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電解コンデンサ用アルミニュウム箔のエッチングに関する研究

氏名 内 秀則
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第73号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 電解コンデンサ用アルミニウム箔のエッチングに関する研究
論文審査委員
 主査 教授 山田 明文
 副査 教授 神林 紀嘉
 副査 助教授 丸山 一典
 副査 講師 斎藤 秀俊
 副査 山形大学 教授 加藤 良清

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目次
第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.1.1 電解コンデンサの概要 p.1
1.1.2 電解コンデンサ用のアルミニウム箔の概要 p.3
1.2 研究の目的 p.11
1.3 本論文の概要 p.15
参考文献 p.18
第2章 アルミニウムの電気化学的トンネルエッチング p.21
2.1 はじめに p.21
2.2 実験 p.22
2.3 結果と考察 p.22
2.3.1 トンネル成長の安性観察 p.23
2.3.2 トンネル成長の定量観察 p.27
2.3.3 中断とステップチェンジの影響 p.31
2.4 まとめ p.37
第3章 アルミニウムエッチトンネルの長さの分布 p.41
3.1 はじめに p.41
3.2 モデル p.42
3.3 結果と考察 p.48
3.4 まとめ p.60
第4章 電解コンデンサ用アルミニウム箔の直流エッチングにおけるピットの生成機構 p.62
4.1 はじめに p.62
4.2 実験 p.62
4.3 結果と考察 p.64
4.3.1 トンネルの成長過程と形状 p.64
4.3.2 エッチング初期でのトンネルの成長速度 p.69
4.3.3 トンネルの限界長 p.71
4.3.4 トンネルの数の分布 p.75
4.4 まとめ p.80
第5章 アルミニウム箔の直流エッチングにおけるトンネル形状 p.82
5.1 はじめに p.82
5.2 実験 p.82
5.3 結果と考察 p.83
5.3.1 トンネル径の分布 p.83
5.3.2 トンネル径の減衰 p.86
5.3.3 温度の影響 p.90
5.3.4 硫酸濃度の影響 p.90
5.3.5 トンネル形状のパラメーター p.90
5.3.6 トンネル密度 p.97
5.4 まとめ p.101
第6章 アルミニウム箔の化学エッチングモフォロジーの観察 p.103
6.1 はじめに p.103
6.2 実験 p.103
6.3 結果と考察 p.104
6.4 まとめ p.107
第7章 アルミニウム箔の化学エッチング反応 p.110
7.1 はじめに p.110
7.2 実験 p.110
7.3 結果と考察 p.113
7.3.1 塩酸濃度の影響 p.113
7.3.2 塩化アルミニウム濃度の影響 p.118
7.3.3 エッチング機構のモデル p.118
7.3.4 硫酸濃度の影響 p.122
7.4 まとめ p.124
第8章 結論 p.126
謝辞 p.131

 電解コンデンサに用いられているアルミニウム箔は、その表面積を拡大するために、通常塩化物イオンを含む溶液中で電気化学的に、もしくは化学的にエッチングされるが、そのエッチングの方法は用途により異なっており、電圧の高い陽極箔には径の大きいピットが形成される直流エッチングが、また、低圧用の陽極箔や陰極箔には微細なピットが数多く形成される交流エッチングや化学エッチングが用いられている。このように、用途に応じてエッチングで形成されるピットの形状を、精度よくコントロールすることが要求されている。
 本論文では、アルミニウムの直流エッチングにおけるトンネル状ピットの発生と成長のメカニズムを解明し、従来から工業的には行われているが、ほとんど基礎的な研究報告のない化学エッチング反応の機構を明らかにすることを目的としている。
 第1章では、アルミニウム電解コンデンサと、これに用いられているアルミニウム箔のエッチング技術についての概要を述べ、本研究の目的と意義を明らかにしている。
 第2章では、アルミニウム箔を塩酸溶液中で直流エッチングしたときに形成されるピットの発生と成長について、SEMによる定性的な観察を行った結果、アルミニウムの溶解はトンネルの先端の一方向のみで起こっており、側面は不動態化していることを見出している。このことは、トンネル成長の重要な特徴である。さらに、エッチング途中での電流密度や温度の急激な変化がトンネルの成長におよぼす影響について調査し、トンネル成長のメカニズムについて明らかにしている。
 第3章では、アルミニウムを高温の塩酸溶液中で直流エッチングしたときの、トンネルの長さの分布に着目し、提唱したモデルと実験より得られたトンネルの長さを比較検討している。その結果、モデルから算出された活性なトンネルの数と、実験から測定されたトンネルの数とはよく一致しており、モデルが有効であることを確認している。
 第4章では、第2章、第3章が塩酸水溶液中での直流エッチングにおけるトンネルの成長についての研究であったが、塩酸に硫酸を添加した混合溶液中でのトンネルの挙動について観察を行い、トンネルの成長におよぼす溶液の影響について検討している。その結果、トンネルの成長速度は、溶液の組成には影響されないことを明らかにしている。また、硫酸濃度を増加したときのトンネル成長におよぼす影響は、エッチングの温度を高くしたときのトンネル成長におよぼす影響と同じであることを見いだしている。
 さらに、ピットの数を深さ方向に観察することにより、トンネルの発生と成長のメカニズムについて考察し、トンネルが限界長に達することにより、新たなトンネルの発生が誘起されることを明らかにしている。
 第5章では、アルミニウムを直流エッチングしたときに形成されるトンネルの形状および数に着目し、それらの相互関係について検討した結果、トンネルの径はトンネルの長さに対して指数関係として直線的に減少していることを見いだしている。このトンネルの径の減衰率とトンネルの径の長さの間には強い相関関係があり、トンネルの成長は幾何学的影響を受けていることを明らかにしている。
 これらの結果より、トンネルの径、長さ、減衰率、数のパラメーターを用いて複雑なトンネル構造がモデル化できる可能性について述べている。
 第6章では、アルミニウムを化学エッチングしたときに発生するピットの形状を詳細に観察する方法について検討している。その結果、ピットの形状はACエッチングで生じるピットと同じCube状であり、ピットの側面はおよそ2~4nmの厚さで、アモルファスのエッチ皮膜が均一に生成されていることを明らかにしている。また、本研究で開発した方法は、微細構造観察手法として有効であることを確認している。
 第7章では、化学エッチングにおいて、アルミニウムが本格的に腐食されるまでの誘導期や腐食速度および、ピットの形状におよぼす溶液組成の影響について検討し、化学エッチング反応は、アルミニウムの表面に存在する酸化皮膜の局部溶解および、それに伴うアルミニウムの溶解とピット内部の不動態化および、酸濃度の回復による酸化皮膜の再溶解の繰り返しの反応モデルで説明できることを示している。
 第8章では、本研究で得られた諸結果を総括的にまとめると共に、今後の課題について述べている。

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