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Molecular Recognition of Oraganic Guests with Resorcinol Cyclic Tetramer As Studied by Circular Dichroism and 1H NMR Spectroscopy

(円二色性と1H NMR スペクトルによるレゾルシン環状四量体に対する有機ゲストの分子確認)

氏名 菊地 康昭
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第69号
学位授与の日付 平成7年12月6日
学位論文の題目 Molecular Recognition of Organic Guests with Resorcinol CyclicTetramer As Studied by Circular Dichroism and 1H NMR Spectroscopy(円二色性と1H NMRスペクトルによるレゾルシン環状四量体に対する有機ゲストの分子確認)
論文審査委員
 主査 教授 青山 安宏
 副査 教授 曽田 邦嗣
 副査 教授 塩見 友雄
 副査 助教授 野坂 芳雄
 副査 助教授 西尾 嘉之

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Contents
General Introduction p.1

Chapter1.Molecular Recognition and Stereoselectivity:Geometrical Requirements for the Multiple Hydrogen-Bonding Interaction of Diols with a Multidentate Polyhydroxy Macrocycle p.6

Chapter2.Complexation of Chiral Glycols,Steroidal Polyols,and Sugars with a Multibenzenoid,Achiral Host as Studied by lnduced Circular Dichroism Spectroscopy:Exciton Chirality lnduction in Resorcinol-Aldehyde Cyclotetramer and lts Use as a Supramolecular Probe for the Assignments of Stereo-chemistry of Chiral Guests p.32

Chapter3.Highly Cooperative Bindingof Alkyl Glucopyranosides to Resorcinol Cyclic Tetramer Due to Intracomplex Guest-Guest Hydrogen-Bonding:Solvophobicity/Solvophilicity Control by an Alkyl Group of the Geometry,Stoichiometry,Stereo-selectivity,and Cooperativity p.66

Chapter4.Complexation of Alkyl Glycosides with Cyclic Resorcinol Tetramer in Apolar Organic Media:Geometrical Requirement for the Intracomplex Sugar-Sugar Interaction p.87

Chapter5.CH-π Interaction As an Important Driving Force of Host-Guest Complexation in Apolar Organic Media.Binding of Monools Studied by 1H NMR and Circular Dichroism Spectroscopy p.97

Chapter6.CH-π Interaction As an Important Driving Force of Host-Guest Complexation. Further Evidence for the Selective Incorporation of Alkyl Groups in the Polyhydroxy Aromatic Cavity of Calix[4]resorcarene Host p.126

Chapter7.Interaction of Achiral Host and Guest in a Chiral Solvent As Studied by Circular Dichroism Spectroscopy. Complexation of Esters and Ethers with Calix[4]resorcarene in Limonene p.141

Chapter8.HPLC Separation of Alcohols using a Stationary Phase Coated with a Polyhydroxy Macrocyclic Host p.159

List of Publications p.172

 本論文では、レゾルシノールとドデカナールからなる環状4量体をホスト分子とし、円二色性(CD)スペクトルを主たる分析手段として非極性溶媒中における非イオン性有機分子との相互作用を検討することにより、分子認識に対するCDスペクトルの新たな利用方法を見い出すとともに、ゲスト分子の構造が水素結合やCH-π相互作用およびそれらの協同効果が錯体形成に及ぼす影響について論じたている。
 第1章では環状モノオール、鎖状および環状ジオールのクロロホルム中における相互作用を1H-NMRスペクトルによって算出された錯体生成定数より検討した。生成定数はホスト分子のベンゼン環電流効果によって発現するゲスト分子のシグナルをもとに算出した。その生成定数よりホスト分子の結合部位とゲスト分子の立体構造との位置関係が錯体形成に影響し、特にシクロヘキサンジオールでは位置選択性および立体選択性が発現することが明らかとなった。
 第2章ではキラルなアルコールをゲスト分子としてクロロホルム中における相互作用をCDスペクトルによって検討した。キラルなゲスト分子との錯体形成により発現する誘起CDスペトクルをもとに、複雑な構造の胆汁酸メチルを含むアルコールの錯体生成定数がBenesi-Hildebrandプロットにより算出出来ることが解った。また、スペトクルの分裂型コットン効果の符号はジオールの水酸基の立体配置や単糖の安定な立体配座と強く関連することから、ホスト分子がキラルなゲスト分子の立体化学に対するプローブとして利用できることが明らかとなった。
 第3章てはアルキル鎖の違いによる水溶液/脂溶性アルキルα-,β-グルコシドの相互作用について検討を行った。水溶性メチルグルコシドのα-アノマーが1:1錯体であるのに対しβ-アノマーではホスト2分子からなる2:1錯体が生成した。一方の脂溶性オクチルグルコシドでは、両アノマーともCDおよびNMRスペクトルよりホスト1分子、ゲスト4分子からなる1:4錯体が生成することが明らかとなった。これにはグルコシドの2位と6位の水酸基が不可欠であることからホスト-ゲスト間水素結合とゲスト-ゲスト間水素結合の協同効果が極めて重要であることが解った。
 第4章では、種々の単糖類のオクチルグリコシドの均一系での相互作用について検討を行った。グルコシドと同じヘキソース誘導体であるマンノシドはグルコシドよりもはるかに弱いものの1:4錯体の生成が見られた。しかし、ガラクトシドでは1:4錯体の生成が見られなかった。この他にペントース誘導体でも1:4錯体の生成は見られなかった。これらのことからホスト-ゲスト間およびゲスト-ゲスト間水素結合の協同効果においてゲスト分子の立体配置が錯体形成に強く影響することが明らかとなった。
 第5章では、ホスト-ゲスト錯体の1H-NMRにおいて発現するベンゼン環の環電流効果を受けたゲスト分子のアルキル鎖のシグナルがCH-π相互作用の存在を意味していることから、種々のモノオールの相互作用を検討してこれのアルキル基のCH-π相互作用が錯体形成に及ぼす影響を調べた。錯体生成定数より、アルキル鎖長の増加とアルキル鎖の分岐、および構造の固定化によってホスト分子と相互作用しやすくなる、つまりCH-π相互作用しやすくなることが明らかとなった。さらに、水素結合力の弱いアセテートや全く水素結合しない炭化水素のコレスタンなども錯体が生成し、これにもCH-π相互作用が関与することが解った。
 第6章では、アルキルベンゼンを溶媒としたボルネオールの錯体生成定数を検討し、溶媒のアルキル鎖長の増加によって生成定数が減少することが解った。つまり鎖長の増加によってアルキルベンゼンがホスト分子とCH-π相互作用しやすくなることが解った。一方、キラルな炭化水素のリネモンを溶媒としたホスト溶液も誘起CDスペクトルを発現し、これにアキラルなゲスト分子を加えることでこれらの相互作用に対する知見が得られるが、これを利用してアルキルベンゾエートの生成定数を算出した。その結果、ブチルベンゾエートが最も錯体形成しやすくなり、これよりアルキル鎖長が短くても長くても生成定数が減少することから、CH-π相互作用がホスト内孔の大きさに影響されることが明らかとなった。
 第7章では、キラルなリモネン錯体を利用してエステルとエーテルについての検討を行った。ジメチルエステルとジアセテート共に炭素鎖が少ない場合1:1錯体を形成するのに対し炭素鎖が長い場合はjobプロットよりホスト2分子ゲスト1分子からなる2:1の錯体が生成していることが解った。また、エチレングリコールの鎖状オリゴマーのジメチルエーテルと環状オリゴマーでもゲスト分子の構造によって1:1錯体から3:1錯体が生成することが明らかとなった。これにはホスト-ゲスト間水素結合の他にホスト-ホスト間水素結合が関与していることが示唆された。
 第8章では、シリカゲルにオクタデシル基を化学結合した逆相カラムであるシリカ-ODSカラムにホスト分子を被覆したカラムを調製し、これを用いてアルコールの分離を調べた。その結果、ホスト-ゲスト相互作用が保持時間に影響することが解り、特に1,4-シクロヘキサンジオールと1,3-シクロペンタンジオールでは立体選択性も発現することを見い出し、ホスト-ゲスト相互作用をHPLCカラムに応用できることが明らかとなった。

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