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豪雪都市の雪害とその対策の評価に関する研究

氏名 上村 靖司
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第122号
学位授与の日付 平成10年9月16日
学位論文の題目 豪雪都市の雪害とその対策の評価に関する研究
論文審査委員
 主査 教授 早川 典生
 副査 教授 松本 昌二
 副査 助教授 東 信彦
 副査 助教授 阿部 雅二朗

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第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.2 雪害とその対策の変遷 p.1
1.3 都市雪害の度合を決める要因 p.2
1.4 都市雪害の定量的評価に関する従来の研究 p.4
1.5 都市施設の便益評価方法 p.5
1.6 気象データを用いる積雪重量推定に関する従来の研究 p.7
1.7 研究の目的 p.8
1.8 本論文の構成 p.9

第2章 雪害度の定義と試算 p.15
2.1 はじめに p.15
2.2 雪害度の定義 p.16
2.3 具体的計算法 p.18
2.3.1 利用度の低下率による有零時の便益の表現 p.18
2.3.2 無雪時の便益の取扱い p.19
2.3.3 利用度の低下率kの計算 p.19
2.3.4 費用の計算方法 p.20
2.4 長岡駅前の街路ブロックに対する計算例 p.20
2.4.1 nの調査とkの値 p.21
2.4.2 費用の計算 p.22
2.4.3 雪害度の計算結果 p.24
2.4.4 考察 p.25
2.5 まとめ p.28

第3章 長岡市街地の年雪害度 p.31
3.1 はじめに p.31
3.2 年雪害度の計算方法 p.31
3.3 新しい除排雪施設の経済性評価法 p.33
3.4 対象地域と降積雪条件 p.35
3.5 雪害度の計算 p.37
3.5.1 kとEの計算 p.37
3.5.2 雪のためにかかる費用E"の計算 p.38
3.6 計算結果 p.43
3.6.1 年雪害度 p.43
3.6.2 流雪溝導入の経済評価 p.47
3.7 考察 p.48
3.7.1 特殊な気象条件の場合の雪害度の推定 p.48
3.7.2 計算誤差について p.49
3.7.3 雪害度計算の妥当性について p.50
3.8 まとめ p.51

第4章 十日町市衛地の年雪害度 p.55
4.1 はじめに p.55
4.2 対象地域と降積雪条件 p.55
4.3 雪害度の計算 p.59
4.3.1 アンケート調査と精度向上のための計算の改良 p.59
4.3.2 対象地域の面構造 p.55
4.3.3 雪に無関係にかかる費用E p.61
4.3.4 雪のためにかかる費用E" p.61
4.4 雪害度の計算結果および考察 p.65
4.4.1 積算要因毎の雪害度と精度向上 p.65
4.4.2 十日町市と長岡市の比較 p.67
4.4.3 地域毎の雪害度と雪害対策のレベル p.68
4.4.4 雪害度計算の汎用性について p.69
4.5 まとめ p.69

第5章 気象データを用いる積雪重量推定法 p.73
5.1 はじめに p.73
5.2 雨雪判別を必要としない計算法 p.74
5.2.1 降水積雪重量差Dnの定義とdegree-dayとの関係 p.74
5.2.2 積雪重量の計算と観測値との比較 p.76
5.2.3 長岡市における積雪重量の観測値と計算値の比較 p.77
5.2.4 十日町市における積雪重量の観測値と計算値の比較 p.79
5.2.5 考察 p.81
5.3 雨雪判別を加えた方法 p.83
5.3.1 計算方法 p.83
5.3.2 計算結果 p.84
5.4 まとめ p.84

第6章 適正な屋根融雪装置の能力と運転法の評価 p.89
6.1 はじめに p.89
6.2 シミュレーション計算方法 p.90
6.3 シミュレーション計算結果 p.90
6.4 装置運転のタイミングについて p.95
6.5 考察 p.95
6.6 まとめ p.98

第7章 経済的な新雪除雪基準の辞価 p.101
7.1 はじめに p.101
7.2 計算方法 p.102
7.2.1 除雪の経済性の計算方法 p.102
7.2.2 自然積雪重量の計算と除雪の判断方法 p.103
7.2.3 道路機能低下率の計算方法 p.104
7.3 解析モデル p.106
7.3.1 年間の除雪日数と総除雪量
7.3.2 相当閉鎖日数 p.107
7.4 計算結果 p.108
7.4.1 総除雪量Rと除雪ポテンシャルRp p.109
7.4.2 除雪日数f p.110
7.4.3 積雪日数fと相当閉鎖日数S p.110
7.5 経済的に最適な除雪基準の評価 p.112
7.5.1 除雪費用の計算 p.113
7.5.2 雪害度の計算結果 p.113
7.5.3 最適除雪基準の計算結果 p.114
7.6 考察 p.115
7.7 まとめ p.118

第8章 結論 p.123
8.1 本論文の総括 p.123
8.2 将来への展望 p.124

謝辞 p.127
付録A 雪害度計算に必要なデータの入手源 p.129

A.1 気象データ p.129
A.2 面構造データおよび地価 p.130
A.3 除排雪施設 p.130
付録B 本論文に関係する発表論文 p.133
付録C 本論文に関係する学会発表等 p.135

 豪雪都市においては,冬季の降積雪によって,日常的な経済活動,社会活動が阻害されるとともに,この軽減・防除対策のために大きな経済的負担を強いられている,都市の雪害に対する防災カや住民生活の快適性を高めるために除雪体制を強化し,さらに能力の高い除排雪システムの導入することが望まれているが,さらなる経済的負担を招くため、単純にこれらの対策強化を推進することはできない。このような現状を踏まえ,本論文では、都市における雪害と種々の雪対策の定量的評価手法の確立を目的として研究を行った。各章で得られた結果をまとめて以下に示す。
 第1章「序論」では,都市雪害とその対策の定量的評価に関する研究の経緯について述べ,既存の研究を概観し,本研究の目的が,雪害を定量的に示し種々の雪害対策の経済性を評価する手法を確立することにある,と述べている。
 第2章「雪害度の定義と試算」では,雪害を場所とそこにある施設や物件に付随したものと考え,空間の閉鎖による便益の低下を地代や利用度の低下率を用いて計算し,雪害を防止・軽減するための費用に加えて,雪害度を定義した。これを長岡市駅前地区を対象に試算し,雪害度は,空聞閉鎖による雪害が支配的で,施設や物に対するそれは極めて小さく無視しうることを示した。またこの値は,地価に大きく依存することがわかった。
 第3章「長岡市街地の年雪害度」では、長岡市の市街地16km2を村象に年雪害度を計算し,大雪年(10年再現値),平雪年(2年再現値),小雪年(1O年再現値)に対し,それぞれ,151,104,75億円であることを示した。この計算を元に,新たに歩道除雪を目的として流雪溝を導入した時の経済性を評価し,中心商業地域のみが経済的に成り立つことを示した。
 第4章「十日町市街地の年雪害度」では,上と同様の方法を,長岡よりも降積雪の多い十日町市に適用した。その結果,市街地2.9km2に対して大雪年,平雪年,少雷年に対しそれぞれ24,17,14億円であった。単位面積当たりで見ると長岡市よりやや大きな値となり,その内訳で見ると,便益の低下と除雪費用の比が長岡で7:3であるのに対し,十日町4:6であった。また,入力データの詳細化を図った結果,雪害を受ける要因ごとでは最大30%ほど変わったものの,全体としては数%程の変化でしかなく,あまり詳細な積算を行わなくても実用的な結果が得られることがわかった。
 第5章「気象データを用いる積雪重量推定法」では,雪害対策の評価の基礎となる日々の積雪重量を簡便に求める方法を開発した。これは,気象データとして公表される日平均気温,日降水量データをもとに,各地域に対して2つの係数を与えて計算するものである.長岡市,十目町市,新庄市を対象として計算値と実測値と比較した結果,実用上十分な精度で推定が可能であることが示された。
 第6章「適正な屋根融雪装置の能力と運転法の評価」では,前章で得られた積雪重量推定式を用いて,屋根雪荷重が建物の許容荷重を越えないようにする屋根融雪装置の必要融雪能力を求め,現在採用されている融雪装置が2倍以上の過剰な能力を有していることを明らかにした。また,システムが過剰な発停を繰り返さず,効率的に運転する条件も示した。
 第7章「経済的な新雪除雪基準の評価」では,雪害度の計算方法と積雪重量推定式の両者を用いて,経済的に最適な道路新雪除雪の出動判断基準をシミュレーションにより求め、現在用いられている出動判断基準の妥当性を評価し,現状の出動基準が概ね妥当であることを示した。また機械除雪が,道路融雪に対して経済的優位性を保てる条件範囲を明らかにした。
 第8章「結論」では,各章で得られた成果を総括して,豪雪都市の雪害度を貨幣単位で表し,除排雪システムの経済性を課価することが可能となった,と結論づけた。

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