鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーの精密合成と応用に関する研究
氏名 三澤 毅秀
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第208号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文題目 鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーの精密合成と応用に関する研究
論文審査委員
主査 助教授 竹中 克彦
副査 教授 塩見 友雄
副査 教授 五十野 善信
副査 教授 鈴木 秀松
副査 助教授 河原 成元
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第一章 序論 p.1
Reference and notes p.13
第二章 アニオンリビング重合法の停止剤法を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーの合成 p.15
2-1 はじめに p.15
2-2 実験項 p.19
2-2-1 試薬および溶媒の精製 p.19
2-2-2 共役ジエニル基を有するハロゲン化アルキルの合成 p.20
2-2-3 アニオンリビングポリマーと共役ジエニル基を有するハロゲン化アルキルの反応 p.26
2-2-4 末端に共役ジエニル基を有するポリマーのキャラクタリゼーション p.28
2-2-5 分析機器 p.31
2-3 結果及び考察 p.32
2-3-1 アニオンリビングポリスチレンと5-ブロモ-1,3-ペンタジエンの反応 p.32
2-3-1-1 開始剤の対カチオンの違いによる反応への影響 p.35
2-3-1-2 試薬の添加方法(A法、B法)の違いによる反応への影響 p.37
2-3-1-3 5-ブロモ-1,3-ペンタジエンと活性末端のモル比の違いによる反応への影響 p.39
2-3-2 アニオンリビングポリスチレンと7-ブロモ-1,3-ヘプタジエンの反応 p.42
2-3-2-1 開始剤の対カチオンの違いによる反応への影響 p.44
2-3-2-2 試薬の添加方法(A法、B法)の違いによる反応への影響 p.46
2-3-2-3 7-ブロモ-1,3-ペンタジエンと活性末端のモル比の違いによる反応への影響 p.48
2-3-3 反応性の異なるカルボアニオンと5-ブロモ-1,3-ペンタジエン、及び7-ブロモ-1,3-ヘプタジエンの反応 p.52
2-3-3-1 アニオンリビングポリイソプレンと5-ブロモ-1,3-ペンタジエン、及び7-ブロモ-1,3-ヘプタジエンの反応 p.52
2-3-3-2 末端を1,1-ジフェニルエチレンでキャップしたポリスチレンと5-ブロモ-1,3-ペンタジエン及び7-ブロモ-1,3-ヘプタジエンの反応 p.58
2-3-3-3 アニオンリビングポリ2-ビニルピリジンと5-ブロモ-1,3-ペンタジエンの反応 p.62
2-3-3-4 末端をt-ブチルメタクリレートでキャップしたポリスチレンと5-ブロモ-1,3-ペンタジエンの反応 p.67
2-4 まとめ p.70
Reference and notes p.72
第三章 アニオンリビング重合法の開始反応を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーの合成 p.73
3-1 はじめに p.73
3-2 実験項 p.75
3-2-1 試薬および溶媒の精製 p.75
3-2-2 開始反応を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリメチルメタクリレートの合成に用いた開始剤の合成、重合、及びキャラクタリゼーション p.76
3-2-3 開始反応を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリエチレンオキシドの合成に用いた開始剤の合成、重合、及び得られたポリマーのキャラクタリゼーション p.79
3-2-4 分析機器 p.81
3-3 結果及び考察 p.82
3-3-1 開始反応を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリメチルメタクリレートの合成 p.82
3-3-2 開始反応を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリエチレンオキシドの合成 p.93
3-4 まとめ p.107
Reference and notes p.107
第四章 末端ジエニル基の反応性の検討 p.109
4-1 はじめに p.109
4-2 実験項 p.111
4-2-1 試薬の精製 p.111
4-2-2 鎖末端に共役ジエニル基を有するポリスチレンのラジカル単独重合 p.111
4-2-3 末端ジエニル基のDiels-Alder 反応 p.111
4-3 結果と考察 p.113
4-3-1 ラジカル単独重合 p.113
4-3-2 Diels-Alder 反応 p.119
4-4 まとめ p.130
Reference and notes p.131
第五章 鎖末端にジエン-親ジエン官能基を有する非対称テレケリックポリマーの合成と環化反応 p.132
5-1 はじめに p.132
5-2 実験項 p.137
5-2-1 試薬および溶媒の精製 p.137
5-2-2 マレイミド誘導体の合成 p.137
5-2-3 鎖末端にマレイミド基を有するポリマーの合成 p.140
5-2-4 鎖末端に共役ジエニル基、親ジエン化合物を有する非対称テレケリックPMMAの合成 p.142
5-2-5 環化反応 p.145
5-3 結果および考察 p.147
5-3-1 鎖末端にマレイミド基を有するPMMAの合成 p.147
5-3-2 α-マレイミド-ω-ジエニル非対称テレケリックPMMAの合成 p.157
5-3-3 環化反応 p.163
5-3-4 環状PMMAのガラス転移温度の測定 p.170
5-4 まとめ p.172
Reference and notes p.173
第六章 ポリマー鎖末端のジエニル基の反応性を利用したブロック・グラフト共重合体の合成 p.174
6-1 はじめに p.174
6-2 実験項 p.177
6-2-1 試薬及びポリマーの合成 p.177
6-2-2 鎖末端にマレイミド基を有するPMMAと鎖末端に共役ジエニル基を有するポリスチレンとの反応、及び、鎖末端にマレイミド基を有するPMMAと鎖末端に共役ジエニル基を有するPEOとの反応 p.177
6-2-3 鎖末端に共役ジエニル基を有するPEOとスチレンの乳化重合 p.179
6-2-4 鎖末端に共役ジエニル基を有するPEOとクロロプレンの乳化重合 p.179
6-2-5 分析機器 p.180
6-3 結果及び考察 p.181
6-3-1 鎖末端にマレイミド基を有するPMMAと鎖末端に共役ジエニル基を有するPEOとの反応 p.181
6-3-2 鎖末端にマレイミド基を有するPMMAと鎖末端に共役ジエニル基を有するポリスチレンとの反応 p.195
6-3-3 鎖末端に共役ジエニル基を有するPEOを用いた乳化重合 p.202
6-4 まとめ p.208
Reference and notes p.209
第七章 p.211
Reference and notes p.215
テレケリックポリマーの中でも官能基として重合性基を有するものをマクロモノマーと呼ぶが、その重合性基はこれまでスチリル基、メタクリロイル基、アリル基に限られ、1,3-ジエン骨格を有するものはほとんど合成されていない。一方、アニオンリビング重合法は、設計通りの分子量と狭い分子量分布を持ったホモポリマーやブロックポリマーを得るのに最適な方法の一つである。
本研究では、アニオンリビング重合法を用いて、設計通りの分子量と狭い分子量分布を有する一次構造の明確な鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーを合成し、それを多相系高分子材料に応用する手法について考察した。
第一章では、テレケリックポリマー、マクロモノマーのこれまでにおける研究を概観し、本研究の目的と位置付けを明らかにした。
第二、三章では、アニオンリビング重合法を利用した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーの合成を試みた。
第二章では、アニオンリビング重合法の停止反応を利用したジエニル基の導入を試みた。停止剤として5-ブロモ-1,3-ペンタジエン、7-ブロモ1,3-ヘプタジエンを用い、各種アニオンリビングポリマーとの反応を行った。リビングポリマーの対カチオン、停止剤と活性末端のモル比、試薬の添加方法をそれぞれ系統的に変化させて反応を行い、共役ジエニル基の導入率との関係について考察した。その結果、ポリスチレン、ポリイソプレン等のポリマー鎖末端にほぼ定量的に共役ジエニル基を導入できる条件を明らかにした。
第三章では、アニオンリビング重合法の開始反応を利用したジエニル基の導入を試みた。共役ジエニル基を有する新規開始剤を合成し、メチルメタクリレート及び、エチレンオキシドのアニオン重合を行った。その結果、3-メチレン-4-ペンテン-1-オールと水素化カリウムから誘導した開始剤を用い、エチレンオキシドの重合を反応温度等の条件を選んで行うことにより、開始末端に共役ジエニル基を有するポリエチレンオキシドを得ることに成功した。
第四章では、二及び三章で得られた鎖末端に共役ジエニル基を有するポリマーの末端ジエニル基の反応性について明らかにした。まず、末端ジエニル基の重合反応性を知るために鎖末端に共役ジエニル基を有するポリスチレンの単独重合を試みた。その結果、重合は進行するものの、ほぼ同条件で行われた鎖末端にスチリル基、メタクリロイル基を有するポリスチレンの重合挙動と比較した場合、その反応性はかなり低いことがわかった。
一方、鎖末端共役ジエニル基は重合性基としての利用の他に、他の官能基への変換も可能である。そこで鎖末端に共役ジエニル基を有するポリスチレンと電子吸引基性の置換基を有する親ジエン化合物とのDiels-Alder反応を行い、末端官能基変換の可能性についても検討した。親ジエン化合物としてメタクロレインを用いた場合、無触媒下では全く反応は進行していなかったが、極少量のAlCl3共存させると反応は定量的に進行した。また、無水マレイン酸、ベンゾキノン、N-フェニルマレイミドを用いて反応を行った場合、無触媒下の条件下でも反応は定量的に進行した。
第五章では、ジエニル基、親ジエン官能基のそれぞれを末端に有する新規非対称のテレケリックポリマーを合成し、その分子内環化反応による環状ポリマーの合成を試みた。また、親ジエン官能基であるマレイミド基をポリマー鎖末端に導入することについても検討した。その結果、ポリメチルメタクリレート(PMMA)鎖末端にほぼ定量的に鎖末端にマレイミド基を導入できる条件を見いだした。さらに鎖末端に水酸基、共役ジエニル基を定量的に有するPMMAを合成し、その後、水酸基部分にマレイミド基を導入することにより鎖末端にマレイミド基、共役ジエニル基を有する非対称のテレケリックポリマーを合成することに成功した。こうして得られたポリマーをTHF中で還流することにより、高い収率(95%)で環状PMMAを合成することに成功した。
第六章では、共役ジエニル基の反応性を利用した多相系高分子への応用について検討した。第三章で合成した鎖末端に共役ジエニル基を有するポリエチレンオキシドとスチレンおよびクロロプレンとの乳化重合を利用したグラフト共重合体の合成を試みた。共役ジエニル基を有するポリエチレンオキシドはグラフト共重合体を合成するための乳化剤として使用できることを明らかにした。また、鎖末端に共役ジエニル基を有するポリエチレンオキシドと鎖末端にマレイミド基を有するPMMAとの末端Diels-Alder反応を利用したブロック共重合体の合成についても検討した。