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Switching characteristics with PTC effect of poly (3-hexy 1thiophene) and its composites (ポリ(3-ヘキシルチオフェン)および そのコンポジットのPTCスイッチング特性)

氏名 劉 玉文
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第209号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文題目 Switching characteristics with PTC effect of poly (3-hexy 1thiophene) and its composites(ポリ(3-ヘキシルチオフェン)およびそのコンポジットのPTCスイッチング特性)

論文審査委員
 主査 教授 宮内 信之助
 副査 教授 鈴木 秀松
 副査 助教授 丸山 一典
 副査 助教授 下村 雅人
 副査 長岡工業高等専門学校教授 反町 嘉夫

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Chapter1 General introduction p.1

Chapter2 Synthesis and fractionation of poly(3-hexylthiophene) p.24
2.1 Introduction p.24
2.2 Experiment p.25
2.2.1 Materials p.25
2.2.2 Polymerization p.25
2.2.3 Fractionation p.26
2.2.4 Preparation of P3HT film p.28
2.2.5 Instruments p.28
2.3 Results and discussion p.29
2.3.1 Polymerization and dedoping of P3HT p.29
2.3.2 GPC pattern and molecular weight parameters p.34
2.3.3 Relationship between molecular weight and properties p.34
2.4 Conclusion p.44
2.5 References p.46

Chapter3 Temperature dependence of conductivity of P3HT cast films p.48
3.1 Introduction p.48
3.2 Experiment p.49
3.2.1 Preparation of P3HT cast films p.49
3.2.2 Instruments p.50
3.2.3 Measurement of conductivity-temperature characteristics p.50
3.3 Results and discussion p.53
3.3.1 Temperature dependence of the conductivity of P3HT p.53
3.3.2 Temperature dependence of IR spectrum p.55
3.3.3 Temperature dependence of UV-Vis spectrum p.60
3.4 Conclusion p.69
3.5 References p.70

Chapter4 PTC effect of the composites consisting of P3HT and conducting particles p.72
4.1 Introduction p.72
4.2 Experiment p.73
4.2.1 Materials p.73
4.2.2 Instruments p.74
4.2.3 Preparation of composites p.74
4.2.4 Measurement of conductivity p.75
4.3 Result and discussion p.77
4.3.1 The conductivity dependence of P3HT composites on the content of conducting particles p.77
4.3.2 Temperature dependence of conductivity of P3HT(Fraction A)composites p.79
4.3.3 Temperature dependence of conductivity of P3HT(Fraction E)-TiC p.86
4.3.4 Temperature dependence of conductivity of P3HT-TiC obtained from the in situ polymerization p.89
4.4 Conclusion p.92
4.5 References p.94

Chapter5 General conclusion p.96

Publication list p.100

Acknowledgement p.101

 ポリ(3-アルキルチオフェン)(P3AT)は有機溶媒への可溶性、良好な加工性および安定性を有する導電性高分子材料として注目され、様々な分野で応用されている。この材料は抵抗率が正の温度係数(positive temperature coefficient)特性(PTC特性)を示すが、このPTC特性およびその応用については詳細な検討がなされていない。P3ATのPTC特性の機構を解明し、この材料の性質を向上させることができれば新しい自己復帰型スイッチング素子として期待できる。このような背景から、本研究では、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を用いて、この材料のPTC特性およびそのメカニズムを明らかにした。また、P3HTと導電粒子とのコンポジットを作製し、導電粒子の種類および組成比とPTC特性の関係を検討した。
 本論文は5章により構成されており、各章の内容は次のとおりである。
 第1章「序論」では、導電性ポリマー、特に、ポリ(3-アルキルチオフェン)およびその応用について概説し、本研究課題の背景、目的および本論文の構成について論述した。
 第2章「ポリ(3-ヘキシルチオフェン)の合成と溶媒分別」では、P3HTのPTC特性を向上させるため、溶媒分別法により科学酸化重合法で得られたP3HTの分子量分別を検討した。その結果、分子量が異なり、かつ、分子量分布が比較的狭い7つのP3HTフラクションを得ることができた。これらのP3HTフラクションの1H NMR (nuclear magnetic resonance) およびUV-Vis (ultraviolet-visible)スペクトルに基づいて各フラクションのキャラクタリゼーションを行い、P3HTの導電率と分子量および分子のregioregularityとの関係を検討した。その結果、P3HTの導電率はP3HTの分子量に大きく依存することがわかった。さらに、分子量が高いほど、P3HT分子のregioregularityが高く、有効共役長が長いため、導電率は高くなることが明らかになった。
 第3章「ポリ(3-ヘキシルチオフェン)キャスト膜の導電率-温度依存性」では、導電率の温度依存性に基づいてP3HTのPTC特性を検討した。P3HTの導電率は、その融点付近で急激に減少することがわかり、P3HT膜がPTC特性を有することが確認できた。さらに、分子量が低いP3HTフラクションに比べ、分子量が高いP3HTフラクションは顕著なPTC特性と良好な再現性を有しており、P3HTの分子量分割がPTC特性の向上に有効であることが明らかになった。さらに、P3HT膜のPTC特性の機構を究明するため、温度変化に伴うP3HTキャスト膜のIR(infrared)およびUV-Visスペクトルの変化を追跡し、P3HT分子構造の変化とPTC特性との関連について調べた。その結果、PTC特性は温度変化によりP3HTの化学構造変化によるものでなく、P3HTのコンホーメーション変化によって生じた特性であることが明らかになった。すなわち、加熱することでP3HTのヘキシル側鎖の熱運動によって主鎖にねじれが生じ、有効共役長が短くなる。温度がP3HTの融点以上になると、P3HTの融解によって側鎖の熱運動が激しくなり、主鎖の熱運動も起こる。この温度領域ではP3HT分子のコンホーメーションの乱れが大きく、主鎖の有効共役長が著しく短くなるため、P3HTの導電率は急激に低下する、すなわち、PTC特性が発現するものと結論した。
 第4章「ポリ(3-ヘキシルチオフェン)と導電粒子とのコンポジットのPTC特性」では、P3HTのPTC特性に注目し、スイッチング素子への応用を検討した。P3HT単体は常温での導電率が低いため、単体でのスイッチング素子への応用は困難であると考えられる。そこで、P3HTの常温での導電率を大きくするため、P3HTに導電粒子を添加した。第2章で述べた分子量の溶媒分別で得られたP3HTフラクションの中で、最も優れたPTC特性を示したものを用い、P3HT-TiC (titanium carbide)、P3HT-ITO (indium tin oxide)、P3HT-CB (carbon black) の3種類のコンポジットを作製し、これらのコンポジットの導電率およびPTC特性について検討した。P3HTコンポジットの導電率は導電粒子の種類および含有量によって異なった。導電率が急激に変化する導電粒子含有量(パーコレーションしきい値)はそれぞれ68wt% TiC (P3HT-TiC)、40wt% ITO (P3HT-ITO)、18wt%CB (P3HT-CB)であり、これは導電粒子の粒径の違いに起因するものと考えた。また、これらのコンポジットの導電率-温度特性を測定した結果、P3HT-CBとP3HT-ITOでは明確なPTC特性が見られなかったのに対して、P3HT-TiCでは顕著なPTC特性を示した。さらに、P3FT-TiCのPTC特性は導電粒子TiCの含有量によって異なった。特に、パーコレーションしきい値近傍の70~80wt%TiCを含有するものでは、P3HTのガラス転移点付近で導電率が4桁以上減少するPTC特性が見られ、その再現性も良好であった。また、このコンポジットのPTC特性の現れる温度は、P3HT単体のキャスト膜のPTC特性の現れる温度(P3HTの融点付近)とは異なり、P3HTのガラス転移点の近傍であり、P3HTと導電粒子を複合させることで新たなPTC特性が発現することがわかった。この材料のPTC特性の機構については、P3HTがガラス転移点で急激に膨張するため、導電粒子のネットワークが切断され、導電経路の減少によって導電率が急激に低下し、PTC特性が生じたものと考えた。
第5章「総論」では、各章で得られた結果を総括し、本研究の目的に対して次の結論をまとめた。すなわち、溶媒分別法によりP3HTを分子量分別することができ、その分子量は導電性やPTC特性に大きく影響することを示すとともに、P3HT膜のPTCスイッチング特性のメカニズムを明らかにした。さらに、P3HT単体に導電性粒子を添加することにより常温での導電率が高く、かつ、安定なPTC特性を有するスイッチング材料が得られることを示した。

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