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生物膜型廃水処理における亜硝酸化の制御

氏名 阿部 憲一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第588号
学位授与の日付 平成23年3月25日
学位論文題目 生物膜型廃水処理における亜硝酸化の制御
論文審査委員
 主査 准教授 山口 隆司
 副査 准教授 小松 俊哉
 副査 准教授 高橋 祥司
 副査 准教授 姫野 修司
 副査 広島大学大学院工学研究院 大橋 晶良

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目次

第1章 序論
 1.1. 研究背景及び目的 p.I-1
 1.2. 本論文の構成 p.I-2
 1.3. 既往の知見 p.I-3

第2章 スポンジ担体を充填した流動床リアクターによる亜硝酸化におよぼすアンモニア濃度と温度の影響
 2.1. はじめに p.II-1
 2.2. 実験方法 p.II-2
 2.3. 実験結果 p.II-5
 2.4. 考察 p.II-11
 2.5. まとめ p.II-14
 参考文献 p.II-15

第3章 スポンジ担体を充填した流動床リアクターにおける塩分濃度による亜硝酸化の誘導効果の有無
 3.1. はじめに p.III-1
 3.2. 実験方法 p.III-2
 3.3. 実験結果及び考察 p.III-5
 3.4. まとめ p.III-10
 参考文献 p.III-11

第4章 完全硝化および亜硝酸化時における流動床リアクター単体内のph挙動
 4.1. はじめに p.IV-1
 4.2. 実験方法 p.IV-2
 4.3. 実験結果 p.IV-7
 4.4. 考察 p.IV-9
 参考文献 p.IV-11

第5章 硝化運転された担体充填型流動床リアクターから得られた微生物学的に興味深い知見
 5.1. はじめに p.V-1
 5.2. 実験方法 p.V-4
 5.3. 実験結果および考察 p.V-6
 5.4. まとめ p.V-12
 参考文献 p.V-13

第6章 密閉型散水ろ床リアクターをもちいた低アンモニア含有排水を対象とした亜硝酸化処理の試み
 6.1. はじめに p.VI-1
 6.2. 実験方法 p.VI-3
 6.3. 実験結果 p.VI-6
 6.4. 考察 p.VI-12
 6.5. まとめ p.VI-13
 参考文献 p.VI-14

第7章 模擬製鉄所排水を処理する生物膜型散水ろ床リアクターで見られた亜硝酸塩蓄積と微生物群集構造
 7.1. はじめに p.VII-1
 7.2. 実験方法 p.VII-2
 7.3. 実験結果および考察 p.VII-5
 7.4. まとめ p.VII-12
 参考文献 p.VII-14

第8章 総括

本論文は全8章で構成されている。以下にその構成と概要を示した。
第1章は「序論」として,本研究の背景および目的を示した。加えて本論文の構成を示した。また,既往の知見として生物学的窒素除去システムの今日までの発展と亜酸化窒素の制御方法について記載した。
第2章は「スポンジ担体を充填した流動床リアクターによる亜硝酸化におよぼすアンモ土ア濃度と温度の影響」として,アンモニウム(NH4+)濃度と温度が亜硝酸化に及ぼす影響について,リアクターの処理性能と担体内の微生物群集構造をもとに調査を行った。スポンジ担体を充填したエアリフト型リアクターによる亜硝酸型硝化の進行には,アンモニア流入負荷や温度よりも,これらの要因から複合的に生じる,遊離アンモニア濃度が強く影響しており,アンモニア流入負荷,温度,pHにより遊離アンモニア濃度を調整することが,亜硝酸型硝化を制御するうえで一つの有効な手段であることが示された。
第3章は「スポンジ担体を充填した流動床リアクターにおtナる塩分濃度による亜硝酸化の誘導効果の有無」として,塩濃度が亜硝酸化に及ぼす影響について,リアクターの処理性能と担体内の微生物群集構造をもとに調査を行った。NaCl濃度が海水と同程度の’16gCl/Lに達してもNO2・の蓄積は見られず完全硝化が進行したことから,塩分濃度による亜硝酸型硝化の誘導効果は無いことが判明した。
第4章は「完全硝化および亜硝酸化時における流動床リアクター担体内のpH挙動」として,異なるpH調整剤を用いた際のリアクター処理性能と担体内のpH挙動の調査を行った。スポンジ担体内のpHはpH調整剤の種類にゎかわらず,中性域で保たれていたことから,亜硝酸化の有無への直接の要因は,pH緩衝能ではなくpH調整剤の成分の方にあることが示唆された。
第5章は「硝化運転された担体充填型流動床リアクターから得られた微生物学的に興味深い知見」として,存在が明らかになった新規なJVI加印加a様細菌およびアンモニア酸化古細菌について報告した。16SrRNA遺伝子にもとづく系統解析の結果より,既存のsublineageのいずれにも分類されない,未分類の八兄正明正和の存在が明らかとなった。さらにこの期加印上柑Sp.に特異的なFISHプローブを作製し,視覚的に検出することにも成功した。リアクター運転条件と本クローンの検出頻度から推測するに,この未分類の此加印五VISp.は35℃以上の中温域環境を好み,州由℃印土用属の中では比較的高い基質濃度を要求することが示唆された。古細菌の16SiRNAおよびa皿α1遺伝子を標的としたクローン解析より,αecamhaeota門内のGroupl.1bに分類されるAOAの存在が明らかとなった。
第6章は「生物膜型散水ろ床リアクターによる低濃度窒素含有廃水を対象とした亜硝酸化処理の試み」として,布製の微生物固定担体を設置した生物膜型散水ろ床リアクターを用いて,低酸素濃度制御を主要素とした亜硝酸化処理を試みた。また,生物膜内の細菌群集構造の解析を行い,リアケター処理性能との関係について調査した。空気暴露条件下で180日程度運転した後,リアクター気相部の酸素分圧を1%以下まで下げたが亜硝酸化は進行しなかった。細菌群集解析の結果から,生物膜内には凡出℃β0皿OJ】aβeur叩aeaと州加β0皿0エIaβ0上如如加の2種のAOBといIV比和嘲元柑の属するNOBが存在していることが示された。これらの硝化細菌群の中で最も酸索親和性が高いのは凡由℃印加属であることから,低アンモニア濃度環境下では低DO濃度制御だけではNOBの活性を抑制し,亜硝酸化を引き起こすことは難しいことが示された。重炭酸ナトリウムでICを供給したところ,重炭酸イオン濃度75mM以上において最大50%程度の亜硝酸化が達成された。低アンモニア環境下でもICによる亜硝酸化制御は有効であることは示された。しかしながら,より高効率な亜硝酸化および一槽型窒素除去プロセスとするためには,NOBを抑制する新たな方法や,運転条件を検討する必要があることも示された。
第7章は-「模擬製鉄所廃水を処理する生物膜型散水ろ床リアクターで見られた亜硝酸塩蓄積と微生物群集構造」として,亜硝酸塩蓄積がみられた模擬製鉄所廃水を処理する生物膜型散水ろ床リアクターの生物膜内の微生物群集の解析を行い,亜硝酸化と微生物群集の関係について調査した。高濃度の有機物含有廃水においても,多段型の散水ろ床リアクターを用いることで,有機物分解とアンモニア除去を分けることができた。さらに,アンモニア除去においては,部分的ではあるが亜硝酸化が可能であることが示された。

本論文は、「生物膜型廃水処理における亜硝酸化の制御」と題し、8章より構成されている。
第1章「序論」では、本研究の背景と目的、論文構成の記述と、既往の知見として窒素除去プロセスにおける亜硝酸化の位置付けとその制御方法および影響因子についてまとめられている。
第2章は、「スポンジ担体を充填した流動床リアクターによる亜硝酸化におよぼすアンモニア濃度と温度の影響」と題して、亜硝酸化を制御するうえで、イオン態アンモニア濃度、温度、pHを調整して、遊離アンモニアを高濃度に維持することが、有効な手段の一つであることを示している。
第3章では、「スポンジ担体を充填した流動床リアクターにおける塩分濃度による亜硝酸化の誘導効果の有無」と題して、その効果に賛否両論のある塩分について、海水と同程度め濃度であっても亜硝酸化の誘導効果は極めて小さいことを示している。
第4章では、「完全硝化および亜硝酸化時における流動床リアクター担体内のpH挙動」と題して、微小電極を用いた担体内pHの測定から、亜硝酸化にはpH緩衝能事りもpH調整剤の種類が強く影響を及ぼすことを示している。
第5章では、「硝化運転された担体充填型流動床リアクターから得られた微生物学的に興味深い知見」と題して、35℃で運転されたリアクター内に、叩如岬血属に分類される未培養の新規な亜硝酸酸化細菌およびアンモニア酸化古細菌が存在していたことを示している。
第6章では、「生物膜型散水ろ床リアクターによる低濃度窒素含有廃水を対象とした亜硝酸化処理の試み」と題して、低酸素濃度制御と炭酸緩衝液の添加により亜硝酸化が進行することを示しめしている。
第7章では、「模擬製鉄所廃水を処理する生物膜型散水ろ床リアクターで見られた亜硝酸塩蓄積と微生物群集構造」と題して、多段型の散水ろ床リアクターを用いて有機物分解と硝化反応を分けることで、亜硝酸化処理が可能であることを示している。
第8章では、、本論文で得られた結果と考察を要約し、廃水組成に応じた運転方法の提案と更なる改善点について示している。
以上のように本論文は、亜硝酸化プロセスの制御方法を提示しており、また適用可能な廃水種の拡大を示唆していることから、工学上および工業上貢献するところが大きい。よって本論文は博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認められる。

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