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高性能パルスガスレーザ用予備電離光源の研究

氏名 古味 孝夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第146号
学位授与の日付 平成9年3月25日
学位論文題目 高性能パルスガスレーザ用予備電離光源の研究
論文審査委員
 主査 教授 八井 浄
 副査 教授 増田 渉
 副査 助教授 升方 勝己
 副査 助教授 原田 信弘
 副査 講師 江 偉華

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 放電励起パルスガスレーザの応用と課題 p.2
1.2 放電励起パルスガスレーザの予備電離 p.3
1.3 本研究の目的と意義 p.4
1.4 本論文の構成 p.4
参考文献 p.6
第2章 予備実験 p.8
2.1 はしがき p.9
2.2 予備電離の機構 p.9
2.3 予備電離光源 p.11
2.3.1 沿面ワイヤーコロナ予備電離 p.11
2.3.2 沿面マルチチャネルアーク予備電離 p.14
2.4 初期電子密度の計測 p.16
2.4.1 はじめに p.16
2.4.2 実験装置 p.17
2.4.3 実験結果 p.19
2.5 レーザ発振特性 p.21
2.5.1 はじめに p.21
2.5.2 予備電離に寄与する紫外線の波長 p.21
2.5.2.1 実験装置 p.21
2.5.2.2 実験結果 p.23
2.5.3 高効率・高出力化 p.36
2.5.3.1 実験装置 p.36
2.5.3.2 実験結果 p.37
2.6 レーザガス寿命 p.42
2.6.1 はじめに p.42
2.6.2 実験装置 p.42
2.6.3 実験結果 p.43
2.7 まとめ p.46
参考文献 p.48
第3章 高繰り返しTEA CO2レーザ p.51
3.1 はじめに p.52
3.2 実験装置 p.52
3.3 実験結果及び考察 p.55
3.4 まとめ p.61
参考文献 p.62
第4章 Ar-Xeレーザ p.63
4.1 はじめに p.64
4.2 実験装置 p.66
4.3 実験結果及び考察 p.67
4.4 まとめ p.76
参考文献 p.77
第5章 結論 p.79
5.1 総括 p.80
5.2 今後の展望 p.81
謝辞 p.83
著者論文目録 p.84

 放電励起パルスレーザは、レーザレーダ、測距器、プラズマ計測用の光源、加工機、材料開発等様々なところで用いられている。近年、エキシマレーザは、微細加工用やステッパー装置の光源として、また、TEA (Transversely Excited Atmospheric) CO2レーザは、原子核燃料の同位体分離の光源として注目されている。これらに応用するためには、生産性を向上させるため、高効率、高出力、高繰り返し運転が必要不可欠である。しかしながら、繰り返し運転を行うとレーザガスが劣化し、出力と効率の低下を招くという問題点が顕著になってきた。ガスの使い捨てではランニングコストが掛かりすぎるため、封じきり運転で長寿命のレーザ装置の開発が必要とされている。
 一般に、高繰り返し動作の装置には簡便さから紫外線予備電離が使われているが、大きく分けて、スパーク放電とコロナ放電が利用されている。スパーク放電予備電離では紫外線強度が大きく比較的高効率が得やすいが、レーザガスの寿命が短い欠点があった。一方、コロナ放電では、紫外線強度が低いため、低効率であったが、ガスの寿命が長いという利点があった。
 そこで本研究では、放電励起パルスレーザの高効率、高出力、長寿命動作を目的に、2種類の予備電離光源、即ち沿面ワイヤーコロナ予備電離光源(SWC : Surface-Wire-Corona Preionizer)と沿面マルチチャンネルアーク予備電離光源(SMA : Surface Multi-channel Arc Preionizer)を考案し、CO2レーザガス中でその特性について調べた。更にそれらを各種レーザに実際に適用し、その性能向上を図った。
 本論文では、それらの結果を以下の5章に記している。
 第1章では、序論であり、放電パルスレーザの予備電離について歴史的背景、予備電離の種類について説明した上で、本研究の目的と意義について述べた。
 第2章では、本実験で考案したSWCとSMAの予備電離光源の構造と特徴を述べ、その両者を比較した実験について述べた。ここでは、1atmのCO2レーザガス中での光電子密度の計測結果を示した。予備電離に寄与している紫外光の波長帯域をLiFとSiO2の透過特性の違いを利用して調べた。更に、CO2レーザ発振特性(出力、効率)の比較、繰り返し動作時のレーザガスの寿命について比較した実験結果について述べた。
 第3章では、第2章の結果を踏まえ、SWCをTEA CO2レーザに適用し、高効率、高出力、封じ切りレーザの開発を目的として行った実験について述べた。従来のコロナ予備電離で効率が低い原因が、比誘電率の低い誘電体を介したコロナ放電であるため、予備電離光源に流れる電流が少なく、結果として紫外光の強度が弱くレーザ出力の効率が低くなると考えられる。そこで、本研究で考案したSWCでは、比誘電率の高い、SrTiO3セラミック(εr=1600)を用いて、予備電離光源に流れる電流を増加した。その結果、単発動作において、10.1%の効率を得た。従来のアルミナを用いた結果(約7%)に比べ効率が大幅に向上した。繰り返し動作においても、効率10.2%を得ることができ、安定に動作した。さらに、ガス寿命の実験では、2.3×10の6乗ショットにおける出力減少が30%であった。これは今まで報告されている結果に匹敵し、高効率で長寿命のTEA CO2レーザが実現された。
 第4章では、SMAを原子レーザであるAr-Xeレーザに適用した実験について述べた。希ガスの混合ガス、特に電離電圧の低いガス中では、アーク放電が発生しやすく、レーザ媒質に均一に効率よくエネルギーを注入することが困難である。このようなガス中でマルチチャンネルの沿面アークが発生しやすいことを利用して、SMAを適用した。その結果、入力エネルギーを絞り込むことで、2.5%の高効率を達成した。この値は、UV自動予備電離タイプのAr-Xeレーザでは、最高効率である。
 第5章は、結論であり、本研究を総括している。

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