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豪雪都市の除排雪システムの経済性評価

氏名 諸橋 和行
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第128号
学位授与の日付 平成8年9月30日
学位論文の題目 豪雪都市の除排雪システムの経済性評価
論文審査委員
 主査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 早川 典生
 副査 教授 松本 昌二
 副査 助教授 東 信彦
 副査 助教授 阿部 雅二朗

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 研究の目的 p.3
1.3 論文の構成 p.4
第2章 除排雪システムの経済性評価の手法 p.5
2.1 経済性評価の概念 p.5
2.2 便益と費用の計算方法 p.8
2.2.1 便益B1の計算方法 p.8
2.2.2 便益B2の計算方法 p.9
2.2.3 費用Cの計算方法 p.9
2.3 経済性評価の手順 p.10
第3章 消雪パイプの経済性評価 p.12
3.1 はじめに p.12
3.2 導入対象地域と除雪対象範囲 p.12
3.3 便益の計算 p.14
3.3.1 消雪パイプの導入効果 p.14
3.3.2 消雪パイプの便益Bの算出 p.15
(1)年平均の利用度の低下率, k1, k2 p.15
(2)車道部にかけられている費用, F p.17
(3)その他の値, r, L, A p.19
3.4 費用の計算 p.19
3.4.1 設備費の算出 p.19
3.4.2 維持修繕費の算出 p.20
3.4.3 運転費の算出 p.21
3.5 経済性の計算結果 p.23
3.6 まとめ p.28
第4章 機械除雪の経済性評価 p.30
4.1 はじめに p.30
4.2 便益の計算 p.30
4.2.1 機械除雪の導入効果 p.30
4.2.2 機械除雪の便益Bの算出 p.31
4.3 費用の計算 p.33
4.3.1 新雪除雪の費用 p.33
4.3.2 拡幅除雪の費用 p.36
4.3.3 運搬排雪の費用 p.40
(1)排雪量1t当りの運搬排雪費用, CT p.40
(2)排雪対象面積, A'と1m2当りの年間運搬排雪量, W p.41
4.4 経済性の計算結果 p.44
4.5 消雪パイプと機械除雪の経済性の比較 p.47
4.6 まとめ p.50
第5章 流雪溝の経済性評価 p.52
5.1 はじめに p.52
5.2 流雪溝の概要と除雪対象範囲 p.52
5.2.1 流雪溝の概要 p.52
5.2.2 除雪対象範囲 p.55
5.3 便益の計算 p.56
5.3.1 流雪溝の導入効果 p.56
5.3.2 流雪溝の便益B1の算出 p.57
(1)年平均の利用度の低下率, k1, k2 p.58
(2)施設にかけられている費用, F p.59
(3)その他の値, r, L, A p.60
5.3.3 流雪溝の便益B2の算出 p.60
(1)排雪量1t当りの運搬排雪費用, Ct p.61
(2)排雪対象面積, A' p.61
(3)排雪対象面積1m2当りの年間運搬排雪量, W p.62
5.4 費用の計算 p.64
5.5 経済性の計算結果 p.66
5.6 考察 p.71
5.6.1 歩道除雪の影響 p.71
5.3.2 建ぺい率の影響 p.72
5.7 まとめ p.73
第6章 十日町市流雪溝システムの経済性評価 p.75
6.1 はじめに p.75
6.2 十日町市流雪溝システムの概要と除雪対象範囲 p.75
6.2.1 流雪溝システムの概要 p.75
6.2.2 除雪対象範囲 p.78
6.3 便益の計算 p.80
6.3.1 流雪溝システムの導入効果 p.80
6.3.2 流雪溝システムの便益B1の算出 p.81
(1)年平均の利用度の低下率, k1, k2 p.82
(2)施設にかけられている費用, F p.84
(3)その他の値, r, L, A p.85
6.3.3 流雪溝システムの便益B2の算出 p.87
(1)排雪量1t当りの運搬排雪費用, Ct p.88
(2)排雪対象面積, A'と1m2当りの年間運搬排雪量, Wj p.89
6.4 費用の計算 p.93
6.5 経済性の計算結果 p.94
6.6 考察 p.100
6.7 まとめ p.102
第7章 本手本の妥当性と汎用性について p.104
7.1 経済性評価の手法の妥当性について p.104
7.2 経済性評価の手法の汎用性について p.106
第8章 結論 p.109
8.1 研究の総括 p.109
謝辞 p.112
参考文献 p.114
参考資料 p.118

 豪雪都市において種々の除排雪システムを有効に活用・運用していくためには、行政や住民の財政的な対応能力と得られる除雪効果のバランスを図っていく必要があり、除排雪システムの経済性を評価することが重要となる。しかしこのような研究や試みはほとんど行われてこなかった。本研究はこの経済性評価の手法の確立を目指すものである。
 梅村らは、雪害を場所とそこにある施設や物に付随した量と考え、その金額を雪害度として定義した。この雪害度は、積雪のためにその場所や施設等の利用が阻害されることによる損害額と、そこにかけられている雪対策費用の和として計算されるものである。本研究ではこの雪害度の手法を用いて、除排雪システムの経済性評価の手法を提案する。そして代表的な除排雪システムについてその適用方法と評価結果を具体的に示す。
 この評価手法では、ある任意の対象地域において、そこに生じる雪による損害額と投入される除排雪費用の2つに注目し、評価対象とする除排雪システムが導入されなかった場合と導入された場合を比較する。そして導入されたことによる損害額の減少を便益B1、さらに除排雪費用の削減を便益B2と捉え、その合計を除排雪システムの便益Bとする。これに対して除排雪システムの費用Cは、設備費、維持修繕費および運転費の和として計算する。BとCはともに年間当りの金額で算出し、費用便益比B/Cの値より経済性を評価する。以下に本論文の各章の概要を示す。
 第1章「序論」では、研究の背景と関連する研究の概要を示し、研究の目的と論文の構成を述べた。
 第2章「除排雪システムの経済性評価の手法」では、除排雪システムの経済性評価の概念と評価方法、便益と費用の計算方法、および評価の手順を示した。この手法・手順に基づいて、以下の章でいくつかの除排雪システムの具体的な評価を行う。
 第3章「消雪パイプの経済性評価」では、長岡駅周辺の商業地域25町内の車道に新たに消雪パイプを導入するものとし、それが理想的に機能するとした場合の経済性を評価した。その結果、消雪パイプの経済性は非常に優れており、費用便益比は2年確率の平雪年で10.5、10年確率の大雪年で14.4、10年確率の少雪年で6.5、50年確率の大雪年で15、50年確率の小雪年で4となることがわかった。
 第4章「機械除雪の経済性評価」では、第3章の消雪パイプと同様、長岡駅周辺の商業地域25町内の車道に機械除雪を導入するものとし、その経済性を評価した。その結果、機械除雪の経済性は非常に優れており、費用便益比は2年確率の平雪年で7~10、10年確率の大雪年で約6、50年確率の大雪年で約5、そして10年確率以上の少雪年では5~10となることがわかった。また、本章の結果を第3章の結果と比較したところ、少雪年では機械除雪の方が消雪パイプよりやや高い経済性を有するが、降雪累計約6mを境にその優位性は逆転し、大雪年では消雪パイプの方が高い経済性を有することがわかった。
 第5章「流雪溝の経済性評価」では、長岡市道東幹線20号線に配置されている既存流雪溝(延長1305.7m)を評価対象とし、それが理想的に機能するとした場合の経済性を評価した。その結果、概ね降雪累計で6m以上、最大積雪深で1.4m以上の降積雪のある年で経済的に成り立つことがわかった。また、費用便益比は2年確率の平雪年で1、10年確率の大雪年で1.3、10年確率の少雪年で0.7、50年確率の大雪年で1.55、50年確率の少雪年で0.6となることがわかった。さらに流雪溝を利用した歩道の除雪率、および沿道の宅地の建ぺい率が流雪溝の経済性に及ぼす影響を明らかにした。
 第6章「十日町市流雪溝システムの経済性評価」では、十日町市で建設中の大規模な流雪溝システム(流雪溝延長43.2km)を評価対象とし、整備箇所による導入効果の違いを考慮した上で、それが理想的に機能するとした場合の経済性を評価した。その結果、概ね降雪累計で13m以上、最大積雪深で2.8m以上の降積雪のある年で経済的に成り立つことがわかった。また、費用便益比は2年確率の平雪年で0.65、10年確率の大雪年で1.7、10年確率の少雪年で0.3、50年確率の大雪年で2.7、50年確率の少年雪で0.15となることがわかった。さらにシステムの耐用年数が30年の場合と消雪パイプが使用不能となりその路線を機械除雪することになった場合の経済性を評価し、どちらも2年確率の平年雪で費用便益比は1.1となることを明らかにした。
 第7章「本手法の妥当性と汎用性について」では、本手法の汎用性について、他の評価手法との比較も含めて検討した。また本手法を他の地域・場所に適用する場合の汎用性について検討を行った。
 第8章「結論」では、本研究の内容をまとめ、総括を述べた。

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