Evaluation of Silicon Nitride (Si3N4) and Aluminum Nitride (AIN) Powder Surfaces by Temperature Programmed Desorption (TPD) Technique
(昇温脱離(TPD)法による窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末の表面不純物層の評価)
氏名 齋藤 成輝
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第137号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 Evaluation of Silicon Nitride (Si3N4) and Aluminum Nitride (AIN) Powder Surfaces by Temperature Programmed Desorption (TPD) Technique(昇温脱離(TPD)法による窒化ケイ素粉末と窒化アルミニウム粉末の表面不純物層の評価)
論文審査委員
主査 教授 石崎 幸三
副査 教授 植松 敬三
副査 教授 小松 高行
副査 助教授 斎藤 秀俊
副査 新潟大学 助教授 堀田 憲康
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Contents
Acknowledgments
1.INTRODUCTION
1.1 General Introduction p.1
1.2 Influence of Powder Surface Chemistry on Processing of Nitride Ceramics p.3
1.2.1 Manufacturing of Si3N4 and AINceramics p.3
1.2.1.1 Mixing additives and green body forming p.6
1.2.1.2 Sintering of silicon nitride,and grain boundary of sintered body p.6
1.2.1.3 Sintering of aluminum nitride,and thermal conductivity of sintered body p.8
1.2.2 Powder processing of silicon nitride p.8
1.2.3 Powder processing of aluminumnitride p.11
1.3 Evaluation Methods for Powder Surfaces p.12
1.3.1 Conventional analysis for powder surfaces p.12
1.3.2 Temperature programmed desorption p.14
1.4 Scope of Dissertation p.17
2. EXPERIMENTAL SYSTEM OF TEMPERATURE PROGRAMMED DESORPTION
2.1 Introduction p.19
2.2 TPD Apparatus p.19
2.2.1 Previous experimental apparatus p.19
2.2.2 Improvement of thr experimental apparatus p.21
2.3 Background Spectra of TPD System with New Heater Unit p.23
2.4 Summary p.23
3. SURFACE CHEMISTRY OF SILICON NITRIDE POWDERS
3.1 Introduction p.25
3.1.1 Influence of Si3N4 powder on manufacturing p.25
3.1.2 Conventional analysis of Si3N4 powder surfaces and its limitation p.26
3.1.3 TPD analysis of Si3N4 powder surfaces p.26
3.2 Decomposition of Si3N4 Powder Surfaces p.28
3.2.1 Previously reported results about the surface characteristics of the Si3N4 Powders selected p.28
3.2.2 Selection of the powders p.30
3.2.3 Experimental p.31
3.2.4 TPD spectra p.31
3.2.5 Decomposition spectra of Si3N4 powder surfaces p.33
3.2.6 Relative evolved quantities of Si,N and O p.37
3.3 Surface Characteristics of Si3N4 Powders p.41
3.3.1 Surface groups of Si3N4 Powders p.41
3.3.2 Relationship between surface groups and decomposition behavior p.46
3.3.3 Relevant aspect learned about the surface of Si3N4 Powders p.49
3.4 Influence of Manufacturing Process on Surface Layer of Si3N4 Powders p.49
3.5 Conclusions p.51
3.6 Summary p.51
4. SURFACE CHEMISTRY OF ALUMINUM NITRIDE POWDERS
4.1 Introduction p.55
4.1.1 Influence of AIN powder surfaces on manufacturing p.55
4.1.2 Surface analysis of AIN Powders p.55
4.2 TPD analysis of AIN Powder Surfaces p.56
4.2.1 Previous reported worcs related to surface characteristics of AIN Powders p.56
4.2.2 Expected information from TPD analysis of AIN powder surfaces p.57
4.2.3 Experimental p.57
4.2.4 Analysis of H2O TPD spectra p.60
4.2.5 Analysis of NH3 TPD spectra p.64
4.2.6 Summary of TPD analysis p.64
4.3 Auger Electron Spectroscopy of AIN Powders p.66
4.3.1 Reference materials p.66
4.3.2 Auger electron spectroscopy(AES) p.66
4.3.3 Results of Auger electron spectroscopy p.67
4.3.4 N(KLL)Auger transition of aluminum nitride powders p.71
4.4 Summary p.77
5. SINTERING BEHAVIOR OF ALUMINUM NITRIDE POWDERS
5.1 Introduction p.79
5.2 Experimental Procedure p.80
5.3 Results p.80
5.4 Discussions p.82
5.4.1 Secondary phase formation between 1700 and 1750℃ p.82
5.4.2 Secondary phase formation between 1750 and 1800℃ p.82
5.4.3 Secondary phase formation between 1800 and 1850℃ p.85
5.4.4 Secondary phase formation between 1850 and 1900℃ p.86
5.5 Summary p.86
6. SUMMARY p.87
REFERENCES p.89
RESEARCH ACTIVITIES p.102
セラミックスは高い融点を持つため、その多くはサブミクロンサイズの粉末を出発原料として、焼結で緻密体を得る。中でも窒化物は共有結合性が高く難焼結材料であり、通常は原料粉末に焼結助剤を混合して、窒化物粉末表面の酸化により存在する表面不純物層と焼結助剤との反応で生成する液相を介して焼結を行う。この粉末表面の不純物層は窒化物の焼結特性を支配すると考えられるが、実際の表面状態とその焼結性への寄与は解明されていなかった。本研究では、窒化ケイ素(Si3N4)粉末と窒化アルミニウム(AlN)粉末の表面を評価して実際の焼結性への影響を示した。評価法には、一般的な表面分析と比べて原理的に優れるが応用例の少ない昇温脱離(TPD)法を用いて、その有用性を示した。特に超高真空下で高温に耐えうる加熱装置を作製することで、過去に行えなかった1000K以上の温度でのTPDを実現した。以下に本論文の各章の概要を示す。
第1章「INTRODUCTION」では、窒化物セラミックスの基礎物性と用途、窒化物セラミックス製造工程における粉末表面の影響、粉末表面の分析方法を述べ、窒化物粉末表面を分析することの意義と重要性並びにTPD法の有用性を明らかにした。
第2章「EXPERIMENTAL SYSTEM OF TEMPERATURE PROGRAMMED DESORPTION」では本研究で作製したTPD装置に導入されたタングステン製高温加熱炉(最高使用温度1850℃)の昇温時における脱ガス特性を示し、10の-6乗Paの超高真空下で1500℃までのTPDによる定量分析が可能な装置であることを明らかにした。また、予備真空排気装置の増設について述べた。
第3章「SURFACE CHEMISTRY OF SILICON NITRIDE POWDERS」では市販のSi3N4粉末表面が酸化物と酸窒化物の表面状態を合わせ持ち、製法によって酸化状態が異なることを明らかにした。イミド熱分解(以下イミド)法及び還元窒化(以下還元)法で製造されている2種類の市販Si3N4粉末について室温から1450℃のTPDを行った。Si3N4の表面状態を同定するため酸化物(一酸化ケイ素及び二酸化ケイ素試薬粉末)のTPDをあわせて行い、Si3N4と酸化物のTPDスペクトルとの比較を行った。1000℃以上の高温におけるTPDでは、2種類のSi3N4粉末表面からケイ素、窒素及び酸素の明らかな脱離が1300℃付近で起こり始め、この温度でのSi3N4粉末表面の分解を示した。ここで二酸化ケイ素粉末はほぼ重量変化が無く、一酸化ケイ素は全て蒸発した。特に窒素の脱離挙動では、イミド粉末では1300℃付近から放物線状に脱離量が増加するのに対して、還元粉末では1420℃以上で急激に脱離量が増加した。還元粉末がイミド粉末より120K高温側で顕著な脱離を示す理由は、還元表面は1300℃以上の超高真空下でも安定な二酸化ケイ素に近い状態であるためと考えられた。1000℃までの低温側のTPDでは主に水、アンモニア、水素、窒素の脱離が顕著に観察された。特に1000℃以下で観察される水のスペクトルについてSi3N4粉末と酸化物の比較を行った。高温及び低温側でのTPDの解析の結果、還元粉末の表面には二酸化ケイ素と酸窒化ケイ素の表面状態が、イミド粉末の表面には一酸化ケイ素と酸窒化ケイ素の表面状態が共存することを明らかにした。アンモニアのTPDの結果からは、イミド粉末表面の窒素濃度が還元粉末表面の窒素濃度より高いことが推定された。これらの違いは製造プロセスの最終処理に依存することを推定した。
第4章「SURFACE CHEMISTRY OF ALUMINUM NITRIDE POWDERS」では市販のAlN粉末表面が酸化物と酸窒化物の表面状態を合わせ持ち、製造方法によって酸化状態が異なることを明らかにした。還元窒化(以下還元)法、化学気相(以下CVD)法及び直接窒化(以下直接)法で製造されている3種類の市販AlN粉末について室温から1500℃のTPDを行った。AlNの表面状態を同定するため酸化物(α-、r-及びθ-Al2O3粉末)のTPDをあわせて行い、AlNと酸化物のTPDスペクトルとの比較を行った。水とアンモニアの脱離が主として観察され、特に還元粉末ではアンモニアの脱離が観察されなかった。その理由を還元粉末製造プロセスの最終処理に依存するものと推定した。解析の結果、還元粉末の表面はθ-Al2O3の表面状態に、気相AlN及び直接AlN粉末の表面はr-Al2O3の表面状態にきわめて近いことを明らかにした。そらにこれら3種類のAlN粉末表面を、アルゴンイオンスパッターを用いながらオージェ電子分光分析を行った。アルゴンイオンスパッターの前後での窒素のKLLオージェ遷移の変化を観察した結果、AlN粉末表面には酸素と窒素の共存する領域が確認され、粉末表面の酸窒化物層の存在を示した。
第5章「SINTERING BEHAVIOR OF ALUMINUM NITRIDE POWDERS」ではAlN粉末の表面状態が焼結の昇温過程で液相生成に及ぼす影響を明らかにした。粉末表面の酸化物と酸窒化物はそれぞれ助剤粉末との反応温度が異なり、これらの表面層の緻密化挙動に影響していることを示した。第4章で評価した3種類のAlN粉末に1mo1%の酸化イットリウムを添加した系における、1700、1750、1775、1800、1825、1850及び1900℃にけるサンプルの密度測定と粒界相の同定を行った。AlN粉末表面の酸化物層は1750℃以下でイットリウム-アルミニウム酸化物を生成し、酸窒化物層は1800℃付近で粒界相成分と反応して液相を生成を開始することを示した。3種類のAlN粉末中、還元AlN粉末は1850℃付近において最高の密度を示した。その理由は、3種類のAlN粉末の中で還元AlN粉末の表面には最も多量の酸窒化物が存在するためと考えられた。
第6章「SUMMARY」では本研究を通して明らかになったTPD法の有用性を述べ、TPDによるSi3N4及びAlN粉末表面の評価とAlN粉末表面不純物層の液相生成・緻密化挙動への影響についての研究結果を総括した。