Development of lapping technology for mirror-like finish using a lathe with linear motor(リニアモータ旋盤を用いた鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発)
氏名 Aung Lwin Moe
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第552号
学位授与の日付 平成22年8月31日
学位論文題目 Development of lapping technology for mirror-like finish using a lathe with linear motor (リニアモータ旋盤を用いた鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発)
論文審査委員
主査 教授 田辺 郁男
副査 教授 柳 和久
副査 准教授 永澤 茂
副査 准教授 明田川 正人
副査 准教授 磯部 浩巳
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LIST OF ABBREVIATIONS p.v
CHAPTER 1 INTRODUCTION p.1
1.1 History of lapping p.1
1.2 Increasing demand on various high quality products p.3
1.3 Linear motor application in manufacturing industries p.6
1.4 Recent situation of research on lapping p.7
1.5 Objective of research p.9
1.6 Scope of research p.10
1.7 Composition of thesis p.11
References p.13
CHAPTER 2 LAPPING TECHNOLOGY OF MIRROR-LIKE FINISH FOR OUTER CYLINDRICAL SURFACE p.16
2.1 Introduction p.16
2.2 Development of lapping system to assemble the lathe p.17
2.2.1 Development of a lapping tool p.17
2.2.2 Development of a lapping slurry p.19
2.2.3 Linear motor lathe used in the experiment p.21
2.2.4 Experimental set up and lapping procedure for outer cylindrical surface p.23
2.3 Investigation of governing factor for developed lapping process p.24
2.3.1 Lapping pressure to pick up the diamond grains p.25
2.3.2 Concentration of diamond grains in the lapping slurry for catching diamonds p.27
2.3.3 Lapping pressure and lapping speed for retaining of diamond grains p.28
2.4 Mirror-like surface finishing technology by high speed lapping p.31
2.4.1 Relationship between the feed speed and the spindle speed p.32
2.4.2 Development of lapping track on work surface p.32
2.4.3 Evaluation of the improvement of surface roughness p.33
2.4.4 Consideration of productivity by reducing lapping time p.36
2.4.5 Micro-Vickers hardness measurement on mirror-like surface p.41
2.4.6 Evaluation of the geometrical from of developed lapping process p.43
2.5 Consideration of vibration for mirror-like surface processing p.45
2.6 Conclusion p.53
References p.54
CHAPTER 3 LAPPING THECNOLOGY OF MIRROR-LIKE FINISH FOR CYLINDRICAL INNER AND END SURFACES p.57
3.1 Introduction p.57
3.2 Development of lapping system for cylindrical inner and cylinder end surface p.58
3.2.1 Development of lapping tool for cylindrical inner surface p.58
3.2.2 Development of lapping tool for cylinder end surface p.60
3.2.3 Condition of lapping slurry on cylindrical inner and cylinder end surfaces p.61
3.3 Evaluation of process characteristics for cylindrical inner surface lapping p.63
3.3.1 Experimental set up and lapping procedure for inner surface p.63
3.3.2 Evaluation of the inner surface lapping p.66
3.3.3 Micro-Vickers hardness measurement for mirror-like surface p.71
3.4 Evaluation of process characteristics for cylindrical end surface p.73
3.4.1 Experimental set up and lapping procedure for cylinder end surface p.73
3.4.2 Evaluation of the cylinder end surface lapping p.77
3.4.3 Micro-Vickers hardness measurement for cylinder end surface lapping p.84
3.5 Consideration of vibration for mirror-like surface processing p.86
3.6 Conclusion p.86
References p.87
CHAPTER 4 LAPPING TECHNOLOGY FOR IMPROVEMENT OF GEOMETRICAL FORM p.89
4.1 Introduction p.89
4.2 Lapping system that installs in lathe p.90
4.2.1 Improved lapping tool p.90
4.2.2 Improvement of lapping slurry p.91
4.2.3 Experimental set up and method of lapping p.95
4.3 Comparison of developed lapping processing and conventional grinding process p.97
4.4 Examination of optimum conditions for improvement of geometrical form p.101
4.4.1 Consideration of the principle of geometrical form improvement p.101
4.4.2 Consideration of optimum lapping pressure and spring constant p.104
4.4.3 Consideration of the optimum process condition for the spindle speed and the feed speed p.113
4.4.4 Evaluation of the geometrical form improvement p.116
4.4.5 Micro-Vickers hardness measurement for geometrical form improvement p.119
4.5 Consideration of the surface roughness and diameter accuracy p.121
4.6 Influence of geometrical form improvement by accuracy of machine p.124
4.7 Conclusion p.127
References p.129
CHAPTER 5 CONCLUSION p.130
5.1 Conclusion p.130
5.2 Future work p.131
ACKNOWLEDGEMENT p.132
APPENDIX: LIST OF ACHIEVEMENTS p.133
工業製品の高品位化のために多くの部品に対して鏡面加工が要求されることが多くなり,これを迅速に加工できる機械及び加工技術が要求されている.一方,最近,工作機械の業界ではリニアモータを使用した工作機械がよく開発され,高速送り,早い加減速特性,低振動駆動(ボールネジ駆動に比べて)などがその特徴として挙げられている.
そこで論文では,円筒工作物の外周面,内面,端面を高速鏡面加工するために,リニアモータ旋盤に簡易的なラッピング装置を搭載し,一台のリニアモータ旋盤で粗加工から鏡面加工までを連続的に行う技術を開発する.まず,加工の際の遠心力と重心に対して十分に砥粒を保持できるラップ剤を開発し,最適ラッピング加工条件を明らかにした.つぎに,外周円筒面加工用ラッピング端子を開発し,リニアモータ旋盤の高速送りを併用することで,砥粒のスクラッチ痕を残さない鏡面加工技術を開発した.また,内面,端面加工用ラッピング端子も開発し,外周円筒面と同様の鏡面加工技術を開発した.さらに,本ラッピング加工技術が表面粗さのみならず,真円度,真直度,円筒度,平面度の形状精度も同時に改善効果を確認した.
本論文の内容に関して,各章ごとに以下に説明する.
第1章「緒論」では,本研究の背景,目的,従来研究との関係を説明し,リニアモータ旋盤を用いた鏡面加工のためのラピング加工技術の開発の必要性について述べた.
第2章「円筒外周面の鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発」では,まず,ポリマと水を混ぜた溶液にダイヤモンド砥粒を添加し,非ニュートン特性を持たせたラップ剤を作成し,加工の際の遠心力と重力に対して十分に砥粒を保持でき,加工特性に優れているラップ剤を開発した.つぎに,PP(ポリプロピレン)製ラッピングヘッド,弦巻ばね,リニア軸受,ホルダーから構成される外周円筒面加工用ラッピング端子を開発し,ラップ剤中のダイヤモンド砥粒の最適取り込み条件と最適ラッピング条件を明らかにした.さらに,リニアモータ旋盤のZ軸方向の高速送りを併用してラッピング方向をコントロールすることで,砥粒のスクラッチ痕を残さない鏡面加工技術を開発した.その結果,ラッピング整置を搭載したリニアモータ旋盤を用いて,黄銅,S45C,超硬V10の工作物に対して,いずれも表面粗さ(最大高さ粗さ)Rzが0.1以下の円筒鏡面加工を可能にした.また,従来法に比べて加工時間を1/3に高速ラッピング加工できるアルゴリズムを構築した.
第3章「円筒内面を端面の鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発」では,円筒内面と端面加工用ラッピング端子を開発し,外周円筒面と同様の鏡面加工技術を開発した.第2章「円筒外周面の鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発」のラッピング工具を円筒内面,端面加工に直接利用することは困難であるため,内面用と端面用に改良し,一台のリニアモータ旋盤で粗旋削加工から,円筒外周鏡面加工の後に,円筒の内面と端面の同時鏡面加工を行う技術を開発した.ここでも,スクラッチ痕を残さず,方向依存性のない表面粗さを実現するために,内面のラッピング加工は円筒外周面加工と同等のアルゴリズムを内面に展開した.端面に関しては,主軸回転数とリニアモータ旋盤のX軸方向の高速送りを同期させ,ラッピング方向をコントロールすることで,砥粒のスクラッチ痕を残さない鏡面加工技術を新たに開発した.それらを用いて内面と端面のラッピング加工方法を確立し,最適条件を実験で求め,評価実験を行った.その結果,内面と端面用ラッピング工具で,超鋼,V10,S45C,黄銅の各工作物に対して,いずれも表面粗さ(最大高さ粗さ)Rzが0.1以下の円筒内面と端面の鏡面加工を可能にした.また,従来法に比べて加工時間を1/10に高速ラッピング加工できるアルゴリズムを構築した.
第4章「本ラッピング加工技術の形状精度改善の評価」では,前章までに円筒外周面,内面,端面の鏡面加工技術を展開してきたが,ここでは,さらに,本ラッピング加工による形状精度改善の効果を評価した.具体的には,一般的な普通旋盤でラッピング加工を行うために,前章までに開発したラッピング工具やラップ剤を改良し,その後,形状精度を向上させるための原理の解明,最適加工条件の検討,寸法精度と表面粗さの考察を行い,普通旋盤による形状精度改善のためのラッピング加工技術を確立し,その最適条件を明らかにした.その結果として,開発された手法で,超鋼,V10,S45C,黄銅の各工作物に対して,円筒工作物の円筒度,真円度,真直度と,端面の平面度をそれぞれ改善ができた.この際,形状精度を向上させるだけでなく,同時に表面粗さも改善することができた.
第6章「結論」では,本研究で得られた結果をまとめた.
このように,開発したラッピング加工技術は工業的に有効であった.
本論文は「Development of lapping technology for mirror-like finish using a lathe with linear motor (リニアモータ旋盤を用いた鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発)」と題し,6章より構成されている.第1章「緒論」では,研究の背景,目的,関連する従来の研究について説明し,鏡面加工のためのラピング加工技術の必要性,有効性について述べている.第2章「円筒外周面の鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発」では,まず,加工の際の遠心力と重心に対して十分に砥粒を保持できるラップ剤を開発した.つぎに,外周円筒面加工用ラッピング端子を開発し,さらに,リニアモータ旋盤のZ軸方向の高速送りを併用して,ラッピング方向をコントロールすることで,砥粒のスクラッチ痕を残さない鏡面加工技術を開発した.その結果,黄銅,S45C,超硬V10の工作物に対して,いずれも表面粗(最大高さ粗さ)Rzが0.1以下の円筒鏡面加工を可能にした.また,従来法に比べて加工時間を1/3に高速ラッピング加工できるアルゴリズムを構築した.第3章「円筒内面の鏡面加工のためのラッピング加工技術の開発」では,円筒内面と端面加工用ラッピング端子も開発し,外周円筒面と同様の鏡面加工技術を開発した.ここでも,主軸回転数とリニアモータ旋盤のZ軸およびX軸方向の高速送りを同期させ,ラッピング方向をコントロールすることで,砥粒のスクラッチ痕を残さない技術を開発した.その結果,内面と端面用ラッピング工具で,超硬,V10,S45C,黄銅の各工作物に対して,いずれも表面粗さ(最大高さ粗さ)Rzが0.1以下の円筒内面と端面の鏡面加工が可能であった.また,従来法に比べて加工時間を1/10に高速ラッピング加工できるアルゴリズムも構築した.第4章「本ラッピング加工技術の形状精度改善の評価」では,前章までに開発したラッピング工具やラップ剤を改良し,その後,形状精度を向上させるための原理の解明,最適加工条件の検討,寸法精度と表面粗さの考察を行い,普通旋盤による形状精度改善のためのラッピング加工技術を確立し,その最適条件を明らかにした.その結果として,開発した手法で,超硬,V10,S45C,黄銅の各工作物に対して,円筒工作物の円筒度,真円度,真直度,端面の平面度を改善することができた.形状精度を向上させるだけではなく,同時に表面粗さも改善することができた.第6章では,本研究で得られた結果をまとめた.
以上のように,円筒工作物の外周面,内面,端面を高速鏡面加工するとともに,円筒度,真円度,真直度,端面の表面度などの形状精度を同時に改善できるラッピング加工技術を確立し,これら開発が高品位な工業製品の制作に寄付できることを明らかにした.よって,本論文は工学上級および工業上貢献することが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.