核融合炉用ジャイロトロン電源の高性能化に関する研究
氏名 恒岡 まさき
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第130号
学位授与の日付 平成11年3月25目
学位論文の題目 核融合炉用ジャイロトロン電源の高性能化に関する研究
論文審査委員
主査 教授 高橋 勲
副査 助教授 近藤 正示
副査 助教授 大石 潔
副査 助教授 野口 敏彦
副査 新潟大学 教授 南 一男
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第1章 緒言
第2章 ジャイロトロン用電源の方式 p.1
2.1 プラズマ加熱方式と電子サイクロトロン共鳴加熱 p.9
2.2 ジャイロトロンとその特性 p.15
2.3 ジャイロトロン用電源への条件 p.30
2.4 ジャイロトロン用電源仕様への対応策 p.32
2.4.1 直流特高電源の大容量・長パルス化 p.32
2.4.2 ジャイロトロンの高速保護方式 p.36
2.4.3 ジャイロトロンの高速制御方式 p.41
2.4.4 高効率化 p.42
2.5 本研究開発へのアプローチ(所見) p.43
第3章 発振テスト用電源の開発 p.50
3.1 回路構成 p.53
3.2 GTO交流電力調整装置の構成 p.56
3.3 直流特高電源の高安定高速制御 p.61
3.3.1 GTO交流電力調整装置の直流電圧制御 p.61
3.3.2 シリーズレギュレータの構成と制御 p.65
3.3.3 ジャイロトロン発振試験結果 p.72
3.4 保護検出回路 p.76
3.5 まとめ p.79
第4章 エネルギー回収ジャイロトロン用加速電源とエネルギー回収の実証 p.82
4.1 エネルギー回収ジャイロトロンのバイアスの選択 p.84
4.2 加速電源の構成 p.88
4.3 高周波変圧器の開発 p.95
4.4 インバータ制御 p.98
4.5 チョッパ制御による特高電圧制御 p.104
4.6 エネルギー回収ジャイロトロン実証試験 p.112
4.7 まとめ p.121
第5章 エネルギー回収ジャイロトロン用主電源の開発 p.123
5.1 エネルギー回収ジャイロトロン用主電源の構成 p.128
5.2 IGBTスイッチの開発 p.132
5.3 サイリスタ交流電力調整装置の制御 p.140
5.4 実負荷試験結果 p.145
5.5 まとめ p.149
第6章 国際熱核融合実験炉(ITER)の電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH)用電源システムの設計 p.151
6.1 ITERのECRHシステムの基本仕様 p.152
6.2 ITERのECRHシステム用電源の構成 p.157
6.3 サイリスタ直流電圧調整装置の制御 p.164
6.4 電源装置の配置 p.169
6.5 まとめ p.172
第7章 結言 p.176
文献ほか p.186
本論文は核融合プラズマの加熱方式として有力視されている電子サイクロトロン共鳴加熱のためのジャイロトロン発振器に必要な直流電源の開発研究について述べたものである。ジャイロトロンは大電カミリ波の発振を行なう真空管でる。核融合プラズマのためには周波数100GHz帯で1MW連続に発振させることか必要で、このためには安定度±0.5%以内の100kV級、数MWの電源か必要である。本研究の主な課題と成果は
(1)発振確認試験用電源の開発
ジャイロトロン開発の初期段階において、電子銃や空胴共振器設計の発振モードや高周波電力出力の確認を行う実験に供する電源を開発した。この結果、発振テスト用ジャイロトロンにおいて520kWで1ms、モード変換器内蔵型ジャイロトロンで410kW、1.3s間発振させることに成功し、電源設計の妥当性を実証した。
(2〕エネルギー回収化電源の開発
これまでのジャイロトロンの発振効率は30%台と低く大きな欠点であった。そこで、バイアス方法を改良して発振終了後の電子ビームのエネルギーを回収し、ジャイロトロンの効率を改善した。これにより周波数110GHzで350kWの出力を5秒間にわたり発振させ、効率48%の世界記録を達成させた。
(3)高効率電源の開発
ジャイロトロン用電源の発熱を抑制し、従来のシリーズレギュレータを用いた方式の88%から97%の高効率電源へ改善させた。
(4)高速遮断スイッチによる保護の実現
従来の電源短絡するクローバスイッチによるジャイロトロンの保護を1OJ以下の許容エネルギーで高速遮断する直流スイッチを開発した。
である。本論文では
第1章において緒言について
第2章においてジャイロトロン用電源の方式の検討について述べた。
第3章においては、課題(1)にある発振テストやモード変換器内蔵のジャイロトロンを試験するための一80kV±0.2%,30A,10s間出力の安定化電源についてのべた。ここでは特高安定化のためのシリーズレギュレータの制御設計や、クローバスイッチによる短絡対策として交流GTOスイッチによる交流系からの電源保護について述べた。また、ジャイロトロン保護に、必要な高速検出回路についても述べた。これにより、(1)で述べた成果を実証した。
第4章では課題(2)であるエネルギー回収ジャイロトロンのパイアス方法と発振の鍵となる特高高安定化電源である加速電源の開発について述べた。バイアス方法ではカソードコモンでコレクタ接地法を採用した経緯について述べた。この際、電源を加速電源と主電源の2種の電源に分け、加速電源の出力を高安定化させ、主電源の出力電圧を加速電源の出力電圧より低く運転することで発振終了後の電子ビームのエネルギーを回収できるバイアスとした。この加速電源には5kHzのインバータと昇圧変圧器を用いたDC-DCコンバータ方式を用い、出力電圧100kV±0.3%、電流0.3Aの特高高安定化電源とした。主電源には第3章で述べた電源を用いて(2)で述べた実証試験を行った。
第5章では第4章での結果をもとにエネルギー回収ジャイロトロン用の主電源について、これまでシリーズレギュレータから、交流側のサイリスタ交流電力調整装置よる高効率な直流電圧制御法を採用した。さらにIGBT素子100直列接続した直流100kV,100A,360Aを5μsで遮断し許容エネルギー10J以下のIGBTスイッチを開発した。これにより一100kV,50A,連続出力の主電源を実現化し先の(3)(4)の成果を果たした。そしてこの電源により周波数170GHzのエネルギー回収ジャイロトロンを試験し、500kWで6s間、450kWで8sの実証した。
第6章では第4、5章で行なったこれまでのエネルギー回収ジャイロトロン用電源の知見をもとに国際熱核融合炉(ITER)の電子サイクロトロン加熱(ECRH)システムのため電源の設計について負荷保護と主電源制御および電源レイアウトの設計について述べた。
第7章で結言とした。