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高信頼性過電流保護素子の開発とその応用に関する研究

氏名 上野 彰
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第150号
学位授与の日付 平成12年3月24日
学位論文題目 高信頼性過電流保護素子の開発とその応用に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 宮内 信之助
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 教授 入沢 寿逸
 副査 助教授 下村 雅人
 副査 長岡工業高等専門学校教授 反町 嘉夫

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第1章 序論
1.1 研究の背景と目的 p.1
1.2 金属線型ヒューズの研究 p.1
1.2.1 ヒューズの基本特性 p.1
1.2.2 警報用ヒューズの信頼性向上に関する研究 p.6
1.2.3 高密度実装化新小形警報用ヒューズの開発 p.7
1.2.4 金属線型マイクロヒューズの研究 p.7
1.2.5 ヒューズ選定法の確立と設計技術者への選定法の普及 p.8
1.3 ポリマ系PTCサーミスタによる過電流保護素子の研究 p.8
1.3.1 非金属線型の過電流保護素子の可能性 p.8
1.3.2 厚膜型ポリマ系PTCサーミスタの研究 p.8
1.3.3 ソリッド型ポリマ系PTCサーミスタの研究 p.8
1.3.4 表面実装形過電流保護素子の開発 p.9
1.4 ポリマ系PTCサーミスタのインテリジェントヒータとしての応用研究 p.9
1.5 参考文献 p.9

第2章 金属線型ヒューズの研究
2.1 まえがき p.10
2.2 警報用ヒューズの信頼性向上 p.10
2.2.1 警報用ヒューズの歴史的経過 p.10
2.2.2 信頼性の研究に関する背景 p.13
2.2.3 警報用ヒューズのフィールドデータからの故障率算定 p.13
2.2.4 β黄銅ヒューズのシーズン・クラッキング対策の研究 p.25
2.2.5 小電流容量ヒューズの故障率低減に関する研究 p.33
2.2.6 銀マイグレーションによる絶縁劣化の解析と対策研究 p.44
2.2.7 タイムラグ型警報用ヒューズにおける信頼性の向上に関する研究 p.47
2.3 高密度実装化新小形警報用ヒューズの開発 p.63
2.3.1 電子装置の高密度実装化とヒューズの小型化への背景 p.63
2.3.2 速動形ヒューズエレメントの研究 p.63
2.3.3 小形警報用ヒューズおよびホルダの設計 p.65
2.3.4 ヒューズおよびホルダの試作・評価 p.70
2.3.5 タイムラグ形ヒューズエレメントの研究 p.76
2.3.6 考察 p.84
2.4 プリント基板搭載形マイクロヒューズの開発と国際規格化 p.85
2.4.1 マイクロヒューズの開発への背景 p.85
2.4.2 角形スルホールマイクロヒューズの研究 p.85
2.4.3 表面実装型マイクロヒューズの開発 p.96
2.4.4 国際規格化への技術資料 p.104
2.5 電子装置およびシステムの信頼性向上への保護協調 p.111
2.5.1 警報用ヒューズの断によるシステムダウン現象 p.111
2.5.2 保護の安全協調 p.111
2.5.3 パルス電流回路におけるヒューズ選定法に関する考察 p.118
2.6 まとめ p.127
2.7 参考文献 p.128

第3章 ポリマ系PTCサーミスタによる過電流保護素子の研究
3.1 はじめに p.130
3.2 厚膜型ポリマ系PTCサーミスタ p.130
3.2.1 基本素材構成 p.130
3.2.2 厚膜ペーストの合成とPTC特性 p.131
3.3 ソリッド型ポリマ系PTC特性 p.134
3.3.1 ポリマの結晶融点を使用したPTCサーミスタ p.134
3.3.2 ソリッド型過電流保護素子の試作 p.134
3.3.3 過電流保護素子の小形化と定格電流に関する考察 p.135
3.4 カーボンブラック複合体の電気的特性の温度依存性に関する一考察 p.137
3.5 表面実装形過電流保護素子の開発 p.139
3.5.1 素子の小形化に必要な素材の条件 p.139
3.5.2 低抵抗PTC素材の開発 p.140
3.5.3 低抵抗チップ形過電流保護素子 p.144
3.5.4 むすび p.146
3.6 まとめ p.146
3.7 参考文献 p.147

第4章 厚膜形ポリマ系PTCヒータとその応用
4.1 まえがき p.148
4.2 面状発熱体の製作 p.148
4.3 特性試験 p.148
4.4 PTCヒータの網膜芽細胞腫治療装置への応用開発の研究 p.150
4.4.1 ヒータの作成 p.151
4.4.2 境界要素法による眼球断面温度分布推定 p.151
4.4.3 結果と考察 p.152
4.5 まとめ p.154
4.6 参考文献 p.154

第5章 結論 p.155

謝辞 p.156

本研究に関する主なる発表論文 p.付1,2

 エレクトロニクスの高度化に伴って、電気通信装置および電子機器用小型ヒューズの開発が非常に重要になってきている。しかしながら、ヒューズの体系的な研究はほとんどなされておらず、また、ヒューズの故障率など信頼性に関するデータは本研究の開始時点では皆無であった。特に、通信ネットワークの拡大化および電子機器の高度化に伴い、機器の保護と故障の切り離しのために、過電流保護素子が不可欠になる事が予想された。
 本研究は、過電流保護素子の信頼性向上、開発、国際規格化および電子機器設計上の理論的回路保護協調を明らかにする事を目的としたものである。
 第1章では、この研究の背景と目的を明らかにしている。本研究論文は第1章~第5章からなり、以下に各章の概略と得られた知見について述べる。
 第2章では、電気回路を安全に保護するための金属線型ヒューズに関する研究について述べた。
 すなわち、前段は通信装置、汎用コンピュータ、発変電制御装置、生産システム、交通信号装置、防災システムなどの基幹産業用電気・電子機器に採用されている警報用ヒューズの信頼性向上および小型警報用ヒューズの開発を行った。
 中段では、電子装置の高密度実装化に対応し、プリント基板に直接搭載する高密度実装対応のスルホール実装型マイクロヒューズおよび表面実装型マイクロヒューズの開発、ならびにその国際規格化のためIEC(International Electrotechnical Commission) への規格原案の提案に際して、技術的検討を行った。
 後段では、回路設計において、その回路の過電流保護上、誤って適切でないヒューズを選定しても、ヒューズは支障なく通電する場合があり、他の電子部品と異なり、初期において異常が発生しない事がある。そのために、フィールドにおいてヒューズの故障でなく、誤選定に起因するヒューズ断が発生し、その装置またはシステムの信頼性の低下を招く事があった。それにもかかわらず、電子機器の設計者は、実回路電流により経験的にヒューズの選定を行っていたので、装置及びシステムの故障原因としてヒューズに起因する故障は大幅に低減しなかった。この対策として、著者等はヒューズの特性を解析し、回路設計上適切なヒューズの選定を論理的に体系化を行い、その内容をヒューズハンドブックとして編纂し、電子機器の設計者に配付する事により、初期の目的を達成した。
 第3章では、ポリマーの中に導電粒子として、カーボンブラックを入れた複合導電材料で発現するPTC(Positive Temperature Coefficient)特性を利用した、復帰形過電流保護素子を開発するために、素材の研究開発と、その素材を使用した過電流保護デバイスの開発と評価法の研究を行った。
 前段では、樹脂のガラス転移点を利用した厚膜型PTC素材の研究で、その素材で、従来から多く使用されている金属線型ヒューズと置換できる復帰形過電流保護素子に必要な要件とその可能性を検討した。
 後段では、高密度結晶性ポリマを使用し、特殊熱処理を行ったサーマルブラック(カーボンブラック)と熱混練により低抵抗で結晶の融点での大きく抵抗値変化が発現するPTC素材の開発とその導電メカニズムの解析を行った。この素材を使用して、実用レベルの小型表面実装型過電流保護素子の開発を行った。
 第4章では、高密度結晶ポリマをカーボンブラックに溶液重合でグラフトした厚膜型ポリマ系PTCの素材を開発し、その応用として周囲温度および電圧変動に対し自己制御するインテリジェントヒータを開発した。そのヒータを小児眼球癌の治療装置への適用に関する研究を行った。
 第5章では、結論として、従来、電子部品の多くは半導体を中心に高密度実装化が行われ、見過ごされやすい過電流保護素子に関し、古くからの金属線形ヒューズの高信頼化を理論的に体系化を行い、電子機器の高信頼化が実現できた。
 一方、反復使用可能な過電流保護素子として、新しいポリマー系PTCの素材開発からデバイスの実用化まで研究の成果は十分実用化を可能とした。

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