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ボールねじの音響に関する研究

氏名 徳長 靖
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第49号
学位授与の日付 平成6年6月22日
学位論文の題目 ボールねじの音響に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 五十嵐 昭男
 副査 教授 久曽神 煌
 副査 教授 矢鍋 重夫
 副査 助教授 柳 和久
 副査 新潟大学 教授 一宮 亮一

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目次
第1章 緒論 p.1
1.1 本研究の目的 p.1
1.2 本研究の対象 p.2
1.3 本研究の方針 p.2
第2章 ボールねじの音響特性 p.5
2.1 緒言 p.5
2.2 実験 p.5
2.2.1 試験用ボールねじ p.5
2.2.2 実験装置 p.5
2.2.3 音響の測定 p.5
2.3 実験結果および解析 p.8
2.3.1 マイクロホンの距離特性 p.11
2.3.2 回転速度特性 p.11
2.3.3 周波数特性 p.18
2.3.4 音の波形 p.18
2.3.5 周波数スペクトルのピークに関する実験 p.22
2.4 確認実験および考察 p.28
2.4.1 周期性をもつパルス波形の音の発生原因について p.28
2.4.2 周期性をもつパルス波形の音の発生機構 p.36
2.5 結言 p.38
第3章 パルス音の特性および発生機構 p.39
3.1 緒言 p.39
3.2 実験 p.39
3.2.1 試験用ボールねじ p.39
3.2.2 実験装置 p.39
3.2.3 音響の測定 p.39
3.3 実験結果および考察 p.41
3.3.1 パルス音の特性 p.41
a.パルス音の波形 p.41
b.パルス音の繰り返し周波数について p.44
c.絶対値検波を施した音の実時間周波数分析 p.45
d.パルス音のピーク音圧レベル p.49
e.パルス音に及ぼす予圧の影響 p.53
3.3.2 パルス音の発生機構 p.53
a.チューブとボールの衝突位置について p.53
b.パルス音の発生源 p.61
3.3.3 パルス音の低減法 p.64
3.4 結言 p.68
第4章 ねじ軸のねじ溝面のうねりによって生ずる音の発生機構 p.69
4.1 緒言 p.69
4.2 実験 p.69
4.2.1 試験用ボールねじ p.69
4.2.2 実験装置 p.69
4.2.3 音響および振動の測定 p.72
4.3 実験結果,解析および考察 p.72
4.3.1 ボールねじの音 p.72
a.音の周波数スペクトル p.72
b.音に及ぼすねじ軸の回転速度の影響 p.76
4.3.2 ねじ軸のねじ溝面のうねり p.83
a.ねじ軸のねじ溝面のうねりのスペクトル p.83
c.ねじ軸のねじ溝面のうねりによって生ずる音の発生機構 p.85
4.3.3 うねりによって生ずる音とねじ軸のねじ溝面のうねりの関係 p.91
a.うねりの高さの影響 p.91
b.うねりの山数の影響 p.93
4.3.4 音の音圧レベルと振動レベルの関係 p.104
4.3.5 うねりによって生ずる音の低減法 p.106
4.4 結言 p.111
第5章 負荷状態の音に及ぼす諸因子の影響 p.112
5.1 緒言 p.112
5.2 実験 p.112
5.2.1 試験用ボールねじ p.112
5.2.2 実験装置 p.112
5.2.3 音響の測定 p.114
5.2.4 実験方法 p.114
5.3 実験結果,解析および考察 p.116
5.3.1 音の周波数スペクトルに及ぼす諸因子の影響 p.116
a.ねじ軸の回転速度の影響 p.116
b.予圧の影響 p.120
c.軸方向荷重の影響 p.120
5.3.2 音の音圧レベルに及ぼす諸因子の影響 p.120
a.ねじ軸の回転速度の影響 p.120
b.予圧の影響 p.123
c.軸方向荷重の影響 p.123
d.音の音圧レベルの時間特性 p.130
(I)ねじ軸の回転速度の影響 p.130
(II)予圧の影響 p.130
(III)軸方向荷重の影響 p.137
5.3.3 考察 p.137
5.4 結言 p.145
第6章 軌道面のランダムなうねりによって生ずる音の発生機構 p.147
6.1 緒言 p.147
6.2 実験 p.147
6.2.1 試験用ボールねじ p.147
6.2.2 実験装置 p.150
6.2.3 音響の測定 p.150
6.3 実験結果,解析および考察 p.152
6.3.1 音の周波数スペクトル p.152
6.3.2 軌道面のうねり p.152
a.ねじ軸のねじ溝面のうねり p.152
b.ナットのねじ溝面のうねり p.157
c.玉の表面のうねり p.160
6.3.3 音の発生機構について p.160
6.4 結言 p.172
第7章 結論 p.173
7.1 緒言 p.173
7.2 ボールねじの音響特性 p.173
7.3 パルス音の特性および発生機構 p.174
7.4 ねじ軸のねじ溝面のうねりによって生ずる音の発生機構 p.174
7.5 負荷状態の音に及ぼす因子の影響 p.175
7.6 軌道面のランダムなうねりによって生ずる音の発生機構 p.176
7.7 ボールねじの音響低減法 p.176
謝辞 p.179
文献 p.180

 ボールねじは、滑りねじにおけるねじ軸とナットの間に鋼球を介在させることによって滑り摩擦を転がり摩擦に置き換えた機械要素である。このため、効率が良く作動性に優れているので、NC工作機械や産業用ロボットなどの送り・位置決め要素として多く用いられている。しかし、ボールねじは、構造上リードを有するため、軌道面の高精度な加工が困難である。また、軌道に不連続部をもつなどの理由から、音響を発生しやすいという短所をもっている。最近、機械装置の著しい高速度化に伴い、ボールねじは小径化、大リード化、高速回転化する傾向にあり、ボールねじの使用条件および加工条件はますます厳しくなってきている。また、近年、工場内の低騒音化の要求が高まっている上に、ボールねじの使用範囲が工場以外の静かな環境下にまで拡大してきているため、ボールねじから発生する音響の問題が、産業界において重要になりつつある。しかし、ボールねじの音響についての学術的研究は、これまでに全く行われていない。ボールねじを用いた機械装置から生ずる音響は、ボールねじ自身から生ずる音響すなわち単体音と、ボールねじによって励振された構造系の共振によって生ずる音響とが複合されたものであり、使用条件が複雑なため、正確な解析が極めて困難である。よって、このようなボールねじの音響の低減を図るには、まず音響解析の基礎となるボールねじの単体音について詳しく知る必要がある。そこで、現在最も一般的に用いられているチューブ循環式ボールねじについて研究することにした。すなわち、本研究は、チューブ循環式ボールねじの単体音の基本特性および発生機構を明らかにし、ボールねじの音響の低減のための基本的な知識を得ることを目的とする。本研究は以下の7章より構成されている。
 第1章「緒論」では、本研究の目的、対象および方針について述べた。
 第2章「ボールねじの音響特性」では、これまで解明されていない無負荷状態におけるボールねじの単体音の基本特性について詳細に調べ、ボールねじの音源の考え方、音の音圧レベルの回転速度特性および音の周波数特性などの基本的な音響特性を明らかにした。そして、単体音の中には約11~12kHzの周期性をもつパルス波形の音(パルス音)が存在し、この音が単体音の音圧レベルに大きく影響することを見出した。
 第3章「パルス音の特性および発生機構」では、前章で存在が明らかになったパルス音の特性をさらに詳しく調べた。そして、音の波形観察、音の周波数分析および循環チューブの振動特性の解析などを行った結果、パルス音は循環チューブの入口部に玉が衝突することによって生ずるチューブの振動が空気を伝わった音であることを解明し、パルス音の繰り返し周波数の計算式を提示した。また、パルス音の低減法を提案し、その有効性を実験により確認した。
 第4章「ねじ軸のねじ溝面のうねりによって生ずる音の発生機構」では、前章で提案した方法によりパルス音の発生を抑え、パルス音以外の音の特性について調べた。パルス音以外の音については、玉軸受の場合と同様に軌道面のうねりがその発生原因の一つと推定されたため、ねじ軸のねじ溝面の仕上が異なる2種類の試料を用いて音の実験を行った。その結果、約6kHz以下の周波数帯域に、回転速度に比例した周波数をもついくつかのピークが存在することを見出した。そして、ねじ軸のねじ溝面のねじ線方向のうねりを測定して音との相関を調べ、これらのピークがおもにねじ軸のねじ溝面のうねりによって生ずることを解明し、さらに1リード当たりのうねりの山数と発生するピークの周波数の関係式を提示した。
 第5章「負荷状態の音に及ぼす諸因子の影響」では、実用的に重要な負荷状態における単体音の基本特性について調べ、パルス音以外の音のうち約6kHz以上のランダムな性質をもった音の音圧レベルに及ぼす回転速度、予圧および軸方向荷重の影響を明らかにした。
 第6章「軌道面のランダムなうねりによって生ずる音の発生機構」では、無負荷状態におけるパルス音以外の音のうちの、約6kHz以上のランダムな性質をもった音について調べた。ここでは、第4章と同様な理由から、ねじの軸のねじ溝面の仕上が異なる3種類の試料を用いて音の実験を行った。そして、ねじ軸およびナットのねじ溝面のねじ線方向のうねりを測定して音との相関を調べた結果、この音がおもにねじ軸とナットのねじ溝面のランダムなうねりによって生ずること、および音の音圧が音の発生に関与するねじ軸のうねりの高さとナットのうねりの高さの二乗和の平方根のk乗にほぼ比例することなどを解明した。
 第7章「結論」では、以上の各章で得られたボールねじの単体音についての結論をまとめ、さらにボールねじの音響低減法について述べた。

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