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薄膜磁気ヘッドにおける磁性膜の特性解析と機能制御

氏名 櫻井 豊
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第109号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 薄膜磁気ヘッドにおける磁性膜の特性解析と機能制御
論文審査委員
 主査 教授 一ノ瀬 幸雄
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 助教授 中川 匡弘
 副査 助教授 北谷 英嗣
 副査 助教授 石黒 孝
 副査 大阪大学 教授 弘津 禎彦

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目次
第1章 緒論 p.1
第1節 緒言 p.1
第2節 従来の本分野の研究動向と本研究の位置付け p.7
1.2.1 薄膜インダクティブヘッド p.7
1.2.2 薄膜MRヘッド p.16
第3節 本論文の目的 p.21
第4節 本論文の構成 p.21
第1章の文献 p.22
第2章 薄膜インダクティブヘッドの磁気コアの設計論 p.27
第1節 緒言 p.127
第2節 有限要素法による電磁気が来てき解析 p.27
2.2.1 従来手法と問題点 p.27
2.2.2 解析原理と手法 p.29
2.2.3 解析モデルと結果例 p.34
第3節 マイクロマグネティクス手法による磁区の解析 p.40
2.3.1 磁区構造解析の重要性 p.40
2.3.2 解析原理と数値計算 p.41
2.3.3 解析結果 p.50
2.3.4 本解析の限界と今後の展望 p.56
(1)二次的構造の表現 p.56
(2)スピンSEMの観測結果との対比 p.57
(3)ストライプ幅による磁区構造の変化 p.57
(4)磁気ヘッドの特性との関連 p.57
第4節 結言 p.59
第2章の文献 p.60
第3章 薄膜インダクティブヘッドの磁性膜の磁歪制御 p.63
第1節 緒言 p.63
第2節 磁歪定数制御の重要性 p.63
3.2.1 磁区構造の重要性 p.63
3.2.2 磁歪定数、主応力方向と誘導磁気異方性による合成の磁気異方性 p.64
第3節 実験方法 p.68
第4節 実験結果と考察 p.68
3.3.1 スパッタ・レートと磁歪定数 p.68
3.3.2 スパッタ・レートと結晶配向 p.71
第5節 結言 p.74
第3章の文献 p.74
第4章 薄膜インダクティブヘッドの磁極長効果の改善に関する研究 p.77
第1節 緒言 p.77
第2節 磁極長効果の問題点とその対策の従来例 p.77
4.2.1 背景 p.77
4.2.2 従来の改善手段 p.79
第3節 本研究の改善手段 p.80
第4節 改善検討 p.82
4.4.1 有限要素法による解析 p.82
4.4.2 FFTによる周波数特性 p.84
第5節 低透磁率膜の検討 p.85
4.5.1 低透磁率膜の表現 p.85
4.5.2 Ni-Fe合金へのMo大量添加 p.85
4.5.3 低透磁率膜の組成決定 p.86
第6節 磁気ヘッド試作検討 p.88
4.6.1 試作プロセス p.88
4.6.2 測定結果 p.90
第7節 結言 p.90
第4章の文献 p.90
第5章 MRヘッドとそこで用いられる交換結合膜の検討 p.93
第1節 緒言 p.93
第2節 MRヘッド素子の概要 p.93
5.2.1 磁気抵抗(MR)効果 p.93
5.2.2 素子として要求される特性 p.94
第3節 モンテカルロ・シミュレーションによる交換結合膜の解析 p.96
5.3.1 緒言 p.96
5.3.2 シミュレーション p.97
(1)スピンモデルとハミルトニアン p.97
(2)格子モデルと境界条件及び初期条件 p.98
(3)数値計算手続き p.101
(4)従来のマイクロ磁気適取り扱いと本モデルとの相違点 p.101
5.3.3 計算結果と検討 p.102
(1)計算の妥当性検討 p.102
(2)強磁性層上の反強磁性スピン配列 p.103
(3)界面の実効的な交換力の評価 p.107
5.3.4 本シミュレーションの意義と今後の課題 p.109
5.3.5 小括 p.111
第4節 結言 p.112
第5章の文献 p.112
第6章 総括 p.115
謝辞 p.119
本研究に関する主な発表論文リスト p.121

 今日の情報化社会を支える重要な磁気記録技術において、その高密度化は必須の趨勢である。その中核技術は高性能薄膜磁気ヘッドであり、高密度記録には磁気ヘッドの薄膜化はもはや不可欠である。これは素子寸法の微細化もさる事ながら、素子自体の高速応答性及びウエハ・プロセスによる量産性など、性能面および製造面での優位性が顕在化したためである。一方、薄膜磁気ヘッドの実用化には従来のパルク磁気ヘッドと大幅に異なる検討課題がある。殊に薄膜磁気ヘッドの性能に直接関わる磁性薄膜の解析及び機能制御は重要である。本論文は、これらの薄膜磁気ヘッドに特有かつ重要な課題を取り上げ、綿密に研究して得られた成果を『薄膜磁気ヘッドにおける磁性膜の特性解析と機能制御』と題して集大成したものであり、6章より構成されている。
 第1章は緒論であり、始めに磁気記録の現状を概観すると共に今後の展開を考察し、本研究で取り上げるべき研究課題を明らかにした。
 第2章では、基礎的立場から薄膜磁気ヘッドの磁気コアを電磁気学及び磁区理論に基づいて数値解析し、これらの結果より膜形状及び磁気異方性などの最適化が図られることを明らかにすると共に、その数値解析の正当性をヘッド特性との対応、磁区観察などを通して実験的に証明した。
 第3章では、高応力下で用いられる薄膜磁気ヘッドの磁気異方性に大きく寄与した重要な特性要因の一つである磁歪特性の膜作製条件による詳細な実験的検討を行い、磁歪定数が特に成膜条件により変化し、それが膜の結晶配向の変化に因ることをつきとめ、磁歪定数の制御可能性を明らかにした。
 第4章では薄膜インダクティブヘッドの高密度記録を妨げていた固有再生波形歪みをシミュレーションにより解析し、それが薄膜インダクティブヘッド特有の問題であり、これを薄膜磁気コア両端部に低透磁率材料の層を付加することにより急峻な磁束変化を緩和するという新しい方法の考案により解決し、試作により実証した。
 第5章では、将来の高密度磁気記録に不可欠となる薄膜MRヘッドを取り上げ、観測不可能な交換結合膜の膜厚方向のスピン配列をモンテカルロ・シミュレーションにより解析し、スピンの平均的方向が膜厚方向に振動減衰すること、またそのスピン配列が個着化することによりこの現象の定量的理解が図られるとする新知見・新解釈を与えた。
 第6章は総括であり、これらの研究成果を基に将来の磁気記録に対応し得る高性能薄膜磁気ヘッド技術の基盤を確立したと結論した。
 以上のように、本論文は次世代高密度磁気記録に不可欠な薄膜磁気ヘッドに関した基礎的応用的研究成果であり、コンピュータ・シミュレーション技法および薄膜作成・評価技術を駆使することにより、予測と実験、検証を通して当該技術の基盤を確立したものである。

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