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Studies on the Structure and Function of Myoglobins Containing Chemically Modified Heme

(化学修飾ヘムを用いたミオグロビンの構造と機能に関する研究)

氏名 鈴木 秋弘
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第83号
学位授与の日付 平成8年6月19日
学位論文の題目 Studies on the Structure and Function of Myoglobins Containing Chemically Modified Heme (化学修飾ヘムを用いたミオグロビンの構造と機能に関する研究)
論文審査委員
 主査 教授 塩見 友夫
 副査 教授 五十野 善信
 副査 教授 西口 郁三
 副査 京都大学 教授 生越 久靖
 副査 九州大学 教授 青山 安宏
 副査 群馬高等専門 学校教授 戸井 啓夫
 副査 助教授 竹中 克彦

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Contents
Page
General Introduction.p. 1
Chapter 1. Preparation Properties of Reconstituted Myoglobins with Chemically Modified Hemes. p.7
Chapter 2. Synthesis of 3-Trifluoromethyl-3-demethylmesoheme and Its Reconstituted Sperm Whale Myoglobin. p.43
Chapter 3. Synthesis of Ring-Fluorinated Porphyrins and Reconstitutional Myoglobins with Their Iron Complexes. p.65
Chapter 4. Bis-Myoglobin Reconstituted with Covalently Bonded Symmetric Hemes. p.97
List of Publications. p.109
List of Other Publications. p.110
Acknowledgment. p.111

氏名 鈴木 秋弘
 論文題目 Studies on the Structure and Function of Myoglobins Containing Chemically Modified Heme
(化学修飾ヘムを用いたミオグロビンの構造と機能に関する研究)
 本論文は、ミオグロビン、ヘモグロビンのような補欠分子ヘム(プロトポルフィリン-IX鉄錯体)を活性中心に持つヘムタンパク質に注目し、有機合成化学的手法を駆使したプロトヘムと可換な種々の化学修飾ヘムの合成と、それを用いた再構成ミオグロビンの構造と機能の相関について検討したものである。
 ヘムタンパク質においては、ヘムとアポタンパク質間の相互作用が機能を決定する重要な因子であり、その中でも1)ヘム鉄と近位ヒスチジンのイミダゾール残基との相互作用、2)ヘム側錯アルキル基とタンパク質のアミノ酸残基とのvan der Waals相互作用、3)ヘムの6,7位のプロピオン酸基とタンパク質の親水性アミノ酸残基との極性相互作用が大きな因子とされてきた。
 また、プロトヘムのような非対称ヘムをアポミオグロビンと再構成した際、タンパク質内で天然のプロトヘムの取る正常型配向とα-γ軸で180°回転した反転型配向が存在し、通常正常型に配向は傾くが、その平衡に達する速度は、ヘムの周辺置換基およびpHに依存しており、機能にも影響を及ぼすことが知られている。
 本研究では、まずそのモデル化合物となる種々の化学修飾ヘムを設計し、 retro-synthetic methodに基づき、ピロール単位から出発し目的とするヘムを合成した。そして、マッコウ鯨のミオグロビンから調製したアポミオグロビンと新たに合成した化学修飾ヘムを結合させ、新規再構成ミオグロビンを得た。
 ヘム-タンパク質間の構造と機能の相関を探る手段として、再構成ミオグロビンの酸素親和力、紫外-可視吸収スペクトルによる電子状態の変化、置換基の影響を見る酸化・還元電位、常磁性NMR(1H-,19F核-)の測定を行った。
 本研究では、まず、未解明の部分が多いヘム-タンパク質間の極性相互作用を明らかにするために、ヘムの6位あるいは7位をメチル基と置換した再構成可能ヘムを合成し、アポミオグロビンとそれぞれ再構成した。酸素親和力、1H-NMRの測定から、6位のプロピオン酸基がメチル基に置換されると、オキシミオグロビンが自動酸化されてメトミオグロビンになる速度が増大することが明らかになった。これは、6位のプロピオン酸基を取り囲む水素結合ネットワークが破壊されるためと考えられる。
 第2に、トリフルオロメチル基のような電気陰性度の大きな置換基の導入によるヘムの電子状態の変化と機能との相関について検討した。トリフルオロメチル基は、他の電子求引基であるニトロ、シアノ、アセチル基とは異なり化学的にも安定である。実際、これを用いた再構成ミオグロビンの性質は、低い酸素親和性、遅い自動酸化速度等の電子欠乏状態を示し、電子状態を変化させることで機能を制御できることを提示した。
 第3に、トリフルオロメチル基のようにヘムの電子状態に大きな影響を与えることなく、フッ素の特徴を引き出す置換基として、モノフルオロ基を選択し、ヘムの1位への導入を試みた。合成されたヘムは、酸化・還元電位の測定よりほとんどヘムの電子状態には影響を与えていないことが明らかになった。
 さらに、モノフルオロ基の19F-NMRプロープとしての有用性を検討するため、ヘムの5,位にモノフルオロ基を置換した新規ヘムを合成した。これまでの、非対称ヘムの位相問題に関しては、複雑な1H-NMRにより検討されてきたが、19F-NMRの利用により非常に単純なスペクトルとなり、位相比等も簡単に求め得ることが明らかとなった。
 最後に、タンパク質間の相互作用、エネルギー・電子移動のモデル化合物として、ヘム二量体の合成を行った。スペーサーとしては、ドデカメチレン鎖を用いた単純な系であり、生体環境に近い水系でも利用できるものである。期待するようなタンパク質間相互作用を誘起するためには、さらに第3のトリガーが必要なことが示唆された。
 以上、生体中で重要な役割を担っている、ヘムタンパク質の活性中心であるヘムに焦点を絞り、これまでに無い、新規化学修飾ヘムの合成方法を示すとともに、これらのヘムをプロープとした構造変化と機能の相関、フッ素核(19F-)のプロープとしての有用性を提示した。

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