Surface Structure and Hydrogen Adsorption Phenomenon on Amorphous Carbon(アモルファス炭素の表面構造と水素吸着現象)
氏名 戸田 育民
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第577号
学位授与の日付 平成23年3月25日
学位論文題目 Surface Structure and Hydrogen Adsorption Phenomenon on Amorphous Carbon (アモルファス炭素の表面構造と水素吸着現象)
論文審査委員
主査 教授 齋藤 秀俊
副査 教授 植松 敬三
副査 准教授 伊藤 治彦
副査 准教授 岡元 智一郎
副査 准教授 姫野 修司
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Table of contents
List of contents p.i-iii
List of publications p.iv
List of awards p.iv
List of meetings p.v-viii
List of figure p.ix-xii
Acknowledgements p.xiii
I Introduction p.1
1 Background p.2
1-1 Hydrogen in clean energy system p.2
1-2 Recent hydrogen adsorption materials p.3
1-3 New idea on hydrogen adsorption technology p.5
2 Keywords p.6
2-1 Adsorption isotherms p.6
2-2 Pressure-composition-temperature relations p.11
2-3 Activated carbon (Amorphous carbon) p.12
2-4 Activation p.15
3 Problem to be solved p.17
4 Strategy to solve problem p.18
5 Objectives p.18
6 Composition of this thesis p.18
References p.21
II INTERPRETAION OF EQUATIONS FOR ADSORPTION-ISOTHERMAL LINE AND PRESSURE-COMPOSITION-TEMPERTURE LINE p.25
1 Background p.26
1-1 Storage technologies p.26
1-2 Amorphous carbon from coffee bean waste p.27
1-3 Activated techniques p.28
1-4 Objectives p.29
2 Experimental p.29
2-1 Synthesis of amorphous carbon p.29
Normal firing p.29
Steam activation p.30
Microwave dioxide activation p.30
2-2 Evaluation p.30
3 Results and Discussion p.34
3-1 Carbonization and activation by normal firing p.34
3-2 Carbonization and activation by steam reaction p.39
3-3 Carbon dioxide activation assisted by microwave heating p.44
4 Conclusion p.50
References p.51
III SURFACE STRUCTURE OF PORPUS AMORPHOUS CARBON p.53
1 Background p.54
1-1 Porous amorphous carbon derived from rice husk and coffee bean wastes p.54
1-2 Selectivity of pore size related ion on activation p.54
1-3 Objectives p.55
2 Experimental p.55
2-1 Synthesis of amorphous carbon p.55
2-1-1 Amorphous carbon from coffee bean wastes p.55
2-1-2 Porous amorphous carbon from rice husks p.55
2-1-3 Synthesis of amorphous carbon by two-step-activation p.56
2-2 Evaluation p.56
3 Results and Discussion p.59
3-1 Amorphous carbon activation by KOH from coffee bean waste p.59
3-2 Amorphous carbon activation by KOH from rice husk p.65
3-3 Amorphous carbon activation by two-step process p.69
3-3-1 Step1 p.69
3-3-2 Step2 p.73
4 Conclusions p.77
References p.78
IV MICROPORE FILLING WITH HYDROGEN p.81
1 Background p.82
1-1 Hydrogen storage technology p.82
1-2 Objective p.83
2 Experimental p.83
2-1 Synthesis of porous amorphous carbon p.83
2-2 Evaluation p.83
3 Results and Discussion p.84
3-1 Pore characteristics of amorphous carbon p.84
3-2 Hydrogen storage property of amorphous carbon p.87
4 Conclusions p.96
References p.97
V GENERAL CONCLUSIONS p.99
水素をクリーンエネルギーシステムの中核燃料とすることは21世紀技術における至上命題である。このシステムでは、太陽光などの自然エネルギーを用いた水の電気分解により水素を製造するので、炭酸ガスを排出することのない水素循環社会を構築できる。水素循環社会を実現するために解決しなければならない喫緊の課題は、水素貯蔵技術である。水素吸蔵材料は、その水素貯蔵技術を支える中核要素を担うとされており、実用化に耐えうる同材料の開発が急がれている。ここで、新しい時代の水素貯蔵技術は次のとおりでなければならない。すなわち、常圧が望ましいが高くても3MPa以下の比較的低圧力における貯蔵であること、常温が望ましいが低くても液体窒素温度など比較的実現しやすい低温における貯蔵であること、貯蔵タンクの重量として、100kg程度であること。これら3条件を満たすためには、金属系材料で得られた水素吸蔵量に比べてギャップアップを伴った高い水素吸蔵量を発現することのできる新しい材料の出現に期待しなければならない。それには、比表面積が広く、表面エネルギーが高くてミクロ孔充填現象などにより水素を吸着するアモルファス炭素が候補になりうる。本研究では、そのような候補材料を開発した。その結果を以下に示す5章からなる論文にまとめた。
第1章「Introduction」では研究の背景、キーワード、解決すべき課題ならびに研究目的について述べた。背景では、水素貯蔵技術、水素吸蔵材料など、これまでの歴史の中で培われてきた技術について概説し、将来の水素貯蔵技術に関する展望を明らかにした。キーワードでは、本論文にて使用されるいくつかの重要な技術用語について解説した。さらに解決すべき課題とそれに連動した研究目的について明らかにし、最後に本論文の構成を示した。
第2章「Interpretation of equations for absorption-isothermal line and pressure-composition-temperature line」では、まずコーヒー滓を出発原料とした炭化法によりアモルファス炭素を合成し、吸着等温線ならびに圧力一組成等温線を測定するばかりでなく、比表面積や構造を調査することにより、水素吸蔵に関わる因子を導きだした。次に、賦括法として水蒸気法と金属含侵法を導入して合成したアモルファス炭素の多孔質構造を解析した。断面構造、細孔発達過程と吸着等温線との関係を吟味し、さらに圧力一組成等温線から得られた水素吸蔵特性とこれらの結果を比較した。さらに、ガス法を導入してアモルファス炭素の賦活を行った。高速にアモルファス炭素の賦括を可能とするマイクロ波加熱と炭酸ガスを組み合わせた。同様に断面構造、細孔発達過程と吸着等温線との関係を吟味し、さらに水素吸蔵特性とこれらの結果を比較した。
第3章「Surface structure of porous amorphous carbon」では、コーヒー滓ばかりでなく、籾殻を出発原料としたアモルファス炭素に対して水蒸気賦活とアルカリ賦活を行って、多孔質材料を得た。表面構造としてとくに2nm以下のミクロ孔の細孔径分布を評価した。グラフェン層端部の欠損を形成することで、0.6nm、1.1nmならびに1.5nmのミクロ孔を選択的に形成できることを証明した。また、賦活に関係するイオン種が細孔径の選択性に大きな役割りを担っていることを明らかにした。細孔の示す容量は比表面積を広げるが、室温においては、水素吸蔵量の飛躍的な増大に関与しなかった。
第4章「Micro-pore filling phenomenon with hydrogen」では、表面構造において0.6nmならびに1.1nmのミクロ孔が支配的である多孔質アモルファス炭素にはじめて観測されたミクロ孔充填現象について説明した。この現象は、とくに1.1nmのミクロ孔が支配的である試料において、水素圧力3MPa程度の比較的低圧力にて液体窒素温度下において観測された。到達水素吸蔵量は4wt.%を超え、さらに凝縮した水素の密度は液体水素のそれに匹敵することを明らかにした。
第5章「General Conclusions」では、各章の結果を詳細に検討し、次の結論を得た。コーヒー滓あるいは籾殻を出発原料に多孔質アモルファス炭素を構成すると、比表面積2,000m2/g以上の試料を得ることができる。比表面積の狭い範囲では水素吸蔵量は比表面積に依存するが、広い範囲では比表面積が広がっても水素吸蔵量の増大にはあまり貢献しない。アモルファス炭素のグラフェン層端部の欠損を形成することで、0.6nm、1.1nmならびに1.5nmのミクロ孔を選択的に形成できる。とくに1.1nmのミクロ孔が支配的である試料において、水素圧力3MPaの液体窒素温度下においてミクロ孔充填現象が観測される。到達水素吸蔵量は4wt.%を超え、凝縮した水素の密度は液体水素のそれに匹敵する。
本論文は、「Surface Structure and Hydrogen Adsorption Phenomenon on Amorphous Carbon(アモルファス炭素の表面構造と水素吸着現象)」と題し、5章より構成されている。
第1章「Introduction」では研究の背景、キーワード、解決すべき課題ならびに研究目的について述べている。最後に本論文の構成を示している。
第2章「Interpretation of equations for absorption-isothermal line and pressure-composition・temperature line」では、まずコーヒー滓を出発原料とした炭化法によりアモルファス炭素を合成し、吸着等温線ならびに圧力一組成等温線を測定するばかりでなく、比表面積や構造を調査することにより、水素吸蔵に関わる因子を導きだしている。次に、賦活法として水蒸気法と金属含侵法を導入して合成したアモルファス炭素の多孔質構造を解析した結果について述べている。断面構造、細孔発達過程と吸着等温線との関係を吟味し、さらに圧力一組成等温線から得られた水素吸蔵特性とこれらの結果を比較している。
第3章「Surface structure of porous amorphous carbon」では、コーヒー滓ばかりでなく、籾殻を出発原料としたアモルファス炭素に対して水蒸気賦括とアルカリ賦活を行って、比表面積2,000m2/g以上の試料を得ている。表面構造として、とくに2nm以下のミクロ孔の細孔径分布を評価している。グラフェン層端部の欠損を形成することで、0.6nm、1.1nmならびに1.5nmのミクロ孔を選択的に形成できることを証明している。
第4章「Micropore filling phenomenon with hydrogen」では、表面構造にて0.6nmならびに1.1nmのミクロ孔が支配的である多孔質アモルファス炭素にはじめて観測されたミクロ孔充填現象について説明している。この現象は、とくに1.1nmのミクロ孔が支配的である試料において、水素圧力3MPa程度の比較的低圧力にて液体窒素温度下において観測されたことを明らかにしている。到達水素吸蔵量は4wt%を超え、さらに凝縮した水素の密度は液体水素のそれに匹敵することを明らかにしている。
第5章「General Conclusions」では、各章の結果を詳細に検討し、結論としてまとめている。
よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。