High Gas Pressure Processes to Obtain Tailored Porous Materials and Perfect Spheres
(設計仕様に応じた多孔体および真球作製のための高ガス圧プロセス)
氏名 南口 誠
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第106号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 High Gas Pressure Processes to Obtain Tailored Porous Materials and Perfect Spheres(設計仕様に応じた多孔体および真球作製のための高ガス圧プロセス)
論文審査委員
主査 教授 石崎 幸三
副査 教授 松下 和正
副査 教授 植松 敬三
副査 教授 鎌田 喜一郎
副査 助教授 福沢 康
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Contents
1. Introduction
1.1 Hot Isostatic Process (HIP)
1.1.1 HIP
1.1.2 A Variety of HIP Equipment
1.1.3 Conventional Applications of HIP
1.1.4 Other Applications of HIP
1.2 Properties of High Pressure Gases
1.3 Scope of the Present Thesis
2. HIP for Producing Porous Materials-Sintering Behavior under High Pressure Gases
2.1 Bckbround
2.1.1 HIP for Producing Porous Materials
2.1.2 Sintering for Porous Materials
2.2 Experimental Procedure
2.3 Results
2.4 Discussion
2.4.1 Sintering Behavior under High Pressure Gases at Low Temperatures
2.4.2 Sintering Behavior under High Pressure Gases at High Temperatures
2.5 Conclusions
3. Estimation of Enhancement of Surface Difficient under High Pressure Gases
3.1 Bckbround
3.2 Theory
3.3 Results
3.4 Discussion
3.5 Conclusions
4. Applications of HIPed Porous Materials
4.1 Bckbround
4.1.1 Porous Materials
4.1.2 Classification of Porous Materials
4.1.3 Production Processes for Porous Materials by Sintering
4.1.4 Applications of Porous Materials
4.1.5 Focus of This Chapter
4.2 Application of HIPed Porous Materials I - Porous Filters -
4.2.1 Bckbround
4.2.2 Experimental Procedure
4.2.3 Results
4.2.3.1 A Comparison of a Computer Simulation by Konakawa and a Real Powder Compaction
4.2.3.2 Properties of HIPed porous TIO2 filters
4.2.4 Discussion
4.2.5 Conclusions
4.3 Application of HIPed Porous Materials II-Slip Casting Molds-
4.3.1 Background
4.3.2 Exprimental Procedure
4.3.3 Results
4.3.4 Discussion
4.3.5 Conclusions
5. Levitation Process Using High Pressure Gases
5.1 Background
5.1.1 Levitation Process-Containerless Process
5.1.2 Levitation Process Using High Pressure Gases
5.2 Exprimental Procedure
5.3 Results
5.4 Discussion
5.5 Conclusions
6. Summary
Acknowledgement
References
高ガス圧は従来から焼結体および鋳造品の緻密化やアンモニア合成の化学反応などに利用されている。これらは高ガス圧の物理的な圧力や反応性の応用であるが、この他にも高ガス圧は常圧には見られない効果を有する。本研究では従来知られていない高ガス圧の効果を利用した新しい材料プロセスを開発した。まず、高ガス圧を用いた多孔体作製法では高ガス圧が表面拡散を促進することを利用した。この方法で作製した多孔体は、真空や常圧下で焼結した多孔体よりも優れた特性を示す。また、高圧ガスを用いた材料の浮上処理では高圧ガスの高い密度による大きな浮力を利用した。この処理により無容器状態で真球を得ることができた。これらの方法は熱間等方加圧(HIP)装置を応用する、新しい材料処理である。また、既存のHIP装置が利用できる点から早期工業化が可能である。以下に本論文の各章の概要を示す。
第1章「Introduction」では、高ガス圧処理法であるHIP法、さらに高圧ガスの特性について述べ、本研究の目的と意義を明らかにした。
第2章「HIP for Producing Porous Materials-Sintering Behavior under HighPressureGases-」では高圧ガスを用いた多孔体作製法について報告した。まず、従来から行われている焼結多孔体作製法について総括した。さらにHIPによる多孔体作製法を「高ガス圧下の焼結」という観点から、Al2O3とTiO2の焼結実験を行い、その機構を明らかにした。緻密化速度が遅い低温での焼結では、高ガス圧下の焼結は常圧ガス下とほぼ同様の緻密化速度を示した。しかし、比表面積および気孔径分布の幅の減少速度は高ガス圧下の焼結が常圧ガス下に比べて速かった。これは速いネック(粒間の接合部)成長によって説明できた。HIPにおける速いネック成長は、高ガス圧により緻密化を伴わない表面拡散が促進されているためであることを見い出した。高ガス圧により促進された表面拡散は表面の全自由エネルギー、即ち焼結の駆動力を緻密化を伴わずに減少させるので、緻密化速度が遅くなる。そのため、常圧では緻密化する焼結温度でもHIPされた焼結体は高い開気孔率を有する多孔体になる。また、HIPされた多孔体の高い強度は、同じ開気孔率でも大きなネックを有することで説明できた。
第3章「Estimation of Enhancement of Surface Diffusion Coefficent under HighPressureGases」では、体積拡散と表面拡散を仮定した焼結モデルを導出した。そのモデルを用いてコンピュータにより焼結をシミュレートし密度と比表面積を算出した。これらの計算結果を実験結果と比較することで体積および表面拡散係数を推定し、高ガス圧が表面拡散に及ぼす影響を考察した。高ガス圧下の焼結挙動は促進された表面拡散により説明でき、100Mp下ではTiO2の表面拡散が常圧ガス下に比べ16倍程度高いことが分かった。
第4章「Applications of HIPed Porous Materials」では、HIP法を用いて多孔体質TiO2フィルターと鋳込み成形用多孔質Al2O3型を作製し、特性評価を行った。フィルターに対しては通気性を、鋳込み成形用型に対しては吸水性を評価した。HIPした多孔体は同じ開気孔率であっても常圧焼結体に比べ高い通気性および吸水速度を示し、均一な気孔径分布を有することが分かった。これは、HIPした多孔体が成長したネックを有し、気孔表面が滑らかであることに起因する。HIP法はフィルターや鋳込み成形用型を作製する焼結方法として常圧焼結法よりも優れていることが分かった。さらに本章では、粉川の行った理想フィルターの粉末充填シミュレーションが実際の冷間等方加圧法により作製された成形体の気孔径を正確に予測できることを示した。
第5章「Levitation Process Using High Pressure Gases」では、高圧ガスの有する高い密度を利用して材料の浮上処理が可能であることを示した。まず、従来の材料の浮上処理について総括した。そして、高圧ガスを用いた浮上処理法の原理を説明した。例えば、100MPaの高圧アルゴンは室温でほぼ水と同様の密度を示す。これは水と同様の密度を有する物質は、100MPaの高圧アルゴン下では大きな浮力を受け浮上する、つまり、無容器状態になることを意味する。この状態で物質を加熱すれば、浮上熱処理が行える。本論文ではポリエチレン(PE)に対し、アルゴンガスを圧力媒体として浮上処理の効果の確認を行った。PEを溶解・再凝固したところ、真球体が得られた。その試料の真球度はおよそ、数十μm程度であった。さらに、試料内に気泡とクラックが観察された。これは溶融時に溶け込んだアルゴンが凝固に伴い析出することにより生成するためであると思われる。そのため、この処理によってPEの透光性は失われた。
第6章「Summary」では、高ガス圧を応用した多孔体作製法と浮上処理についての研究結果の総括を記述した。さらに工学的意義および新規性について述べ、本論文の総括とした。