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エルゴメータを用いた新しい運動機能計測技術の開発とその応用に関する研究

氏名 塩野谷 明
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第141号
学位授与の日付 平成11年12月8日
学位論文題目 エルゴメータを用いた新しい運動機能計測技術の開発とその応用に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 三宅 仁
 副査 教授 松田 甚一
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 長谷川 光彦 
 副査 新潟大学 教授 原 利昭

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第1章 緒論 p.1
1.1 エルゴメータによる運動機能計測とその問題点 p.1
1.2 本研究の目的 p.10

第2章 Anaerobic Threshold (AT)近似推定システムの開発 p.13
2.1 まえがき p.13
2.2 ATとは p.13
2.3 AT近似推定システムの概要 p.14
2.4 実験 p.17
2.5 結果 p.18
2.6 考察 p.20
2.7 まとめ p.25

第3章 心拍・呼吸数併用制御型エルゴメータの開発 p.26
3.1 まえがき p.26
3.2 心拍・呼吸数併用制御型エルゴメータの構成 p.26
3.3 実験:AT、OBLA(Onset of Blood Lactate Accumulation)水準での波状変動運動時呼吸の周波数特性に関する実験 p.29
3.4 結果 p.30
3.5 考察 p.32
3.6 まとめ p.36

第4章 エルゴメータ・アプリケーション・アタッチメントの開発と水泳運動への応用 p.38
4.1 まえがき p.38
4.2 エルゴメータ・アタッチメントのアタッチメントの開発 p.38
4.2.1 アタッチメント・ドラム部の開発 p.38
4.2.2 力-速度特性算出のためのプログラム・フローチャート p.40
4.3 実験:水泳運動への応用 p.43
4.4 結果 p.45
4.5 考察 p.48
4.6 まとめ p.50

第5章 筋力特性の評価への応用 p.52
5.1 まえがき p.52
5.2 エルゴメータAアタッチメントを用いた肘屈曲運動時力-速度関係の同定 p.52
5.2.1 実験 p.52
5.2.2 3次元動作解析システム(3D) p.54
5.2.3 結果 p.56
5.3 慣性車輪を用いた肘屈曲運動時力-速度関係とその同定 p.56
5.3.1 慣性車輪による肘屈曲運動のモデル化 p.57
5.3.2 実験 p.60
5.3.3 結果およびシミュレーションによる同定 p.60
5.4 エルゴメータAアタッチメントを用いた肘屈曲運動時主動筋の力-速度関係の同定 p.63
5.4.1 肘屈曲運動時・力-速度関係から主動筋・力-速度関係への補正方法 p.63
5.4.2 補正結果 p.65
5.5 考察 p.67
5.6 まとめ p.69

第6章 エルゴメータAアタッチメントによる運動機能計測結果の応用としての人工筋アクチュエータの開発 p.70
6.1 はじめに p.70
6.2 人工筋アクチュエータの条件 p.70
6.3 人工筋アクチュエータの提案モデルと運動解析 p.71
6.3.1 人工筋アクチュエータの提案モデル p.71
6.3.2 モデルの回転に関する運動解析 p.71
6.3.3 モデルの張力発生(負荷の巻上げ)に関する運動解析 p.74
6.3.4 運動解析結果 p.76
6.4 人工筋アクチュエータの開発と駆動実験 p.76
6.5 結果 p.78
6.6 考察 p.78
6.7 まとめ p.80

第7章 考察 p.81

第8章 結論 p.87

謝辞 p.89

参考文献 p.90

本研究に係る研究業績一覧 p.96

付録.1 生体筋の力学モデルとHillの方程式によるエルゴメータ駆動の工学的再現 p.付1
付録.2 Semi-tethered Swimming (STS)時パワー計測による有酸素性能力評価 p.付17

 本論文は「エルゴメータを用いた新しい運動機能計測技術の開発とその応用に関する研究」と題し,全8章から成り立っている.高齢化社会への対応,そして慢性的な社会問題である生活習慣病の増大への予防的対応として,エルゴメータに代表される運動負荷装置を用いた運動療法の重要性が高まっている.本研究ではエルゴメータの負荷制御に必要不可欠な運動機能計測技術の精度の向上のための新しい手法の開発とその応用を試みたものである.
 第1章「序論」では,エルゴメータを用いた既存の運動機能計測技術の問題点を再考し,より高い精度の運動機能計測技術の考案・開発とその実用化ならび応用のために以下の課題を本研究の目的として取り上げた.
(1)負荷制御に関与する運動機能計測・評価の精度の向上(第2章,第3章)
(2)エルゴメータの対象とする運動形態の多様化(第4章,第5章,第6章)
(3)エネルギー代謝の観点からの評価に代わる新しい運動機能計測・評価技術の考案・開発(第5章,第6章)
 第2章「AT近似推定システムの開発」では,運動療法までを考慮し,適正な運動負荷強度を決定する際の指標となるAnaerobic Threshold(AT)を,呼吸時の呼気と吸気の温度差を電気的に曲線化(呼吸曲線)し,周波数解析ならびに周期変動解析することで近似推定する新しい計測技術について述べた.この技術によって無侵襲に,そして高価なシステムを用いることなく,ATを近似推定することが可能になった.
 第3章「心拍・呼吸数併用制御型エルゴメータの開発」では,前章のAT近似推定システムとの併用による心拍・呼吸数併用制御機能拡張型エルゴメータについて述べた.この計測システムによって,これまで運動機能評価とそれに基づく運動実践をそれぞれ独立して行わなければならなかった運動療法(あるいはトレーニング)が,AT推定による負荷の適正を常時監察しながらリアルタイムで運動実践が行なえるといった機能面そして安全面での拡張が図られた.また,本エルゴメータの負荷変動特性である波状負荷変動では,生体に定常状態が生じず,運動者は常に変化に対する生体適応を求められることから,運動療法におけるこれまでとは異なった効果特に神経系への効果が期待される.
 第4章「エルゴメータ・アプリケーション・アタッチメントの開発と水泳運動への応用」では,エルゴメータの対象となる運動形態を,これまでの自転車駆動だけでなく多様な運動形態・動作形態に対応できるようにエルゴメータ・アプリケーション(以下A)・アタッチメントを考察・開発し,その概要および特性について述べた.そして自転車駆動とは異なる運動として水泳運動を取り上げ,エルゴメータAアタッチメントを用いた牽引水泳(Semi-tethered Swimming :STS)時のパワー計測・評価ならびに複数のエルゴメータAアタッチメントによる運動機能の同時多計測実験を行い,水泳運動への応用について検討した.
 第5章「筋力特性の評価への応用」では,エルゴメータAアタッチメントを用いた運動解析を行い,運動の基盤となる筋の収縮特性を,肘屈曲運動を対象にHillの方程式へ適用させた.加えて新しい運動機能計測技術として,新しいモデルを用いた運動機能計測技術を従来から運動解析に用いられてきた慣性車輪に適用させた.さらにこのモデルによる評価の妥当性が確認されたことから,エルゴメータAアタッチメントを用いた運動解析に応用し,ヒトの肘屈曲に主動する上腕二頭筋の力-速度特性を同定することに成功した.
 第6章「エルゴメータAアタッチメントによる運動機能計測結果の応用としての人工筋アクチュエータの開発」では,第5章で行ったモデルを用いた新しい運動機能計測技術による結果の応用例として,人工筋アクチュエータを開発する過程でヒト生体筋の収縮特性と人工筋のそれの比較検討を行った.そしてその比較結果に基づいて,ヒト生体筋の特性を有する人工筋アクチュエータモデルの考察と運動解析を行い,考案モデルが非線形の力-速度関係で記述される生体筋特性を有することを確認した.さらにそのモデルより実際に人工筋アクチュエータの開発を行い,開発したアクチュエータがヒトの生体筋特性を有することを確認した.
 第7章「考察」では第1章から第6章までをまとめ,本研究で開発されたシステムによって目的とした3つ課題が達成されたことを確認するとともに,このような運動機能計測技術の向上がエルゴメータ自体の機能を拡張させることを指摘した.
 第8章「結論」では,本論文を総括している.

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