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鉄まくらぎの開発に関する研究

氏名 三枝 長生
学位の種類 博士(工学)
学位記番号 博乙第133号
学位授与の日付 平成11年3月25日
学位論文の題目 鉄まくらぎの開発に関する研究

論文審査委員
 主査 教授 丸山 暉彦
 副査 教授 丸山 久一
 副査 助教授 唐 伯明
 副査 助教授 下村 匠
 副査 新潟工科大学 教授 清水 敬二
 副査 北海学園大学 教授 上浦 正樹

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第1章 序論 p.1
1.1 研究の背景 p.1
1.1.1 鉄まくらぎの導入に関する基本的な問題点の抽出 p.3

第2章 鉄まくらぎの敷設実績及び実態 p.7
2.1 鉄まくらぎの敷設実績 p.7
2.1.1 日本国有鉄道における鋼製鉄まくらぎの敷設実績 p.7
2.1.2 大井川鉄道で使用している鋼製鉄まくらぎ p.7
2.1.3 各JRにおける試験敷設 p.9
2.1.4 製鉄所における敷設実績 p.9
2.1.5 海外での鉄まくらぎの敷設実績 p.11

第3章 鉄まくらぎの材質と形状 p.12
3.1 鉄まくらぎの材質 p.12
3.1.1 御殿場線に敷設されていた鋼製鉄まくらぎの分析 p.12
3.1.2 碓氷峠のアプト式に使用されていた鋼製鉄まくらぎ p.15
3.1.3 川崎製鉄水島製鉄所における鋼矢板製鉄まくらぎ調査 p.18
3.1.4 H鋼を用いた鉄まくらぎの調査 p.21
3.2 貨物会社で敷設した鉄まくらぎの腐食状況 p.26
3.2.1 貨物会社で敷設した鋼製鉄まくらぎの鏑の発生の調査 p.26
3.2.2 貨物会社で敷設したダクタイルによる鉄まくらぎの錆の発生調査 p.28
3.2.3 腐食の発生機構 p.34
3.2.4 鉄道における電食 p.42
3.2.5 鏑と腐食を考慮した鉄まくらぎ p.51
3.2.6 鉄まくらぎに使用する鋼材 p.57
3.3 鉄まくらぎの絶縁 p.58
3.3.1 軌道における電流 p.58
3.3.2 鉄まくらぎの絶縁の構造 p.61
3.3.3 貨物会社における鉄まくらぎの絶縁試験 p.65
3.3.4 その他の箇所における絶縁試験 p.73
3.4 鉄まくらぎの締結装置 p.89
3.4.1 過去に敷設された鉄まくらぎの締結装置 p.89
3.4.2 鉄まくらぎに使用可能な締結装置の調査 p.90
3.4.3 鉄まくらぎで使用した締結装置 p.90
3.4.4 鋼製鉄まくらぎに孔を開けた場合の検討 p.104
3.5 鉄まくらぎの形状 p.120
3.5.1 鋼製鉄まくらぎの製造及び保管等からの形状の検討 p.120
3.5.2 鉄まくらぎの道床横抵抗試験 p.126
3.5.3 現在使用している鉄まくらぎの形状 p.135

第4章 鉄まくらぎの力学的性状 p.137
4.1 鉄まくらぎのカ学的性質の問題点 p.137
4.1.1 鉄まくらぎの路盤圧力試験の実施 p.137
4.1.2 試験結果と考察 p.144
4.1.3 Es、Isを求めるためのHFWDによるたわみ測定 p.158
4.2 鉄まくらぎの道床圧力分布 p.159
4.3 鉄まくらぎと他のまくらぎの勲的振動の比較試験 p.171
4.3.1 鉄まくらぎの動的振動試験の実施 p.171
4.3.2 試験結果と考察 p.173

第5章 鉄まくらぎの設計法と評価 p.189
5.1 鉄まくらぎの設計法 p.189
5.1.1 鋼製鉄まくらぎの許容応力 p.189
5.1.2 鋼製鉄まくらぎの疲労試験及び設計強度 p.194
5.1.3 鋼製鉄まくらぎの設計方法 p.198
5.2 ダクタイルまくらぎの試験及び設計強度 p.202
5.2.1 ダクタイルまくらぎの強度とレール締結部の疲労試験 p.202
2.2.2 ダクタイル製まくらぎの設計方法 p.207
5.3 鉄まくらぎのまくらぎ間隔 p.212
5.3.1 法律上のまくらぎ間隔 p.212
5.3.2 社内基準で定めているまくらぎ間隔 p.212
5.3.3 まくらぎ間隔の検討 p.217

第6章 鋼製鉄まくらぎの分岐器への適用 p.227
6.1 分岐器用鋼製鉄まくらぎの必要性 p.227
6.1.1 分岐用まくらぎの使用基準と特徴 p.227
6.2 鋼製鉄まくらぎの分岐器への適用の可否 p.227
6.2.1 通常の分岐器の設計の考え方 p.229
6.3 鋼製鉄まくらぎ分岐器の設計 p.229
6.4 鋼製鉄まくらぎの分岐まくらぎの応力の検討 p.230
6.5 鋼製鉄まくらぎ分岐器の絶縁に使用した絶縁材 p.233
6.6 現場敷設後の実車試験 p.241
6.6.1 横浜羽沢駅での鉄まくらぎとダクタイルまくらぎの応力試験 p.241
6.6.2 まくらぎ間隔を広げた場合の鋼製鉄まくらぎ分岐器の応力試験 p.250

第7章 鉄まくらぎの経済性 p.264
7.1 鉄まくらぎの経済性 p.264
7.1.1 各種まくらぎの寿命 p.264
7.1.2 鉄まくらぎの優位性について p.265
7.2 鉄まくらぎと他のまくらぎの経済比較 p.273
7.2.1 並まくらぎを交換した場合 p.273
7.2.2 分岐まくらぎのモーター部の3.7mのまくらぎを交換した場合 p.274
7.2.3 分岐器1組を交換した場合 p.275
7.2.4 各まくらぎの経済分析 p.275

第8章 鉄まくらぎの保守の特性 p.278
8.1 鉄まくらぎの保守の問題点 p.278
8.1.1 つき固めによる鉄まくらぎの充填効果 p.278
8.1.2 タイタンパーを使用したつき固め p.278
8.1.3 タイタンパーを使用したっき固めの闇題点 p.278
8.1.4 タイタンパーのツールの形状とつき固め時間との試験 p.279
8.2 つき固め時間と砕石の充填状況 p.288
8.2.1 タイタンパーと保守機械を便用した場合のつき固め時間と砕石の充填状況の調査 p.288
8.2.2 試験の目的 p.288
8.2.3 試験の方法 p.288
8.2.4 試験の結果 p.290
8.2.5 試験結果から判明した事柄 p.292
8.3 鉄まくらぎのつき固め要領の作成 p.297
8.4 鉄まくらぎの保守状況 p.302
8.4.1 東小倉に連続して試験敷設した鉄まくらぎの保守状況 p.302
8.4.2 横浜羽沢駅に敷設した絶縁用鉄まくらぎ分岐器の保守状況 p.307
8.4.3 鉄まくらぎの保守 p.316

第9章 その他の鉄まくらぎ p.317
9.1 鉄まくらぎにゴム系材料を塗布したものと継目用の鉄まくらぎ p.317
9.1.1 ポリウレタンを塗布した鉄まくらぎ p.317
9.1.2 制振材を施した鉄まくらぎ p.318
9.2 ダクタイル製継目用短まくらぎ p.320
9.2.1 ダクタイル製継目用短まくらぎの形状の決定 p.320
9.2.2 試験敷設による検討 p.322
9.3 継目用鉄まくらぎの敷設試験 p.325
9.3.1 ダクタイル製短まくらぎの試験敷設の問題点 p.325
9.3.2 継目用鉄まくらぎの敷設試験の概要 p.325
9.3.3 継目用鉄まくらぎの敷設試験結果 p.322
第10章 結論 p.334
参考文献 p.336
謝辞 p.341

 現在、鉄道で使用されているまくらぎの多くは木まくらぎであり、その他はPCまくらぎと合成まくらぎ及びスラブ軌道が使用されている。JR全体では、まくらぎ敷設延長の42%が木まくらぎで、私鉄各社においては39%が木まくらぎとなっている。木まくらぎの多くは南洋材であり、環境問題から南洋材伐採が禁止されていることも多く、木材そのものが手に入りにくくなってきており、価格も上昇してきている。
 また、木まくらぎに代わるものとして開発されたプレキャストコンクリートまくらぎはJR全体で54%、私鉄各社では59%と多く用いられているが、耐用年数が過ぎたものは廃コンクリートとして産業廃棄物に指定され、その処分は非常に困難になっている。
 まくらぎについても昨今の自然に優しい杖料をめざし、リサイクルが可能で、産業廃棄物とならない材料の導入を図っていく必要があり、過去にアプト式鉄道に使用されていた鉄まくらぎに着目し研究を行った。
 本研究の目的は、鉄まくらぎの望ましい形状を設計すること、レール締結部の信号電流の絶縁を確保すること、鉄まくらぎを敷設した場合の力学特性を解明し、鉄まくらぎの道床厚設計法を明らかにすることである。
 また、鉄まくらぎを使用した分岐器の構造について検討し、その設計法を明確にするとともに鉄まくらぎの保守、施工に関する指針を作成した。
 本論文は第1章~第10章で構成されており、以下に各章の概要を述べる。
 第1章は、研究の背景と鉄まくらぎの導入に関する基本的な問題点と考えを述べている
 第2葦では、鉄まくらぎの過去の敷設実績及び実態を調査した結果を述べている。
 第3章では、鉄まくらぎの材質と形状について述べている。過去に試験敷設されたものの材質と腐食状態の調査をおこない、鉄まくらぎの錆の状況を確認の上、材料の耐候性向上について検討した。
 また、鉄まくらぎの締結装置について検討し、鉄まくらぎの信号電流を想定した漏れコンダクタンス試験から絶縁の状況を調査した。形状の面からも製造、保管の容易牲の検討および道床横抵抗の試験を行なって、鉄まくらぎの最適形状を検討した。
 第4章では、鉄まくらぎの力学的特性を確認する試験を行い、鉄まくらぎの路盤圧力と道床圧力の分布を測定して、鉄まくらぎの道床厚をまくらぎ下面から取ることにしても、設計上充分余裕のある値が得られることを確認した。また、鉄まくらぎと他のまくらぎの動的振動試験を実施し、鉄まくらぎが道床に与える振動加速度も少ないことを確認した。
 第5章では、鉄まくらぎの設計方法とまくらぎ間隔の検討を行った。鉄まくらぎの設計では、鉄まくらぎの腐蝕分として1mmの断面不足を想定して計算を行い、安全を確保した。
 第6章では、鉄まくらぎの分岐器への応用として、鉄まくらぎ分岐器の必要性と鉄まくらぎ分岐器の設計の考え方を述べた。また、鉄まくらぎ分岐器を設計敷設して、実車走行試験を行い、まくらぎ間隔、鉄まくらぎ強度の検討を行い安全性を確認した。
 第7章では、鉄まくらぎの経済性の検討を行い、鉄まくらぎと他の材質のまくらぎとの経済比較を行うとともに、鉄まくらぎ分岐器の敷設にかかわる経済比較を行い、鉄まくらぎの有為性を確認した。
 第8章では、保守機械を使用したつき固め時間の測定を行い、鉄まくらぎのつき固め要領を作成した。また試験敷設を行った箇所の継続的な保守の調査から、鉄まくらぎ供用性の時系列的検討を実施した。
 第9章では、鉄まくらぎに施した絶縁等の被覆について述べており、さらに継目用鉄まくらぎの開発について述べて、継目用木まくらぎとの比較を行っている。
 第10章では、本研究で得られた結果について述べている。
 以上のように、本研究は鉄まくらぎ導入に必要な基本的事項に関する研究であり、地球環境の保全、鉄道の保守費の削減、および人力による保守労働量の軽減に大きく寄与するものである。

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