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セラッミクスの加圧成形製造プロセスにおける信頼性向上に関する基礎的研究

氏名 田中 宏
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第103号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 セラミックスの加圧成形製造プロセスにおける信頼性向上に関する基礎的研究
論文審査委員
 主査 教授 植松 敬三
 副査 教授 松下 和正
 副査 教授 石崎 幸三
 副査 助教授 小松 高行
 副査 助教授 内田 希

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目次
第一章 緒論 p.1-1
1-1 研究の背景 p.1-1
1-1-1 はじめに p.1-1
1-1-2 成形体の特徴 p.1-2
1-2 顆粒の加圧圧縮成形プロセス p.1-5
1-2-1 顆粒の構造 p.1-5
1-2-2 スプレードライ顆粒の成形特性 p.1-7
1-2-3 顆粒の成形特性に及ぼす相対湿度とバインダーのガラス転移温度の影響 p.1-8
1-3 成形体構造と焼結体構造の関係 p.1-9
1-4 成形体及び焼結体の微構造の評価方法 p.1-10
1-5 本研究の目的 p.1-11
参考文献・図表 p.1-14
第2章 セラミックス成形体の破面構造と破壊強度に及ぼす顆粒水分の影響 p.2-1
2-1 緒言 p.2-1
2-2 実験 p.2-2
2-3 結果 p.2-3
2-4 考察 p.2-5
2-5 結論 p.2-7
参考文献・図表 p.2-7
第3章 成形体、焼結体特性に及ぼす顆粒水分の影響 p.3-1
3-1 緒言 p.3-1
3-2 実験 p.3-1
3-3 結果 p.3-2
3-4 考察 p.3-5
3-5 結論 p.3-7
参考文献・図表 p.3-8
第4章 予備成形体中の水分コントロールによる焼結特性の向上 p.4-1
4-1 緒言 p.4-1
4-2 実験 p.4-1
4-3 結果 p.4-3
4-4 考察 p.4-4
4-5 結論 p.4-7
参考文献・図表 p.4-7
第5章 セラミックス成形体中への水分の拡散係数の測定 p.5-1
5-1 緒言 p.5-1
5-2 実験 p.5-2
5-3 結果 p.5-3
5-4 考察 p.5-4
5-5 結論 p.5-5
参考文献・図表 p.5-6
第6章 水分添加した成形体の表層と中心の内部構造とその焼結体特性 p.6-1
6-1 緒言 p.6-1
6-2 実験 p.6-2
6-3 結果 p.6-3
6-4 考察 p.6-4
6-5 結論 p.6-5
参考文献・図表 p.6-6
第7章 加圧成形におけるプレス軸方向と焼結体特性との関係 p.7-1
7-1 緒言 p.7-1
7-2 実験 p.7-1
7-3 結果 p.7-3
7-4 考察 p.7-6
7-5 結論 p.7-8
参考文献・図表 p.7-8
第8章 総括 p.8-1
謝辞

セラミックスは複雑な製造プロセスを経て製造され、その特性がプロセス条件で強く影響される材料である。高信頼性の実現には、まず、成形体や焼結体特性の変動原因を解明し、ついでその変動を最小限に抑制する新しい成形プロセス技術とそれを詳細に評価する評価技術の開発が望まれる。
 本研究では顆粒や成形体中に吸収/吸着される水分がバインダーの特性を変化させることに着目し、アルミナーPVA系の加圧成形プロセスを対象に次の項目の検討を行った。(1)顆粒および成形体中の水分が成形体および焼結体特性に及ぼす影響、(2)成形体中への水分の拡散挙動の解明とその利用による信頼性向上のための新しい成形プロセスの開発、(3)浸液-偏光顕微鏡法を用いた成形体や焼結体の構造と特性との関係。
 本論文は、『セラミックスの加圧成形製造プロセスにおける信頼性向上に関する基礎的研究』と題し、以下の8章から構成される。
 第1章「緒論」では、セラミックスが広く利用されるためには信頼性の向上が重点課題であり、その実現のためには製造プロセス技術、特に成形プロセス技術の確立が重要であることを指摘すると同時に、本研究の位置付けと目的を述べた。
 第2章「セラミックス成形体の破面構造と破壊強度に及ぼす顆粒水分の影響」では、水分の役割海面のため、その成形体のミクロおよびマクロ構造への影響とバインダーの機械的特性への影響を分離できるよう実験を設計し、出発顆粒中の水分がPVAバインダー添加アルミナ成形体の内部構造と破弾面構造へ及ぼす影響を調査した。その結果、成形体強度は従来の定説であった成形体密度や一次粒子に吸着するバインダーの形態や量では説明できないことが明らかとなったため、本研究では構造を考慮して考察した。低強度を示す成形体は顆粒間破壊、高強度を示す成形体は顆粒内破壊がそれぞれ支配的となり、水分含有量の差によって異なった形態の破壊モードを示すことをはじめて明らかにした。
 第3章「成形体、焼結体特性に及ぼす顆粒水分の影響」では、浸液-透光顕微鏡観察による内部構造評価法を用いて、顆粒中の水分量と成形体および焼結体の構造と特性との関連を検討した。その結果、その増加とともに成形体は低い成形圧力で高密度となり、顆粒間に存在する気孔は減少し、また、焼結体の亀裂状のプロセス気孔は減少し、曲げ強度のワイブル係数は増加するなど、成形時の顆粒中の水分量は成形体および焼結体の構造と特性に著しい影響を与えた。しかし、顆粒中の水分の増加は同時に顆粒表面のPVAバインダーの付着力を増し、スプレードライ顆粒の特徴である流動性や充填性を損なう副作用を生じるため、これを工業的な製造プロセスへ適用するのは非常に困難であることが示された。
 第4章「予備成形体中の水分コントロールによる焼結体特性の向上」では、金型による予備成形とCIPの組み合わせから成る製造プロセスにおいて、まず低水分で流動性のよい顆粒により、予備成形体を作製し、ついでその水分を適切に調整後にCIP成形を行う方法について、水分量がCIP成形体/焼結体の内部構造および特性に及ぼす影響の検討を行った。その結果、この方法では前章とほぼ同じ良好な結果が成形体を犠牲にせずに得られ、その実用製造プロセスへの適用が可能となった。
 第5章「セラミックス成形体中の水分の拡散係数の測定」では、前章での結果に基づき、予備成形体への水分添加条件の決定における重要因子である水の拡散係数を測定した。PVAバインダーを含むアルミナ粒子間の細孔内での水の拡散係数の測定方法を検討し、測定用の成形体サイズ、成形時の圧力、バインダーの添加量、相対湿度等の測定パラメーターが水の拡散係数へ及ぼす影響を調べた。その結果、相対湿度(特に低湿度)や成形圧力などは拡散係数の測定値に著しい影響を及ぼさないこと、拡散係数がJ.Crankによって与えられた球の非定状態拡散式を用いて、再現よくかつ正しく求められることが明らかとなった。
 第6章「水分を添加した成形体の表層と中心の内部構造とその焼結体特性」では、前章までに得られた成果の工業的応用への実証を行うため、大型の試験片について、(1)前章で測定した拡散係数をもとに拡散の平衡時間の予測と実験によるその確認と、(2)大型試験片の水分添加による均質化向上の検討を行った。その結果、前章の実験で求めた拡散係数により、大型成形体についても拡散の平衡時間の予測が可能であること、また、成形体中の水分制御は焼結体の強度特性の向上だけでなく、試料内の均質化にも非常に有効であることがあきらかにされた。これらの結果は予備成形体中の水分制御を高湿度の恒温恒湿中で行い、必要時における静水圧プレスの実施により、均質で特性に優れた焼結体が安定的に製造できることを示す。
第7章「加圧成形におけるプレス軸方向と焼結体特性との関係」では、一軸一静水圧プレス法により大型試験片を作製し、一軸プレス方向に体する垂直面と水平面の顆粒圧縮形態の違いや粒子の配向状態の違いを新しい評価法である『浸液-偏光顕微鏡観察』を用いて評価し、それらと強度特性との関連を検討した。その結果新規評価法は試料粉体顆粒中には粉砕工程後に残留した巨大な粉体粒子が存在すること、および一軸プレス成形時に粒子の配向が生じ、焼結体中の結晶粒の配向を成形することを明らかにするなど加圧成形プロセスの詳細評価に非常に有効な情報をもたらした。また、その結晶粒の配向が焼結体強度の異方性を生じることも明らかとした。
 最後に第8章「総括」では、これらの結果を総括し、本研究で得られた知見および成果を総括した。

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