ハイパーサーミアの温度分布解析に関する研究
氏名 加藤 和夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第50号
学位授与の日付 平成6年6月22日
学位論文の題目 ハイパーサーミアの温度分布解析に関する研究
論文審査委員
主査 教授 松田 甚一
副査 助教授 三宅 仁
副査 助教授 川田 重夫
副査 助教授 中川 匡弘
副査 新潟大学 教授 斉藤 義明
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目次
第1章 緒論 p.1
1.1 ハイパーサーミアの歴史と従来の研究概要 p.1
1.2 本研究の目的と概要 p.4
第2章 RF容量結合型加温方式の加温特性 p.9
2.1 まえがき p.9
2.2 RF加温方式の原理 p.10
2.3 有限要素法による生体内温度分布の2次元解析の定式化 p.12
2.4 筋肉等価ファントムに対する温度分布解析 p.17
2.4.1 電極径が互いに同一の場合 p.17
2.4.2 電極径が互いに異なる場合 p.23
2.5 3 層ファントムに対する温度分布解析 p.26
2.5.1 電極径が互いに同一の場合 p.26
2.5.2 電極径が互いに異なる場合 p.32
2.6 血流量の温度依存性を考慮した温度分布解析 p.37
2.7 腹部生体モデルに対する温度分布解析 p.42
2.8 考察 p.49
2.9 まとめ p.51
第3章 生体組織パラメータ p.53
3.1 まえがき p.53
3.2 誤差評価式の導出 p.54
3.3 パラメータ値の温度分布解析結果に及ぼす影響 p.58
3.3.1 3層ファントムモデルによる検討 p.58
3.3.2 腹部生体モデルによる検討 p.63
3.3.3 家兎の臨床加温例による温度解析の評価 p.71
3.4 考察 p.76
3.5 まとめ p.78
第4章 生体組織血流量と温度分布推定法 p.81
4.1 まえがき p.81
4.2 生体組織の血流量推定の概略 p.81
4.3 血流量の推定アルゴリズム p.84
4.4 血流量の修正式 p.86
4.5 まとめ p.89
第5章 血流量推定のコンピュータ・シミュレーション p.91
5.1 まえがき p.91
5.2 ダイナミック3層ファントムモデルを用いた推定シミュレーション p.92
5.3 臨床加温モデルを用いた推定シミュレーション p.100
5.4 臨床測温データを利用した血流量および体内温度分布の推定 p.108
5.5 考察 p.118
5.6 まとめ p.119
第6章 SPECT画像の血流情報を利用した体内温度分布推定法 p.121
6.1 まえがき p.121
6.2 血流量の2次元分布推定アルゴリズム p.122
6.3 4層ファントムモデルによる検証実験 p.125
6.4 臨床モデルによる検証実験 p.131
6.5 考察 p.137
6.6 まとめ p.140
第7章 結論 p.141
謝辞 p.145
参考文献 p.147
本研究に関する主な発表論文および研究業績 p.151
近年、癌の物理的な治療法として、ハイパーサーミア(癌温熱療法)が注目されている。このハイパーサーミアを安全かつ効果的に実施するためには、加温時の生体内温度分布を非侵襲的にしかも±0.5℃以下で高精度に把握しなければならない。現在、非侵襲的な温度計測法として、数種類の手法が研究されているが、まだ決定的な手法は開発されていない。本論文では、コンピュータ・シミュレーション手法により、非侵襲的にしかも高精度で生体内温度分布を推定する手法を提案し、そのアルゴリズムの検証および本手法による温度弼0 ASCII data connection for Z01-86C.sjis (133.44.10.4,1879)..ITED 1993
第4章では、RF加温時における生体組織の時系列実測温度データを利用して、生体組織内血流量とその温度依存特性を、コンピュータ・シミュレーション手法により逆推定するとともに温度分布をも同時に推定するための方法を提案し、そのアルゴリリズムを詳述している。
第5章では、前章で提案した生体組織内血流量の逆推定アルゴリズムの検証結果と生体モデルを用いた温度分布推定例について述べている。3層(脂肪-筋肉-脂肪)ファントムおよび臨床時のX線CT像をもとに作成した生体モデルを用いて、生体組織内血流量の逆推定アルゴリズムの検証を行った結果、本手法によれば、5%以下の誤差で血流量を推定できる可能性があることを示した。さらに、本手法の臨床応用例として、実際に脳腫瘍治療時に計測した時系列温度実測データを用いて本手法により推定した血流量と臨床加温の際に撮像したシングルフォトンエミッションCT(SPECT)画像から算出した血流量とが10%以下の誤差で互いに良く一致することを示し、この臨床加温例では、頭部内の2次元温度分布を、推定誤差約0.5℃程度で推定できる可能性のあることを示した。
第6章では、臨床時にSPECT装置を用いて計測した血流量分布をコンピュータ・シミュレーション手法による温度分布解析に利用し、精度良く2次元温度分布推定する手法を提案している。まず本手法のアルゴリズムを示し、次にダイナミック筋肉等価ファントム(筋肉ファントムに血流量の温度依存性を考慮したモデル)を用いた本推定アルゴリズムの検証結果から、本アルゴリズムによれば、誤差約0.2℃以内で2次元温度分布推定できる可能性のあることを示している。さらに脳腫瘍治療時のX線CT像を基に作成した臨床モデルを用いて、本手法による2次元温度分布推定の可能性を明らかにしている。
最後に第7章では、本研究を概括するとともに、今後の課題と展望をまとめている。