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ポーラスアスファルト舗装の維持修繕とリサイクルに関する研究

氏名 東 滋夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第289号
学位授与の日付 平成23年3月25日
学位論文題目 ポーラスアスファルト舗装の維持修繕とリサイクルに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 准教授 高橋 修
 副査 准教授 下村 匠
 副査 東京電機大学理工学部教授 松井 邦人

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目次

第1章 序論 p.1
 1.1 研究の背景 p.1
 1.1.1 ポーラスアスファルト舗装の進展 p.1
 1.1.2 ポーラスアスファルト舗装かに伴う維持修繕の現状 p.4
 1.1.3 ポーラスアスファルト舗装のリサイクル時期の到来とリサイクルの現状 p.5
 1.2 既往の研究 p.6
 1.2.1 基層混合物の剥離抵抗性評価に関する研究 p.6
 1.2.2 ポーラスアスファルト舗装のリサイクルに関する研究 p.9
 1.2.3 既往の研究等から見た課題整理 p.17
 1.3 本研究のテーマと目的 p.18
 1.4 本論文の構成と内容 p.20
 第1章の参考文献 p.23

第2章 ポーラスアスファルト混合物層直下における基層混合物の剥離抵抗性評価に関する研究 p.27
 2.1 概要 p.27
 2.2 ポーラスアスファルト舗装の早期損傷の原因究明 p.28
 2.3 基層アスファルト混合物の剥離抵抗性評価方法の確立 p.30
 2.3.1 剥離抵抗性評価方法の開発方針 p.30
 2.3.2 評価試験方法の選定 p.30
 2.3.3 選定した評価試験方法による比較試験の実施 p.32
 2.4 修正ロットマン試験の適用性拡大 p.36
 2.5 剥離抵抗性に関する評価基準の提案 p.39
 2.5.1 圧裂強度比に対する評価基準(案) p.39
 2.5.2 標準圧裂強度に対する評価基準(案) p.40
 2.6 現場切取り供試体の採取方法の提案 p.41
 2.6.1 現場切取り供試体の採取時における注意事項 p.41
 2.6.2 現場切取り供試体の採取方法 p.41
 2.7 実現場との相関による評価基準 p.43
 2.8 第2章の結論 p.45
 第2章の参考文献 p.46

第3章 路上再生工法(リペーブ方式)による薄層ポーラスアスファルト舗装の施工方法の開発 p.47
 3.1 概要 p.47
 3.2 リペーブポーラスアスファルト工法の開発 p.48
 3.2.1 再生方式の選定 p.48
 3.2.2 リペーブポーラスアスファルト工法の概要 p.49
 3.2.3 リペーブポーラスアスファルト工法の課題と対策 p.51
 3.3 リペーブポーラスアスファルト工法の現場施工による検証 p.55
 3.3.1 施工概要 p.55
 3.3.2 リペーブ下層混合物の剥離抵抗性の事前確認 p.55
 3.3.3 施工状況 p.57
 3.3.4 リペーブポーラスアスファルト工法の追跡調査結果 p.57
 3.4 第3章の結論 p.62
 第3章の参考文献 p.63

第4章 リミックス方式によるポーラスアスファルト混合物の路上再生工法の開発 p.65
 4.1 概要 p.65
 4.2 路上再生工法の予備実験 p.66
 4.2.1 既設高機能混合物の採取 p.66
 4.2.2 既設高機能舗装の加熱実験とかきほぐし粒度の確認 p.66
 4.3 再生用添加剤および再生用改質添加剤の開発 p.69
 4.3.1 開発目標 p.69
 4.3.2 使用材料 p.70
 4.3.3 試験概要および試験結果 p.71
 4.3.4 再生用添加剤および再生用改質添加剤に関するまとめ p.74
 4.4 回転式舗装試験機による耐久性試験 p.75
 4.4.1 流動試験 p.77
 4.4.2 摩耗試験 p.78
 4.5 試験施工 p.79
 4.5.1 施工概要 p.79
 4.5.2 配合設計 p.80
 4.5.3 施工状況 p.83
 4.5.4 試験施工結果 p.84
 4.6 第4章の結論 p.86
 第4章の参考文献 p.88

第5章 ポーラスアスファルト混合物におけるポーラス再生骨材の製造方法および再生用バインダの開発 p.89
 5.1 概要 p.89
 5.2 ポーラスアスファルト再生骨材の製造方法の検討 p.91
 5.2.1 じゅうらいの機械破砕方式の問題点と加熱蒸気解砕技術の適用 p.91
 5.2.2 機械破砕方式と加熱蒸気解砕方式の性状比較 p.94
 5.3 再生用バインダの開発 p.98
 5.3.1 基本的な開発方針 p.98
 5.3.2 再生用バインダ p.99
 5.4 再生ポーラスアスファルト混合物の性能評価 p.101
 5.4.1 評価項目 p.101
 5.4.2 ポーラス再生骨材13~5mmの混入率と再生用バインダの組み合わせ p.101
 5.4.3 評価結果 p.102
 5.5 試験練り・試験施工 p.106
 5.5.1 試験練り結果 p.106
 5.5.2 試験施工結果 p.108
 5.6 第5章の結論 p.113
 第5章の参考文献 p.114

第6章 ポーラス再生骨材5~0mmの再利用および既設基層混合物の耐久性改善を考慮したポーラスアスファルト舗装の再生技術の開発 p.115
 6.1 概要 p.115
 6.2 再生に関する基本方針 p.116
 6.3 工法の概要 p.117
 6.4 試料採取 p.119
 6.4.1 概要 p.119
 6.4.2 採取試料の性状 p.119
 6.5 再生基層混合物に関する検討 p.121
 6.5.1 要求性能と試験項目 p.121
 6.5.2 路上再生工法を想定した配合設計 p.121
 6.6 再生高機能混合物に関する検討 p.124
 6.6.1 要求性能と試験項目 p.124
 6.6.2 再生用バインダ p.124
 6.6.3 検討配合 p.124
 6.6.4 試験結果 p.125
 6.7 回転式舗装試験機による耐久性評価 p.130
 6.7.1 試験概要 p.130
 6.7.2 試験結果 p.132
 6.8 試験施工 p.134
 6.8.1 試験施工概要 p.134
 6.8.2 試験施工配合 p.134
 6.8.3 ポーラス再生骨材5~0mmの加熱実験 p.135
 6.8.4 試験施工結果 p.136
 6.9 第6章の結論 p.139
 第6章の参考文献 p.141

第7章 結論 p.143

謝辞 p.151

近年の社会情勢の変化や国民のニーズの多様化とも相俟って,道路には従来の機能に加え沿道環境の保全や改善にも積極的に貢献できる機能が求められている.舗装分野においては,このようなニーズに応える舗装として,雨水を舗装内に浸透させるポーラスアスファルト舗装が考案され,近年,急速に施工実績を伸ばしている.しかし,ポーラスアスファルト舗装が初期に施工された箇所は供用後既に10数年が経過し,ポーラスアスファルト舗装の損傷が顕在化してきていることから,大規模な補修が必要な時期が到来している.さらに,循環型社会の形成のためには,ポーラスアスファルト舗装のリサイクル技術の開発が今や社会的責務となっている.そこで,本研究ではポーラスアスファルト舗装の維持修繕やリサイクルに関する課題を整理し,これらの課題を解決することを目的とし,以下の内容について研究した.
第1章では,本研究の背景と既往の研究成果について述べ,ポーラスアスファルト舗装の維持修繕とリサイクル技術に関し,以下のような課題が残されていることを明らかにした.
(1)既設基層混合物の剥離に起因するポーラスアスファルト舗装の損傷を未然に防止するためには,既設基層混合物の剥離抵抗性評価方法の確立と評価基準の設定が急務である.
(2)ポーラスアスファルト舗装のリサイクル技術に関して,これまで路上再生工法の適用例が皆無であり,同工法による再生技術の確立が望まれている.
(3)多くのポーラスアスファルト混合物が一気に更新期を迎えることが予想されていることから,再生ポーラスアスファルト混合物への再生骨材の高混入率化を目指す必要がある.そのためには,高混入率化を可能とする再生骨材の製造方法の開発と高混入率となった場合でも,これを良質に再生できる再生用バインダの開発が急務である.
(4)ポーラスアスファルト混合物層直下における基層の損傷が多く認められることから,基層の耐久性改善も同時に考慮したポーラスアスファルト舗装の再生技術の確立が急務である.
(5)現状ではその多くが廃棄されている再生骨材5~0mmの再利用方法の確立が急務である.
第2章では,アスファルト混合物の剥離抵抗性に関し,検出精度の高い評価方法の確立と評価基準の提案を行った.新規ポーラスアスファルト混合物により表層のみに切削オーバーレイを施した箇所では,新設したポーラスアスファルト舗装に供用後の比較的早期から局部的な側方流動等の損傷が散見されるようになってきた.
本研究では,まず,その原因が基層混合物の剥離にあることを明らかにし,次いで,こういった不具合を未然に防止するための基層混合物の剥離抵抗性の評価方法の検討を行い,修正ロットマン法の有効性を示すとともに,評価を行う際に不可欠となる評価基準を提案した.
第3章では,資源の有効活用とポーラスアスファルト舗装の優れた特性という両面の要求を同時に満足させる工法として,リペーブ方式を用いた路上再生工法による補修工法を開発した.本工法は老朽化した既設密粒度アスファルト舗装を路上表層再生機で再生しながら,その上に薄層のポーラスアスファルト混合物を舗設し,この二層を同時に転圧して仕上げていくというものである.従来は異種混合物を用いたリペーブ方式は,上下層の混合物が混ざり合うことから,良好な品質を確保することが困難であった.そこで,本研究では機械の改造を含めた改善を行うことにより,上下層が異種混合物でも混ざり合わず,良好な品質が確保できるリペーブ方式の適用を可能とした.
第4章では,ポーラスアスファルト舗装の路上再生技術の確立を目指し,表層の既設ポーラスアスファルト混合物をリミックス方式で再生する技術を開発した.路上再生工法は,既設アスファルト舗装を現位置で加熱再生する工法であり,省資源に寄与することはもとより,既設舗装材の場外搬出を伴わないため,経済的かつ合理的な維持修繕工法といえる.しかし,現行の路上再生工法および再生添加剤等はストレートアスファルトを使用した混合物を対象としたものであり,ポリマー改質アスファルトH型を使用したポーラスアスファルト混合物には適用できないという課題がある.そこで,本研究では旧アスファルトがポリマー改質アスファルトH型でも再生を可能とする再生用添加剤の開発を行い,実路で試験施工を行った結果,いくつかの課題は残されたものの,ポーラスアスファルト舗装への本工法の適用の可能性を示した.
第5章では,再生骨材の高混入率化を目指し,粒径13-5mmの再生骨材の製造方法と再生用バインダの開発を行った.ポーラスアスファルト舗装は,近い将来,一気に更新時期が訪れるものと推察されることから,ポーラスアスファルト舗装の発生材から製造される再生骨材は,一度に大量に再利用できることが望ましい.しかしながら,再生骨材の混入率を高めていくためには,再生骨材の抽出後粒度の安定化と混合物性状回復のための再生用添加剤の開発という大きな2つの課題が残されていた.そこで,本研究では抽出後粒度の安定化を図るために従来の機械破砕に替わる方法として,過熱蒸気解砕技術を適用し高混入率化を可能とするとともに,再生骨材比率が高混入率となった場合でも,これを良質に再生できる再生用バインダを開発し,再生骨材80%という高混入率でも良好な品質が得られる再生を可能とした.
第6章では,再生骨材5~0mmの再利用方法の検討および既設基層混合物の耐久性改善を考慮したポーラスアスファルト舗装の再生技術の開発を行った.過去に実施された検討では,粒径5~0mm の再生骨材の多くが再利用されずに廃棄されていることや,再生加熱ドライヤー内におけるアスファルトモルタル分の付着が発生することなど,大きな技術的課題が残されていた.さらに,第2章で述べたとおり基層混合物の耐久性の改善が同時に求められている.そこで,本研究では上記のような課題の解決を目指し,再生骨材5~0mmの再利用方法について検討するとともに,既設基層混合物の耐久性改善も同時に考慮したポーラスアスファルト混合物の再生技術を検討した.その結果,既設基層混合物の耐久性改善にはリミックス方式による路上再生工法を,表層のポーラスアスファルト混合物の再生にはプラント再生工法を適用することで,技術的に新規混合物と遜色のない性状まで回復させることが可能であることを示した.また,既設基層混合物の路上再生時に補足材として使用することで,ポーラス再生骨材5~0mmの再利用を可能とした.
第7章では,本研究の総まとめとして上記第2章~第6章までの結論をまとめるとともに,残された課題と今後の展望について述べた.

本論文は「ポーラスアスファルト舗装の維持修繕とリサイクルに関する研究」と題し7章より構成されている。
1989年に雨水を浸透させるポーラス舗装が考案され、急速に施工実績を伸ばしている。ポーラス舗装が初期に施工された箇所は既に10数年が経過し、舗装の損傷が顕在化してきていることから、大規模な補修を必要とする時期が到来している。循環型社会形成のためにもポーラス舗装のリサイクル技術の開発が今や社会的責務となっている。本研究はポーラス舗装の維持修繕やリサイクルに関する課題を解決する方法を実証的に検討し提案している。
第1章「序論」では、本研究の背景と既往の研究について述べ、ポーラス舗装の維持修繕とリサイクル技術に関し残されている課題を整理し、本研究の目的を示している。
第2章「ポーラスアスファルト混合物層直下の基層混合物の剥離抵抗性評価」では、ポーラス舗装に見られる側方流動等の損傷原因が基層混合物の剥離にあることを明らかにし、これを防止するため基層混合物剥離抵抗性評価方法の検討を行い、精度の高い試験方法を確立するとともに、評価基準を提案している。
第3章「リペーブ方式による路上再生工法の開発」では、老朽化した既設密粒度アスファルト舗装を路上表層再生機で再生しながら、その上に薄層のポーラスアスファルト混合物を舗設し、この二層を同時に転圧して仕上げる方式を開発している。従来の機械を改造することによって、上下層が混ざり合わず、良好な品質を確保できる方式としている。
第4章「リミックス方式による路上再生工法の開発」では、表層の既設ポーラス混合物と再生用添加剤を路上で混合しながら再生する技術を開発している。現行の路上再生工法および再生用添加剤はストレートアスファルトを使用した混合物を対象としたものであり、ポリマー改質アスファルトH型を使用したポーラス混合物には適用できない。本研究は旧アスファルトが改質アスファルトH型でも再生を可能とする再生用添加剤を開発し、実路の試験施工に使用し、ポーラス舗装への本工法の適用可能性を示している。
第5章「ポーラスアスファルト混合物における再生骨材の製造方法および再生用バインダの開発」では、再生骨材の高混入率化を目指し、粒径13-5mmの再生骨材の製造方法と再生用バインダの開発を行っている。過熱蒸気解砕技術を適用して抽出粒度の安定化を図るとともに、良質に再生できる再生用バインダを開発し、これまでは30% 程度であった再生骨材率を80% まで高めることを可能としている。
第6章「再生骨材5~0mmの再利用および既設基層混合物の耐久性改善を考慮したポーラス舗装の再生技術の開発」では、これまで再生加熱ドライヤー内におけるモルタル分の付着等の問題があって、再利用されず廃棄されていた粒径5~0mm の再生骨材の利用方法を検討し、既設基層混合物の耐久性改善にはリミックス方式による路上再生工法を、表層ポーラス混合物の再生にはプラント再生工法を適用することで、新規混合物と同等の性状まで回復させることを可能にしている。また、既設基層混合物の路上再生時に補足材として使用することで再生骨材5~0mmの再利用を可能としている。
第7章「結論」では、本研究の結論をまとめ、残された課題と今後の展望について述べている。
以上のように、本論文は、これまで困難とされてきたポーラスアスファルト舗装のリサイクルを可能にしている。本研究の成果は、走行安全性を向上させ事故減少に寄与するとともに、資源保護の観点から環境対策としても有効なものである。よって、本論文は工学上及び工業上貢献するところが大きく、博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める。

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