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ビスマス系超伝導ガラスセラミックスに関する基礎的研究

氏名 佐藤 隆士
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第53号
学位授与の日付 平成6年12月7日
学位論文の題目 ビスマス系超伝導ガラスセラミックスに関する基礎的研究
論文審査員
 主査 教授 松下 和正
 副査 助教授 小松 高行
 副査 教授 高田 雅介
 副査 教授 鎌田 喜一郎
 副査 東北大学 教授 山下 努

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目次
第1章 緒言 p.2
1-1 研究の背景 p.2
1-2 ビスマス系酸化物高温超伝導体
1-2-1 はじめに p.5
1-2-2 ビスマス系酸化物超伝導体の特徴 p.6
1-3 ガラスセラミックス
1-3-1 はじめに p.8
1-3-2 ガラスセラミックスの特徴 p.8
1-3-3 ガラスの結晶化過程 p.9
1-3-4 核生成速度 p.10
1-3-5 結晶成長速度 p.12
1-3-6 ガラスの結晶加速度の測定法法 p.16
1-4 本研究の目的 p.17
1-5 本論文の構成 p.17
1-6 参考文献 p.19
第2章 ビスマス系酸化物ガラスの諸物性
2-1 はじめに p.24
2-2 実験
2-2-1 ガラスの作製 p.24
2-2-2 アモルファス状態の確認 p.25
2-2-3 化学分析 p.25
2-2-4 熱分析 p.26
2-2-5 密度測定 p.26
2-2-6 粘度測定 p.26
2-2-7 熱膨張係数 p.27
2-2-8 電気伝導 p.27
2-2-9 ガラスの内部構造観察 p.29
2-3 結果 p.30
2-3-1 化学組成 p.31
2-3-2 熱物性 p.33
2-3-3 ガラスの密度 p.37
2-3-4 ガラスの粘度 p.38
2-3-5 ガラスの電気伝導 p.40
2-3-6 ガラスの低温酸化 p.42
2-3-7 ガラスの低温酸化の熱物性への影響 p.44
2-3-8 ガラスの微細構造 p.78
2-4 考察
2-4-1 ガラスの熱安定性 p.51
2-4-2 ガラスの粘性挙動 p.53
2-4-3 ガラスの熱膨張 p.54
2-4-4 ガラスの電気伝導機構 p.54
2-4-5 熱安定性におよぼす低温酸化の影響 p.58
2-4-6 ガラスの微細構造 p.60
2-5 まとめ p.62
2-6 参考文献 p.64
第3章 ビスマス系ガラスの結晶化速度論
3-1 はじめに p.68
3-2 結晶化速度式 p.68
3-3 実験
3-3-1 ガラスの作製 p.72
3-3-2 示差走査熱量計による熱分析 p.72
3-3-3 析出結晶相の同定 p.72
3-3-4 結晶析出形態の観察 p.72
3-4 結果 p.73
3-4-1 析出結晶相の同定 p.73
3-4-2 結晶核生成と成長機構 p.76
3-4-3 結晶成長の活性化エネルギー p.80
3-5 考察
3-5-1 結晶化機構におよぼす銅イオンの価数状態の影響 p.82
3-5-2 結晶成長の活性化エネルギー p.82
3-6 まとめ p.86
3-7 参考文献 p.87
第4章 超伝導結晶の析出機構
4-1 はじめに p.90
4-2 Bi2Sr2CuOxガラス
4-2-1 実験
4-2-1-1 ガラスの作製 p.90
4-2-1-2 熱処理 p.90
4-2-1-3 評価方法 p.90
4-2-2 結果
4-2-1-1 アモルファス状態 p.91
4-2-2-2 結晶化挙動 p.92
4-2-2-3 熱分析 p.95
4-2-3 考察
4-2-3-1 結晶化機構 p.99
4-2-4 まとめ p.101
4-3 Bi2Sr2CaCu2Oxガラスガラスからの超伝導結晶の生成 p.102
4-3-1 実験
4-3-1-1 ガラスの作製 p.102
4-3-1-2 熱処理 p.102
4-3-1-3 評価方法 p.102
4-3-2 結果
4-3-2-1 化学組成と銅イオンの価数状態 p.103
4-3-2-2 熱分析 p.103
4-3-2-3 結晶化挙動 p.105
4-3-2-4 昇温過程におけるBi2Sr2CaCu2Ox相の生成機構 p.115
4-3-2-5 超伝導ガラスセラミックスの微細構造 p.117
4-3-3 考察
4-3-3-1 結晶化機構 p.121
4-3-3-2 超伝導ガラスセラミックスの微細構造 p.126
4-3-4 まとめ p.127
4-4 参考文献 p.129
第5章 ガラスセラミックスファイバーの超伝導特性と結晶配向機構
5-1 ガラスセラミックスの超伝導特性 p.131
5-1-1 はじめに p.131
5-1-2 Bi2Sr2CaCu2Ox伝導ガラスセラミックスの特性 p.131
5-1-3 実験
5-1-3-1 超伝導ガラスセラミックスファイバーの作製 p.133
5-1-3-2 電気抵抗率の温度依存性 p.134
5-1-3-3 交流複素帯磁率 p.134
5-1-3-4 臨界電流密度 p.134
5-1-4 結果
5-1-4-1 熱処理条件と超伝導特性の関係 p.136
5-1-4-2 ガラスセラミックスファイバーの微細構造 p.138
5-4-3 熱処理プロセスと超伝導特性 p.141
5-1-5 考察
5-1-5-1 冷却条件と超伝導特性 p.145
5-1-5-2 配向性と粒界弱結合 p.145
5-1-5-3 超伝導特性に及ぼす熱処理プロセスの影響 p.146
5-1-6 まとめ p.150
5-2 ガラスセラミックスの結晶配向機構 p.151
5-2-1 はじめに p.151
5-2-2 実験 p.151
5-2-3 結果
5-2-3-1 ガラスセラミックスファイバーの配向挙動
5-2-3-2 ガラスセラミックスファイバー表面の配向挙動 p.154
5-2-4 考察
5-2-4-1 ガラスセラミックス表面の結晶配向機構 p.156
5-2-4-2 ガラスセラミックスファイバーの結晶配向機構 p.162
5-2-5 まとめ p.163
5-3 参考文献 p.164
第6章 結論 p.166
謝辞 p.170
本研究に関する発表論文 p.172
本研究に関する国際会議での発表 p.174
その他の超伝導ガラスセラミックスに関する発表論文 p.175

 溶接急冷法(ガラスセラミックス法)は、酸化物原料を溶融、急冷し、熱処理によって酸化物高温超伝導体を作成する新しい酸化物高温超伝導体の作製プロセスである。このプロセスをビスマス系酸化物高温超伝導体の作製に適用した場合、急冷試料が完全にガラス化することが明らかにされている。この場合、急冷試料がガラスであるため、ファイバー化が可能であり、超伝導ガラスセラミックスファイバーの製作も可能である。一方、超伝導前駆体のBi-Sr-Ca-Cu-O系ガラスは従来の網目形成酸化物を含まない全く新しいガラスであり、ガラスサイエンスの立場からも非常に興味深い。ガラスセラミックス法を用いて優れたビスマス系超伝導ガラスセラミックスを作製するには、前駆体ガラスの特性の把握と超伝導結晶の生成機構の解明が必須の課題である。
 本研究の目的は、通常の冷却によって容易にガラス化し、しかも最終生成結晶相とそのガラス組成が同じである臨界温度85KのBi2Sr2CaCu2Ox相の組成に対応するBi2Sr2CaCu2Oxガラスの基礎物性と諸因子との関係、結晶化機構および超伝導結晶の生成機構に解明である。加えてガラスセラミックスプロセスによって作製された超伝導体の特性と本プロセスに特有な結晶粒子の特異な配向について検討を行うものであり、以下の6章から構成される。
 第1章「緒言」では本研究の背景ならびにビスマス系超伝導体とガラスセラミックスについて記述し、本研究の目的と意義を明らかにした。
 第2章「ビスマス系酸化物ガラスの諸物性」ではBi2Sr2CaCu2Oxガラスの銅イオンの価数状態に着目し、ガラス溶融時に還元剤を添加することによって銅の価数状態を0.7<Cu+/ΣCu<1.0に制御できることを見出した。銅イオンの価数状態の異なるガラスの諸物性の検討を行い、銅イオンの価数状態が諸物性と密接に関連していることを明らかにした。また、1価の銅イオンがガラス網目構造において重要な役割を担っていることを示した。さらに、ガラス粉末をガラス転移温度付近で熱処理することにより、非晶質状態を保持したまま銅イオンを酸化できることを発見し、ガラスの分相挙動が銅の価数状態によって大きく変化することを明らかにした。
 第3章「ビスマス系ガラスの結晶化速度論」では、銅イオンの価数状態の異なるBi2Sr2CaCu2Oxガラスの初期結晶化挙動を非等温結晶化速度式を用いて速度論的に解析した。銅イオンの価数状態によって結晶化機構が異なり、1価の銅イオンの増加によって結晶成長の活性化エネルギーが著しく減少することを明らかにした。また、この減少は粘性流動の活性化エネルギーの減少とよく対応することを示した。
 第4章「超伝導結晶の析出機構」においては、Bi2Sr2CaCu2OxガラスからのBi2Sr2CaCu2Ox超伝導結晶の生成機構について検討した。また、基礎的知見を得るためにBi2Sr2Cu2Oxガラスについても同様に行った。ビスマス系ガラス中では1価の銅イオンが多く存在してる。これに対して、超伝導結晶中の銅イオンの平均価数は、2.0以上であり、超伝導結晶の生成には酸素の供給が不可欠である。このため酸素の供給速度が超伝導結晶の析出機構に大きく影響し、試料表面と内部とでは、超伝導結晶の析出機構が大きく異なっていることを明らかにした。また、Bi2Sr2CaCu2Ox超伝導結晶の生成には液相の生成が深く関与していることが判明した。
 第5章「ガラスセラミックスファイバーの超伝導特性と結晶配向機構」では、ガラスセラミックス法を用いた酸化物高温超伝導体の作製において最も大きな特徴であるガラスセラミックスファイバーを取り上げその超伝導特性について明らかにした。さらにガラスセラミックス法を用いて作製した超伝導体に観察される結晶粒子の特異な配向機構について検討し、特異な配向機構は、ガラスセラミックス表面で生成したBi2Sr2CaCu2Ox結晶核が液相が作製した内部に向かって成長するためであることを明らかにした。
 第6章「結論」では、本研究を総括した結論を記述した。

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