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Viscosity and relaxation mechanisms of glasses far below glass transition temperature. (ガラス転移温度よ りはるかに低い温度におけるガラスの粘度と緩和機構)

氏名 小出 学
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第128号
学位授与の日付 平成10年12月9日
学位論文の題目 Viscosity and relaxation mechanisms of glasses far below glass transition temperature. (ガラス転移温度よりはるかに低い温度におけるガラスの粘度と緩和機構)

論文審査委員
 主査 教授 小松 高行
 副査 教授 五十野 善信
 副査 助教授 内田 希
 副査 大阪府立大学 教授 辰巳砂 昌弘

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Contents

General introduction
1 Apparent viscosity of glasses below glass transition temperature p.13
1.1 Introduction p.14
1.2 Apparent viscosity measurement p.16
1.3 Experimental procedures p.19
l.4The apparent viscosity of as-drawn glass fibers p.22
1.5 The influence of pre-annealing on apparent viscosity p.33
1.6 Conclusions p.37
2 Delayed elasticity of glasses below glass transition temperature p.39
2 ,lIntroduction p.40
2.2 Theoretical analysis of viscoelasticity p.42
2.3 The delayed elasticity of lead silicate glass below the glass transition temperature p.19
2.3. lLoading process p.48
2.3.2 Unloading process p.53
2.4 The delayed elasticity of silica glass below glass transition temperature p.55
2.5 Conclusions p.57
3 Relaxation mechanism of glasses below glass transition temperature p.59
3.1 Introduction p.48
3.2 Relaxation mechanism p.53
3.3 The stress relaxation mechanisms of lead silicate glasses under loading p.65
3.4 The relaxation process of lead silicate glasses under unloading condition p.71
3.5 The relaxation mechanism of silica glass p.74
3.6 Conclusions p.75
Summary p.76
Bibliography p.78
List of publications p.83
Acknowledgments p.85

 これまでガラス転移温度よりはるかに低い温度におけるガラスの粘度の測定はその変形量が極めて小さいことから非常に困難であり、一般的にはガラスは弾性体であると考えられてきた。しかしながら、このようなガラス転移温度より低温におけるガラスの粘性による微視的変形がフォトマスク等を用いた電子デバイスのさらなる開発やハードディスク基盤等の平滑性の評価において非常に問題となってきている。また、原子力発電により生じる低レベル核廃棄物の固化処理法としてガラスにこのような廃棄物を閉じ込め貯蔵を行うといった試みがなされている。この場合、ガラス転移温度以下ではあるが非常に長期にわたる安定性が求められ、その熱的評価方法の確立が望まれている。そこで、本研究ではカラス転移温度より低い温度におけるガラスの微小変形を測定し、変形メカニズムを考察することを目的とした。また、本論文では典型的なガラスとしてシリカガラスと組成依存性を考察するために鉛シリケートガラスを対象とした。
 まずGeneral Introduction において、研究の背景となるガラスのガラス転移温度および粘度について述べ、これまでのガラスの粘度の温度依存性についての理論および研究の現状を把握し、ガラス転移温度より低い温度における粘度の測定および評価の重要性を述べ、本研究の位置づけと目的を明らかにした。
 第1章では、これまで困難であったガラス転移温度より低い温度粘度測定法として考案したガラスファイバーを用いるファイバーベンディング法について述べている。この方法は、直径100μm程度のカラスファイバーを直径約30mmのシリンダーに巻き付けてガラス転移温度より低い温度で種々の時間熱処理することによって得られる残留歪みを測定する方法である。この方法を用いることでガラスファイバーを作製できるガラス全てについて適用でき、従来測定が不可能であった1013-1018Pa sの高粘度領域の測定が可能になった。また、この応力と歪み速度の関係より見掛けの粘度が算出される。この結果、用いた全てのガラスにおいて粘度は時間の経過に伴って増大し、その時問依存性は初期に急激に増加しその後緩やかに増加し一定値に近づくことが判明し、構造の安定化と結び付けて考察している。さらに、ファイバーベンディング法を用いて粘度を測定する前に、ファイバーを予備熱処理し、ガラス構造を考慮して同様の実験を行った。これまで、ガラス転移温度以上および以下においてそれぞれFulcherおよびArrhenius式に従うと考えられ、それぞれ異なった挙動を示すことが分かっていた。しかしながら、本論文においてファイバーを予備熱処理することでガラス転移温度以下の粘度は、全てのガラスにおいてガラス転移温度以上におけるFulcher式に近づくことがわかり、ガラス構造と粘度の関係が明らかになった。
 第2章では、第1章において述べたファイバーベンディング法を用いて得られた変形量について考察した。ガラスはガラス転移温度以下では粘弾性的性質を示し、その変形は弾性、遅延弾性および粘性変形を含んでいる。そこで、MaxwellモデルとVoigtモデルを直列に連結させた4要素モデルを用いて各変形成分の分離を行った。それぞれ、Maxwellモデルのダッシュポットが粘性変形を、ダッシュポットとスプリングが並列につながったVoigtモデルが遅延弾性変形を表している。解析を行った結果、MaxwellおよびVoigtのダッシュポットで示される粘度は温度の低下につれて増大することが分かった。また、鉛シリケートガラスではMaxwell要素の粘度がVoigt要素の粘度より一桁以上高いことが判明した。しかしながら、シリカガラスではMaxwell要素の粘度がVoigt要素の粘度より高いもののその差はわずかであり、その組成依存性が明らかになった。Voigt要素の弾性は、Maxwellの弾性より大きく温度の低下につれて大きくなることが判明した。またその傾きは、予備熱処理によって大きくなることが判明し、ガラス構造と密接に関係することが明らかになった。
 第3章では、変形の緩和メカニズムを原子論的に考察しいる。緩和メカニズムの考察において緩和時間の分布を表すKWW式(Stretched exponential function)を用いて解析を行っている。その結果、鉛シリケートガラスでは予備熱処理温度および時間の増加に伴って緩和時間の分布が狭くなる傾向が示された。しかしながら、シリカガラスでは予備熱処理温度によって緩和時間の分布は変化せず、鉛シリケートガラスに比べて非常に狭いことが判明した。このことから、ガラスを形成する原子の種類およびその原子間の結合角および長さの分布と非常に密接に関係していることが明らかになった。また、緩和時間の活性化エネルギーが予備熱処理温度の増加に伴って粘性流動の活性化エネルギーに近づくことが判明し、ガラスを形成するNetwork Former の変形と密接に結び付くことが明らかになった。
 最終的にSummaryにおいて、本論文で得られた研究成果を総括している。

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