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Study of ultrasound effect to hydrogen bonding networks in polymer medium(ポリマー内水素結合に及ぼす超音波効果)

氏名 Ngo Le Ngoc
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第567号
学位授与の日付 平成22年12月31日
学位論文題目 Study of ultrasound effect to hydrogen bonding networks in polymer medium (ポリマー内水素結合に及ぼす超音波効果)
論文審査委員
 主査 教授 小林 高臣
 副査 教授 野坂 芳雄
 副査 准教授 斉藤 信雄
 副査 産学融合特任講師 于 海峰
 副査 長岡工業高等専門学校物質工学科教授 丸山 一典

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Contents
Abbreviation List
Chapter 1. Generation Introduction
 1.1 Principal of ultrasound p.1
 1.1.1 Application of ultrasound
 1.2 Sonochemistry p.7
 1.3 Sono-process p.8
 1.4 Scope of present investigation p.10
 1.6 References p.11
Chapter 2. Ultrasound Stimulus Effect on Hydrogen Bonding in Networked Alumina and Polyacrylic acid Slurry
 2.1 Introduction p.14
 2.2 Experimental p.17
 2.3 Results and Discussion p.20
 2.4 Conclusion p.35
 2.5 Referencesf p.36
Chapter 3. Ultrasound Stimuli on Viscometric Change of Aqueous Copolymers having Acrylic acid and N-isopropyl acrylamide for Thermo-sensitive Segments
 3.1 Introduction p.39
 3.2 Experimental p.41
 3.2.1 Materials p.41
 3.2.2 Synthesis of copolymers of P (NIPAM-co-AA) p.41
 3.2.3 Measurements of Shear Viscosity of the Polymer solutions under US operation p.43
 3.2.4 Measurements of US effect on FT-IR spectra of copolymer solutions p.45
 3.3 Results and Discussion p.46
 3.3.1 Effect of ultrasound on shear viscosity of copolymers at different temperature p.46
 3.3.2 Effect of ultrasound on FT-IR spectra p.58
 3.4 Conclusion p.63
 3.5 References p.63
Chapter 4. Ultrasound Absorption in Aqueous Polyacrylic acid Solution and induced Stimuli Effect on their Hydrogen Bonds
 4.1 Introduction p.67
 4.2 Experimental p.68
 4.2.1 Measurements of sound absorption intensity in PAA solutions p.68
 4.2.2 Measruements of transmittance and absorptivity of US p.69
 4.2.2 Measurements of Viscosity of PAA solutions p.70
 4.2.3 Measurements of FT-IR spectra of PAA solutions p.70
 4.3 Results and Discussion p.72
 4.3.1 Analysis of ultrasound absorptivity in PAA solutions p.72
 4.3.2 Change in shear viscosity by US exposure p.75
 4.3.3 Effect of ultrasound on FT-IR p.82
 4.4 Conclusion p.85
 4.5 References p.86
Chapter 5. Summary p.87
List of Publications p.90
Presentation in Conferences and Symposiums p.91

 現在、超音波の工学的な応用は多く、特に超音波の周波数領域における機械的共振動効果の電子部品等への応用や信号をセンサーとして利用した技術はさまざまな分野への応用が期待されている。このような超音波工学において、超音波エネルギーの応用例は、機械加工、洗浄、医療の治療と診断、物質の分散と凝集の制御、化学反応促進など、既に実用化されている例が多い。特に、反応物を混合する際にはよく利用されており、反応促進効果等もソノケミストリーの特徴として注目をあつめている。また、超音波は液‐固界面での物質移動促進ならびに乳化作用などにも顕著な効果を及ぼすが、その効果は未だ解明されていない点が多い。また、音が作り出す化学的な作用はまだ歴史が浅く、新たな技術展開の潜在的可能性を秘めている。
 一方、有機‐無機材料が超音波を吸収する際に誘発される効果については、主にポリマー分散系において調べられている。その具体例として、膜濾過処理によるファウリング防止策や感温・膨潤性マクロゲルの体積相転移挙動が超音波により著しく影響される現象が報告されている。これは、超音波の照射によりマイクロゲル成分のポリイソプロピルアクリルアミ(PNIPAM)内に形成された水素結合が切断・再結合されることによってマイクロゲルの収縮・膨張を誘発するためである。しかし、現在、このような超音波によるポリマーまたは、ポリマー混合系における研究報告は大変少ない。そこで、本研究ではポリマー場における超音波の効果を解明することを目的として、水素結合を形成するポリアクリル酸(PAA)に着目し、その物性に及ぼす超音波の影響について主に研究を行った。
 初めに、PAA‐アルミナ(Al2O3)間で形成される水素結合に対する超音波の影響について検討を行った。ここで、PAA‐Al2O3スラリーに超音波を照射することによりPAA‐Al2O3間の水素結合が壊され、スラリー物性に影響を及ぼすことを目的とし、本実験では超音波効果によりPAA‐Al2O3スラリー溶液粘度の低下が顕著に観察されることを見出した。この結果は、超音波エネルギーによってPAA‐Al2O3間の水素結合が切断されるために起こると考えられる。また、超音波照射を停止した場合、放置後にはスラリー溶液の粘度は徐々に回復した。更に、超音波出力が大きいほど、スラリー溶液の粘度減少が著しく、また超音波照射が停止後における粘度の回復時間も長くなることがわかった。この変化には周波数依存性が見られ、特に28kHzで粘度低下が著しく大きくなった。この結果により、超音波出力や周波数などをコントロールすることによってスタリー溶液の粘性を制御できることを見出した。
 更に、水溶性感温性ポリマー材料を新規に合成し、共重合体内で形成される水素結合に及ぼす超音波効果を検討した。この共重合体はアクリル酸(AA)とN‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)から合成した。得られたP(NIPAM‐co‐AA)内での水素結合形成の超音波照射による制御目的として、まずポリマー水溶液粘度に及ぼす超音波効果を評価した。PAA‐Al2O3系の結果と同様に、超音波照射によってポリマー溶液の粘度は低下し、また超音波によってP(NIPAM‐co‐AA)ポリマー内のNIPAMとAA間の水素結合が切断されたことが示唆された。超音波照射を停止した場合、水素結合の再形成のために混合溶液粘度は徐々に増加し、照射停止から約10分後に照射前の粘度値に戻った。次に、ポリマー水溶液忠のpHを変化させて、AAのカルボン酸基の解離‐非解離性の効果を水素結合形成と超音波の観点から検討した。この結果、超音波照射はNIPAM‐AA間の水素結合を切断するだけの役割を果たし、一方、解離したAAセグメントの場合では超音波効果は低下したと考えられる。これらの現象は赤外吸収スペクトルの結果からも示唆された。

 以上の結果より、本研究ではポリマー場で形成される水素結合に対する超音波効果をその出力や周波数などを制御することによって明らかにした。

 本論文は、「Study of ultrasound effect to hydrogen bonding networks in polymer medium(ポリマー内水素結合に及ぼす超音波効果)」と題し、5章より構成されている。

 第1章「General Introduction」では、一般的超音波の特性や応用例、現状の課題、ポリマー場での超音波効果を示すとともに、本研究の意義、独創を述べ、研究目的について記述している。

 第2章では、「Ultrasound Stimulus Effect on Hydrogen Bonding in Networked Alumina and PolyacrylicAcid Slurry」においては、PAA-アルミナ(Al2O3)間で形成される水素結合に対する超音波の影響について検討を行った。ここで、PAA-Al2O3スラリーに超音波を照射することによりPAA-Al2O3間の水素結合が壊され、スラリー溶液粘度の低下が顕著に観察されることを見出した。また、超音波照射を停止した場合、放置後にはスラリーの粘度は徐々に回復した。この結果により、超音波出力や周波数などをコントロールすることによってスラリー内の水素結合生成を制御でき、超音波がトリガーとなり粘性制御ができることが判明した。

 第3章「Ultrasound Stimuli on Viscometric Change of Aqueous Copolymers Having Acrylic acid and N-isopropyl acrylamide for Thermo-sensitive Segments」では、水溶性感温性ポリマー材料内での超音波刺激効果を検討するため、アクリル酸(AA)とN―イソプロピルアクリルアミド(NIPAM) の共重合体(P(NIPAM-co-AA))を合成し、その溶液内で形成されるポリマーの水素結合に及ぼす超音波効果を調べた。これにより超音波照射は、ポリマー溶液粘度を著しく低下させ、超音波によってP(NIPAM-co-AA)内のNIPAMとAA間の水素結合の切断が示唆され、この超音波効果は赤外吸収スペクトルより確認された。超音波照射を停止した場合には、水素結合の再形成も認められ、混合溶液粘度も徐々に照射前の粘度値に戻ることから、単に水素結合を切断する効果が超音波照射にある事が判明した。

 第4章では「Analysis and Modeling of Ultrasound Absorption in Polyacrylic Acid Aqueous Solutions」について論述している。この章では、超音波のポリマーへの吸収挙動についてPAAを用いて、新たに提案した吸収モデルにより評価した。超音波吸収係数における超音波効果を調査し、28 kHz超音波を照射により吸収係数値が最も大きく、PAAの水素結合切断による溶液粘度の著しい低下を見出し、この挙動を吸収係数より説明した。

 第5章では、本論文で得られた結果と考察を要約している。

 以上のように、本研究の成果は、ポリマー場で形成される水素結合に対する超音波効果をその出力や周波数などを制御することによって明らかにした。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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