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Study of Polymeric Separation Membranes Prepared with Layer-By-Layer Technique Using Electrostatic Self-assembly(静電自己組織化による表面修飾を利用した高分子分離膜に関する研究)

氏名 付 慧壇
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第569号
学位授与の日付 平成22年12月31日
学位論文題目 Study of Polymeric Separation Membranes Prepared with Layer-By-Layer Technique Using Electrostatic Self-assembly (静電自己組織化による表面修飾を利用した高分子分離膜に関する研究)
論文審査委員
 主査 教授 小林 高臣
 副査 教授 野坂 芳雄
 副査 准教授 今久保 達郎
 副査 産学融合特任講師 于 海峰
 副査 長岡工業高等専門学校物質工学科教授 丸山 一典

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Contents
Abbreviation list
Chapter 1. General Introduction p.1
 1.1 Layer-by-layer electrostatic self-assembly p.1
 1.1.1 Electrostatic self-essembly (ESA) p.1
 1.1.2 Electrolytes used for ESA application p.3
 1.1.3 Application of ESA multiplayer for separation p.9
 1.2 Desalination process p.12
 1.2.1 Application of membrance for desalination p.14
 1.2.2 Application of chitosan for desalination p.15
 1.2.3 Cooperation of membrance and chitosan for desalination p.17
 1.3 Outline of this thesis p.23
 1.4 Reference p.24
Chapter 2. Multilayer Composite Surface Prepared by an Electrostatic Self-assembly of Quaternary Ammonium Salt or Tetramethyl Ammonium Chloride and Polyacrylic Acid onto Poly (acrylonitrile-co-acrylic acid) Membrane p.30
 2.1 Introduction p.31
 2.2 Experimental p.33
 2.2.1 Materials p.33
 2.2.2 Preparation of base membrane p.35
 2.2.3 Preparation of composite multilayer on base memebrane surface p.35
 2.3 Characterization p.35
 2.4 Results and discussion p.36
 2.4.1 Confirmation of composite multilayer p.36
 2.4.2 Surface properties of membrane with composite multilayer p.44
 2.4.3 Application of multi-layer composite surface for permeable membranes p.51
 2.5 Conclusions p.56
 2.6 References p.56
Chapter 3. Multilayer Composite Surfaces Prepared by Electrostatic Self-Assembled Technique for Desalination p.59
 3.1 Introduction p.60
 3.2 Experimental p.61
 3.2.1 Materials p.61
 3.2.2 Synthesis of copolymer membrane material p.62
 3.2.3 Preparation of ESA multilayer on the base membrane p.62
 3.2.4 Characterization of membrane with ESA multilayer p.64
 3.3 Results and discussion p.65
 3.3.1 IR measurement of membrane with ESA multilayer p.65
 3.3.2 Surface morphology by AFM p.69
 3.3.3 Surface wettability by surface contact angle p.69
 3.3.4 Desalination by membranes with ESA multilayer p.73
 3.4 Conclusions p.85
 3.5 References p.85
Chapter 4. Self-Assembled Functionalized Membranes with Chitosan Microsphere/Polyacrylic Acid Layers and Their Application of Metal Ion Removal p.88
 4.1 Introduction p.88
 4.2 Experimental p.91
 4.2.1 Materials p.91
 4.2.2 Preparation and characterization of charged base membrane p.92
 4.2.3 Preparation of chitosan solution and chitosan microspheres p.93
 4.2.4 Preparation of FITC-labeled chitosan p.94
 4.2.5 Formation of ESA multilayer on charged PAN base membrane p.94
 4.2.6 Adsorption of Cu(II) p.96
 4.3 Results and discussion p.96
 4.3.1 Surface treatment of the base membrane p.96
 4.3.2 Formation of ESA multilayer of chitosan/PAA and chitosan microspheres/PPA p.97
 4.3.3 Layer-by-layer formation of ESA layers p.100
 4.3.4 Characterization of membrane with ESA multilayer p.104
 4.3.5 Adsorption capability for copper ion p.109
 4.4 Conclusions p.117
 4.5 References p.117
Chapter 5. Summary p.120
List of publications p.122

 近年、分子の自己組織化を活用した集積材料の開発は、省エネ、省資源に繋がるアプローチとして注目されている。分子自己組織化のアプローチとしては、分子を水素結合や疎水性相互作用などを利用して配向させる技術であり、その中で、静電相互作用による交互積層法という技術が、その簡便さ故に注目を集めてきた。この自己組織化法では、適当な基板を正電解質と負電解質のそれぞれの溶液に交互に、順番に浸漬して、各電解質成分層を膜基板表面に吸着させる操作を繰り返すことにより、積層構造を付与でき、基板材料の機能化を可能としている。一方、社会の発展に伴って環境汚染が深刻となり、特に重金属イオンによる公害が問題視され、廃液からの金属イオン吸着技術を応用した様々な浄化法が施行されており、膜分離においても重金属イオンを含む溶液浄化が、環境負荷の低い方法として知られている。従って、静電自己組織化により作製した機能化分離膜は廃液処理に有効であると考え、本研究では静電自己組織化により高分子電解質や両親媒性界面活性剤及びキレート化合物を用い、これらを含む交互積層高分子分離膜の作製方法を確立し、その膜の金属イオン等の除去効果について評価することを研究の目的とした。

 まず、両親媒性低分子と高分子電解質を電解質ペアとし、帯電ベース膜表面に交互に積層させ、得られた膜の特性を調べた。静電相互作用により正電解質と負電解質がベース膜表面に交互に吸着することによって、膜表面が正と負が交互に帯電されるため、重金属イオンへの静電斥力及び引力が、最表面の電荷に依存して交互に、変化していることが明らかとなった。特に、Fe3+の除去効果があり、膜透過により約90%阻止されることが分かった。セチルトリメチルアンモニウムクロライド (CTAC) のようなカチオン性の両親媒性電解質とポリアクリル酸 (PAA)とを交合積層させた場合は、良好な金属イオン除去特性を有するとともに、作製した膜がFe3+とFe2+に対して選択的な分離性能を示すことが明らかとなった。特にCTACが最表面に存在することにより作製した膜は高い流束を示し、約90%以上のイオン阻止率を示すことが分かった。以上の結果より、自己組織化電解質層で表面修飾された分離膜では金属イオンに対する高い脱塩性能を、簡便に導入できることが確認できた。

 更に、静電相互作用によって膜表面に自己組織化複合多層膜構造を導入すれば、分離膜に様々な機能を付与できると考え、キレート配位子化合物を導入した自己組織化分離プロセスを検討した。これにより膜表面にキレート化多層膜を構築でき、高い金属イオン吸着容量を有する膜が得られるとのアプローチより、重金属とのキレート化部位としてキトサンを用いた。キトサンは、カチオン性高分子電解質であり、また、キトサン微粒子を架橋により作製し、これらとPAAとのそれぞれの電解質ペアで、静電自己組織化によるベース膜表面処理を行った。キトサン及びキトサン微粒子積層で修飾することにより、得られたそれぞれの分離膜において銅イオンへの吸着効果が発現され、表面にキトサンまたはキトサン微粒子の交互積層膜が存在するため、銅イオンに対する吸着能力が発現できた。特に、キトサン微粒子で修飾された膜は金属イオンへ高い吸着容量を示すことが明らかにされた。このような膜は重金属イオンを高度に捕捉することができ、廃液中の重金属イオン濃度を効果的に低減することができ、環境負荷を低減できる機能を有していることか確認された。以上の結果より静電自己組織化を利用した交互積層表面修飾法は、高機能性膜を簡便的に、かつ、より高度な特性を付与できる新たな方法となることが示された。

 本論文は、「Study of polymeric separation membranes prepared with layer-by-layer technique using electrostatic self-assembly (静電自己組織化による表面修飾を利用した高分子分離膜に関する研究)」と題し、静電自己組織化により高分子電解質やイオン性界面活性剤の交互積層膜の作製とそれにより重金属イオンを除去できる高性能膜の分離性能の評価を研究の目的として、5章より構成されている。

 第1章「General Introduction」では、静電自己組織の特徴やその研究を紹介するとともに脱塩膜としての応用事例と水処理の現状などをまとめるとともに、本研究の目的と範囲を述べている。

 第2章「Multilayer Composite Surface Prepared by ESA Technique」では、カチオン性の両親媒性低分子電解質セチルトリメチルアンモニウムクロライド(CTAC)やテトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)とアニオン性高分子電解質であるポリアクリル酸(PAA)を電解質ペアとして利用した、静電自己組織化表面交互積層膜の形成について研究している。この手法により分離膜処理を簡便に実施でき、得られた電解質交互析出層により、限外濾過特性に影響する事も述べている。

 第3章「Multilayer Composite Surface for Desalination」では、静電自己組織化交互積層膜が、基板膜表面に形成することにより、正電解質と負電解質の自己組織積層で交互に修飾された分離膜を用いて、金属イオンの膜阻止性能を検討した。正、ならびに負電荷を持つ電解質が交互に積層することにより、膜表面が正と負に交互に帯電されるため、重金属イオンへの静電斥力及び引力が最表面の電荷に依存して、積層回数に順じて交互に変化していることが明らかにされた。作製した膜が良好な金属イオン除去特性を有し、大きな透過流束により、いずれの金属イオンで約90%以上の高い阻止率を示し、特に、Fe3+とFe2+対して選択的な分離性能を有しており、脱塩特性に優れた分離膜となる事を示した。

 第4章「Self-assembly Functionalized Membranes and its Application」では、重金属イオンと金属錯体(CMC)を形成できるキトサンを用いて、ポリアクリル酸と電解質ペアとして、静電自己組織化によるベース膜表面に積層した。分離膜にキレート化官能基を有するキトサンを導入することにより、作製した膜には金属イオンと不純物を含む廃液の濃縮とろ過浄化を一体にする機能性を付与する事が可能となった。得られたそれぞれの膜において銅イオンへの吸着効果についての研究を行ない、表面にキトサンおよびキトサン微粒子の静電自己組織化交互積層を形成させる事で、作製した膜には金属イオンと錯生成することができることを確認した。特に、キトサン微粒子の自己組織化交互積層で修飾された膜では銅イオンへ高い吸着容量を示すことが明らかになった。

 第5章では、上記で得られた知見をまとめるとともに、本研究で静電自己組織化交互積層法により作製した高分子分離膜の応用性と将来性について述べた。

 以上のように、本研究は簡便な静電自己組織化交互積層により高分子膜の表面修飾処理法を確立し、高度な脱塩機能を有する新規水処理用分離膜の研究に関して研究を行ったもので、工学上および工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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