鋼橋の解析と製作に関する情報システムの開発研究
氏名 飯田 勝
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第68号
学位授与の日付 平成7年9月20日
学位論文の題目 鋼橋の解析と製作に関する情報システムの開発研究
論文審査委員
主査 教授 鳥居 邦夫
副査 教授 小川 正二
副査 教授 林 正
副査 教授 丸山 暉彦
副査 助教授 中出 文平
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目次
〔Abstract〕
第1章 序論
1.1 研究の背景 p.1
1.2 本論文の目的と要旨 p.5
1.3 本論文の構成と概要 p.7
第2章 鋼橋の解析と製作に関する情報システムの発展
2.1 概要 p.9
2.2 鋼橋の構造解析システムの発展 p.10
2.3 鋼橋の製作における情報システムの発展 p.15
2.4 鋼橋製作における情報化機器の発展 p.21
第3章 鋼橋の構造解析における情報システムの開発
3.1 概要 p.29
3.2 鋼橋の構造解析システムの概要 p.30
3.3 一般橋梁を対象とした構造解析システムの機能と構成 p.34
3.3.1 入力処理モジュール p.35
3.3.2 影響線計算モジュール p.36
3.3.3 載荷計算モジュール p.37
3.3.4 後処理モジュール p.39
3.3.5 実橋への適用例 p.41
3.4 長大橋梁を対象とした構造解析システムの機能と構成 p.45
3.4.1 基本システムの概要 p.45
3.4.2 実橋への適用例 p.50
3.4.3 吊橋の立体骨組み載荷計算システムの開発 p.53
3.4.4 長大橋梁を対象とした構造システムの完成 p.60
3.5 まとめ p.65
第4章 鋼橋の新しい構造解析システムの開発提案
4.1 概要 p.67
4.2 GUI環境を用いた吊橋・斜張橋の架設計算システム p.69
4.2.1 システムの概要 p.69
4.2.2 プリポストシステム p.71
4.2.3 ソルバーシステム p.75
4.3 新しい構造解析システムの開発環境 p.79
4.3.1 EUC(End User Computing)による他のソフトとの連携 p.80
4.3.2 GUI(Graphical User Interface)を用いた使用環境の改善 p.82
4.3.3 OOD(Object Oriented Design)指向の開発 p.83
4.4 まとめ p.86
第5章 鋼橋の製作における情報システムの概要
5.1 概要 p.87
5.2 原寸業務の概要 p.88
5.3 生産業務の概要 p.93
5.4 最近の原寸・生産システムの概要 p.97
5.4.1 CADAMS-IIの概要 p.97
5.4.2 ADAMS-IIの概要 p.98
5.4.3 CA*/BRIDGEの概要 p.102
5.5 製作情報システムに関する幾つかの課題 p.104
第6章 鋼橋の新しい製作情報システムの開発提案
6.1 概要 p.109
6.2 新しい製作情報システム開発の動機 p.110
6.2.1 橋梁製作現場からのニーズ p.110
6.2.2 ソフトウェア環境の変化 p.111
6.2.3 ハードフェア環境の変化 p.112
6.3 新しい製作情報システムの特徴 p.114
6.3.1 3次元の会話型による操作 p.114
6.3.2 会話型と一括型の相互補完 p.117
6.3.3 ネットワークを使用した同時並行作業 p.121
6.3.4 製品モデルの採用 p.126
6.3.5 形状特徴モデリングの採用 p.128
6.3.6 市販の汎用CADの採用 p.131
6.4 新しい製作情報システムの概要 p.133
6.4.1 新しい製作情報システムで取り扱われる骨組線の種類 p.133
6.4.2 新しい製作情報システムで取り扱われるたわみ形状 p.135
6.4.3 新しい製作情報システムにおける表示と入力方法 p.136
6.4.4 新しい製作情報システムにおける操作方法 p.137
6.4.5 データベースを主眼としたシステム構成例 p.139
6.5 新しい製作情報システムの処理手順 p.140
6.5.1 骨組生成処理 p.141
6.5.2 部材生成処理 p.143
6.5.3 展開処理 p.147
6.5.4 分類処理 p.148
6.5.5 溶接変形処理 p.149
6.5.6 帳票類生成処理 p.149
6.6 他の情報システムとの情報連携 p.152
6.6.1 情報連携の現状 p.152
6.6.2 情報連携の課題 p.154
6.7 まとめ p.156
第7章 鋼橋の仮組立検査システムの改良開発
7.1 鋼橋の仮組立検査システムの概要 p.157
7.1.1 仮組立検査システムの開発経緯 p.157
7.1.2 部材計測システム p.158
7.1.3 データ処理システム p.160
7.2 鋼橋の仮組立検査システムの改良開発 p.163
7.2.1 仮組立検査システムの問題点 p.163
7.2.2 仮組立検査システムの改良開発 p.163
7.2.3 仮組立検査システムの改良開発の効果 p.165
7.3 部材干渉チェックシステム p.166
7.3.1 開発の目的 p.166
7.3.2 システムの概要 p.166
7.3.3 部材干渉チェックのロッジ p.166
7.4 鋼橋の仮組立検査システムの課題と展望 p.170
第8章 結論 p.173
謝辞 p.177
(参考文献) p.178
本論文の目的は、最近の情報技術の発達とその利用環境の成熟あるいは製作工場の高度情報化の要請などを動機として、鋼橋の解析と製作に関わる情報システムについて、一層の合理性と利便性追及のための総合的な開発提案を行うものである。本論文では解析と製作のそれぞれの情報システムについて、過去の発展経緯を振り返り現状の総括を行った後、解決すべき幾つかの課題と新しい情報システムに求められる要件を示し、それらを小型コンピュータの上で実現する方法を提案する。
本論文の要旨は以下の通りである。
1)鋼橋の解析システムに関して
イ)著者はこれまで長期にわたって鋼橋の設計と架設の段階で行われる構造解析のための情報システムを開発し、全体を一つの体系化されたシステムとして完成させた。このシステムは国内の代表的な長大橋と複雑な都市高速高架橋を含む多数の橋梁の解析に適用されて、改良を加えながらわが国の鋼橋設計と架設から求められる解析機能、適用対象、処理速度の条件をほぼ満たした。
ロ)新しい鋼橋の製作情報システムが鋼橋製作とその管理に関わる多様な情報の生成を行うため、鋼橋で初めて製品モデルの仕様を設計し、3次元形状モデルや部材の階層構造、形状特徴を含む属性モデルを具体化した。また形状モデリング手法に関して、鋼橋製作では完成形で緩やかに捻れた局面板を平面板から加工して作り出すことから一般の機械部品製作と異なる鋼橋独特の3次元モデリング手法が必要なことを明らかにし、そのために形状特徴モデリングの手法が有効なことを示した。
ハ)鋼橋の新しい製作情報システムの開発提案を行いその概要を示した。新しいシステムでは部材の加工から架設まで時系列に変化する3次元形状を扱い、一括バッチ型と会話型システムの共存、あるいは狭義のコンカレントエンジニアリング実現など、これまでにない特徴を盛り込んでいる。新しい製作情報システムは従来の局所的な工程レベルの自動化を超えて、製作情報全般を生成し管理する工場の基幹システムに発展することが期待される。
3)鋼橋の仮組立検査システム
鋼橋製作の最終工程である部材の仮組立を計測とシミュレーションによって代替するシステムが先進的な工場で実用化されているが、これを一般に普及させるために操作環境を改善して再構築を行い、欠落していた部材干渉システムを加えて完結させた。これは新しい製作情報システムと連携して高度情報化製作の基盤整備に貢献するものである。
本論文は始めに鋼橋の解析と製作に関する情報システムの発達の歴史を概観しているが、そこでは常にコンピュータとその利用技術、あるいは情報化加工設備の発達が重要な原動力として働いてきている事を観察している。現状のシステムが本文で指摘している様々な課題の解決を求められているとき、これまでと同様の認識に立ちながら最新の情報技術の応用を模索する中で、改めて鋼橋の解析と製作の情報技術から見た特徴を明らかにし、これらをシステムの上に的確に表現する事により高度情報化を推進する新しい情報システムが実現されるものと考えている。