異材接合界面端部の応力解析及び残留応力低減に関する研究
氏名 立野 昌義
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第113号
学位授与の日付 平成7年6月30日
学位論文の題目 異材接合界面端部の応力解析及び残留応力低減に関する研究
論文審査委員
主査 助教授 福澤 康
副査 教授 小島 陽
副査 教授 栗田 政則
副査 千葉工業大学 教授 矢田 敏夫
副査 青山学院大学 助教授 佐久田 博司
副査 講師 永澤 茂
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目次
第1章 緒論 p.1
1.1 はじめに p.1
1.2 従来の研究 p.2
1.2.1 異材接合体の接合プロセス p.3
1.2.2 反応生成物及び界面構造 p.3
1.2.3 接合体強度評価 p.4
1.3 残留応力に関する解析的研究 p.6
1.3.1 残留応力緩和法 p.6
1.3.2 応力特異性 p.7
1.4 本研究の適用範囲 p.8
1.5 本論文の構成 p.9
1.6 文献 p.11
第2章 異材接合体モデルにおける有限要素分割(応力特異性指数に及ぼす要素分割の影響) p.17
2.1 はじめに p.17
2.2 解析条件 p.17
2.2.1 解析に用いる材料 p.17
2.2.2 解析方法と解析モデル p.18
2.3 理論熱弾性解析 p.18
2.4 数値解析(熱弾性解析) p.19
2.4.1 TiB2側に施す要素分割方法 p.19
2.4.1.1 検討用モデル p.19
2.4.1.2 数値解析結果 p.20
2.4.2 Ni側要素分割方法 p.21
2.4.2.1 解析内容 p.21
2.4.2.2 数値解析結果 p.21
2.5 応力特異性の安定性 p.22
2.6 結言 p.23
2.7 文献 p.24
第3章 異材接合界面端部の残留応力低減(残留応力を低減させる接合方法) p.32
3.1 はじめに p.32
3.2 熱弾塑性解析における要素分割方法 p.32
3.2.1 解析条件 p.33
3.2.2 解析結果 p.34
3.3 熱弾塑性解析 p.36
3.3.1 解析条件 p.36
3.3.2 熱弾塑性解析結果 p.36
3.4 残留応力低減法 p.38
3.4.1 予備実験(Ni-Niの接合実験) p.38
3.4.2 残留応力を低減させる接合方法の有効性 p.39
3.5 結言 p.40
3.6 文献 p.41
注釈*1 p.51
注釈*2 p.54
第4章 複雑界面形状を有する異材接合体の作製 p.55
4.1 はじめに p.55
4.2 放電加工により作製したTiB2-Ni接合体の基本特性 p.55
4.2.1 放電加工による被加工面 p.56
4.2.2 TiB2-Ni接合体強度に及ぼす放電加工電極極性の影響 p.57
4.2.2.1 電極特性による表面改質の基本特性評価法 p.57
4.2.2.2 放電加工改質層に及ぼす電極特性の影響 p.58
4.3 接合体強度に及ぼす接合処理温度及び界面形状の影響 p.59
4.3.1 供試材 p.59
4.3.2 接合方法及び接合体強度評価 p.60
4.3.3 接合体強度に及ぼす接合温度の影響 p.61
4.3.4 接合体強度に及ぼす界面形状の影響 p.61
4.4 結言 p.61
4.5 文献 p.62
第5章 軸対称異材接合体の残留応力解析(熱弾性解析における軸対称状態と平面ひずみとの比較) p.71
5.1 はじめに p.71
5.2 理論弾性解析 p.72
5.2.1 平面ひずみ状態 p.72
5.2.2 軸対称状態 p.72
5.3 数値解析条件 p.72
5.4 数値解析結果 p.73
5.4.1 各要素の応力特性 p.73
5.4.2 熱応力の定数項 p.74
5.4.3 弾性係数と各要素毎の応力分布 p.75
5.5 考察 p.76
5.6 結言 p.78
5.7 文献 p.79
第6章 応力特異性指数に基づく異材接合体強度の簡易評価 p.89
6.1 はじめに p.89
6.2 異材接合体の熱弾塑性挙動 p.90
6.2.1 解析方法 p.90
6.2.2 金属側の見掛けの弾性定数 p.92
6.2.3 解析結果 p.93
6.3 応力特異性に関する理論弾性解析 p.94
6.3.1 理論弾性解析 p.94
6.3.2 材料の組み合わせ毎の応力特異性 p.95
6.4 応力特異性指数の実用性 p.96
6.4.1 応力分布 p.96
6.4.2 応力特異性指数 p.97
6.5 接合体強度と応力特異性指数 p.97
6.5.1 接合体強度評価 p.97
6.5.2 実験結果と理論解析結果との比較 p.98
6.6 結言 p.98
6.7 文献 p.99
第7章 異材接合体の力学的特性に基づく界面形状選択(限定接合条件で接合処理したTiB2-Ni接合体の場合) p.108
7.1 はじめに p.108
7.2 軸対称異材接合体の熱弾塑性挙動に関する基礎検討 p.109
7.2.1 解析方法 p.109
7.2.2 熱弾塑性特性の評価 p.110
7.3 理論弾性解析 p.111
7.3.1 接合界面端部の応力 p.111
7.3.2 応力特異性指数の角度依存性 p.112
7.4 供試材及び強度評価 p.113
7.4.1 供試材 p.113
7.4.2 強度評価 p.114
7.5 引張強度評価結果 p.114
7.5.1 引張試験結果 p.114
7.5.2 接合体強度と応力特異性との関係 p.116
7.5.3 界面幾何学条件選択基準 p.118
7.5 結言 p.118
7.6 文献 p.119
第8章 異材接合体の力学的特性に基づく界面形状選択(任意の材料定数を組み合せた異材接合体の場合) p.130
8.1 はじめに p.130
8.2 応力特異性指数の角度依存性 p.131
8.3 実験方法 p.132
8.4 実験結果 p.133
8.4.1 973Kで接合処理した場合 p.133
8.4.2 1373Kで接合処理した場合 p.134
8.4.3 応力特異性指数と異材接合体強度との相関 p.134
8.5 異材接合界面形状選択に関する考察 p.136
8.6 結論 p.137
8.7 文献 p.137
第9章 結論 p.145
謝辞 p.149
付録1 異材接合体界面端部の応力解析 p.150
A.1 ばしめに p.150
A.2 異材接合体モデルと解析条件 p.150
A.2.1 解析モデルおよび問題の定義 p.150
A.2.2 特性方程式 p.151
A.2.2.1 (φ1, φ2)=(π/2, π/2) p.152
A.2.2.2 任意角度を有する異材接合体 p.153
A.2.3 特異場の応力 p.153
A.3 界面端部の応力特異性の解析結果 p.154
A.3.1 α-β線図 p.154
A.3.2 複数根及び複素根 p.154
A.4 文献 p.154
付録2 研究業績
A.1 印刷論文 p.157
A.2 口頭発表 p.158
A.3 賞罰 p.159
本研究は、異材接合体界面端部の熱弾性・熱弾塑性挙動等の力学的特性評価及び残留応力低減に関して検討を行ったものである。本論文は、以下の9章より構成されている。
第1章「緒言」では、研究背景と従来の研究成果の概略を通して、異材接合体を実用化する際の問題点を明らかにし、本研究の位置付け並びに意義・目的を示した。
異材接合体の強度は界面端部の残留応力に強く支配されている。従って、界面端部の熱弾性・熱弾塑性挙動の評価法及び残留応力低減法を確立することは接合界面端部の信頼性を確保する意味で重要な課題であることを述べた。
第2章「異材接合体モデルにおける有限要素分割-応力特異性指数に及ぼす要素分割の影響-」では、異材接合体の熱弾性挙動を適切に評価するための検討を行った。異材接合界面端部の残留応力を有限要素法で解析する場合、界面端部の挙動解析が重要である。しかし、界面端部の熱弾性挙動の評価に関しては、従来から明確な要素分割の指針は得られていない。そこで、異材接合体解析モデルに施す要素分割方法が熱弾性挙動に及ぼす影響を調査し、これにより接合界面端部の力学的特性を表す因子として重要な応力特異性指数を安定に算出出来る要素分割方法を明らかにした。
第3章「異材接合界面端部の残留応力低減-残留応力を低減させる接合方法-」では、TiB2-Ni接合体におけるNi厚さが残留応力に及ぼす影響を有限要素法による熱弾塑性解析を行い調査した。この結果、残留応力を低減させる接合方法を考案し、その有効性を明らかにした。
第4章「複雑界面形状を有する異材接合体の作製」では、セラミックスが難加工性材料であるため実際にはほとんど着手されていなかった複雑界面形状を有する異材接合体(TiB2-Ni接合体)を作製し、その強度評価結果を示した。さらに、TiB2-Niの界面接合機構を示すとともにTiB2-Ni接合体強度に及ぼす界面形状・接合温度条件の影響を明らかにした。
第5章「軸対称異材接合体の残留応力解析-熱弾性解析における軸対称状態と平面ひずみ状態との比較-」では、2次元平面ひずみの熱弾性挙動で3次元軸対称異材接合体の熱弾性挙動を評価出来るか否かの検討を行った。その結果、限定された異材接合体構成材料の組合せにおいて、軸対称異材接合体の熱弾性挙動は、平面ひずみ異材接合体の熱弾性挙動で近似る出来ることが可能であることを示した。
第6章「応力特異性指数に基づく異材接合体強度の簡易評価」では、応力特異性指数に基づいて高強度異材接合体を作製出来る可能性があることを示した。異材接合体の熱弾塑性挙動を評価出来る見掛けの弾性係数から算出される応力特異性指数の接合界面端部角度依存性とTiB2-Ni接合体強度の界面端部角度依存性(60°≦φ1≦90°)とを比較し、応力特異性指数と異材接合体強度との関係を調査した。その結果、両者の関係には相関関係があり、応力特異性指数に基づいて異材接合体強度の簡易評価が可能であることを明らかにした。
第7章「異材接合体の力学的特性に基づく界面形状選択-1173Kで接合処理したTiB2-Ni接合体の場合-」では、1173Kで接合処理したTiB2-Ni接合体強度と応力特異性指数との関係を調査した。この結果から、異材接合体の力学的特性に基づく界面形状選択に関する指針及び接合体強度の界面端部角度依存性における力学的特徴を明らかにした。
第8章「異材接合体の力学的特性に基づく界面形状選択-任意の材料定数を組み合わせた異材接合体の場合-」では、異材接合体の界面形状効果を確認することを目的にして、TiB2-Ni接合体強度が充分確保出来る下限温度及び上限温度で作製したTiB2-Ni接合体強度の界面端部角度依存性を調査した。これらの結果から、高強度異材接合体を作製するには、材料の組合せによらず、対数型特異性及びべき関数型特異性が出現する境界付近の界面端部角度に設定することが有効であることを示した。
第9章「結論」では、以上の各章の結論を要約して、総括とした。また、本研究成果の工業的用途及び今後の研究課題についても述べた。
本研究により、異材接合界面端部の力学的特性を適切に評価出来、力学的特性に基づいた高強度異材接合体の設計指針を明確にした。得られた成果から先端構造材料と期待されるセラミックスを用いた異材接合体の設計・作製技術に適用出来ると結論付けられる。