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マウスインターフェロンβの精密X線結晶構造解析

氏名 千田 俊哉
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第105号
学位授与の日付 平成7年3月24日
学位論文の題目 マウスインターフェロンβの精密X線結晶構造解析
論文審査委員
 主査 教授 三井 幸雄
 副査 教授 山田 良平
 副査 教授 青山 安宏
 副査 助教授 曽田 邦嗣
 副査 助教授 福田 雅夫

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目次
I 序論 p.1
I-1 歴史 p.2
I-2 インターフェロンの一次構造とSubfamily p.2
I-3 受容体のcloningとその構成 p.3
I-4 インターフェロンの機能解析 p.4
I-5 インターフェロンの立体構造 p.4
I-6 研究の意義と目的 p.5
II 実験方法(Experimenntal Methods) p.6
II-1 古いモデルの修正 p.7
II-2 2.4Å分解能における結晶構造精密化 p.8
II-3 高分解能での結晶学的精密化のための準備 p.9
II-4 高分解能の回折データ測定 p.10
II-5 2.15Å分解能での結晶構造精密化 p.10
II-6 二次構造の解析 p.11
II-7 側鎖のsolvent accessibilityの計算 p.11
II-8 Type Iインターフェロンのアミノ酸配列のアライメント p.12
II-9 Type Iインターフェロンの分子モデルの構築 p.12
III マウスインターフェロンβの精密立体構造 p.14
III-1 精密化後のモデルの信頼性 p.15
III-2 以前のモデルの修正点 p.16
III-3 全体構造 p.17
III-4 主鎖の構造 p.18
III-5 分子内側鎖の相互作用 p.19
III-6 セグメント間の相互作用 p.20
III-7 Crystal packing(結晶内の分子間相互作用) p.22
III-8 温度因子と側鎖のsolvent accessibility p.23
III-9 2つのconformationの共存 p.24
IV 他のType Iインターフェロンとの関係 p.25
IV-1 Type Iインターフェロンの一次構造の比較 p.26
IV-2 Type Iインターフェロンの立体構造 p.28
V Type Iインターフェロンの受容体結合部位 p.33
V-1 現在までに行われてきたType Iインターフェロンの機能解析のまとめ p.34
V-2 立体構造中での受容体結合部位 p.35
V-3 "Hot area" (Loop AB,Helix D,Loop DE)について p.35
V-4 新しい受容体結合部位、Helix AとHelix Cについて p.38
VI 他のサイトカインとの関係 p.39
VI-1 Helical cytokines p.40
VI-2 Type Iインターフェロンの立体構造の特徴 p.42
VI-3 マウスインターフェロンβと他のHelical cytokineとの重ね合わせ p.42
VI-4 受容体との結合様式に関する考察 p.46
VI-5 Type IIインターフェロン(IFN-γ)との比較 p.50
VII サイトカイン類の進化 p.51
VIII まとめ p.55
引用文献 p.57
付録
付録1 遺伝子組み替えマウスインターフェロンβの精製
付録2 精密化されたマウスインターフェロンβ分子の立体構造から計算したアミノ酸側鎖のsolvent accessibility
付録3 結晶内の分子間接触
付録4 PROCHECKによる結晶構造のチェック
付録5 種々の方法で算出した電子密度図の比較
付録6 MLPHAREを用いた位相決定の統計

 インターフェロン(IFN)は、抗ウイルス活性をもつ蛋白質であり、細胞間の情報伝達を担うサイトカインの一種である(更にIFNは、Helical cytokineと言う一群のグループに分類される)。インターフェロン活性の発現には、細胞膜上の受容体にインターフェロン分子が結合することが必要で、その受容体認識機構を知ることは、インターフェロンの活性を知る上で極めて重要なことである。そこで本研究では、マウスのインターフェロン-βの結晶構造を精密化し、それに基づきインターフェロンの受容体結合様式を解析した。本研究で用いたインターフェロンは、マウスのインターフェロン-β(MuIFN-β)で、161残基のアミノ酸からなっており、インターフェロンα、ω、τと共にType Iのインターフェロン(Type I IFN)に分類される。Type I IFNのアミノ酸配列は、お互いに相同性が認められており、細胞膜上で同一の受容体に結合することが知られている。
 まず始めに、MuIFN-βの立体構造をX線結晶構造解析の手法を用い、高分解能(2.15Å分解能)で精密化した。精密化の結果、R因子は19.1%となり、十分信頼のおけるものであった。立体構造は、5本の長いαヘリックス(N末端側から、Herix A,B,C,D,Eと呼ぶ)と一本の長いループ(Loop AB)からなっている。このうち、Helix A,B,C,Eは、いわゆる4-α-helix bundle構造をとっていて、他のHelical cytokineの4-α-helix bundle構造と極めて類似していることがわかった。また、今回の解析により、Loop CD中に7残基からなる短いヘリックス構造(Helix CD)を見いだすことが出来た。
 一次構造の類似性とType I IFNにあるS-S結合(MuIFN-βには例外的に無い)の位置から、本研究で決定したMuINF-βの立体構造は、特別な一部分(Loop ABのN末端部分)を除けばType I IFNに共通している基本構造であると考えることができる。このことは、種々のType I IFNの一次構造のアライメント及びコンピュータグラフィックスを用いたモデルビルディングからも確認することが出来た。更に、セグメント間の相互作用など細かい点についても、Type I IFNの立体構造に共通していると考えられる幾つかの特徴を見いだすことができた。これは、(1)分子内部に埋もれている残基の内、約50%はType I IFNを通じてほとんどが保存されており、疎水性のコアとなっいてる、(2)L00p ABとHelix Dの間の水素結合及び疎水相互作用は、良く保存されていると考えられ、これらは、インターフェロンα/βを通じてLoop ABの構造安定化に役立っている、等である。これらの結果は、本研究で決定したMuIFN-βの立体構造をType I IFNの基本立体構造とみなし、受容体結合に関する議論を行いうる事を示している。
 そこで、次に、過去に行われてきた膨大な数のType I IFNの受容体結合部位に関する実験結果を立体構造をもとに整理し直し、Type I IFNの受容体結合に関しての解析を行った。その結果、受容体結合部位は、空間的に離れた二つの部分に存在することがわかった。一つは、以前から提唱している“hot area”と呼ばれている部分で、Helix D,Loop DE,oop ABからなる。もう一つは、Uzeらのグループにより示されたHelix Cである。これらの受容体結合部位の一次構造を種々のType I IFNで比べると、ほとんどのType I IFNを通じて非常に良くアミノ酸残基が保存されている部分と、変異の大きい部分とに分かれることが明らかになった。非常に良く保存されている部分と変異の大きい部分とに分かれることが明らかになった。非常に良く保存されている部分は“hot area”内に一ヵ所存在し、この部分を特に“Cv-area”と名付けた。この部分は、Type I IFNに共通の受容体に結合する際に、重要な役割を担っていると考えられる。これに対し、“Cv-area”以外の受容体結合部分であるところのHelix Dの一部、Helix Cでは、同一生物種内であっても、TypeI IFNのサブタイプ(α、β、ω)によって、顕著なアミノ酸残基の変異が見られる。そしてこのことがサブタイプ間の細かい活性の差と関連していると考えられる。
 上記のような構造的研究に加え、サイトカイン類の分子進化についても解析を行った。
その結果、
サイトカイン分子とその受容体分子の進化速度には、強い相関のある事を見いだした。そこで、サイトカイン分子とその受容体分子は協調して進化する(“coupled evolution”)という作業仮説を提出した。これにより、サイトカイン類が通常の酵素蛋白質等に比べて異常に速い分子進化を行う事実を説明できると思われる。

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