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高安定LC共振回路の設計と20年間の経年変化特性の実証

-PCM通信方式のタイミングパルス抽出用LC回路の検討-

氏名 齋田 貢
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第91号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 高安定LC共振回路の設計と20年間の経年変化特性の実証 -PCM通信方式のタイミングパルス抽出用LC回路の検討-
論文審査委員
 主査 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 教授 荻原 春生
 副査 教授 秋山 伸幸
 副査 助教授 石黒 孝

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目次
第1章 緒言 p.1
第1節 本研究の背景 p.1
第2節 本研究の目的 p.2
第3節 本研究の経緯 p.4
第4節 本研究の意義と成果 p.7
1.4.1 長期高精度測定技術の確立 p.7
1.4.2 経年変化特性設計法の確立 p.8
1.4.3 本研究の成果 p.9
1.4.4 本研究に対する評価 p.10
第5節 本論文の構成 p.11
第2章 開発当初の測定および部品の技術レベルの調査・検討 p.12
第1節 回路仕様 p.12
第2節 測定技術の検討 p.14
第3章 部品特性の調査 p.18
2.3.1 インダクタ p.18
2.3.2 コンデンサ p.21
2.3.3 可変コンデンサ p.31
第4節 回路の試作・検討 p.37
2.4.1 実験計画法による製作条件の検討 p.37
2.4.2 試作回路の特性 p.40
第5節 今後の検討課題 p.45
第3章 インダクタの設計と経年変化特性 p.47
第1節 まえがき p.47
第2節 インダクタの回路仕様 p.48
第3節 インダクタンスの変動要因の検討 p.48
3.3.1 インダクタンスの変動要因 p.48
3.3.2 温度特性 p.51
3.3.3 経年変化特性 p.52
第4節 インダクタの設計および試作 p.56
3.4.1 設計 p.56
3.4.2 試作 p.59
第5節 試作インダクタの測定結果 p.60
3.5.1 初期特性 p.60
3.5.2 経年変化特性 p.60
第6節 考察 p.63
第7節 むすび p.64
第4章 コンデンサの設計と経年変化特性 p.65
第1節 まえがき p.65
第2節 コンデンサの仕様 p.66
第3節 コンデンサの予備調査 p.68
第4節 高安定セラミックコンデンサの試作 p.70
4.4.1 誘電体材料の検討 p.70
4.4.2 製造方法の検討 p.71
4.4.3 経年変化特性の検討と設計 p.72
第5節 試作コンデンサの測定結果 p.73
4.5.1 信号レベル特性と温度特性 p.75
4.5.2 経年変化特性 p.76
第6節 考察 p.79
4.6.1 キャパシタンスに及ぼす湿度の影響 p.79
4.6.2 誘電体素子の経年変化特性 p.81
第7節 むすび p.82
第5章 回路の設計と経年変化特性 p.83
第1節 まえがき p.83
第2節 回路の試作 p.86
第3節 試作回路の測定結果 p.88
5.3.1 信号レベル特性 p.88
5.3.2 温度特性 p.89
5.3.3 経年変化特性 p.91
第4節 考察 p.95
第5節 むすび p.97
第6章 測定法 p.98
第1節 まえがき p.98
第2節 測定誤差の目標値 p.99
第3節 初期特性測定法 p.99
6.3.1 信号レベル特性 p.99
6.3.2 温度特性 p.100
第4節 経年変化特性測定法 p.103
6.4.1 概要 p.103
6.4.2 水晶共振子と水晶コンデンサ p.108
6.4.3 経年変化特性測定法と測定誤差 p.115
第5節 考察 p.123
第6章 むすび p.125
第7章 総括 p.126
第1節 インダクタ p.126
第2節 コンデンサ p.127
第3節 回路 p.128
第4節 測定法 p.130
第8章 謝辞 p.132
第9章 参考文献 p.133
第10章 付図 p.139

 社会の高度化と共に公共性の高い通信機には長期(通常20年)にわたる信頼性の確保が義務付けられ、些細な事故も許されなくなった。従って、このような通信機に実装するLC部品および回路には高い信頼性が要求される。更に、アナグロからディジタルへの方式変換はLC共振回路の周波数安定度をより厳しいものにしている(約1桁)。この命題に対して、長期にわたる安定性と信頼性は従来は精々2、3年の経時変化の測定から類推していた。その理由は、20年に亙る信頼出来る測定技術がなかったためであると考えられる。そこで本研究では、1963年研究開始当時、考え得る最高の測定環境(恒温測定室、標準器および測定器)を整備し、PCM通信機用に新たに開発したLC部品及びその回路の安定性を20年(1967年から1987年)に亙り実測した。これにより長年に亙るLC部品及び回路の特性変動の実態が初めて明らかにされ、また信頼性の高い経年変化特性の実験式が得られた。
 本論文は、以上の実証試験の結果の記録を「高安定LC共振回路の設計と20年間の経年変化特性の実証」と題してまとめたもので、7章より構成されている。
 第1章「緒言」では、社会の高度化に伴って公共通信網を担う通信機の長期的信頼性が如何に重要であるかを概説し、さらにこれら通信機に用いるLC部品や回路の信頼性を如何に保証すればよいかに触れ、特に20年の実証試験の必要性を明確にした。
 第2章「開発当初の測定および部品の技術レベルの調査・検討」では、まず1963年当時の測定技術の水準について調査し、次いでインダクタ、コンデンサ及び回路特性とそれらの変動要因を検討し、これまでの測定技術及び部品、回路等が長期安定性の面から改良が必要であることを明らかにした。
 第3章「インダクタの設計と経年変化特性」では、インダクタの経年変化はこれに用いるNi-Znフェライトの磁気的、歪み的余効現象によることを予想し、短時間の特性変化の延長上に20年後の値を予測して設計指針とし、一方20年間の実測から経年変化特性の実験式を導出し、それが初めの予測と基本的に合致することを明らかにした。
 第4章「コンデンサの設計と経年変化特性」では、耐湿密封型Mg-TiO3セラミックコンデンサの経年変化はインダトタと同様に短時間の特性変化の延長上に20年後を予測し、設計指針としたことを述べ、20年間の実測は初めの予測と基本的に合致することを確認した。
 第5章「回路の設計と経年変化特性」では、上記のLC部品から構成される共振回路の長期にわたる周波数安定性に関するもので、その経年変化は先のLC部品の実測結果から推定される傾向と一致する20年の実測結果が得られたことを述べた。
 第6章「測定法」では、上記LC部品及び共振回路の経年変化を20年に亙り高精度に計測するための測定環境及び測定技術について述べ、どのように長期に亙り高精度で測定を維持してきたかについて述べた。
 第7章は「まとめ」で、以上の事柄を総括した。
 以上のように、本論文はPCM通信機のタイミングパルス抽出回路に用いるLC部品及びそれから構成されるLC共振回路の20年間に亙る経年変化の実証試験の記録で、国内外でも類例を見ない貴重な資料で、今後この分野における部品及び回路の開発、設計の基準となり得るものである。

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