Plasma and Fluid Dynamics in Discharge-Pumped Excimer Lasers
(エキシマレーザのプラズマ及び流体動特性に関する研究)
氏名 朱 旗峰
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第98号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 Plasma and Fluid Dynamics in Discharge-Pumped Excimer Lasers (エキシマレーザのプラズマ及び流体動特性に関する研究)
論文審査委員
主査 教授 八井 浄
副査 教授 増田 渉
副査 助教授 升方 勝己
副査 助教授 川田 重夫
副査 講師 江 偉華
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Contents
Chapter 1 Introduction p.1
References p.5
Chapter 2 Development of Self-Consistent Discharge Model p.6
2.1 Introduction p.6
2.2 Time-Dependent Boltzmann Equation p.6
2.2.1 Description of Boltzmann Equation p.6
2.2.2 Electron Transport Coefficients and Rate Coefficients p.8
2.2.3 Numerical Method p.9
2.3 Plasma Chemistry Model p.11
2.4 Discharge Circuit p.18
2.5 Optical Resonator Model p.20
2.6 Self-Consistent Treatment and Results p.21
2.7 Concluding Remarks p.26
References p.27
Chapter 3 Nonstationarity of Electron Energy Distribution Function p.29
3.1 Introduction p.29
3.2 Evaluation Method p.29
3.3 Nonstationarity without Electron-Electron Collisions p.30
3.4 Nonstationarity with Electron-Electron Collisions p.33
3.5 Summary p.37
References p.39
Chapter 4 Effects of Secondary Electrons due to Ionization on Model Predictions p.40
4.1 Introduction p.40
4.2 Secondary Electron Spectrum p.40
4.3 Effects of Secondary Electrons Model Predictions p.42
4.4 Conclusions p.50
References p.51
Chapter 5 Correct Limit Approximations for Planar,Cylindrical,and Spherical Blast Waves p.52
5.1 Introduction p.52
5.2 High-Order Theory p.53
5.3 Snowplow Theory p.54
5.4 Correct Limit Conditions p.55
5.5 New Approach p.55
5.6 Correct Limit Formulas p.57
5.7 Analysis of Shock Waves from Electrodes and Preionization Pin Arrays p.60
5.8 Conclusions p.61
References p.62
Chapter 6 Numerical Study of Nonuniform Energy Deposition and Flowfield p.63
6.1 Introduction p.63
6.2 Discharge Model p.64
6.3 Fluid Model p.65
6.4 Gas Temperature Profiles p.66
6.5 Shock Waves and Flowfields p.69
6.6 Conclusions p.73
References p.75
Chapter 7 Conclusions p.76
Acknowledgments p.79
List of Publications p.80
エキシマレーザのプラズマ動特性及び流体動特性を解明するには、レーザの設計と出力の向上を行う際の重要な課題である。通常のガスレーザと異なり、エキシマレーザでは放電管の中で複雑な化学反応が起こる。プラズマの動特性を解明するために、それぞれの反応定数が必要である。もっとも問題になるのは電子衝突項で、衝突する電子の速度によって反応定数が大幅に変化することである。放電中は換算電界が時間とともに変化するので、それに応じて正確な電子エネルギー分布EEDF(Electron Energy Distribution Function)を求める必要がある。従来のモデルには様々な問題点があった。即ち、EEDFの非定常性、電子-電子衝突、及び二次電子などの影響を無視したため、大きな誤差が含まれていた。また、エキシマレーザの高繰返し化を推進するため、衝撃波現象の解明は重要である。
本研究の目的は下記のようである。1)新しい放電モデルを開発する、2)EEDFの非定常性、電子-電子衝突、及び二次電子の重要性を解明する、3)衝撃波の伝播特性を予測する解析式を求める、4)衝撃波の発生原因となる加熱された放電部ガスの温度分布を計算する、5)流体力学を用いて、レーザチャンバー中の衝撃波の振る舞いを明らかにする。
第1章「序論」では、エキシマレーザの有用性を概説し、従来の研究の問題点を明確にするとともに、本研究の目的、意義及び構成を述べる。
第2章「Self-consistent放電モデルの開発」では、精度の良い放電モデルとコンピュータープログラムを新たに開発した。本モデルの特徴はボルツマン方程式を非定常法で解くことである。EEDF、反応定数、平均エネルギー、移動度などを非定常ボルツマン方程式により計算した。EEDFが局部電界と非平衡になった場合、本手法は非常に重要である。このモデルのもう一つの特徴はself-consistent性である。即ち、ボルツマン方程式、速度方程式、発振方程式及び電気回路方程式を同時に解くことが可能となった。本モデルを使用して、放電励起XeCIエキシマレーザの様々なパラメター(EEDF、反応定数、移動度、放電電流、放電電圧、粒子密度、レーザ出力等)の時間的変化を求めた。
第3章「電子エネルギー分布関数の非定常性」では、時間依存性を含むボルツマン方程式を用いて、非定常法が重要であることを理論的に示した。EEDFの非定常性を、エネルギー緩和時間の数値計算から調べた。更に、非定常法と準定常法を比較して、非定常性の重要性を論証した。その結果、1)低電界では、強い非定常性が起こり易い、2)放電初期段階よりも、放電電圧の転換点付近の非定常性が大きい、3)従来の準定常処理方法では、放電電圧の転換点付近で、電子の平均エネルギーや電子衝突反応定数が実際よりも低くなる、4)電子-電子衝突により、これを無視した場合に比べて電子密度の最大値が15%減少する、5)電子密度がしきい値を越えると非定常性が強くなる、6)粒子密度は非定常性に大きく影響を及ぼす、ことなどが判明した。
第4章「イオン化によって生成された二次電子の重要性」では、様々な放電モデルを比較し、二次電子の影響を理論的に調べた。従来の放電モデルと異なり、本モデルでは非定常ボルツマン方程式に含まれる電離項を二次電子スペクトルを用いて計算した。その結果、二次電子の影響により、1)EEDFが変化する、2)Xeによる直接電離(Xe+e→XE+ +2e)の反応定数が小さくなる、3)電子、Xe+ 、XeCL*、光子等の最大密度が減少する、4)二次電子が絶縁破壊遅延時間を決定するのに重要な役割を果たす、5)本モデルによる計算値が、絶縁破壊遅延時間の実測値と広い条件で一致する、ことが明らかになった。
第5章「平面形、円筒形および球形の衝撃波のCorrect Limit解析式」では、従来の理論の問題点を明確にするとともに、平面形、円筒形及び球形の衝撃波の伝播特性を予測する新しい手法を提案した。得られた解析式は従来のものに比べて、より一層広範な条件・範囲に適用でき、精度が良いことが判明した。さらに、エキシマレーザの主電極表面及び予備電離放電から発生した衝撃波が素早く減衰することが明らかになった。
第6章「エネルギーの空間分布及び衝撃波の数値計算」では、放電エネルギーとガス温度の空間分布を上記放電モデルにより計算し、エキシマレーザの流体的数値計算の初期条件として用いた。Chang電極係数とXe濃度が高い場合に加熱範囲は狭くなり、放電部中央の最高ガス温度は高くなる。希釈ガス種類により、温度分布も大きく変化する。更に、二次元非粘性の圧縮性流体の保存方程式を一般座標系でTVD(Total Variation Diminishing)差分法により解き、衝撃波の発生と伝播特性を明らかにした。
第7章「結論」では本研究を総括した結論を述べた。