HIP法による高密度・高強度TiO2焼結体の作製とその表面特性に関する基礎的研究
氏名 岸 幸男
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第135号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文の題目 HIP法による高密度・高強度TiO2焼結体の作製とその表面特性に関する基礎的研究
論文審査委員
主査 教授 植松 敬三
副査 助教授 斎藤 秀俊
副査 教授 小松 高行
副査 教授 松下 和正
副査 助教授 内田 希
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目次
第1章 序論
1-1 研究の背景 p.1
1-2 従来の酸化チタンに関する研究 p.3
1-3 研究の目的 p.4
1-4 論文の概要 p.5
1-5 参考文献 p.7
1-6 図表 p.9
第2章 HIP法による高密度・高強度TiO2焼結体の作製
2-1 緒言 p.15
2-2 実験方法 p.17
2-3 実験結果 p.21
2-4 考察 p.24
2-5 結論 p.27
2-6 参考文献 p.28
2-7 図表 p.29
第3章 HIP法で作製したTiO2焼結体の一般手的な材料特性
3-1 緒言 p.37
3-2 実験方法 p.39
3-3 実験結果 p.42
3-4 考察 p.45
3-5 結論 p.51
3-6 参考文献 p.52
3-7 図表 p.53
第4章 HIP法で作製したTiO2焼結体の表面特性
4-1 緒言 p.61
4-2 実験方法 p.64
4-3 実験結果 p.67
4-4 考察 p.70
4-5 結論 p.73
4-6 参考文献 p.74
4-7 図表 p.76
第5章 HIP法で作製したTiO2焼結体のプラズマ耐蝕性
5-1 緒言 p.86
5-2 実験方法 p.88
5-3 実験結果 p.91
5-4 考察 p.94
5-5 結論 p.97
5-6 参考文献 p.98
5-7 図表 p.100
第6章 総括 p.112
謝辞 p.117
本研究に関する論文発表、口頭発表 p.119
本研究に関する出願特許 p.120
その他の研究による研究論文、口頭発表 p.121
参考資料:HIP法で作製したTiO2焼結体の用途と今後の展望
1 HIP焼結体の用途と応用製品 p.112
2 市場動向 p.123
3 今後の課題と展望 p.124
4 図表 p.125
セラミックスは装置の小型・軽量化、高精度化、長寿命化等に有効であり、半導体産業の構造部材に用途が拡大している。しかし、絶縁体・高硬度で欠陥のある従来のセラミックスは静電気によるデバイスの破壊、硬度差による半導体基板との接触ダメージと摩耗発塵、欠陥に起因する平滑性の低下、粒子の脱落および水分やプロセスガスの吸着量とその脱離性などが本分野で問題にされている。
導電性ポアフリーセラミックスは半導体産業で静電気、表面汚染、ガス脱離性などの問題解決と微細・高集積化する次世代半導体の製造装置開発に必要とされている。導電性ポアフリーセラミックスにはアルミナ並の機械的特性と耐蝕性、半導体基板と同時の硬度および優れた平滑性の材料が本分野で必要とされている。本研究は酸化チタンのHIP(Hot Isostatic Press)焼結体が低比重で半導体基板と同等の硬度があり優れた導電性の高密度・高強度材料が得られることに着目した。本論文は6章から構成されており、次世代半導体製造装置への応用を目的としてHIP法による高密度・高強度TiO2焼結体の製造条件とその特性を検討した。
第1章「序論」では、本研究の背景として半導体産業でのセラミックスの用途、問題点と次世代半導体製造装置の開発に必要なセラミックスのニーズ、要求特性を記載するとともに従来の酸化チタン焼結体に関する研究を説明し、本研究の意義と目的を明らかにした。
第2章「HIP法による高密度・高強度TiO2焼結体の作製」では、原料粉末特性、常圧焼結とHIP処理条件を詳細に検討した。HIP法で作製した酸化チタン焼結体はアルミナ並の高強度で緻密質の導電性構造材料であることを明らかにした。導電性・高密度のHIP焼結体は高純度・微細なルチル相の酸化チタン粉末をCIP成型し、空気中、1200℃×2時間常圧焼結後にアルゴン中、1000℃×150MPa×2hr HIP処理して得られることを示した。
第3章「HIP法で作製したTiO2焼結体の一般的な材料特性」では、HIP焼結体の導電性構造材料としての可能性を機械的特性、電気的特性および耐蝕性について検討した。HIP焼結体は半導体基板(Si)とほぼ同じ硬度でアルミナ並の優れた力学的特性、高温特性、熱衝撃特性および耐蝕性のある導電性構造材料であることを明らかにした。高純度で緻密質のHIP焼結体はフッ酸溶液による耐蝕性が飛躍的に改善されることを示した。また、優れた導電性のあるHIP焼結体は静電気対策に有効な構造材料であることを示した。
第4章「HIP法で作製したTiO2焼結体の表面特性」では、HIP焼結体研磨面のマクロ領域からミクロ領域の微構造、表面平滑性およびAPIMS(Atmospheric Pressure Ionization Mass Spectrometry)を用いた昇温脱離法による水分吸着量を検討した。HIP焼結体研磨面はポアフリー性、表面平滑性に優れた水分吸着量の少ない導電性構造材料であることを明らかにした。ポアフリー性は光学顕微鏡、SEM、AFM(Atomic Force Microscope)法により非常に緻密で欠陥のない微構造が広範囲て観察された。触針法、レーザ干渉法、AFM法で測定した表面粗さ(Ra)はÅ-nmオーダであり、HIP焼結体研磨面はポアフリー化と粒径の微細化により優れた表面平滑性が得られることを示した。また、ポアフリー性と平滑性に優れたHIP焼結体研磨面の水分吸着量は150-300℃で1cm2当たり8-17×10の13乗moleculesであり、水分の離脱性に優れた構造材料であることを示した。
第5章「HIP法で作製したTiO2焼結体のプラズマ耐蝕性」では、HIP焼結体のアルゴン、窒素、水素、酸素、塩酸プセズマによる耐蝕性を検討した。HIP焼結体はプラズマダメージによる表面特性、機械的特性、電気的特性、表面構成相に顕著な特性低下がなく、優れたプラズマ耐蝕性の導電性構造材料であることを明らかにした。HIP焼結体研磨面の優れたポアフリー性と表面平滑性はプラズマ処理後も認められた。また、曲げ強度、ヤング率、ビッカース硬度はプラズマダメージによる特性低下がなく、HIP焼結体表面はプラズマ処理後も金属汚染のないTi-O結合の導電性構造材料であることを示した。
第6章「総括」では、各章で得られた研究成果をまとめた。
参考資料「HIP法で作製したTiO2焼結体の用途と今後の展開」では、HIP焼結体の製品応用例と今後の課題・展望について記載した。本研究で得られた酸化チタンのHIP焼結体は次世代半導体製造装置の構造部材に実用化され、セラミックス業界、半導体産業、社会の発展に貢献していることを補足説明した。