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雪の力学的性質に関する実験的研究

氏名 篠島 健二
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第33号
学位授与の日付 平成5年12月15日
学位論文の題目 雪の力学的性質に関する実験的研究
論文審査委員
 主査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 清水 敬二
 副査 教授 早川 典生
 副査 教授 武藤 睦治
 副査 助教授 東 信彦
 副査 新潟大学 教授 小林 俊一

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目次
第1章 緒論 p.1
1.1 研究の必要性 p.1
1.2 技術的な課題と論文の構成 p.1
第2章 雪のクリープ特性 p.4
2.1 はじめに p.4
2.2 試験装置 p.5
2.2.1 圧縮および引張り試験装置 p.5
2.2.2 捩り試験装置 p.6
2.3 試料および試験方法 p.7
2.3.1 試料 p.7
2.3.2 圧縮および引張り試験方法 p.8
2.3.3 捩り試験方法 p.9
2.4 基礎理論 p.11
2.4.1 短時間試験 p.11
2.4.2 長時間試験 p.14
2.4.3 粘性係数ηの相互関係 p.16
2.5 試験結果 p.19
2.5.1 短時間試験の結果 p.19
2.5.2 長時間試験の結果 p.34
2.6 考察 p.40
2.6.1 粘弾性係数の相互関係の検証 p.40
2.6.2 積雪の変形と内部組織の関係 p.44
2.7 本研究成果の技術的応用性 p.52
2.7.1 雪崩発生機構への応用 p.52
2.7.2 埋雪構造物の設計への応用 p.53
2.8 まとめ p.56
第3章 雪の緩和特性 p.58
3.1 はじめに p.58
3.2 試験装置 p.59
3.2.1 恒温ケースおよび試験操作盤 p.60
3.2.2 圧縮および引張り変形装置 p.60
3.2.3 捩り変形装置 p.61
3.2.4 試料の取付け機構 p.61
3.2.5 変形速度 p.63
3.2.6 試料の側方変形測定器 p.63
3.2.7 記録計 p.63
3.3 試料雪および試験方法 p.64
3.3.1 試料雪の採取 p.64
3.3.2 試験条件 p.64
3.3.3 試験方法 p.66
3.4 基礎理論 p.68
3.4.1 試料内部の応力状態 p.68
3.4.2 各数値の算出方法 p.71
3.4.3 応力~時間曲線の解析 p.74
3.5 試験結果および考察 p.82
3.5.1 応力~時間曲線の分類 p.82
3.5.2 瞬間弾性係数の特性 p.86
3.5.3 変形中の応力の特性 p.90
3.5.4 緩和曲線の実験式 p.97
3.5.5 Boltzmannの方程式による解析 p.102
3.5.6 Maxwell modelによる解析 p.107
3.6 まとめ p.121
第4章 圧雪の硬度特性 p.123
4.1 はじめに p.123
4.2 圧雪硬度計の構造 p.125
4.3 硬度計算の理論考察 p.126
4.3.1 硬度計を水平に操作する場合 p.126
4.3.2 硬度計を鉛直に操作する場合 p.133
4.3.3 木下硬度計の場合 p.136
4.3.4 水平硬度と鉛直硬度の貫入深の関係 p.139
4.4 試験結果 p.142
4.4.1 スプリング式硬度計の水平硬度と鉛直硬度の比較 p.142
4.4.2 木下硬度計とスプリング式硬度計の比較 p.150
4.4.3 試料の密度および温度と硬度の関係 p.154
4.4.4 硬度計の先端直径による影響 p.158
4.5 本硬度計によるフランジウェイ圧雪の評価 p.164
4.6 まとめ p.166
第5章 雪塊の衝突による衝撃力の特性 p.167
5.1 はじめに p.167
5.2 試験装置 p.170
5.2.1 試料成形機 p.170
5.2.2 雪塊落下塔 p.170
5.2.3 雪塊昇降機および雪塊発射装置 p.171
5.2.4 雪塊案内筒 p.173
5.2.5 雪塊の衝突速度測定装置 p.174
5.2.6 雪塊の衝撃力測定装置 p.174
5.3 試験条件および試験方法 p.176
5.3.1 試験条件 p.176
5.3.2 試験方法 p.176
5.4 試験データの処理 p.177
5.4.1 雪塊の衝撃力および衝突速度波形のAD変換 p.177
5.4.2 LABOCS(会話型時系列解析システム)による数値解析 p.177
5.5 試験結果 p.182
5.5.1 試験データの種類 p.182
5.5.2 衝撃力波形の分類 p.182
5.5.3 衝撃力波形の周波数特性 p.194
5.5.4 衝撃力と試験条件の関連性 p.207
5.6 研究結果の技術的な応用性について p.226
5.7 まとめ p.226
第6章 総括 p.228
6.1 本研究のまとめ p.228
6.2 本研究以降の発展 p.228
6.2.1 雪のクリープ特性について p.229
6.2.2 圧雪の硬度特性について p.229
6.2.3 雪塊の衝撃力特性について p.229
6.3 あとがき p.230
謝辞 p.231
付録 p.232
参考文献 p.255

 雪の力学的性質の研究は関連する自然現象の解明や各種雪処理装置の開発にとって不可欠である。しかし、積雪の組織やそれらの構成粒子が環境の物理条件に応じて時間と共に変化するため、明確な表現が非常に難しい問題となっている。
 雪の広汎な挙動を把握するには、種々の変形速度、変形量、密度、温度等の物理量と内部応力、破壊強度の関係を知る必要がある。従って、本研究の第2章および第3章では雪の緩慢な変形に対する応力変化を論ずるため、低温室内における積雪試料の圧縮、引張り、捩りの3変形に対するクリープ特性および緩和特性からそれぞれの粘弾性常数を求め、試料密度や温度の関係を見いだすことを試みた。供試試料は断面積が20cm2、長さが20cmの円柱状であり、低温室内に保存しておいた積雪からスノーサンプラーで切り出して成形したものである。試験により得られた結果は次のとおりである。
 第2章では、積雪試料のクリープについてMaxwell modelとVoigt modelの直列結合の4要素模型を用いて解析し、従来、圧縮のみについて密度の函数として表現されていた粘性係数を、圧縮、引張りおよび剪断の粘性係数について、温度依存性を含めた指数函数として表現した。また、剪断、圧縮、引張りのMaxwell modelの弾性係数および粘性係数の比がおよそ1:2:3であることが判った。一方、Voigt modelでは、この比がおよそ1:3:3になった。
 静荷重長時間試験においては、R.Haefeliの言った圧縮と引張りの粘性係数が著しく異なる変形特性が確認され、それぞれの粘性係数およびPoisson比が求められた。粘性係数は同一密度でも時間と共に増大していくこと(硬化)、またPoisson比は圧縮で0に近いが、引張りでは逆に0.5に近いこと等が判った。
 上記に得られた粘性係数データは雪崩の発生予測、積雪の沈降過程、積雪に埋没する桁に作用する沈降力の推定に利用され、実際との良い一致をみた。
 第3章では、従来実験室で直接測定されなかった定速による圧縮、引張りおよび捩りの変形試験を行い、変形中の応力増加と変形停止後の応力緩和の測定値から、変形停止時の応力を試料の密度、温度、歪の函数として実験的に求めた。また応力緩和現象がMaxwell modelの6要素模型によって最も良く近似できることが判った。なお、ここで求めた結果を構造物等の設計等に利用した研究はまだ行われていない。
 第4章では、数m/sの速度で貫入桿を圧雪の表面に衝突させた時、貫入桿の運動エネルギーが圧雪の圧痕形成に消費される状況から硬度の表現法を論じた。試料は平地積雪から切り出した雪塊およびこれを細かに粉砕し、油圧圧縮機により直径20cmφ、厚さ8cm程度の円盤状に圧縮成形し、所定の温度になるまで低温室内で焼鈍させたものであり、これらについて開発した実用性の高い横方から測定できるスプリング式圧雪硬度計により、鉛直および横方から硬度を測定し、従来から使用されていた木下式硬度計と関連付けた。
 この硬度計を用いて、宗谷線、函館本線、田沢湖線、山田線、北上線および上越線に発生したフランジウェイ圧雪の硬度分布と圧縮破壊強度等の関係を調べ、東北新幹線の建設に対する走行安全性を検討した。
 第5章では、雪塊が数m/sから18m/sの速度範囲で衝突する時の衝撃力の大きさと波形に関する特性を扱った。衝撃力の把握は他の物質においても困難な問題であるが、測器やデータ処理技術の進歩によって、幾分詳細な解析が可能となった。
 雪塊試料は平地積雪から切り出した雪を油圧式の圧縮機で圧縮成形した後、所定の温度になるまで低温室内で焼鈍させたものであり、断面積が30×30cm2、長さが30~100cmの直方体である。試験の結果は次のとおりである。
 従来、雪崩の衝撃力に対してのみ測定されたいた雪の衝撃力を車両等の受ける衝撃力の範囲まで拡大した条件で、衝撃力および力積の実験式を雪塊試料の質量、温度、衝突速度、衝突角度の函数として求めた。
 以上の結果は東北および上越新幹線の建設に際して、スノーシェッド等の防雪設備の設計強度、新幹線列車の排雪時の飛雪の衝撃圧、新幹線高架から落下する雪庇や冠雪の衝撃力の算定に用いられた。

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