ファインセラミックスき裂状欠陥自動検出法の研究
氏名 吉村 剛治
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第116号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 ファインセラミックスき裂状欠陥自動検出法の研究
論文審査委員
主査 教授 秋山 伸幸
副査 教授 栗田 政則
副査 教授 久曽神 煌
副査 教授 武藤 睦治
副査 教授 柳 和久
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目次
第1章 緒言 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 従来の研究と本研究の位置づけ p.3
1.3 本研究の目的 p.10
1.4 本論文の構成 p.10
第2章 検出対象 p.12
2.1 アルミナセラミックス p.12
2.2 フェライトセラミックス p.16
第3章 従来の検出法 p.20
3.1 検出原理 p.20
3.2 検出の自動化 p.22
3.2.1 蛍光浸透探傷装置 p.22
3.2.2 微細クラックの検出アルゴリズム p.26
3.2.3 微細クラックの検出 p.30
3.3 従来方式の問題点 p.34
3.4 結言 p.35
第4章 アルミナセラミックスクラックの自動検出 p.36
4.1 緒言 p.36
4.2 検出原理 p.37
4.3 基本特性 p.39
4.3.1 実験装置の構成と実験方法 p.39
4.3.2 CCDカメラでの検出実験 p.42
4.3.2.1 レーザスポット光の照度分布 p.42
4.3.2.2 レーザ拡散距離の測定 p.46
4.3.2.3 検出ウインドウの設定 p.48
4.3.2.4 クラック検出結果 p.50
4.3.2.5 微細クラックの検出 p.52
4.3.3.4 分割フォトダイオード使用検出実験 p.54
4.4 検出の自動化 p.56
4.4.1 実験装置 p.57
4.4.1.1 光学系の構成 p.57
4.4.1.2 マスクの形状と配置 p.60
4.4.1.3 信号処理回路 p.62
4.4.2 実験方法と実験結果 p.64
4.4.2.1 検出対象 p.64
4.4.2.2 検出画像 p.64
4.4.2.3 クラック検出信号 p.66
4.4.2.4 シェーディングの測定 p.68
4.4.2.5 穴近傍での検出結果 p.69
4.4.3 検査時間 p.70
4.5 結言 p.71
第5章 フェライトセラミックスクラックの自動検出 p.73
5.1 緒言 p.73
5.2 検出原理 p.74
5.3 基本特性 p.78
5.3.1 実験装置の構成と実験方法 p.79
5.3.2 実験結果 p.83
5.3.2.1 浸漬処理条件の検討 p.84
5.3.2.2 乾燥処理条件の検討 p.86
5.3.2.3 析出処理条件の検討 p.88
5.3.2.4 クラック検出実験 p.90
5.4 検出の自動化 p.92
5.4.1 実験装置 p.93
5.4.1.1 気化エタノール導入の実験装置 p.93
(1)加圧圧入実験装置 p.95
(2)減圧吸引実験装置 p.97
5.4.1.2 試料 p.99
5.4.1.3 信号検出回路 p.101
5.4.1.4 差分信号ピーク値の検出 p.102
5.4.2 加圧圧入方式の実験方法と結果 p.105
5.4.2.1 FID点火条件 p.105
5.4.2.2 ステップ応答 p.107
5.4.2.3 インパルス応答 p.109
5.4.2.4 走査速度特性 p.114
5.4.2.5 検出感度特性 p.115
5.4.2.6 クラックの検出 p.120
5.4.2.7 小結言 p.125
5.4.3 減圧吸引方式の実験方法と結果 p.126
5.4.3.1 FID点火条件 p.126
5.4.3.2 ステップ応答 p.130
5.4.3.3 インパルス応答 p.132
5.4.3.4 走査速度特性 p.137
5.4.3.5 作動距離特性 p.138
5.4.3.6 作動範囲特性 p.140
5.4.3.7 検出感度特性 p.142
5.4.3.8 クラックの検出 p.147
5.4.3.9 小結言 p.153
5.5. 蛍光浸透探傷法との比較 p.154
5.6 結言 p.162
第6章 結論 p.165
謝辞 p.171
参考文献 p.172
研究業績
ファインセラミックスは多くの優れた特性を有することから工業材料として重要な材料であるが最大の弱点として脆性がある。このため製品中の欠陥の大きさをできるだけ小さくする検討や、高靭性化を図り許容欠陥寸法を大きくする検討が行われているが、欠陥を非破壊的に検出し許容外寸法の欠陥をもつ製品を除外することが重要であると思われる。
ファインセラミックスの非破壊検査は弾性波を使う方法、液体の浸透現象を使う方法、光で検出する方法、放射線を使う方法等で種々研究されているが、量産ラインで適応可能の検査方法が無かった。本研究はファインセラミックスに発生する微細クラックをインライン検査できるようにするために、小物品を対象に量産ラインで使用可能な高速、高感度、非破壊でクラックを検出する方法を開発することを目的とする。本研究は以下の6章より構成されている。
第1章「緒言」では、ファインセラミックスを対象に従来の非破壊検査方法について、その概要と検出限界並びに問題点を述べ、本研究の目的と位置づけを明らかにした。
第2章「検出対象」では、クラック検出の対象がアルミセラミック基板とフェライト磁石の2種類であることを示し、クラック検査の必要性を述べた。
第3章「従来の検出法」では、インライン検査方法として持つとも工業応用されている蛍光浸透探傷法を自動化した例を示した。クラックの蛍光指示模様を画像処理により検出してクラックの検出を行う装置であるが、装置が大がかりとなる問題や画像処理アルゴリズムが複雑で処理時間がかかる問題があることを明らかにした。
第4章「アルミセラミックスの自動検出」では、アルミナセラミック基板上の微細クラックの自動検出を目的として、上方からレーザスポットを照射してレーザー拡散光の照度分布を測定してクラックを検出する方法を開発した。正常な基板中ではレーザ光が一様に拡散するがクラックではレーザ光の拡散が止まる現象を利用する。レーザ拡散光の照度分布を求める検出ウインドウの位置とサイズをCCDカメラを用いて求めた。レーザスポットの照射位置を中心とする距離が0.2mmの対向するウインドウで、サイズは0.1×0.1mmが適切である。また、対向するウインドウの照度の差をとり、差分信号を求めることによりクラック部分の信号が強調され検出感度が向上することを示した。
次に、高速検査のために走査型のクラック検出装置を製作した。レーザ光をポリゴンミラーで走査させカメラレンズを用いて基板上に集光し、その反射光を再度カメラレンズ、ポリゴンミラーを経てウインドウに相当する窓を有するマスク上に結像させ、各々の窓を通った光量をホトダイオードで検出することにより、実時間でウインドウ内の照度分布を求める装置である。クラックの検出を行う実験で、幅0.5μm以上のクラックをSN比2以上で検出可能であることを示した。
第5章「フェライトセラミックスの自動検出」では不透明で表面が粗面のフェライト磁石の微細なクラックの検出を目的として、クラックに揮発性溶媒を浸透させ、表面が乾燥した後でクラックから気化析出する溶媒をガスクロマトグラフ法のFID(FlameIonization Detector:水素炎イオン化検出器)を用いてクラックを検出する方法を開発した。溶媒の浸漬時間は10secで、乾燥は強制温風で10secの場合が感度高くクラックを検出できることを明らかにした。
そして、2種類の実験装置を製作してクラックの検出を連続的に行う実験を行った。加圧圧入方式と減圧吸引方式である。前者は試料を走行させるテーブルを密封の容器内に納め、容器を加圧して容器の上蓋に吸引口を固定し、吸引口真下を試料を走行させクラックから析出した溶媒をFIDに導入する方式であり、後者はFIDの排気側を大気圧以下の圧力に減圧することで大気圧の下で吸引口から溶媒をFIDに導入可能にする方式である。
FIDの点火条件、ステップ応答、インパルス応答等のFIDの特性を測定した。そして、クラック検出感度の測定として2個のフェライト磁石を鏡面加工しその間に1~10μmのスペーサを挟んでギャップを形成する治具で、ギャップの幅だけを変えた時のFID出力の変化を調べた。これより、浸漬開始から70~90秒経ってからクラックを検出することにより比較的線形性のある検出が可能であることがわかった。次に、実際のフェライト磁石でクラックを検出する実験を行い、幅1~3μmのクラックをSN比6以上で検出可能であることを示した。また、同じクラックを蛍光浸透探傷で検出したSN比と比較し、本研究の方が2~3培の感度で検出可能であることを示した。
第6章「結論」では、以上の各章で得られたクラックの検出に関する結論をまとめた。