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低温プラズマの制御と炭素材料への応用

氏名 大手 丈夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第45号
学位授与の日付 平成6年3月25日
学位論文の題目 低温プラズマの制御と炭素材料への応用
論文審査委員
 主査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 助教授 丸山 一典
 副査 助教授 福澤 康
 副査 助教授 河合 晃

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目次
第1章 序論
1.1 本研究の背景 p.1
1.2 本研究の目的 p.2
1.3 本研究の内容 p.3
第2章 表面改質のためのプラズマ制御
2.1 緒言 p.6
2.2 平行平板電極型R.F.放電の電位分布 p.6
2.3 セルフバイアス電圧の制御(補助放電法) p.7
2.3.1 制御の必要性 p.7
2.3.2 制御法の原理 p.8
2.3.3 制御機構のモデル p.10
2.3.4 実験装置と方法 p.11
2.3.5 実験結果と考察 p.14
2.4 セルフバイアス電圧の制御(分岐回路法) p.16
2.4.1 制御の必要性 p.16
2.4.2 制御法の原理 p.16
2.4.3 実験装置と方法 p.16
2.4.4 実験結果と考察 p.17
2.5 プラズマ構成要素の制御 p.17
2.6 小括 p.18
[参考文献] p.19
第3章 材料表面へのプラズマの効果
3.1 緒言 p.39
3.2 表面特性の評価と測定 p.39
3.2.1 はじめに p.39
3.2.2 表面特性の評価法 p.40
3.2.3 まとめ p.44
[参考文献] p.45
3.3 プラズマによる表面改質作用 p.46
3.3.1 はじめに p.46
3.3.2 実験方法 p.47
3.3.3 実験結果 p.51
3.3.4 考察 p.60
3.3.5 まとめ p.67
[参考文献] p.68
3.4 表面特性の制御と経時変化の低減 p.69
3.4.1 はじめに p.69
3.4.2 実験方法 p.71
3.4.3 実験結果および考察 p.73
3.4.4 まとめ p.82
[参考文献] p.83
3.5 損傷の低減 p.84
3.5.1 はじめに p.84
3.5.2 実験方法 p.85
3.5.3 実験結果と考察 p.90
3.5.4 まとめ p.94
[参考文献] p.95
3.6 表面改質のメカニズム p.96
3.6.1 はじめに p.96
3.6.2 不活性ガスのプラズマ処理 p.96
3.6.3 酸素プラズマ処理 p.98
3.6.4 CF4プラズマ処理 p.99
3.6.5 まとめ p.109
[参考文献] p.111
3.7 小括 p.112
第4章 プラズマ処理された物質の応用と評価
4.1 緒言 p.185
4.2 実験方法 p.186
4.3 実験結果 p.190
4.4 考察 p.192
4.5 小括 p.194
[参考文献] p.195
第5章 総括 p.207
[本研究に関する発表論文] p.209
謝辞 p.219

 プラズマの材料分野への工学的応用は、低温プラズマが重要な役割を担っている。低温プラズマはすでに半導体やダイヤモンドの製造、および高分子材料の表面改質などに利用されており、これを用いる技術は将来も非常に有望視されている。このような背景の中、プラズマの計測、制御の困難さ、処理後の表面特性の制御性が不十分であり、経時変化も存在し、汚染や損傷の問題、改質機構に不明な部分がかなりあるなどの欠点が低温プラズマを表面改質へ使用する際の障害になっている。これらの欠点が解決されていないのは、プラズマ中の各種活性種(電子、イオン、ラジカル、分子など)およびプラズマパラメータ(プラズマポテンシャル、電子温度、イオン密度、ラジカル密度、シース電圧など)を独立に制御することが困難であったことや、個々の活性種の働きやプラズマパラメータの影響に関する系統的な解析ができなかったことによる。
 本研究では、これらの欠点を克服し、プラズマによる表面改質を工業技術として大きく進展させるために、新しいプラズマ制御法を開発した。また、開発したプラズマ制御法などを利用して、プラズマが材料表面特に炭素材料の表面におよぼす効果を検討した。さらに、プラズマ処理された材料の工学的応用についても調べた。
 第1章「序論」では、低温プラズマの制御と各種材料への応用に関し、研究の背景と問題点を明らかにし、本研究の意義ならびに目的について述べた。
 第2章「表面改質のためのプラズマ制御」においては、プラズマの制御の意味を明確にし、新しいプラズマ制御法を開発した。一般に、プラズマの制御は困難であるといわれている。事実、プラズマ発生時の放電条件(入力電力やガス圧など)を変えても、プラズマは制御できない。プラズマの制御は本質的にはプラズマの構成要素または、プラズマパラメータを独立に調整することである。また、これらはプラズマを材料表面の改質に応用する場合、処理後の材料表面特性に直接的に影響を与える因子である。
 本研究では、プラズマパラメータを独立に、安定した状態で制御できる二つの方法、補助放電法と分岐回路法を開発した。これらはプラズマを材料の表面改質に使用する場合に最も重要なパラメータであるシース電圧を制御する方法である。また、プラズマの構成要素を制御可能な混合ガス法を考案した。これらの方法によりプラズマの制御が可能になった。
 第3章「材料表面へのプラズマの効果」では、プラズマが各種材料表面、特に炭素材料の表面におよぼす効果を解明した。炭素材料とプラズマとは、核融合炉の第一融壁、プラズマエッチングにおけるシリコンウエハー用治具、ダイヤモンドやダイヤモンドライクカーボンの製造などにおいて、深く関連を持つ。そこで、本研究においては、低温プラズマを用いて、炭素材料(ガラス状カーボン、炭素繊維など)の表面改質や、アモルファスシリコンの反応性イオンエッチング(RIE)を行い、プラズマが材料の表面におよぼす効果を、水との濡れ性(水に対する接触角)、エッチング特性の検討、走査型電子顕微鏡による表面観察、光電子分光やラマン分光などによる表面解析を用いて明らかにした。すなわち、次に示す六つの事項を達成した。(1)プラズマ処理された材料表面の特性評価法、(2)プラズマが材料表面におよぼす作用の解明、(3)プラズマによる表面特性の精密制御、(4)プラズマ処理後に起こる改質効果の経時変化の低減、(5)改質時にプラズマによって引き起こされる損傷の低減、(6)プラズマによる改質の機構解明。
 第4章「プラズマ処理された物質の応用と評価」では、プラズマ処理された材料を複合材などに利用するという視点からプラズマの効果を明確にした。炭素繊維を強化材とした複合材は、宇宙、航空関係を中心に発達し、さらにその用途は広がろうとしている。炭素繊維を用いた複合材の機能をさらに向上させたり、より新しい機能をもった複合材の開発も各種産業界から熱望されている。そこで、本研究ではこのような要望に答えるためにプラズマ処理された炭素材料の利用を試みた。その結果、プラズマ処理された炭素繊維を用いることにより、処理しない場合と比較して、炭素繊維/セメント複合材の機械的強度を著しく向上させることができた。
 第5章「総括」では、本研究を総括した結論を述べている。
 本研究の最大の成果は、プラズマ処理された材料を工学的に応用する際に非常に重要であるが、研究が進んでいなかったプラズマの制御、材料表面におよぼす作用の解明、表面特性の精密制御や経時変化の低減、およびプラズマ損傷の低減に関して明らかにし、低温プラズマの工学的応用を大きく進歩させたことである。

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