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高性能交流可変速駆動システムの実用化に関する研究

氏名 中野 孝良
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第30号
学位授与の日付 平成5年7月21日
学位論文の題目 高性能支流可変速駆動システムの実用化に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 高橋 勲
 副査 教授 村田 正男
 副査 助教授 近藤 正示
 副査 助教授 大石 潔
 副査 東京工業大学 教授 深尾 正

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目次
第1章 緒論
1.1 本研究の背景 p.1
1.2 本研究の目的 p.4
1.3 本研究の概要 p.6
第2章 交流機の理論解析と制御システム構成
2.1 まえがき p.10
2.2 交流機の解析 p.11
2.2.1 座標の変換 p.11
2.2.2 等価回路表示 p.13
2.3 交流機のトルク制御 p.15
2.4 誘導機の高性能駆動システム p.17
2.4.1 誘導機ベクトル制御の基本式 p.17
2.4.2 誘導機内部構成とベクトル制御 p.20
2.4.3 変換装置とベクトル制御 p.21
2.5 同期機の必要性駆動システム p.24
2.5.1 同期機のベクトル制御の基本式 p.24
2.5.2 同期機内部構成とベクトル制御 p.26
2.5.3 変換装置とベクトル制御 p.28
2.6 まとめ p.30
第3章 電流形インバータを電源とする誘導機の高性能駆動システム
3.1 まえがき p.34
3.2 電流形インバータでのベクトル制御 p.35
3.2.1 制御原理とシステム構成 p.35
3.2.2 回転子鎖交磁束ベクトル p.37
3.2.3 角度制御ループ p.41
3.3 低速での制御 p.41
3.3.1 電流PWM動作 p.41
3.3.2 低速での運転試験結果 p.44
3.4 高速での運転 p.44
3.5 二重電流形インバータへの応用 p.47
3.6 二重電流形インバータでの実際例 p.50
3.6.1 脈動トルクの低減 p.50
3.6.2 電動機銅損の低減 p.52
3.6.3 製紙設備での運転結果 p.54
3.7 まとめ p.56
第4章 電圧形インバータを電源とする誘導機の高性能駆動システム
4.1 まえがき p.57
4.2 PWMインバータを電源とする誘導機ベクトル制御の性能検証 p.58
4.2.1 システム構成 p.58
4.2.2 試験結果 p.60
4.3 PWMインバータでの高速応答化の検討 p.63
4.4 速度適応二次磁束オブザーバ p.71
4.4.1 誘導機の二次磁束オブザーバ p.71
4.4.2 速度適応推定機構 p.72
4.5 適応二次磁束オブザーパによる速度センサレスベクトル制御 p.74
4.6 パラメータ誤差の影響とその対策 p.76
4.6.1 パラメータ誤差の影響 p.76
4.6.2 パラメータ適応機構の付加 p.80
4.7 まとめ p.83
第5章 サイクロコンバータを電源とする同期機の高性能駆動システム
5.1 まえがき p.84
5.2 同期機のベクトル制御 p.85
5.2.1 制御原理 p.85
5.2.2 制御の基本方針 p.88
5.3 制御回路 p.89
5.3.1 制御システム構成 p.89
5.3.2 鎖交磁束ベクトルの演算 p.92
5.3.3 電流制御方式 p.92
5.4 圧延機駆動システムへの応用 p.98
5.5 まとめ p.102
第6章 サイリスタモータ装置の高性能駆動システム
6.1 まえがき p.104
6.2 制御の基本概念 p.105
6.2.1 転流電圧 p.105
6.2.2 ベクトル制御107
6.3 圧延機駆動システムへの応用 p.111
6.3.1 システム構成 p.111
6.3.2 試験結果 p.115
6.4 まとめ p.120
第7章 高性能交流可変速駆動システムの適用性比較
7.1 まえがき p.121
7.2 サイクロコンバータを電源とする大容量駆動システムの比較 p.121
7.2.1 誘導機駆動システム p.122
7.2.2 同期機駆動システム p.122
7.2.3 変換装置容量と電源無効電力 p.126
7.2.4 同期機駆動と誘導機駆動の比較 p.128
7.3 各種高性能交流可変速駆動システムの適用性比較 p.129
7.3.1 比較項目と比較基準 p.129
7.3.2 その他の機種 p.130
7.4 総合評価と将来展望 p.132
7.5 まとめ p.133
第8章 結論 p.134
参考文献 p.141
謝辞 p.150

 インバータ技術が大きく進歩し、それを応用した交流機の可変速駆動システムが普及した。しかし、駆動特性から見ると単純な可変速への応用が大多数であり、高性能な動特性が要求される用途には適さなかった。
 1970年頃になり、ベクトル制御の原理が発明され、交流機の高性能駆動には展望が開けようとしたが、実用化には至らなかった。
 実用化への主な課題は
(1) 交流機の高性能トルク制御理論の解明
(2) 電力変換回路の電圧・電流制御能力の改善
(3) 磁束ベクトルのセンシング方式及び速度センサレス化などであった。この様な状況を背景に本研究を進め課題の解決法の提案と検証、実機への適用などの成果を得ることができ本論文にまとめた。
 第1章「緒論」では本研究の背景、目的と研究内容の概略を述べた。
 第2章では「交流機の理論解析と制御システム構成」について述べた。
(1) 交流機の一般式に基づき、交流機トルク制御の動作が見通し易い瞬時値等価回路を提案した。
(2) この瞬時値等価回路から誘導機及び同期機瞬時値トルク制御の基本式を導出した。さらにこの基本式から電動機の内部状態図を作成し、トルク制御システム構成と関係を明らかにした。
(3) 誘導機又は同期機と各種の半導体電力変換装置との組合せからなる高性能トルク制御システムの基本的構成法を提示した。
 第3章では「電流形インバータを電源とする誘導機の高性能駆動システム」について述べた。
(1) 本システムでは低速でのトルク脈動低減と高速での制御安定性に課題があったが、電流ベクトル角度の閉ループ制御動作のみによって、低速ではパルス幅変調(PWM)制御、中高速では転流遅れを補償する方式を提案して解決した。
(2) 誘導機の磁束ベクトル検出法として、零点調節器つき電圧モデルとフィードフォワード形電流モデルの組合せで高精度な方式を実現した。
(3) トルク脈動と銅損の低減、制御性能向上を狙いとして、上記制御方式を直結二重電流形インバータへ適用した。製紙機械駆動用550kW機を製作し、その有効性を確認した。
 第4章では「電圧形インバータを電源とする誘導機の高性能駆動システム」についてのべた。
(1) サイリスタ式電圧形PWMインバータによるシステムで基本的な性能の検証を行うと共に、より高速なスイッチングデバイスを適用した場合の高性能化への課題と解決策を示した。
(2) 適応二次磁束オブザーバを用いて速度と二次磁束を推定する速度センサレスベクトル制御を提案し、実験でその有効性を確認した。
(3) 電動機抵抗値の変化が速度及び二次磁束推定に与える影響はパラメータ適応機構の附加によって解決出来ることを明らかにした。
 第5章では「サイクロコンバータを電源とする同期機の高性能駆動システム」を述べた。
(1) 同期機及びサイクロコンバータの特長を活かすため、定常時には力率1、過渡時には電機子巻線から磁化電流を供給して動的性能を高める制御方式を採ることとした。
(2) 磁束ベクトル検出法はPARKの式によるフィードフォワード形電流モデルを基本とし、始動後は電圧モデルで補正する方式とした。
(3) サイクロコンバータを理想変換装置に近づけるため、比例制御による交流電流制御ループと積分制御による直流電流ループを組合せた新方式を提案し、良好な結果を得た。
(4) 検討したシステムは2500kW圧延機駆動用として製作され、目標通りの性能で運転された。
 第6章では「サイリスタモータ装置の高性能駆動システム」について述べた。
(1) サイリスタモータ装置を静的・動的に安定に定余裕角制御するには転流源を初期過渡リアクタンスの背後電圧と考えるのが妥当であることを示した。
(2) この背後電圧に相当するダンパ鎖交磁束ベクトルを制御の基準座標軸とし、ダンパ鎖交磁束数の制御、トルク制御および進み電流制御を行う方法を示した。
(3) 本方式はマルチプロセッサによる全ディジタル制御で複雑な高速演算を実行し、タンデム圧延機駆動に適用し、良好な成績を得た。
 第7章では「高性能交流可変速駆動システムの適用性比較」を行った。
(1) 圧延機駆動用を想定し、サイクロコンバータ同期機システムとサイクロコンバータ誘導機システムの制御性能、変換器容量、無効電力を実験と計算で求め、両者の適用性比較を行った。
(2) 本論文で採り上げた各種の高性能駆動システムを実際に適用する場合、検討対象となる項目についての比較評価を行い、表形式にまとめた。
 第8章「結論」では本言及で得られた成果をまとめた。残された課題についても触れた。

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