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窒化けい素の静的および繰り返しフレティング疲労特性

氏名 岡根 正樹
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第87号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 窒化けい素の静的および繰返しフレッティング疲労特性
論文審査委員
 主査 教授 武藤 睦治
 副査 教授 田中 紘一
 副査 助教授 古口 日出男
 副査 助教授 岡崎 正和
 副査 富山大学 教授 塩沢 和章

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 金属材料のフレッティングに関するこれまでの研究 p.1
1.2 セラミックスのトライボロジーあるいはフレッティング磨耗に関するこれまでの研究 p.5
1.3 本研究の目的 p.8
1.4 本論文の構成と概要 p.8
参考文献 p.10
第2章 セラミックス用フレッティング疲労試験装置の試作 p.13
2.1 緒言 p.13
2.2 静的フレッティング疲労試験装置 p.15
2.2.1 試験装置の特徴 p.15
2.2.2 試験装置の構造 p.15
2.2.3 測定方法 p.20
2.2.3.1 接触面問の摩擦力の測定方法 p.20
2.2.3.2 接触面間の相対すべり振幅の測定方法 p.22
2.2.4 記録方法 p.22
2.3 繰返しフレッティング疲労試験装置 p.25
2.3.1 試験装置の特徴 p.25
2.3.2 圧電バイモルフの特徴 p.25
2.3.3 試験装置の構造 p.26
2.3.3.1 曲げ応力振幅の負荷方法 p.27
2.3.3.2 すべり振幅の駆動方法 p.27
2.3.3.3 接触荷重の負荷方法 p.31
2.3.3.4 試験部 p.32
2.3.3.5 圧電バイモルフへの電圧の印加方法 p.32
2.3.4 測定方法 p.33
2.3.4.1 測定データの記録方法 p.33
2.3.4.2 曲げ応力振幅の測定 p.33
2.3.4.3 接触荷重の測定 p.34
2.3.4.4 摩擦力の測定 p.35
2.3.4.5 相対すべり振幅の測定 p.37
2.4 結言 p.39
参考文献 p.39
第3章 窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす相対すべり振幅の影響 p.41
3.1 緒言 p.41
3.2 供試材および実験方法 p.42
3.2.1 供試材 p.42
3.2.2 静的フレッティング疲労試験 p.44
3.2.3 静疲労試験 p.44
3.2.4 静的フレッティング中断試験 p.44
3.2.5 フレッティング損傷面観察 p.45
3.2.6 静疲労き裂伝ぱ試験 p.45
3.3 実験結果および考察 p.46
3.3.1 静的フレッティング疲労強度 p.46
3.3.2 接線力係数および相対すべり振幅の測定結果 p.47
3.3.3 フレッティング損傷面の観察結果 p.50
3.3.4 静的フレッティング疲労強度と相対すべり振幅の関係 p.57
3.3.5 破壊力学的手法によるフレッティング疲労寿命推定 p.58
3.3.5.1 静疲労き裂伝ぱ試験結果 p.58
3.3.5.2 フレッティングき裂の応力拡大係数 p.59
3.3.5.3 寿命推定 p.67
3.4 結言 p.70
参考文献 p.71
第4章 窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす接触荷重の影響 p.73
4.1 緒言 p.73
4.2 供試材および実験方法 p.74
4.2.1 供試材 p.74
4.2.2 フレッティング疲労試験 p.75
4.2.2.1 試験装置Aを用いた静的フレッティング疲労試験 p.75
4.2.2.2 試験装置Bを用いた静的フレッティング疲労試験 p.75
4.2.3 フレッティング中断試験 p.76
4.2.4 フレッティング損傷面の観察 p.76
4.3 実験結果および考察 p.76
4.3.1 円柱接触片の場合 p.76
4.3.1.1 静的フレッティング疲労強度 p.76
4.3.1.2 摩擦力および相対すべり振幅の測定結果 p.76
4.3.2 球形接触片の場合 p.78
4.3.2.1 静的フレッティング疲労強度 p.78
4.3.2.2 摩擦力および相対すべり量の測定結果 p.80
4.3.3 フレッティング損傷面の観察結果 p.80
4.3.4 窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす接触荷重の影響 p.84
4.3.5 相対すべり振幅を一定とし接触荷重を変化させた試験結果について p.86
4.3.6 摩擦力を考慮に入れた応力拡大係数 p.93
4.4 結言 p.95
参考文献 p.95
第5章 窒化けい素の繰返しフレッティング疲労特性 p.97
5.1 緒言 p.97
5.2 供試材および実験方法 p.97
5.2.1 供試材 p.97
5.2.2 繰返しフレッティング疲労試験 p.98
5.2.3 静的フレッティング疲労試験 p.99
5.2.4 通常疲労試験 p.99
5.2.5 フレッティング中断試験 p.99
5.2.6 フレッティング損傷面観察 p.100
5.3 実験結果および考察 p.100
5.3.1 フレッティング疲労強度 p.100
5.3.2 接線力係数および相対すべり振幅の測定結果 p.101
5.3.2.1 繰返し荷重フレッティング疲労試験の場合 p.101
5.3.2.2 静疲労状態下におけるフレッティング疲労試験の場合 p.103
5.3.3 フレッティング損傷面の観察結果 p.105
5.3.4 窒化けい素のフレッティング疲労特性に及ぼす繰返し荷重の影響 p.107
5.3.5 破壊力学的手法によるフレッティング疲労寿命推定 p.108
5.4 結言 p.109
参考文献 p.110
第6章 窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす接触材材質の影響 p.111
6.1 緒言 p.111
6.2 供試材および実験方法 p.112
6.2.1 供試材 p.112
6.2.2 フレッティング疲労試験 p.113
6.2.3 フレッティング損傷面観察 p.113
6.3 実験結果および考察 p.114
6.3.1 フレッティング疲労強度 p.114
6.3.2 摩擦力および相対すべり振幅の測定結果 p.115
6.3.3 フレッティング損傷面の観察結果 p.117
6.3.4 窒化けい素のフレッティング疲労特性に及ぼす接触材材質および硬さの影響 p.122
6.4 結言 p.127
参考文献 p.127
第7章 結論 p.129
謝辞 p.132

 セラミックスは、一般に金属材料に比べて優れた高温強度、耐摩耗性、耐食性等の特性を有しており、輸送機関の高速化、あるいはエネルギー関連機器の高出力化・高効率化にともない、超高温、高真空といった従来の金属材料では適用困難な過酷な環境下での使用が有望視されている。一方、セラミックスは金属材料と比べて切欠き感受性が極めて高く、表面仕上げ状態が、強度や疲労強度に強く影響をおよぼす。したがって、はめ合い部等の各種接合部、あるいは軸受などフレッティングの発生が予想される箇所では、金属材料以上に疲労強度の低下が問題となることが予想される。しかしながら、現在までのとろこセラミックスのフレッティング疲労に関する報告は皆無に等しい。
 本研究は、このような背景のもと、セラミックスのフレッティング疲労特性を明らかにすることを最終的な目標とした。具体的にはセラミックスのフレッティング疲労試験を行うために必要となる、新たな試験装置を設計試作した。そして、供試材としてHIP焼結の窒化けい素を用いたフレッティング疲労試験を行い、その基本的な特性を検討した。そらに、フレッティング疲労に大きな影響を与えることが予想される、各種力学的因子を系統的に変化させた試験を行い、それらの影響について検討した。また、接触片の材質を変化させた試験も行い、接触相手材の影響についても検討を加えた。
 第1章"序論"では、本研究を始めるにあたり、フレッティング疲労研究に関する学術的な歴史および現状を調査し、本研究の意義と目的を明らかにした。
 第2章"セラミックス用フレッティング疲労試験装置の試作"では、セラミックスのフレッティング疲労試験を行うため新たに設計試作した、静荷重下および繰返し荷重下の2種類のフレッティング疲労試験装置の仕様、および特徴等について詳細に解説した。
 第3章"窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす相対すべり振幅の影響"では、フレッティング疲労に影響を与える力学的因子のうちでも主要な因子である相対すべり量を取り上げ、窒化けい素の静荷重下でのフレッティング疲労挙動に対するその影響について検討した。また、フレッティング損傷面の詳細な観察を行い、窒化けい素のフレッティング疲労破壊機構を検討するとともに、それらをもとに力学的モデルを仮定し、フレッティング疲労寿命推定を行った。その結果、窒化けい素の静疲労強度はフレッティングの作用により、顕著な低下を示し、その低下率は相対すべり振幅の増加にともない大きくなった。また、窒化けい素のフレッティング疲労破壊は、試験開始後初期の段階で生じた表面き裂が伝ぱし、破断に至ることが明らかとなった。
 第4章"窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす接触荷重の影響"ではフレッティング疲労の影響を及ぼす力学的因子のうち、前章で取り上げた相対すべり量とならぶ主要な因子とされる接触荷重を取り上げ、その影響について検討した。また、これらの力学的因子の影響を金属材料の場合と比較・検討した。その結果、窒化けい素のフレッティング疲労強度は、従来の金属材料の場合とは異なり、摩擦力のみならず相対すべり量や接触荷重が独立に影響を及ぼすことが明らかとなった。これは、接触形状の影響もあるが、セラミックスがほとんど塑性変形を伴わないことに起因した結果である。
 第5章"窒化けい素の繰返しフレッティング疲労特性"では、負荷応力を繰返し負荷にした場合のフレッティング疲労試験を行い、前章までの静的荷重下での窒化けい素のフレッティング疲労に対し、繰返し荷重がフレッティング疲労特性に及ぼす影響について検討した。その結果、試験片負荷応力を繰返しにした場合のフレッティング疲労強度は静的荷重下でのフレッティング疲労強度と差がなく繰返しの効果はほとんどないものと考えられる。これは表面き裂の伝ぱ速度が荷重繰返しの影響をほとんど受けないことによる。
 第6章"窒化けい素の静的フレッティング疲労特性に及ぼす接触材材質の影響"では、接触片に熱処理により硬度を変化させた2種類の鋼球を用いたフレッティング疲労試験を行い、フレッティング疲労特性に及ぼす接触材質の影響を調べている。その結果によると窒化けい素同士の接触に比べ、鋼を接触材として用いた方がフレッティング疲労強度が低下する場合があった。
 第7章"結論"では、以上の各章で得られた結果を総括し、本論文の結論とした。

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