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気泡を混入した軽量土の強度・変形特性に関する研究

氏名 矢島 寿一
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第111号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 気泡を混入した軽量土の強度・変形特性に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 小川 正二
 副査 教授 鳥居 邦夫
 副査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 本城 勇介

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 まえがき p.1
1.2 土の軽量化による効果と軽量土の種類 p.2
1.2.1 土の軽量化による効果
1.2.2 軽量土の種類
1.3 気泡を混入した軽量土の利点 p.4
1.3.1 気泡を混入した軽量土の作成方法
1.3.2 気泡を混入した軽量土の利点
1.3.3 気泡を混入した軽量土の単位体積重量と一軸圧縮強さ範囲
1.4 既往の研究 p.7
1.4.1 軽量土および改良土に関する研究
1.4.2 不飽和土に関する研究
1.5 本研究の目的 p.9
1.6 本論文の構成
参考文献
第2章 軽量土の鉛直土圧低減効果 p.14
2.1 はじめに p.14
2.2 プラント概要 p.14
2.2.1 プラントの概要
2.2.2 プラントの特性
2.3 軽量土の配合条件と一軸圧縮強さ p.16
2.3.1 使用材料および配合条件
2.3.2 軽量土の一軸圧縮強さと材令の関係
2.4 軽量土による土圧軽減効果 p.17
2.4.1 鉛直土圧測定方法とサンプリング法
2.4.2 鉛直土圧の経時変化
2.4.3 打設軽量土の諸物化
2.5 まとめ p.19
参考文献
第3章 土の軽量化に伴う強度・変形特性の変化 p.22
3.1 はじめに p.22
3.2 試験方法 p.23
3.2.1 試験材料および配合条件
3.2.2 供試体作成方法および試験方法
3.2.3 供試体の物性値
3.2.4 軽量土の有効応力原理の適用性に関する検討
3.3 等方圧密特性 p.27
3.4 米山土、改良土、軽量土の排水せん断特性 p.28
3.4.1 応力~ひずみ関係
3.4.2 最大応力の拘束圧依存性
3.4.3 体積ひずみ~軸ひずみ関係
3.4.4 変形係数の拘束圧依存性
3.5 米山土、改良土、軽量土の非排水せん断特性 p.35
3.5.1 応力~ひずみ関係
3.5.2 最大応力の拘束圧依存性
3.5.3 間隙水圧~軸ひずみ関係
3.5.4 変形係数の拘束圧依存性
3.6 改良土および軽量土の破壊基準 p.40
3.6.1 各試料の有効応力経路
3.6.2 各試料の間隙比変化経路
3.6.3 改良土および軽量土の破壊基準
3.7 まとめ p.50
参考文献
第4章 軽量土の初期間隙比および一軸圧縮強さが強度・変形特性に及ぼす影響 p.54
4.1 はじめに p.54
4.2 試験方法 p.54
4.2.1 試験材料および配合条件
4.2.2 供試体作成方法
4.2.3 供試体の物性値と試験条件
4.3 初期間隙比が強度・変形特性に及ぼす影響 p.56
4.3.1 等方圧密特性
4.3.2 排水せん断特性
4.3.3 非排水せん断特性
4.4 一軸圧縮強さが強度・変形特性に及ぼす影響 p.65
4.4.1 等方圧密特性
4.4.2 排水せん断特性
4.4.3 非排水せん断特性
4.5 初期間隙比および一軸圧縮強さが破壊基準に及ぼす影響 p.73
4.5.1 軽量土の破壊基準
4.5.2 初期間隙比および一軸圧縮強さが破壊基準に及ぼす影響
4.5.3 軽量土の破壊基準の推定法
4.5 まとめ p.81
参考文献
第5章 不飽和軽量土の強度・変形特性 p.85
5.1 はじめに p.85
5.2 不飽和軽量土の物性値と不飽和試験機 p.85
5.3 不飽和軽量土および不飽和粘性土の強度・変形特性 p.87
5.3.1 初期サクション力
5.3.2 等方圧密ループ特性
5.4 不飽和軽量土および飽和軽量土の強度・変形特性 p.91
5.4.1 等方圧密特性
5.4.2 排気排水せん断特性
5.4.3 排気非排水せん断特性
5.5 不飽和軽量土の破壊基準 p.96
5.5.1 Bishopらによる破壊基準の検討
5.5.2 Fredlundらによる破壊基準の検討
5.5.3 不飽和軽量土独自の破壊基準の検討
5.6 まとめ p.104
参考文献
第6章 結論 p.107
謝辞 p.112

 近年、道路構造の直線化、宅地開発の拡大のために軟弱地盤上での盛土施工が急増し、その後の圧密沈下による問題が生じている。そのために、盛土荷重の軽減による沈下量低減、擁壁に作用する土圧低減という利点を有する土の軽量化工法が注目されている。このような、土の軽量化の方法は大別すると2種類に分類できる。一つは単位体積重量が小さい材料を利用する方法。他は土に軽量の材料を混入しこれを固化材によって固化する方法である。本論文で対象とする軽量土は後者の方法で作成され、土に気泡を混入しセメントで固化する気泡を混入した軽量土である。この方法は現在一般に行われている土質改良工法に土の軽量化という付加価値を付け加えた方法である。そして、軽量化する土に現地発生土を用いれば、現在、建設現場で現地発生土の処分地の確保が困難であるという問題を解決する現地発生土の有効利用の一手段となりうる。
 従来、このようにセメント等で改良された改良土の一軸圧縮強さは数十kgf/cm2のオーダーと非常に大きく、その時の変形量は小さい。したがって、現位置での応力状態を考えた場合、改良土の破壊ということがほとんど生じない強度特性を有している。このようなことから、改良土の改良効果の判定基準としては試験の簡単な一軸圧縮強さが用いられ、改良土を用いた設計法としてはコンクリート材料の考え方を用い、せん断強さとしては粘着力成分のみを考慮した設計法を採用している。
 しかし、気泡を混入した軽量土の強度は、一軸圧縮強さで数kgf/cm2と小さく、土そのものに近い強度を持つ材料である。したがって、従来のセメント等で改良された改良土と同様に取り扱うには問題がある。また、気泡を混入した軽量土の強度が土そのものに近い強度を持つとは言ってもセメントで固化され、気泡を土中に含んでいるため一般的な土とはその強度・変形特性が異なることが予想でき、気泡を混入した軽量土の強度・変形特性に関する研究は十分であるとは言えない。
 また、気泡を混入した軽量土は気泡によってその単位体積重量を軽減しているため不飽和状態であることが多い。現在、不飽和状態の土の力学的挙動はBishopらやFredlundらの研究によって解明されているが、いまだ不明確な部分が多い。特に、不飽和状態の気泡を混入した軽量土の力学的挙動は固化材によって固化されていることや土中に気泡を含んでいることから不飽和状態の一般的な土とは異なることが予想できるが、このような不飽和軽量土に対する研究は皆無である。
 このようなことから本研究では、気泡を混入した軽量土の強度・変形特性や破壊基準を明確にすることを目的として、飽和状態の粘性土、セメント改良土および軽量土に対して三軸圧縮試験を行い、土の軽量化に伴う強度・変形特性の変化を比較し、軽量土の破壊基準や破壊基準の推定法について検討している。また、不飽和状態の軽量土に対しても不飽和三軸圧縮試験を行い、不飽和・飽和軽量土の強度・変形特性を比較し、不飽和軽量土独自の破壊基準式を提案している。
 第1章は序論であり、軽量土の概要・問題点を示し、本研究の目的を述べている。
 第2章では、気泡を混入した軽量土を実物大のプラントによって作成し、軽量土を3m高さに打設したときの底面に作用する鉛直土圧の低減を確認し、この打設軽量土の諸物性について検討を行っている。
 第3章では、軽量土を作成する過程の材料、母材である粘性土、セメントを混入したセメント改良土、気泡を混入した軽量土に着目し、それぞれの材料に対してせん断試験を行い、土の軽量化に伴う強度・変形特性の変化を検討し、軽量土の破壊基準を応力条件のみではなく体積ひずみ条件を考慮した破壊基準で整理している。
 第4章では、軽量土の性質を表す初期間隙比と一軸圧縮強さに着目し、初期間隙比および一軸圧縮強さを種々変化させた軽量土に対してせん断試験を行い、初期間隙比および一軸圧縮強さが軽量土の強度・変形特性に及ぼす影響について述べるとともに、軽量土の破壊基準を推定するために、初期間隙比と一軸圧縮強さが軽量土の破壊基準に及ぼす影響について述べている。
 第5章では、不飽和状態の軽量土および粘性土に対して初期サクション測定試験および等方圧密ループ試験を行い、不飽和軽量土と不飽和粘性土との違いを述べ、不飽和軽量土の破壊基準を求めるためにせん断試験を行い、せん断時の排気排水条件を考慮した応力経路で考えた不飽和軽量土独自の破壊基準を提案している。
 第6章は、本論文の結論であり、本研究で得られた知見を整理するとともに、今後の課題を述べている。
 以上、本論文によって気泡を混入した軽量土の飽和・不飽和状態での強度・変形特性が明確となり、土質工学上貢献できるものと考えられる。

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