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組織制御によるSi3N4セラミックスの機械特性向上と応用開発

氏名 山川 晃
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第40号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 組織制御によるSi2N4セラミックスの機械特性向上と応用開発
論文審査委員
 主査 教授 石崎 幸三
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 植松 敬三
 副査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 熊本大学 助教授 真下 茂

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目次
謝辞
Abstract
第1章 序論 p.1
第2章 Si3N4セラミックス内部の気孔生成機構とその制御 p.10
2-1 緒言 p.10
2-2 Si3N4p.-Al2O3-MgO肉厚焼結体の焼結過程における気孔の生成機構 p.10
2-2-1 実験方法
2-2-2 実験結果
2-2-3 考察
2-3 Si3N4-Al2O3-MgOセラミックスのHIP焼結による気孔および機械的特性の変化 p.16
2-3-1 実験方法
2-3-2 実験結果
2-3-3 考察
2-4 結言 p.20
第3章 Si3N4セラミックスの粒界析出相とその制御 p.22
3-1 緒言 p.22
3-2 Si3N4-Al2O3-Y2O3-AlN焼結体における黒色異常組織 p.22
3-2-1 実験方法
3-2-2 実験結果
3-2-3 考察
3-3 Si3N4-Al2O3-Y2O3-AlN焼結体の熱処理によるYAP相含有量及び焼結体特性の変化 p.27
3-3-1 実験方法
3-3-2 実験結果
3-3-3 考察
3-4 Si3N4-ZrO2-Y2O3焼結体の粒界相と高温における機械的特性の関係 p.31
3-4-1 実験方法
3-4-2 実験結果
3-4-3 考察
3-5 結言 p.36
第4章 Si3N4セラミックスのSi3N4結晶粒寸法の制御 p.38
4-1 緒言 p.38
4-2 Si3N4セラミックスの結晶粒寸法と機械的特性の関係 p.38
4-2-1 実験方法
4-2-2 実験結果
4-2-3 考察
4-3 微細結晶粒からなるSi3N4セラミックスの曲げ強度と破壊の起点の関係 p.43
4-3-1 実験方法
4-3-2 実験結果
4-3-3 考察
4-4 結言 p.48
第5章 Si3N4セラミックス内部の欠陥評価技術 p.50
5-1 緒言 p.50
5-2 超音波透過法によるSi3N4セラミックスの均一性評価 p.52
5-2-1 実験方法
5-2-2 実験結果
5-2-3 考察
5-3 浸液透光法によるSi3N4成形体内部欠陥の評価 p.55
5-3-1 実験方法
5-3-2 実験結果
5-3-3 考察
5-4 Si3N4セラミックスの衝撃降伏特性とその微構造及び静的機械特性との関係 p.58
5-4-1 実験方法
5-4-2 実験結果
5-4-3 考察
5-5 結言 p.62
第6章 Si3N4セラミックスの製品開発 p.64
6-1 緒言 p.64
6-2 銅線材圧延ロールの開発 p.64
6-2-1 緒言
6-2-2 銅線材圧延ロールの要求特性
6-2-3 実験方法
6-2-4 実験結果
6-2-5 考察
6-3 切削工具の開発 p.72
6-3-1 緒言
6-3-2 実験方法
6-3-3 実験結果
6-3-4 考察
6-4 結言 p.77
第7章 総括 p.80
添付資料(研究業績リスト) p.90

 Si3N4セラミックスは、1960年代後半に緻密な焼結体を得る技術が開発され、優れた特性が明らかになるとともに、その特性を利用した用途開発が世界的に進められた。その結果、自動車部品、ベアリング等の機械部品、耐摩耗工具あるいは切削工具等機械構造部材が実用化された。また、Si3N4原料粉末の開発をはじめ成形、焼結、研削加工等製造プロセスの開発、粒界ガラス相の検討、異種物質の複合化等のSi3N4材料の開発が行われた。その成果として室温あるいは高温での材料強度、耐酸化性、耐食性が改良されたSi3N4セラミックスが開発された。
 しかし、Si3N4セラミックスが構造材料として金属材料、高分子材料と同様に広く使われるためには、その機械強度に対する信頼性を金属材料なみにまで高めることが必要である。それは、セラミックスの平均強度、靭性を上げること、焼結体に内在する欠陥の大きさを焼結体の強度に影響しない程度まで小さくすることでもある。しかし、特に欠陥の制御は、焼結体内部に生成する気孔が製造する焼結体の寸法によって異なるなど、実際の製品に特有のものがあり、製造現場で経験的に対応されているのが現状である。
 本研究では、Si3N4セラミックスの持つ機械的特性を最大に発揮させ、かつ信頼性を高めることを目標にし、Si3N4セラミックスの多くの組織、構造因子の中から、Si3N4セラミックスの機械特性とそのバラツキを決定する気孔、粒界相、Si3N4粒子についてその形成機構とそれを制御する方法を明らかにした。また、本成果を利用して開発した強度、信頼性の高いSi3N4セラミックスを用いて銅線材圧延ロールおよび切削工具を試作し、実用性能の評価を行うことにより製品化に成功した。同時に超音波パルス透過法、浸液透光法および衝撃圧縮試験法による性能評価を行い、より高性能なSi3N4セラミックスを開発するための手法を明らかにした。
 各章における研究結果は次のように要約できる。
 第1章では、Si3N4セラミックスの材料技術、製造プロセス、欠陥制御技術、性能評価技術、および実用化の現状を概観し、本研究の目的と意義を明らかにした。
 第2章では、Si3N4セラミックスの焼結体内部に生成し、焼結体強度を低下させる気孔についてその形成機構と制御法について検討した。特に、Al2O3とMgOを焼結助剤としたφ60mmで高さ60mmの厚肉焼結体の焼結実験を行い、焼結体内部に生成する気孔が成形体中に残存した炭素と二酸化珪素との反応によるCOガスの発生によることを明らかにした。気孔の無い緻密な大型焼結体を得るには、原料Si3N4粉末の炭素含有量を減らし焼結中のCOガス発生量を減少させ、および、昇温プロファイルを変更し焼結体の緻密化前に内部からのガス発生を完了する。さらに、HIP(熱間静水圧プレス)を利用した焼結が有効であることを示した。
 第3章では、Si3N4セラミックスの粒界析出相の生成機構とその制御法について検討した。焼結助剤として、Al2O3、Y2O3、AlNポリタイプ(21R)を用い、熱処理、冷却速度条件による粒界析出相の変化と焼結体特性の変化の関係を明らかにした。焼結体の冷却過程における結晶相の変化と冷却後の熱処理による結晶相の変化を調べ、析出相であるYAG相、YAP相の変化と機械特性への影響を明らかにした。また、焼結後の粒界ガラス相の結晶化過程を状態図を含めて検討を加えた。その状態図を用い、焼結体にみられる黒色常組織がYAG相の不均一な析出が原因であること、YAG相の不均一析出を避けるには原料中の鉄不純物を制御することが必要であることを示した。
 第4章ではSi3N4セラミックスのSi3N4結晶粒子の寸法制御について検討した。微細なSi3N4粒子からなる焼結体を作製し、従来のSi3N4セラミックスに比べ機械特性に優れることを示した。また、Si3N4結晶粒子の大きさと機械特性の関係を明らかにした。さらに、微細Si3N4粒子からなる焼結体の破壊の起点と曲げ強度の関係を明らかにし、従来の破壊理論が適用可能であることを確かめた。
 第5章では、第2章から4章で検討した組織制御したSi3N4セラミックスの特性評価法を検討した。焼結体中のガス発生により生成した気孔を非破壊で検出するため、超音波パルス透過法による評価法を検討し、特にSi3N4圧延ロールの評価に有効であることを示した。また、未焼結のSi3N4成形体中の欠陥検出に浸液透光法が有効であることを明らかにした。ついで、結晶粒子の大きさが異なるSi3N4セラミックスの衝撃圧縮下における挙動を計測し、Si3N4結晶粒子の大きさと衝撃圧縮特性およぴ曲げ強度との関係を明らかにすることで、粒子制御した高強度なSi3N4セラミックスの開発に衝撃圧縮特性の評価が有効であることを示した。
 第6章では、第2章~第5章までの研究成果をSi3N4セラミックスの製品開発に応用した。Si3N4の気孔、粒界相の組織制御評価を行うことにより、銅線材圧延ロール、切削工具の性能を向上させ、実用化研究に成功した。これらの製品はいずれも現在広く実用化され、産業の発展に寄与している。

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