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雪氷の水力輸送における計測・制御技術の開発

氏名 北原 拓夫
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第74号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 雪氷の水力輸送における計測・制御技術の開発
論文審査委員
 主査 教授 白樫 正高
 副査 教授 梅村 晃由
 副査 教授 服部 賢
 副査 教授 早川 典生
 副査 新潟大学 教授 長谷川 富市

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目次
第1章 序論
1.1 緒言 p.6
1.2 雪氷の水力輸送 p.6
1.2.1 流雪溝 p.6
1.2.2 管路による雪の水力輸送 p.6
1.2.3 地域冷房システム p.7
1.3 雪氷分率の計測と制御 p.8
1.4 本研究の目的 p.9
第2章 管路輸送における雪分率制御の実証試験
2.1 緒言 p.10
2.2 雪分率制御の原理 p.10
2.3 要素機器 p.13
2.3.1 雪分率計 p.13
2.3.2 雪分率調整器 p.20
2.4 雪分率制御の室内試験 p.20
2.4.1 ビーズによる試験 p.20
2.4.2 雪による試験 p.25
2.5 結論 p.29
第3章 シミュレーションによる雪分率制御の検討
3.1 緒言 p.30
3.2 雪分率制御の方法 p.30
3.2.1 雪水混合体の濃縮の方法 p.30
3.2.2 制御方法の設定 p.32
3.3 シミュレーションプログラムの構成 p.35
3.3.1 要素機器の特性 p.35
3.3.1.1 PID調節計 p.35
3.3.1.2 電動バルブ p.38
3.3.1.3 雪分率調整器 p.40
3.3.1.4 ポンプ p.42
3.3.1.5 むだ時間要素 p.42
3.3.1.6 流入雪分率 p.42
3.3.1.7 その他 p.46
3.3.2 流れ図 p.46
3.4 シミュレーションの実行例 p.46
3.4.1 限界感度法のシミュレーション p.46
3.4.2 雪分率制御のシミュレーション p.50
3.5 結論 p.60
第4章 電導度法による雪氷分率測定方法の開発
4.1 緒言 p.61
4.2 電導度法 p.61
4.2.1 混相流における分率測定の各種の方法 p.62
4.2.2 電導度法による分率測定の諸研究 p.63
4.2.3 氷分率に関連した研究例 p.65
4.2.4 測定の基本原理 p.65
4.3 実用化への技術的工夫 p.66
4.3.1 液抵抗の等価回路 p.67
4.3.2 液抵抗測定回路 p.67
4.3.3 抵抗の同時測定 p.70
4.3.4 電場の解析 p.72
4.3.4.1 電位分布と電流分布 p.73
4.3.4.2 電極定数 p.77
4.3.5 補助電極の開発 p.77
4.3.5.1 電場の解析 p.80
4.3.5.2 電流漏洩防止機能に関する実験 p.84
4.4 試作分率計の概要 p.97
4.5 実験用電極 p.100
4.6 試験方法および試験結果 p.106
4.6.1 粒子のアスペクト比の導入 p.107
4.6.2 アスペクト比の小さい場合 p.107
4.6.3 アスペクト比が大きい場合 p.115
4.6.4 雪氷分率測定試験 p.116
4.7 結論 p.117
第5章 流雪溝計測システムの開発
5.1 緒言 p.118
5.2 流雪溝における雪分率の測定方法 p.118
5.2.1 電極の配置 p.118
5.2.2 抵抗測定回路の改良 p.119
5.3 数値解析による検討 p.127
5.3.1 無次元量の定義 p.127
5.3.2 流路軸直角断面 p.129
5.3.3 流路水平断面 p.133
5.4 水深の変動への対応 p.133
5.5 試作流雪溝計測システム p.140
5.5.1 システムの構成 p.140
5.5.2 水用電極 p.142
5.5.3 水深の測定方法 p.142
5.5.4 雪塊の流速の測定方法 p.142
5.6 計測試験 p.147
5.6.1 水深変動に対する補正機能試験 p.147
5.6.2 分率の測定試験 p.156
5.6.3 雪塊の流速測定試験 p.156
5.6.4 積算輸送量の計測試験 p.157
5.7 結論 p.157
第6章 電導度法による雪氷分率測定方法の管内流れへの適用
6.1 緒言 p.159
6.2 雪氷の管内分率の測定方法 p.159
6.2.1 電極の設置方法 p.159
6.2.2 電場の解析 p.159
6.2.2.1 電極定数 p.162
6.2.2.2 等電位線と電気力線 p.164
6.3 電極間の粒子の偏りの影響 p.164
6.3.1 試験装置と試験結果 p.167
6.4 管内の雪分率の測定試験 p.167
6.4.1 試験装置 p.167
6.4.2 試験結果 p.167
6.5 雪塊の流速の測定試験 p.173
6.5.1 測定原理と装置 p.173
6.5.2 試験結果と考察 p.173
6.6 結論 p.180
第7章 総括 p.181
謝辞 p.185
文献 p.186
付録 付-p.1
付録3-1 (3-9)式の誘導 付-p.2
付録3-2 (3-10)式の誘導 付-p.3
付録4-1 液抵抗測定回路の検討 付-p.5
付録4-2 電場の解析(主電極のみの場合) 付-p.14
付録4-3 電場の解析(補助電極を併用する場合) 付-p.19
付録5-1 (5-4)式の誘導 付-p.24
付録5-2 (5-8)式の誘導 付-p.27
付録6-1 電場の解析(電極定数) 付-p.30
付録6-2 電場の解析(等電位線と電気力線) 付-p.36

 本論文は、雪や氷の粒子を水と混合したうえで流動により輸送する、いわゆる雪氷の水力輸送に関するものであり、特に雪氷粒子の分率の計測および制御技術の開発に関する一連の研究をまとめたものである。
 第1章「序論」では、雪の水力輸送の典型的な実例でもある流雪溝、近年報告の見られるようになった除排雪のための雪の管路輸送、および氷の粒子を水と混合したうえで管路輸送しその冷熱を利用するいわゆる地域冷房システムなどについて概観した。そして、いずれの場合においても雪または氷の分率の計測および制御が重要な技術的課題であることを指摘した。その雪氷分率の計測技術および制御技術の開発が本研究の目的であることを述べた。
 第2章「管路輸送における雪分率制御の実証試験」では、雪分率制御の実証試験の結果について述べた。この試験は、雪の管路輸送において輸送管内の雪分率を所定の目標値に一致するよう制御することが可能であることを確認するために行ったものである。この試験を実施するにあたり、新しく開発した二種類の装置が重要な機能を果たした。ひとつは輸送管内の雪分率を測定する雪分率計で、もうひとつは雪分率を調整する雪分率調整器である。それらには長岡技術科学大学において最近開発された雪分率計および雪分率調整器を利用した。これまで雪の管路輸送の分野において、制御用の機器を用いて雪分率の自動制御を行った例は見当たらず、本試験はその最初の実施例であると思われる。
 雪分率計の測定原理は、管内に設置した回転体の攪拌トルクの大きさから、雪分率を連続測定するというものである。また雪分率の調整は、管路内を流れる雪水混合体から多孔板を通して必要量の水を分離・抽出することにより濃縮して雪分率を大きくする方法によるものである。自動制御のためのコントローラとしては市販のPID指示調節計を利用した。試験は屋内に設置した25mの輸送管を有する閉ループ式の試験装置によった。試験の結果、例えば27%の雪分率を一定の目標値45%に制御することができ、雪の管路輸送において雪分率の制御が可能であることが実証された。
 第3章「シミュレーションによる雪分率制御の検討」では、雪分率制御のコンピュータシミュレーションの方法と結果について述べた。これは第2章の成果すなわち雪の管路輸送において雪分率の制御が可能であることが判明したことを受けて、いろいろな条件のもとでの制御の状況を検討できるようにコンピュータプログラムを作成しシミュレーションを行ったものである。実証試験の結果から雪の管路輸送の実現の可能性が高くなった。雪の管路輸送システムを構成する各要素機器の仕様が、第2章で述べた実証試験に使用したものと異なる場合であっても、一般的に良好な制御が可能か否かを、シミュレーションにより検討した。実証実験で用いた輸送管の長さは25mであったが、例えば1kmのように長い場合でも同様に制御が可能であることが明らかになった。
 第2章、第3章にて述べた結果から、雪氷の水力輸送、特に雪氷分率の計測・制御への期待の高まることが十分予想されるに至った。ここで、第2章で述べた雪分率計の性能について検証するとともに、より優れた新しい雪分率測定方法の開発が望まれることを述べた。
 第4章「電導度法による雪氷分率測定方法の開発」では、新しい雪氷分率測定器の開発について述べた。これは雪氷-水混合体の電気抵抗を測定することによる、いわゆる電導度法を利用した新しい雪氷分率測定器である。この新しい方法は、流れの妨げにならない形状である、流速の影響を受けない、および精度がよい等の長所を持つ優れた方法であることが明らかになった。また、抵抗測定回路の改良、電場の解析、補助電極の開発、粒子のアスペクト比の影響の検討など、実用化に際して鍵となる幾つかの技術的な工夫についても述べた。
 第5章「流雪溝計測システムの開発」では、第4章で述べた新しい雪氷分率測定方法を流雪溝に適用した、流雪溝計測システムの開発について述べた。このシステムは流雪溝において、雪分率、水深、雪塊の流速等を自動的に連続測定するとともに、それらのデータにより雪の輸送率、積算輸送量などを実時間で演算し、諸データの表示・記録を行うものである。このようなシステムの開発は、流雪溝に関する基本的な研究および流雪溝の新しい利用方法に資することを意図したものである。ここでは、電極の構成、電場の解析、水深の変動への対応、雪塊の流速測定方法などいろいろな面からの検討を行うとともに、ひとつの基本的なシステムを試作し、室内試験を実施した。試験には、一周約6mの小形の回流式の実験用流雪溝を使用した。試験の結果、雪分率、水深、雪塊の流速測定、雪の輸送率、積算輸送量など、いずれも実用的な精度で計測可能であることが判明した。
 第6章「電導度法による雪氷分率測定方法の管内流れへの適用」では、第4章で述べた新しい雪氷分率測定方法を管内流れに適用する方法について述べた。電場の解析により円管用の電極の形状を検討するとともに、電極定数の値を求めた。製作した円管用の電極を用いて管内分率の測定試験を行った。その結果、精度もよく、雪氷の管路輸送に十分適用できることが明らかになった。また管路に沿って分率測定用電極を二組設置し、それぞれの電極で測定される分率の変動波形の時間差を測定することにより、平均流速とは独立に雪氷の粒子群の流速の測定が可能であることが明らかになった。
 第7章「総括」では、本研究で得られた成果をまとめた。また、今後に向けての提言も述べた。
 本研究で開発した新しい雪氷分率測定方法は、閉塞の誘因になる流れの妨げとなるような形状を持たず、またこの測定方法に基づいて製作された雪氷分率計は、出力電圧が雪氷分率に比例し精度もよくかつ使い易いという長所を持っている。この測定方法を採用することにより、雪氷の水力輸送の分野において、特に雪氷分率の計測および制御の面で少なからず貢献できるものと考える。

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