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ZnS/CdS超格子の原子層エピタキシー成長と結晶の熱的安定性

氏名 田所 豊康
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第96号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 ZnS/CdS超格子の原子層エピタキシー成長と結晶の熱的安定性
論文審査委員
 主査 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 教授 飯田 誠之
 副査 助教授 打木 久雄
 副査 助教授 石黒 孝
 副査 東京工業大学 助教授 山本 直紀

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 超格子開発の意義 p.1
1.2 超格子半導体レーザ開発の歴史 p.3
1.3 ZnS/CdS超格子の開発状況と問題点 p.6
1.4 本研究の目的 p.8
1.5 本論文の構成 p.8
参考文献 p.9
第2章 原子層エピタキシー法による薄膜結晶成長とその評価技術 p.12
2.1 まえがき p.12
2.2 原子層エピタキシー成長 p.13
2.2.1 本研究に用いた分子線エピタキシー装置 p.13
2.2.2 原子層エピタキシー成長の原理 p.14
2.3 結晶評価技術 p.16
参考文献 p.24
第3章 CdS及びZnSの原子層エピタキシー成長と結晶評価 p.26
3.1 まえがき p.26
3.2 CdS及びZnSの原子層エピタキシー成長 p.27
3.2.1 実験方法 p.27
3.2.2 原子層エピタキシー成長 p.29
3.3 原子層エピタキシー成長CdS並びにZnSの結晶評価 p.33
3.3.1 膜厚分布 p.33
3.3.2 表面モルフォロジー p.35
3.3.3 X線回折 p.37
3.3.4 透過電子顕微鏡観察 p.41
3.3.5 フォトルミネッセンス特性 p.48
3.3.6 カソードルミネッセンス特性 p.49
3.4 まとめ p.51
参考文献 p.52
第4章 ZnS/CdS超格子の原子層エピタキシー成長と評価 p.54
4.1 まえがき p.54
4.2 ZnS/CdS超格子の原子層エピタキシー成長 p.55
4.2.1 実験方法 p.55
4.3 原子層エピタキシー成長(ZnS)m/(CdS)n超格子の評価 p.59
4.3.1 X線回折 p.59
4.3.2 透過電子顕微鏡観察 p.65
4.3.3 表面モルフォロジー p.69
4.3.4 フォトルミネッセンス特性 p.69
4.3.5 カソードルミネッセンス特性 p.75
4.4 まとめ p.84
参考文献 p.85
第5章 原子層エピタキシー成長したZnS及びZnS/CdS超格子の熱的安定性 p.87
5.1 まえがき p.87
5.2 原子層エピタキシー成長ZnSの熱的安定性 p.87
5.2.1 実験方法 p.88
5.2.2 結晶評価 p.88
5.2.3 ルミネッセンス特性 p.91
5.3 原子層エピタキシー成長ZnS/CdS超格子の熱的安定性 p.98
5.3.1 実験方法 p.98
5.3.2 結晶評価 p.99
5.3.3 ルミネッセンス特性 p.115
5.4 まとめ p.122
参考文献 p.123
第6章 結論 p.125
謝辞 p.127
本研究に関する業績目録 p.128
付録 p.132

 本論文は次世代半導体レーザーの基本素材の一つと考えられているZnS/CdS超格子について材料学的立場から研究したものである。すなわち、この系の超格子において従来大きな問題となっていたことは
(1) エピタキシャル成長膜の不完全性
(2) 発光特性の理論との不一致
(3) 熱的安定性であった。
 本論文はこれらを解決するため、高分解能電子顕微鏡並びにX線回折、カソードルミネッセンス等の技法を駆使して綿密に調べ、特に電子顕微鏡による断面の直接観察から超格子構造が原子層レベルで成長していること、またそれが熱的に破壊される挙動を追跡し500℃で超格子は完全に破壊されることを初めて確認した。また、通常CdSは六万晶構造であるがエピタキシャル成長において立方晶構造となることを確認した。この物理定数と励起子の効果を考慮して、得られた発光特性の理論と実験のフィッティングの精度を一段と高めることに成功した。
 論文は「ZnS/CdS超格子の原子層エピタキシー成長と結晶の熱的安定性」と題し、6章より構成している。
 第1章「序論」では、本研究の背景を述べるとともに本論文の目的と位置づけを明らかにした。
 第2章「原子層エピタキシー法による薄膜結晶成長とその評価技術」では、本研究に用いる結晶成長法並びに結晶評価技術について述べた。
 第3章「CdS及びZnSの原子層エピタキシー成長と結晶評価」では、CdS及びZnSそれぞれの原子層エピタキシャル成長を試みた。通常バルクのCdSは六万晶構造であるが、(100)GaAs基板上に成長したCdSは、立方晶構造であることを確認した。また、(100)GaAs基板上に成長したZnSは基板界面より約1000分子層で構造緩和されることを明らかにした。さらに、成長したCdS及びZnS膜より立方晶構造のCdS及びZnSのバンドギャップ等の物理定数を明らかにした。
 第4章「ZnS/CdS超格子の原子層エピタキシー成長と評価」では、ZnS/CdS超格子を原子層エピタキシャル成長し、高分解能電子顕微鏡により原子層レベルで断面の直接観察を行うとともに、X線回折並びにカソードルミネッセンスの技法を用いて、深さ方向の構造解析を行い、その結果作製した超格子においては
(1) 原子層単位で正確に構成されていること
(2) バッファ層近傍で狭い井戸層が形成されている可能性があること
(3) 井戸層及び障壁層の分子層数を変えることにより短波長(紫から緑)領域の広い範囲で発光特性を変化できること
(4) 先に明らかにした立方晶構造CdSと励起子の効果を考慮にいれて発光特性の理論と実験とのフィッティングの精度を高めることができることがわかった。
 第5章「原子層エピタキシー成長したZnS及びZnS/CdS超格子の熱的安定性」では、ZnS/CdS超格子の熱的安定性について詳細に調べ、超格子の長周期構造は400℃のアニールでは結晶性はむしろ向上するが500℃では破壊されるにいたることを初めて確認した。
 第6章「結論」では、本研究で得られた結果を総括するとともに今後の課題を述べた。

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