Study on the Processing of Defect-Free Sintered Silicon Nitride
(欠陥のない窒化珪素燒結体の製造プロセスに関する研究)
氏名 高橋 秀雄
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博甲第121号
学位授与の日付 平成8年3月25日
学位論文の題目 Study on the Processing of Defect-Free Sintered Silicon Nitride(欠陥のない窒化珪素焼結体の製造プロセスに関する研究)
論文審査委員
主査 教授 植松 敬三
副査 教授 松下 和正
副査 教授 小松 高行
副査 助教授 内田 希
副査 講師 斎藤 秀俊
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Table of Contents
List of Published Literature Regarding on This Study p.vi
List of Other Published Literature p.vii
List of Patents p.vii
List of Figures p.viii
List of Tables p.x
Acknowledgments p.xi
Chapter 1 Introduction p.1
1.1 Overview p.1
1.2 Literature Survey p.4
1.2.1 Silicon Nitride p.4
1.2.2 Dispersion of Ceramic Powdersin Aqueous Slurry p.5
1.2.3 Spray Dry and Characteristicsof Granule p.8
1.2.4 Defect and Strength of Sintered Ceramics p.10
1.3 Statement of the Problem p.13
1.4 References of Chapter1 p.15
Chapter 2 Dispersion of Silicon Nitride Powder in Aqueous Slurry p.17
2.1 Introduction p.17
2.2 Experimental Procedure p.18
2.3 Results p.20
2.4 Discussion p.23
2.5 Summary p.24
2.6 References of Chapter2 p.37
Chapter 3 Characteristics of Granule and Compaction p.38
3.1 Introduction p.38
3.2 Experimental Procedure p.39
3.3 Results p.41
3.4 Discussion p.44
3.5 Summary p.46
3.6 References of Chapter3 p.56
Chapter 4 Mechanical Properties of Sintered Body p.59
4.1 Introduction p.59
4.2 Experimental Procedure p.61
4.3 Results p.62
4.4 Discussion p.64
4.5 Summary p.66
4.6 References of Chapter4 p.77
Chapter 5 Pore Size Distribution Evaluated by Liquid Immersion Technique p.80
5.1 Introduction p.80
5.2 Experimental Procedure p.82
5.3 Results and Discussion p.83
5.4 Summary p.86
5.5 References of Chapter5 p.92
Chapter 6 Strength Estimation from Experimentally Obtained Pore Distribution p.93
6.1 Introduction p.93
6.2 Estimation Procedure p.94
6.3 Results and Discussion p.96
6.4 Summary p.98
6.5 References of Chapter6 p.105
Chapter 7 Summary p.106
本論文は、窒化珪素焼結体の製造で広く使用されているスプレードライプロセスを対象に、スラリー特性の制御、およびスラリー特性が乾燥顆粒の構造や特性に及ぼす影響、さらにはこれらが成形体および焼結体の構造や機械的特性に及ぼす影響についての系統的な検討を行い、窒化珪素セラミックスの性能および信頼性の向上を行うものである。本論文は7章からなっている。
第1章「緒言」では、従来の研究を詳細に調査検討し、本研究の意義と目的を明らかにしている。特に、セラミックスの工業的製造に関する研究が、各製造段階のプロセスについて個別に行われたものであること、またその多くが経験的ノウハウを主体とするものに限定されていることを示している。
第2章「水系スラリー中の窒化珪素粉体の分散」では、粉体の水中での分散挙動を詳細に検討した。窒化珪素はアルカリ領域で分散した。分散剤(トリエタノールアミン)は、0.5wt%以上の添加により十分な初期分散を生じた。粉砕工程において微粉化される窒化珪素は水と反応してアンモニアを生成し、スラリーのpHを10~11のアルカリ領域に保持するため、窒化珪素は分散剤の添加量に関係なく分散する。ζ-ポテンシャルの測定から、この分散挙動はpHのみで支配されることが明らかにされた。
第3章「顆粒の特性と圧密」では、スラリーの凝集度と顆粒の構造、ならびに圧密特性との関係について論じた。凝集度の制御は、スラリーに硝酸を加えてPHを8~10程度に保持することにより行った。高分散スラリーからは造られた顆粒は非球形、高密度で高い圧縮強度をもち、凝集スラリーから造られたものは、球形、低密度および低圧縮強度であった。微細構造観察では、前者の表面が緻密で一次粒子が密に充填しているのに対し、後者では数個から数十個の一次粒子が凝集してクラスターを形成し、それらのクラスターの周囲には多くの空隙が存在することが明らかにされた。凝集度の増加は、成形体中の顆粒痕に起因する欠陥を減少させ、成形体を均一にした。
第4章「焼結体の機械的特性」では、成形体中の欠陥が焼結体中の欠陥生成の原因となり、強度低下を引き起こすことを示した。高分散スラリーから造られた顆粒は静水圧プレス後も成形体中に顆粒形状を保ち、常圧焼結では除去されずに焼結体中に数十μmの気孔を形成した。これらは破壊源となり、焼結体の強度低下をおこした。凝集スラリーから造られた顆粒では、成形体中に大きな欠陥が形成されない。したがって、焼結体体中には、その破壊源となる大型の空孔が減少して、強度が向上した。
第5章「浸液透光法による欠陥密度評価」では、焼結体中の欠陥、特に微細な欠陥を中心に、SEM観察や浸液透光法による評価を行った。欠陥の寸法分布はスラリーの凝集度と密度に関係し、凝集スラリーでは微細な欠陥は増すが、大型の欠陥は減少した。これは、凝集スラリーでは粉体粒子の凝集により、成形体中に微細な空隙は増すが、顆粒が潰れ易くなるため、顆粒間の大きな気孔が生じないためである。高分散のスラリーでは、顆粒が非球形で大きな窪みをもつこと、また堅く潰れにくいことにより、成形体中には大型の気孔が生じるためである。
第6章「実測の気孔寸法分布による強度予測」では、前章で求めた材料中の実測の欠陥寸法分布を用いて、線形破壊力学的に強度分布の予測を行った。破壊源となる大型の欠陥の存在割合は、実測の欠陥分布を大きな寸法側に外挿することにより推定した。その形状としては、ペニークラックあるいは円周状に円盤状クラックをもつ球欠陥を仮定した。これらの仮定に基づく計算から、低強度領域の結果はペニークラックモデルで、また高強度領域の結果は50%円周クラック球欠陥で支配されると結論した。また、窒化珪素焼結体の強度が、線形破壊力学により説明可能なことを実験的に初めて検証した。
第7章「総括」では、本研究をまとめ、セラミックスの高性能化のための提言を行っている。すなわち、窒化珪素焼結体の製造では、焼結体中欠陥の密度ならびに寸法の低減のためには、スラリーの凝集度の制御を中心とする成形体作成段階までのプロセスを特に厳密に制御する必要があることを強調した。従来、製造効率の点から望ましいと考えられていた高分散のスラリーでは、成形体中に大きな欠陥を生じ、焼結体中に破壊源となる大型の欠陥を残すことになることを明らかにした。