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アスファルト舗装のパフォーマンス評価を取り入れた修繕方法のシステム化

氏名 山之口 浩
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第75号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 アスファルト舗装のパフォーマンス評価を取入れた修繕方法のシステム化
論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 小川 正二
 副査 教授 鳥居 邦夫
 副査 教授 丸山 久一
 副査 北海道工業大学教授 笠原 篤

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目次
第1章 緒論 p.1
1.概説 p.1
2.研究の背景 p.2
3.研究の目的と意義および仮説の構成 p.2
4.論文の構成 p.6
参考文献 p.14
第2章 舗装修繕設計のための影響因子とパフォーマンス評価 p.15
1.総説 p.15
2.パフォーマンス影響因子と供用性能評価の研究の現状 p.17
2-1 概説 p.17
2-2 舗装設計の体系化への進展 p.19
2-3 パフォーマンス影響因子 p.21
(1)構造特性
(2)材料特性
(3)混合物特性
(4)施工特性
2-4 供用性能の評価 p.32
(1)舗装破損形式と破損下原因
(2)供用性能の評価
(3)パフォーマンスの評価
3.供用中道路舗装調査による舗装パフォーマンス評価 p.37
3-1 概説 p.37
3-2 供用中道路における舗装破損調査とパフォーマンス評価 p.39
3-2-1 舗装破損原因と構成特性-名神高速道路舗装破壊原因調査
(1)調査方法
(2)表層アスファルト混合物の性状と路面性状
(3)ベンケルマンビームたわみ測定による構造評価と路面性状
(4)たわみ量測定結果等からみた舗装成層の破損原因
3-2-2 舗装供用性能の客観評価-関東地方一般道路(国道、県道、一般有料道路)による調査
(1)調査方法
(2)調査結果
(3)調査結果の検討
(4)調査結果のまとめ
3-2-3 舗装パフォーマンスと混合物特性評価-首都高速道路橋面舗装現況調査
(1)調査方法
(2)高架橋面舗装の破損形式
(3)舗装状況(フレッティング破損)と舗装供用性能の評価
(4)舗装供用性能履歴曲線の設定
(5)舗装パフォーマンスからみた表層混合物特性の設計
3-2-4 土工区間についての舗装パフォーマンスの評価の検討-九州道基山工事用道路試験よりの解析(AASHO道路試験結果の方法の拡張)
4.結語 p.93
参考文献 p.95
第3章 舗装修繕工法の開発と路上再生工法の適用性 p.97
1.総説 p.97
2.維持修繕工法と研究の現況 p.99
2-1 概説 p.99
2-2 舗装再生工法の開発 p.101
2-3 維持修繕工法の分類と工法選定 p.104
3.舗装修繕工法の開発と路上再生工法の適用性 p.107
3-1 概説 p.107
3-2 省資源化を考慮した修繕工法の開発 p.108
(1)現位置混合安定処理工法の適用
(2)現位置再生路盤工法の適用
(3)現位置表層再生工法の適用
3-3 耐流動対策のための修繕工法の開発 p.112
3-4 サーフェス・リサイクリング工法の適用性 p.118
3-5 サーフェス・リサイクリング工法の適用性判定と特別な対策 p.122
(1)概略判定
(2)路面状況による判定
(3)基層状況による判定と特別対策
3-6 サーフェス・リサイクリング工法の調査・設計方法 p.126
3-6-1 事前調査方法
3-6-2 構造設計方法
3-6-3 配合設計方法
4.結語 p.138
参考文献 p.139
第4章 舗装パフォーマンスのための供用性能評価方法と修繕工法選定方法-中軽交通道路網について仮説の検討 p.141
1.総説 p.141
2.舗装供用性能の評価方法と修繕工法選定の研究の現況 p.142
2-1 概説 p.142
2-2 舗装供用性能の評価方法 p.144
(1)乗り心地
(2)路面損傷
(3)すべり
2-3 構造持続力の評価方法と修繕工法選定方法 p.146
3.舗装構造評価にもとづく修繕工法選定方法 p.149
3-1 概説 p.149
3-2 FWD調査にもとづく修繕工法選定方法の提案 p.150
4.供用性能評価の舗装維持修繕管理への適用 p.156
4-1 概説 p.156
4-2 合理的な供用性能評価方法の提案 p.157
(1)路面性状測定法(1次調査)
(2)構造支持力測定法(2次調査)
5.結語 p.163
参考文献 p.165
第5章 長寿命化を目指した舗装修繕工法-重交通道路路線についての仮説の検討 p.167
1.総説 p.167
2.重交通対応の舗装修繕方法の研究の現況 p.168
2-1 概説 p.168
2-2 ライフサイクルを考慮した舗装技術 p.169
2-3 長寿命化を目指した舗装技術 p.170
3.ライフサイクルを考慮した維持修繕工法 p.172
3-1 概説 p.172
3-2 維持修繕ライフサイクルにおける路上表層再生工法の適用 p.173
(1)設定条件
(2)各維持修繕工法の供用性能履歴(パフォーマンス曲線)
(3)ライフサイクルコストの計算
(4)ライフサイクルコストからの分析
3-3 維持修繕工法(路上表層再生工法を含む)のエネルギー消費量 p.182
(1)設定条件
(2)エネルギー原単位
(3)エネルギー消費量の算定
(4)各工法別エネルギー消費量算定
4.トータルコストを考慮した重交通対応長寿命化舗装 p.190
4-1 概説 p.190
4-2 路床構築を組み入れた重交通対応長寿命化舗装 p.191
(1)検討のための設定
(2)検討結果
4-3 重交通対応長寿命化舗装のライフサイクルコスト p.200
(1)検討のための設定条件
(2)検討結果
(3)間接費用の影響
4-4 重交通対応舗装構造の省資源、省エネルギー度 p.212
(1)検討のための設定条件
(2)検討結果
5.結語 p.222
参考文献 p.224
第6章 合理的な舗装維持管理のための修繕方法-仮説の検討結果にもとづく提案とその具体的内容 p.225
1.総説 p.225
2.長寿命化舗装を目指した施工の研究の現況と路床の均一化 p.227
2-1 概説 p.227
2-2 路床均一化の効果 p.230
3.重交通道路のための舗装修繕方法 p.236
3-1 概説 p.236
3-2 合理的な舗装修繕工法試案 p.237
(1)舗装基盤構築のための修繕方法
(2)表替え表層工種の選定
4.中軽交通道路のための路面維持管理システム p.241
4-1 概説 p.241
4-2 供用性能データベースの現況 p.242
4-3 簡易型路面維持管理システムの提案 p.244
5.結語 p.248
参考文献 p.250
第7章 結論 p.251
謝辞
用語一覧
付録 A 九州道基山工事用道路試験 各工区供用性能指数算定結果
B 路上表層再生工法の関係文献一覧表
C 舗装修繕工法(打変え、切削オーバレイおよび路上表層再生工法)のライフサイクルコスト算定結果例

 アスファルト舗装は、橋梁あるいはダム等、ほかの土木構造物とは異なり、設計期間(耐用年数)が比較的短く、機能回復と称する日常的維持作業ならびに本格的な補修である修繕を前提にして設計・施工されている。そして近年の舗装ストックの増大に伴って、維持管理を適切に行うことが益々重要になってきている。アスファルト舗装の修繕は新設に比べると、かなり多面的な検討が必要である。すなわち、その設計から施工、供用までを含めた一つの維持管理システムとして、トータルライフサイクル的なパフォーマンス(供用性)を考えなければならない。しかしながら、現実の設計面等で、いくつかの問題点がある。例えば、修繕設計に反映させるための舗装破損の要因となる荷重や材料など、各特性の関連が明確になっていない、路面性状等の供用性能を客観的に評価・予測する方法が正確でない、もっとも良質なパフォーマンス(供用性能の経時履歴曲線)の評価が確立されていない、リサイクリング工法の位置づけや適用性が十分に検討されていない、ライフサイクルについて概念は示されているが具体的な検討と方向付けがなされていない、維持管理システムの重要要素である修繕工法の選定方法について、構造支持力の評価を取入れたものがない、とくに中軽交通道路網の維持管理システム構築のための簡便で経済的な調査方法がないなどである。
 本論文は、供用中の道路における舗装現況調査を通して、供用性能とパフォーマンスを評価し、混合物特性や修繕工法等の影響因子との関連性を明確にした。また、修繕工法の一つであるサーフェイス・リサイクリング工法を開発し、その適用性を検討し、維持管理システムのための工法選定方法を提案した。さらに、重交通道路と中軽交通道路のそれぞれの舗装に対して、総合的なアプローチによる供用性能評価方法や路面維持管理システム等を提案し、合理的な維持修繕工法のシステム化のための方向付けを示したものである。
 本論文は7章からなっている。
 第1章ではアスファルト舗装の維持修繕マネジメントシステム構築のための構成要素に関する技術的現状と経緯などから、これを確立していくための研究課題について述べ、本研究の目的と意義を明らかにした。
 第2章では、舗装修繕設計のための構造特性等のパフォーマンス影響因子と供用性能評価に関する研究の現況を踏まえ、パフォーマンス評価に関する研究として、供用中の現道舗装の現況調査等、3つの現地調査を行い、その結果について考察した。
 第3章では、修繕設計の基本となる維持修繕工法と、その一つである舗装リサイクリング工法に関する研究の現状を踏まえ、対流動対策から進展したサーフェースリサイクリング工法の開発研究の経緯とその適用性の検討ならびに基本的な修繕工法選定について、また、その標準化のための調査方法、構造設計・配合設計方法等について考察した。
 第4章では、供用性能の評価方法と修繕工法選定に関する研究の現状を踏まえ、構造評価に基づくFWDたわみ特性による修繕工法選定方法を提案した。ついで、これらの供用性能評価を現実の舗装維持管理に適用するための、具体的な調査方法を提案した。
 第5章では、とくに第3章を受けて重交通対応の長寿命化舗装の修繕設計にサーフェースリサイクリング工法を適用し、消費エネルギー量も含めたライフサイクルコストからその有効性を明らかにした。さらに、トータルコストを考慮するために、路床構築や施工出来栄えの効果等について考察し、長寿命化舗装としての合理的な修繕設計方法を提案した。
 第6章では、まず舗装修繕における施工の善し悪しがパフォーマンスにいかに関連するかに関し、路称構築(改良)の際の安定処理等による路床均一化の効果について考察し、続いて第5章および第4章を受けて、重交通路線の場合における合理的な舗装修繕工法試案を提案し、かつ中軽交通道路網の維持管理のための供用性能評価方法と簡易型の路面維持管理システムの構築について提案した。
 第7章は結論であり、これまでの各章を総括し、これからの実際面への適用を考察し、今後、アスファルト舗装の維持修繕管理においては、総合的な評価と考察に基づく設計、施工、供用(調査)のあり方が重要であることから、この間のギャップをいかに埋めるかということについて論じた。
 最後に、舗装技術は経験工学といわれるように、それぞれ混成技術として育っている伝統的技術を、いかに合理的に検証するかということで発展させてきた。今後に期待されることは、真のスポンサーたる市民・地域のさらに焦点をあてた捕らえかたが必要であろう。これらの視点から今後の展望についても論じている。

平成7(1995)年度博士論文題名一覧

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