多層弾性理論と供用性を考慮した鉄道貨物ヤード舗装の設計および維持修繕に関する研究
氏名 上浦 正樹
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第85号
学位授与の日付 平成8年7月17日
学位論文の題目 多層弾性理論と供用性を考慮した鉄道貨物ヤード舗装の設計および維持修繕に関する研究
論文審査委員
主査 教授 丸山 暉彦
副査 教授 鳥居 邦夫
副査 教授 丸山 久一
副査 助教授 唐 伯明
副査 長岡工業高等専門学校教授 佐藤 勝久
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目次
第1章 はじめに p.4
第2章 新設舗装の設計 p.6
2.1 設計交通量
2.1.1 換算交通量の考え方 p.6
2.1.2 コンテナ積載率の補正 p.6
2.1.3 コンテナ荷役作業ホームの通過台数分布 p.8
2.1.4 12ftフォークリフト換算係数 p.13
2.1.5 まとめ p.16
2.2 路床支持力の考え方
2.2.1 今までの研究 p.18
2.2.2 鉄道貨物ヤードにおける路床弾性係数EとCBRの関係 p.19
2.2.3 まとめ p.21
2.3 路盤厚の決定法
2.3.1 緒論 p.22
2.3.2 新設舗装の設計に関する原理及び既往の研究 p.22
2.3.3 舗装の構造設計 p.24
2.3.4 まとめ p.30
2.4 適用事例
2.4.1 各設計法の比較 p.34
2.4.2 新路盤材料の導入 p.34
2.4.3 大型フォークリフト導入による既設アスファルト舗装の改良 p.46
2.4.4 まとめ p.48
第3章 既設舗装における供用性の評価方法 p.50
3.1 緒論 p.50
3.2 既往の研究 p.50
3.3 供用性に関する評価方法の検討
3.3.1 路面性状の調査 p.52
3.3.2 鉄道貨物舗装供用指数(Kamotu Maintenance Index) p.54
3.3.3 アスファルト舗装各層の弾性係数の低下と換算交通量の関係 p.59
3.3.4 供用性の低下と平坦性の関係 p.66
3.3.5 AI式と舗装各層の弾性係数の関係 p.69
3.4 補修による供用性回復の評価方法 p.70
3.5 KMIと舗装各層の弾性係数の関係 p.72
3.6 まとめ p.74
第4章 貨物ヤード舗装のトータルコスト p.76
4.1 トータルコストの考え方 p.76
4.1.1 トータルコストの導入 p.77
4.1.2 トータルコストの決定方法 p.77
4.2 舗装修繕のコスト
4.2.1 条件の設定 p.79
4.2.2 修繕パターンの設定 p.82
4.3 フォークリフトの修繕コスト
4.3.1 ユーザーコストの対象 p.85
4.3.2 ユーザーコストの被害量の算定 p.85
4.3.3 フォークリフト修繕費の設定 p.94
4.4 トータルコストの算定 p.96
4.5 まとめ p.98
第5章 結論 p.99
謝辞 p.101
氏名 上浦 正樹
日本貨物鉄道(JR貨物)は、民営分割化のあと荷役作業の効率化と多様化をめざし、貨物のコンテナ化を推進してきた。そのため高床ホームを撤去し、コンテナ荷役ホームに改良することや大型フォークリフトの導入などを進めてきた。現在コンテナ荷役ホームで使用している大型フォークリフトは最大荷重が40tfに達する重輪荷重であり、従来の経験的設計法であるCBR-Ta法では扱っていない輪荷重であることなどの問題が生じてきた。そこで、新たに重輪荷重に対応できる設計法を定めるため、多層弾性理論に基づく設計法を検討し、さらにライフサイクルを考慮した補修工法の選定方法を提案した。
1.交通量の算定
鉄道貨物駅のコンテナ荷役ホームでは、道路における線状交通流とは異なり、フォークリフトの荷役作業による面的な交通が発生する。その分布は一様ではなく、荷役ホームの形状、列車発着本数、コンテナの種類などに大きく左右される。そこで、コンテナ荷役ホームを2m×2mのメッシュに区切り、荷役線のコンテナ貨車2両に対して荷役作業をおこなうフォークリフトからメッシュを通過する走行軌跡分布を求めた。この分布とフォークリフトが取り扱うコンテナ個数から、フォークリフトの設計交通量を求める方法を提案した。
2.路床強度の算定
CBR-Ta法では、路床の支持力を表す指標として設計CBRが用いられてきたが、本研究では理論設計法を用いて路盤厚の設計をするため、路床の弾性係数を用いることした。そこで、路床土の弾性係数とCBRの関係を調査し、E(Kgf/ )=100×CBRの関係を用いればよいことを確認した。
3.路盤厚の設計
本研究で提案した設計法は、多層弾性理論とFWDたわみから推定する逆解析弾性係数を用いて、舗装各層の層厚を定める方法である。設計ひずみの設定に関しては、米国アスファルト舗装協会(AI)で提案されている疲労寿命算定式を用いた。
この結果、従来から用いているTa法では設計が難しい新材料の導入が可能となった。また、設計を簡易に行うため、舗装材料ごとに路床強度と交通量から舗装厚の設計ができるように回帰式を求めた。
4.実際の適用事例
本研究で求めた新設舗装の舗装厚は、従来のTa法から算定される舗装厚よりも、等価換算厚で2~3◆小さい値となった。また、新材料の採用例として、路線で発生したバラストとアスファルト乳剤を用いた開粒型大粒径路盤を、本研究の設計法により敷設した。この供用効果は良好であり、本設計法の妥当性が確認された。
5.荷役作業ホーム既設舗装の供用性低下を評価する方式
舗装管理者による補修の要不要情報を調査し、フォークリフトのように重輪荷重で平面的に使用するケースに適合する舗装サービス指数KMI(Kamotsu Maintenance Index)を、ひび割れ、段差などの路面性状の関数として、重回帰分析により求めた。KMIと交通量の関係から、いつ補修が必要となるかが判定できるようになった。この補修実施時期は、既設舗装の逆解析弾性係数と交通量の関係からわかる供用性低下が始まる点とほぼ同じ範囲であることが明らかとなり、既設舗装に対しても舗装各層の逆解析弾性係数を用いることの妥当性が確認された。また、これにより、切削オーバーレイ、打換え等の補修工法の選定を、KMIを用いて評価することが可能となった。
6.トータルコスト
舗装の平坦性の悪化が、フォークリフト等の荷役装置の修繕コストに大きく影響することを明らかにし、舗装の修繕コストと合計したトータルコストを最少とする補修工法の選択と補修時期を定める方法を示した。