マルチレベル符号化変調系の特性解析に関する研究
氏名 兼田 一幸
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第136号
学位授与の日付 平成11年6月16日
学位論文題目 マルチレベル符号化変調系の特性解析に関する研究
論文審査委員
主査 教授 荻原 春生
副査 教授 島田 正治
副査 教授 吉川 敏則
副査 助教授 太刀川 信一
副査 助教授 中川 健治
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第1章 序論 p.10
1.1 研究の背景 p.10
1.2 従来の特性評価方法の問題点 p.12
1.3 本研究の目的 p.13
1.4 本論文の概要 p.13
第2章 マルチレベル符号化法 p.16
2.1 符号化回路 p.16
2.2 多段階復号法 p.18
2.3 復号器の動作 p.19
2.4 符号化利得と誤り訂正能力の配分 p.20
第3章 基底帯域伝送におけるマルチレベル符号化の特性解析 p.22
3.1 ビット誤り率特性の評価式の導出方法 p.22
3.2 レベル1の中間判定後の誤り率 p.23
3.3 レベル2の中間判定後の誤り率 p.25
3.3.1 確率P1,P2の導出 p.27
3.4 レベル3の中間判定後の誤り率 p.31
3.4.1 確率P3,P4,P5,P6の導出 p.33
3.5 加入者線路でのインパルス性雑音モデル p.34
3.5.1 インパルス性雑音モデルの作成法 p.35
3.5.2 インパルス性雑音通信路の通信路容量[2,16] p.37
3.6 インパルス性雑音通信路とガウス雑音通信路に対する特性評価 p.40
3.7 まとめ p.45
第4章 レベル間にインタリーブを用いたマルチレベル符号化法 p.46
4.1 復号回路におけるバースト誤り p.46
4.2 レベル間にインタリーブを用いるマルチレベル符号化法 p.48
4.3 レベル間インタリーブを用いたマルチレベル符号化法の特性評価式の導出 p.50
4.3.1 導出手順 p.51
4.3.2 レベル1の中間判定の後の誤り率pI1の導出 p.51
4.3.3 レベル2の中間判定の後の誤り率pI2の導出 p.51
4.3.4 レベル3の中間判定の後の誤り率pI3の導出 p.54
4.4 インパルス性雑音とガウス雑音に対する特性評価 p.57
4.5 レベル間インタリーブによる効果 p.59
4.6 まとめ p.60
第5章 帯域伝送におけるマルチレベル符号化法の特性解析 p.61
5.1 帯域通信路に対する特性評価式の導出 p.62
5.1.1 特性評価式の導出方法の相違点と導出手順 p.62
5.1.2 確率 ppsk1の導出 p.62
5.1.3 確率 Ppsk1の導出 p.64
5.2 特性評価式の高速計算手法 p.66
5.3 帯域通信路のインパルス性雑音モデル p.69
5.4 インパルス性雑音通信路に対する特性評価 p.70
5.5 AWGN通信路に対する特性評価 p.75
5.6 まとめ p.75
第6章 フェージング通信路に対する特性解析 p.77
6.1 符号性能評価用システム p.78
6.2 提案システム通過後の雑音の確率密度関数 p.79
6.3 理想インタリーブ環境下における特性評価 p.80
6.4 有限インタリーブ環境下における提案評価法の適用限界の検討 p.83
6.5 遅延検波を用いた場合の特性評価 p.86
6.6 まとめ p.87
第7章 記憶のある通信路に対するマルチレベル符号化法の特性解析 p.89
7.1 マルコフモデル p.90
7.1.1 バースト的に発生するインパルス性雑音モデル p.90
7.1.2 フェージング通信路の誤り率特性の近似モデル p.91
7.2 マルコフモデルに対するマルチレベル符号化法の特性評価式の導出 p.91
7.2.1 レベル1の誤り発生確率 p.92
7.2.2 レベル2の誤り発生確率 p.93
7.2.3 確率ppsk1,stmと確率Ppskl,stmの導出 p.94
7.3 特性評価式の高速計算法 p.95
7.4 特性評価式の簡易計算法 p.96
7.5 バースト的に生じるインパルス性雑音通信路に対する特性解析 p.96
7.6 有限インタリーブ環境下におけるフェージング通信路に対する特性解析 p.98
7.6.1 符号性能の評価システム p.98
7.6.2 遺伝的アルゴリズムによるパラメータの最適化 p.99
7.6.3 マルコフモデルの近似特性 p.101
7.6.4 復号特性が一致する理由 p.102
7.6.5 特性評価 p.106
7.7 まとめ p.108
第8章 結論 p.110
付録A 基底帯域PAM伝送での誤り発生確率p0,P1,…,P6 p.120
付録B 通信路容量の計算方法 p.122
付録C 誤り率の評価方法について p.124
付録D 従属接続のインタリーブによるランダム特性の検討 p.125
付録E PSK変調での誤り発生確率ppsk1,Ppsk1,…,Ppsk6 p.127
付録F 提案システム通過後の雑音の確率密度関数の導出 p.128
付録G マルコフモデルに対するレベル3の誤りの発生確率 p.130
付録H 符号長の区間内の状態の数の発生確率 p.131
付録I 確率pb(0j1j+1),pb(1j,0j+1),pb(0j,0j+1)について p.133
付録J 各章のシミュレーションの方法 p.135
J.1 3章のシミュレーションの方法 p.136
J.1.1 符号化回路の動作 p.136
J.1.2 通信路上の雑音作成法 p.137
J.1.3 復号回路の動作 p.137
J.1.4 誤り率の計算法 p.140
J.2 4章のシミュレーションの方法 p.141
J.3 5章のシミュレーションの方法 p.141
J.3.1 PSK信号の発生法 p.141
J.3.2 帯域通信路の雑音 p.142
J.3.3 中間判定器の出力ビット p.143
J.3.4 厳密な誤り訂正の方法 p.143
J.4 6章のシミュレーションの方法 p.145
J.4.1 フェージングの発生方法 p.146
J.4.2 遅延検波 p.148
J.5 7章のシミュレーションの方法 p.148
付録K 発表論文一覧 p.150
変調法を考慮した誤り訂正符号化を行うことにより、同じ伝送速度を持つ無符号化の伝送方式に対して,伝送帯域と送信電力を増加させずに,誤り率特性を小さくすることができる符号化変調方式の一方式として,マルチレベル符号化法が提案されている.このマルチレベル符号化法は,従来,主にガウス雑音通信路に対して特性評価が行われ,その有効性が示されている.しかしながら,実際の通信路はそれ以外の通信路の場合が多い.ガウス雑音通信路以外でよく知られているものとして,インパルス性雑音通信路,フェージング通信路,記憶のある通信路がある.本研究では,これらの通信路に対してマルチレベル符号化法を適用して,その符号化特性を理論的に評価して,適した符号化方法を探索する.このために,マルチレベル符号化法の複合方式として多段階複合法を用いた場合の特性解析手法を提案し,この特性評価手法を用いてこれらの通信路に対して復号後の誤り率特性を求め,その誤り率特性を最小にする符号化方法を探索した.
2章では,すでに提案されているマルチレベル符号化法のシステム構成を示し,符号化回路,復号回路の動作を説明する.また,特性解析で用いる復号器の動作について説明する.
3章では,基底帯域伝送におけるマルチレベル符号化法の特性解析法を提案する.まず,基底帯域8値PAM伝送を行う場合のマルチレベル符号化法の特性評価式を,雑音の確率分布を基に構成する.次に,基底帯域伝送路の一つとして電話加入者線路を取り上げ,この線路で生じるインパルス性雑音モデルを実際の測定値に基づき作成する.次に,このインパルス性雑音モデルに対して導出した特性評価式を適用して復号後の誤り率特性を求め,その誤り率を最小にする最適な符号化法を探索する.また,比較のために,ガウス雑音に対してこの特性評価式を用いて誤り率特性を評価して適した符号化方法を探索する.この結果として,インパルス性雑音に対する符号化利得が,ガウス雑音通信路に対するそれより,大きく得られることを示す.
4章では,レベル間にインタリーブを用いたマルチレベル符号化法を提案し,この方式を用いた場合の特性解析手法を提案する.まず,この符号化法の復号方式として多段階復号法を用いると,通信路がランダム雑音通信路でも,この復号方式特有のバースト誤りが発生することを指摘する.このバースト誤りは,誤り訂正符号の効果を劣化させ,誤り率を大きくする.そこで,このバースト誤りを拡散して誤り訂正の効果を有効にするため,インタリーブをマルチレベル符号化法のレベル間に適用することを提案する.次に,この提案方式の特性評価式を導出する.そして,この評価式を用いて,先に作成したインパルス性雑音に対して復号後の誤り率特性を評価して,最適な符号化法を明らかにする.
5章では,無線通信路で生じるインパルス性雑音に対するマルチレベル符号化法の特性評価を行う.まず,すでに導出したマルチレベル符号化法の特性評価式を帯域伝送系に変更し,8相PSK変調を用いた場合の特性評価式を導出する.次に,この特性評価式を用いて,帯域通信路で生じるインパルス性雑音に対する誤り率特性を求め,最適な符号化法を探索する.なお,先に提案した,レベル間にインタリーブを用いる場合の特性評価式は,インタリーブにより遅延が大きくなるという問題があるので,これ以後では基本のマルチレベル符号化法を用いて特性を解析する.
6章では,フェージング通信路に対するマルチレベル符号化法の特性評価を行う.まず,前章で導出した特性評価式をレーリーフェージング伝送路に適用するため,理想的なインタリーブと仮想の自動利得制御をマルチレベル符号化法に適用することを提案する.このシステムを用いると,ガウス雑音を受けるフェージング通信路を通過した信号は,非ガウス雑音を受ける時不変な通信路からの信号と等価になる.そこで,この非ガウス雑音に対して,先に提案した特性評価式を用いて誤り率特性を求め,フェージング通信路に対し適した符号化を明らかにする.また,この提案評価方法の有限のインタリーブに対する適用限界を検討する.更に,遅延検波を用いた場合に対する,この提案評手法の有用性を示す.
7章では,記憶のある通信路に対する特性解析手法を提案する.まず,記憶のある通信路として連続生起する特徴をもつインパルス性雑音通信路とフェージング通信路を取り上げ,これらの通信路をマルコフモデルで近似する.次に,このマルコフモデルで表された通信路に対するマルチレベル符号化の特性評価式を導出する.そして,この導出した評価式を用いて,連続生起する特徴を持つインパルス性雑音通信路に対する特性評価を行い,適した符号化方法を探索する.また,この特性評価式を用いて,有限のインタリーブを用いるマルチレベル符号化法のフェージング通信路に対する特性を理論的に評価する.
最後に8章で,本研究の成果を総括する.