Application of numerical wave simulation to interaction of flood flow and genmorphologic evolution(洪水流と地形変化の相互作用に対する数値波動計算の適用)
氏名 Thin Thin Nwe
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第559号
学位授与の日付 平成22年8月31日
学位論文題目 Application of numerical wave simulation to interaction of flood flow and genmorphologic evolution (洪水流と地形変化の相互作用に対する数値波動計算の適用)
論文審査委員
主査 教授 細山田 得三
副査 教授 陸 旻皎
副査 教授 大塚 悟
副査 准教授 熊倉 俊郎
副査 東京大学大学院新領域創成科学研究科得任准教授 黄 光偉
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Table of Contents
Abstract
Table of Contents
List of Tables
List of Figures
Acknowledgments
Chapter 1 Introduction p.1
1.1 Background p.1
1.1.1 Flood Disasters p.1
1.1.2 Flood Disasters in Japan p.3
1.1.3 Niigata Flood Disaster p.4
1.2 Types of Levee breach at Kariyata River p.7
1.3 Previous Study p.9
1.4 Objectives of Research p.10
1.5 Flow Chart of Research p.11
1.6 Outlines of Dissertation p.12
Chapter 2 Predicting Levee Breach Position of Kariyata River due to Excess Rainfall p.13
2.1 Introduction p.13
2.2 Numerical Simulation Method p.13
2.2.1 Governing Equations for Flood Flow Propagation p.13
2.2.1.1 Numerical Scheme for Flood Flow Propagation p.14
2.2.1.2 Algorithm of Flood Region Concerning with Time p.18
2.2.2 Governing Equation for Sediment Transport p.21
2.2.2.1 Bed Load Transport p.21
2.2.2.2 Suspended load transport p.24
2.2.3 Setting Velocity p.25
2.2.4 Calculation of Deposition and Erosion Rate p.26
2.2.5 Temporal Changes of River Bank Height p.29
2.2.5.1 Numerical Scheme for Sediment Transport and Bed Level Change p.30
2.3 Numerical Calculation Condition p.31
2.3.1 Calculation Grid p.35
2.3.2 Boundary Condition p.35
2.3.3 Initial Condition p.36
2.3.4 Manning Roughness Coefficient p.36
2.3.5 Time Step p.37
2.3.6 Input Discharge and Sediment Concentration huydrograph p.37
2.4 Numerical Simulation Results p.39
2.5 Summary p.50
Chapter 3 Comparative Study of 1D Numerical and Experimental Sediment Transport due to Overtopping Flow p.51
3.1 Introduction p.51
3.2 Numerical Simulation Method p.52
3.2.1 Governing Equation for Flood Flow Propagation p.52
3.2.1.1 Numerical Scheme for Flood Water p.53
3.2.1.2 Algorithm of Flood Region p.55
3.2.2 Governing Equation for Sediment Transport p.57
3.2.2.1 Suspended Load Transport p.57
3.2.3 Setting Velocity p.57
3.2.4 Deposition and Erosion Rate p.59
3.2.5 Governing Equation for Bathymetric Charge p.62
3.2.6 Numerical Scheme for Sesdiment Transport p.63
3.2.6.1 Numerical Scheme for Suspended Load Transport p.63
3.2.6.2 Numerical Scheme for Bathymetric Changes p.64
3.3 Numerical Calculation Condition p.64
3.4 Numerical Simulation Results p.65
3.4.1 Simulation Results for Case 1 p.65
3.4.2 Simulation Results for Case 2 p.69
3.5 Experiment Set-up and Procedure p.72
3.5.1 Layout of Flume p.72
3.5.2 Experiment Procedure p.73
3.5.3 Experiment Results p.75
3.5.3.1 Experiment Results for Case 1 p.75
3.5.3.2 Experiment Results for Case 2 p.76
3.6 Comparison of Numerical Simulation Results and Experiment Results p.81
3.6.1 Comparison for Case 1 p.81
3.6.2 Comparison for Case 2 p.84
3.7 Summary p.87
Chapter 4 Application to Kariyata River Model p.88
4.1 Introduction p.88
4.2 Numerical Simulation Method p.88
4.2.1 Numerical Simulation Method p.88
4.2.1.1 Governing Equation for Bed-Load Transport p.89
4.2.1.2 Governing Equation for Mathymetric Change p.91
4.2.1.3 Discretization of Enxar Equation p.91
4.2.1.4 Numerical Calculation Condition p.92
4.2.2 Highly Accurate and Conservative Numerical Model for Treatment of Advection Terms p.93
4.2.2.1 Strategy of the CIP Method p.93
4.2.2.2 Application to Non-Linear Equation p.96
4.3 Comparison of Simulation Results p.98
4.4 Summary p.105
Chapter 5 Urban Flooding and Sediment Transport due to Levee Breach p.106
5.1 Introduction p.106
5.2 Numerical Simulation Method p.106
5.2.1 Calculation Grid p.107
5.2.2 Initial Condition and Boundary Condition p.108
5.2.3 Input Discharge and Sediment Concentration huydrograph p.109
5.2.4 Flow Chart of Program p.111
5.3 Numerical Simulation Results p.113
5.4 Summary p.126
Chapter 6 Avalanche Motion Based on Shallow Water Wave Approximation p.127
6.1 Introduction p.127
6.2 Numerical Simulation Method p.129
6.2.1 1D Artificial Slope Model p.130
6.2.1.1 Calculation Condition p.131
6.2.1.2 Calculation Time-step and Total Time Step p.132
6.2.1.3 Initial Avalanche Depth, Velocity and Concentration p.132
6.2.1.4 Minimum Value of Avalanche Depth p.132
6.2.1.5 Numerical Simulation Results p.132
6.2.2 2D Hidarimatadani Region p.137
6.2.2.1 Calculation Condition p.139
6.2.2.2 Calculation Time-step and Total Time-step p.139
6.2.2.3 Initial Avalanche Depth, Velocity and Concentration p.140
6.2.2.4 Minimum Value of Avalanche Depth p.140
6.2.2.5 Numerical Simulation Results p.140
6.3 Summary p.154
Chapter 7 Summary, Conclusion Remarks and Further Studies p.156
7.1 Summary p.156
7.2 Conclusions p.159
7.3 recommendations for Further Studies p.159
References p.160
Appendix1 p.i
Appendix2 p.viii
近年,日本においては地球温暖化に起因すると思われる降雨強度の増大により河川水位の急激な上昇が発生し,河川堤防の決壊を伴った水害が発生している.新潟県中越地方ではおいては2004年7月に梅雨前線の停滞により豪雨災害が発生した.土砂を含んだ高速な洪水流が堤内地に流れ込み家々を破壊し,大量の土砂を堆積させた.社会的にも土砂災害に高い関心が寄せられるようになった.しかしながら,氾濫流と土砂の輸送および地形の変化について総合的に検討した研究は比較的少なく,都市域での洪水流を対象として検討した例も多いとは言えない.また,実際に堤防が越水によって破壊した場合,河川からどの程度の流量が堤内地に流れこむかを予測するためには堤防の崩壊と洪水流がダイナミックにリンクする必要がある.
本研究では広く一般的に用いられている非線形長波に対する平面2次元の氾濫流計算を基本にした方程式系を用いてモデルを構成した.この方程式に対して移流・拡散方程式に基づく土砂輸送計算,底面せん断応力や限界掃流力に基づいた底面での土砂の沈降・再浮遊のモデル化,土砂の沈降と再浮遊化のフラックスの差による地形変化計算を連成させることにより,越水が先行する場合の堤防の崩壊過程についてモデル計算を行うアルゴリズムを新たに提案した.このモデルを中小河川の堤防の破壊に適用し,あわせて堤内地に広がる洪水流および土砂の分布について検討を行った.実際に適用した計算領域は前述した2004年の中越地方の破堤災害の現場であり,災害復旧のために現地のデータが多く取得されている.本研究ではそれらの現地データおよび簡易な1次元性の高い室内実験結果と計算結果を比較することによって本研究の妥当性について検証を行った.さらに洪水流と土砂の移動の関係を雪崩と積雪面の凹凸と捉えて雪崩の運動にも適用した.雪崩のモデルは日本最大級の雪崩災害と言われている左俣谷の被災事例に適用して妥当性の検討を行った.
実験および現地データとの比較対象は主に土砂の輸送による地形変動と洪水の最大水位分布である.比較した結果,本研究によって提示したモデルにより,越水が先行すると仮定した場合の堤防の浸食による決壊過程と破堤点付近の住宅地区への氾濫水と土砂の輸送過程を計算できる可能性を示すことができた.また,堤防の崩壊が越水後に急激に進行することが分かった.計算において破堤点を仮定することは行わず,堤防の強度が冠水に応じて減少するというモデルを仮定することによって実体と同様の破堤が生じる結果となった.
堤防の崩壊は,抵抗力を失った地盤が流動化するという固体力学と流体力学の境界の問題と位置づけられ,解析的な取り扱いが難しい.本研究で示した計算方法はパラメータを氾濫の状況に合わせて動的に変動させるということでそれに対応させた.それによって地盤高の変位や“おち掘れ”のような現象を再現できる可能性が示せた.
本研究において堤防の破壊を引き起こす原因は侵食現象のみであり,流れによる底面せん断力がその原因となっている.すなわち,摩擦力が堤防を崩壊させたという解釈となる.しかしながら,堤防内外の水位差に起因する圧力差が堤防を崩壊させる力として作用したことは否めずそのことが本研究には欠落している.それらを考慮することによってさらに実現象を正しくシミュレートすることが可能になると思われる.
本モデルの基本的な構成を日本最大級の雪崩災害現場である左俣谷の雪崩に適用した結果,雪崩の移動速度やその到達範囲においてモデルとの高い一致性を見出すことができた.
本論文は以下に示す7章から構成されている.第1章では,これまでに生じた様々な水害事例を概観し,研究の背景と本研究の位置づけおよび本研究全体の概要について述べている.
第2章では新潟県中越地区の刈谷田川で発生した破堤による洪水を対象としてこれを平面2次元でモデル化する手法について提案している.計算結果の妥当性については現地の地盤標高の測量結果と比較してその確認を行っている.第3章は,第2章において提案された数値モデルを1次元に簡単化し,堤防の崩壊の力学プロセスを理解しやすくしたモデルを構築し,その妥当性を検証するための室内実験を行っている.堤防の崩壊については室内実験の結果と数値実験の結果は概ね一致し,計算モデルの妥当性が示されている.第4章は1次元の計算モデルを第2章で取り扱った刈谷田川の破堤災害に適用して堤防周辺の土砂の輸送および堤防の堤内地側に生じる落掘りの地形変化を詳細に考察している.第5章は,崩壊した土砂が洪水流によって住宅地に流れ込む様子を2次元的にモデル化した結果について詳細に議論している.第6章では,ここまでに構築した数値モデルを雪崩に対して適用可能であることを主張している.最終章である第7章では全体の総括とした.
本論文は,「Application of numerical wave simulation to interaction of flood flow and geomorphologic evolution (洪水流と地形変化の相互作用に対する数値波動計算の適用 )」と題し,7章より構成されている.
第1章では,これまでに生じた様々な水害事例を概観し,研究の背景と本研究の位置づけおよび本研究全体の概要について述べている.
第2章では新潟県中越地区の刈谷田川で発生した破堤による洪水を対象としてこれを平面2次元でモデル化する手法について提案している.まず数値計算手法の枠組みについて述べ,次いで土砂の移動と堤防の崩壊に関する手法について述べている.堤防の崩壊の力学プロセスは越水による浸食と捉え,洪水流の底面せん断力による土砂の浮遊と上流から輸送されてくる土砂の沈降をモデル化して表現している.また,その土砂の沈降と浮遊の両フラックスの差異による地形変化のモデル化を行い,堤防の形状の変化を評価している.計算結果の妥当性については現地の地盤標高の測量結果と比較してその確認を行っている.
第3章は,第2章において提案された数値モデルを1次元に簡単化し,堤防の崩壊の力学プロセスを理解しやすくしたモデルを構築し,その妥当性を検証するための室内実験を行っている.堤防の崩壊については室内実験の結果と数値実験の結果は概ね一致し,計算モデルの妥当性が示されている.また一致しない点も指摘されているが,堤防内部の浸透流やそれに基づく圧力が考慮されていない点に帰着され,合理的な結果と判断される.
第4章は1次元の計算モデルを第2章で取り扱った刈谷田川の破堤災害に適用して堤防周辺の土砂の輸送および堤防の堤内地側に生じる落掘りの地形変化を詳細に考察している.
第5章は,崩壊した土砂が洪水流によって住宅地に流れ込む様子を2次元的にモデル化した結果について詳細に議論している.崩壊した堤防および河川上流から輸送された土砂が高い土砂濃度として洪水流によって輸送され,住宅地を流れる洪水流の速度の低下によって沈降し堆積する様子をモデル化している.その結果について平成16年の洪水災害当時に測定された土砂の堆積高と比較しておりその妥当性を確認している.
第6章では,ここまでに構築した数値モデルを雪崩に対して適用可能であることを主張している.流体を雪と見なした場合の波動現象と雪崩現象が類似であると仮定し,雪崩の沈降や連行現象を土砂の沈降と巻き上げと捉えて計算を行っている.これを国内最大級の雪崩として知られる左俣谷の雪崩に適用してモデルの結果と比較・検討を行い良好な結果を得ている.
最終章である第7章では全体の総括としている.
本論文は,以上のように数値波動計算モデルを駆使し,流体運動による土砂の輸送や地形変化のモデル化に大きく寄与しており,工学上及び工業上貢献するところが大きく,博士(工学)の学位論文として十分な価値を有するものと認める.