と分光学的なアモルファス微細構造の関係からクラスター間構造を議論し、硬質アモルファス窒化炭素(a-CNx)膜の材料設計を行った。その結果を以下に示す7章からなる論文にまとめた。
第1章「Genaral introduction」では、アモルファス炭素系膜に関するこれまでの研究をまとめ、問題点を明らかにし、本研究の背景、目的及び本論文の構成を示した。
第2章「Indentation creep of nitrogen-containing carbon films」では押込みクリープ試験に供した軟質窒素含有炭素膜に時間依存型非定常の変形挙動が確認された。この変形挙動から負荷応力と歪速度に関する構成方程式を用いて歪速度敏感乗数m値と平衡粘度k値を算出した。とりわけm値の変化は膜の微細構造変化に敏感であることがわかった。
第3章「Time-dependent deformation behavior of amorphous nitrogen-containing carbon films」では硬質窒素含有炭素膜の時間依存型非定常の変形挙動も確認された。m値は炭素骨格構造中の=C=N-Hや-C≡Nのような終端結合構造の変化に敏感であることがわかった。
第4章「Nano-indentation for structural analysis of hydrogen- and nitrogen-containing amorphous carbon films」では水素化ダイヤモンド様炭素(DLC:H)膜と窒素を[N]/([N]+[C])=0.08程度含むDLC:N:H膜のクラスター間構造を積極的に変化させて時間依存型非定常変形を評価した。時間依存型非定常変形解析から得られた流動の変化はクラスター間の束縛構造の変化を示していることがわかった。得られた知見を利用してクラスター間束縛構造はクラスターの終端に窒素が参加することにより自由度がより大きくなることがわかった。
次に窒素含有量の多いアモルファス窒化炭素膜(a-CNx)の構造を第5章「Synthesis of amorphous carbon nitride films using dissociative excitation reaction」で提案した。CH3CN+Arより化学気相析出(CVD)法を用いて作製した試料はa-CNx:H(x=0.02-0.17)あるいはa-C:N:Hで一般的な軟質a-C:H膜より軟らかい膜であることがわかった。膜中には第一アミンや脂肪族CH及ぴニトリルなどの終端構造を多く有する。そのために一次元直鎖構造に近似できる高い流動性を有することがわかった。一方BrCN+Arから作製された膜はa-CNx(x=0.25-0.30)で一般的な軟質a-C:H膜よりわずかに硬いことがわかった。膜中に窒素と炭素からなるMROクラスターを有する。三次元的にも連続構造を有するためにaーCNx:H(x=0.02-0.17)より流動性が乏しくなる。CVD法で硬質a-CNx膜を得るためには、水素を完全に排除した原料系を選択し、終端構造を作らない必要がある。
第6章「Hardness and structure of a-CNx films synthesized by chemical vapor deposition」では第5章で提案された硬質化の基本条件にしたがい膜の硬質化を行った。水素による終端の少ないaーCNx膜のCVD過程にイオン衝撃を導入して得られた膜の機械特性と構造を評価した。イオン衝撃の増加に伴い膜の硬さ値、ヤング率、弾性回復率すべてにおいて増加した。またクラスター間のクリープ流動が小さくなった。膜の構造を赤外吸収スペクトルで解析したところイオン衝撃の増加によって新たに芳香族アミンに帰属されるC-N結合が表れた。以上のことは窒化炭素クラスターの内部及び外部構造が二次元連続から三次元連続に変化したことを示す。このようなa-CNx構造は窒素を含有したDLCのそれと明確に区別することができる。
第7章「General Conclusion」では、各章の結果をもとに検討し、本研究の目的に対して次の結論を得た。時間依存型非定常変形解析はアモルファス炭素系膜の構造解析に適することがわかった。この手法によりアモルファス炭素系膜の微細構造を理解し、硬質a-CNx膜の材料設計を行うことが可能になった。